世界経済の大動脈とも言える海運業界は、国際貿易の要であり、その企業動向は世界経済全体に影響を与える。近年、時価総額ランキングにおいて新たな勢力図が描かれつつあり、特にアジアの企業が台頭している。

本記事では、Reinforz Insightが独自に集計した最新の世界の海運会社時価総額ランキングトップ50を紹介し、各企業の特徴や市場での位置付けを解説する。これにより、海運業界の現状と未来を多角的に理解することが可能となる。

海運業界に関心のある方や投資を検討している方にとって、有益な情報を提供する。本記事を通じて、世界の海運業界の最新トレンドを把握していただきたい。

世界の外航海運会社ランキング:時価総額TOP50

※対象となる外航海運会社として「上場企業」かつ「外航海運業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2024年10月7日)の株価および為替レートで算出

ランキング企業名所在国時価総額(億円)
1COSCO SHIPPING Holdings Co Ltd中国50,202
2Hapag-Lloyd AGドイツ40,096
3A. P. Moller Maersk A/Sデンマーク33,399
4日本郵船日本22,796
5商船三井日本17,398
6COSCO SHIPPING Energy Transportation Co Ltd中国14,201
7Orient Overseas (International) Ltd香港14,021
8China Merchants Energy Shipping Co Ltd中国13,844
9川崎汽船日本13,759
10HMM大韓民国13,257
11MISC Bhdマレーシア12,017
12Wan Hai Lines Ltd.台湾11,098
13SITC International Holdings Co Ltd香港10,425
14U-Ming Marine Transport Corp.台湾10,329
15Hyundai Glovis Co Ltd大韓民国8,951
16Quinenco SAチリ8,210
17Frontline Plcキプロス8,166
18Wallenius Wilhelmsen ASAノルウェー7,465
19Matson Incアメリカ6,845
20Cosco Shipping Development Co Ltd中国6,355
21Golar LNG Ltdバミューダ6,014
22Scorpio Tankers Incモナコ5,690
23TORM PLCイギリス4,662
24Compania Sud Americana de Vapores SAチリ4,343
25BW LPG Ltdシンガポール3,275
26Teekay Tankers Ltdバミューダ3,160
27COSCO SHIPPING Specialized Carriers Co Ltd中国3,077
28Navios Maritime Partners LPモナコ2,890
29DHT Holdings Incバミューダ2,887
30Wilh. Wilhelmsen Holding ASAノルウェー2,823
31Costamare Incモナコ2,625
32Pacific Basin Shipping Ltd香港2,619
33Wisdom Marine Lines Co., Limited台湾2,539
34SFL Corp Ltdバミューダ2,536
35Danaos Corpギリシャ2,514
36Sinopec Kantons Holdings Ltd香港2,319
37Dorian LPG Ltdアメリカ2,264
38Dampskibsselskabet NORDEN A/Sデンマーク1,996
39Navigator Holdings Ltdイギリス1,735
40Odfjell SEノルウェー1,631
41飯野海運日本1,371
42Global Ship Lease Incイギリス1,340
43Teekay Corpバミューダ1,270
44Avance Gas Holding Ltdバミューダ1,269
45Nordic American Tankers Ltdバミューダ1,180
46NSユナイテッド海運日本1,113
47Attica Holdings SAギリシャ890
48DFDS A/Sデンマーク216
49PanOcean Co Ltd大韓民国207
50Sociedad Matriz SAAM SAチリ165

出典:各社プレスリリースなど

世界の海運会社時価総額トップ10

世界の海運会社の時価総額トップ10を見てみると、中国のCOSCO SHIPPING Holdings Co Ltdがトップに立っている。時価総額は50,202億円で、2位のドイツのHapag-Lloyd AG(40,096億円)を大きく引き離している。3位にはデンマークのA. P. Moller Maersk A/S(33,399億円)が続く。

日本企業も健闘しており、日本郵船が4位(22,796億円)、商船三井が5位(17,398億円)、川崎汽船が9位(13,759億円)にランクインしている。アジア勢の台頭が目立ち、韓国のHMM(10位)や香港のOrient Overseas(7位)も上位に入っている。

このランキングから、海運業界におけるアジア企業の存在感が強まっていることがわかる。特に中国企業の成長が顕著であり、業界の勢力図が変わりつつある。

下記にて、ランキングトップ5社の特色を簡潔に紹介する。

1位: COSCO SHIPPING Holdings Co Ltd(中国)

中国最大の海運会社であり、世界有数の規模を誇る。積極的な合併・買収戦略により急成長を遂げ、一帯一路構想の中核企業として国際的な影響力を持つ。多角的な物流サービスを提供し、デジタル化と環境対策にも力を入れている。その船隊は最新鋭の大型コンテナ船を含み、グローバルな海運ネットワークを構築している。

2位: Hapag-Lloyd AG(ドイツ)

ドイツを代表するコンテナ海運会社で、世界的な航路網を持つ。最新の技術を導入した船隊と高品質なサービスで知られ、特に欧州・中南米間の航路で強い存在感を示している。2017年にはUASCとの合併により規模を拡大し、環境への取り組みとして燃費効率の高い船舶の導入や排出ガス削減にも積極的である。

3位: A. P. Moller Maersk A/S(デンマーク)

デンマーク発祥の総合海運企業で、長年にわたり世界最大のコンテナ船会社として業界を牽引してきた。物流からエネルギーまで多岐にわたる事業を展開し、デジタル化戦略の先駆者としても知られる。ゼロエミッション船の開発など、環境持続性に向けた革新的な取り組みを行っている点も注目に値する。

4位: 日本郵船(日本)

日本を代表する海運会社で、その歴史は1885年に遡る。コンテナ船、バルク船、タンカー、客船など多様な船種を運航し、世界各地で物流サービスを提供している。環境負荷低減への取り組みとして、LNG燃料を使用したエコシップの導入や再生可能エネルギーの活用を推進している。技術革新と信頼性の高さで国際的な評価を得ている。

5位: 商船三井(日本)

日本の大手海運会社で、世界中で多様な海上輸送サービスを展開している。バルクキャリア、LNG船、オフショア事業など幅広い分野で活躍し、特にエネルギー輸送に強みを持つ。環境技術の開発にも注力し、次世代燃料の研究や船舶の省エネ化を進めている。独自の技術とグローバルネットワークで競争力を維持している。

中国企業の急成長とその背景

中国のCOSCO SHIPPING Holdingsの急成長の背景には、中国政府の積極的な支援と国内市場の拡大がある。同社は一帯一路政策の一環として、グローバルな海運ネットワークの構築を進めている。これにより、国際的なプレゼンスを大きく高めている。

また、6位のCOSCO SHIPPING Energy Transportation(14,201億円)や8位のChina Merchants Energy Shipping(13,844億円)など、エネルギー輸送に特化した企業も上位に入っている。これらの企業は、中国のエネルギー需要の増加に対応し、市場シェアを拡大している。

中国企業の台頭は、価格競争力や規模の経済を背景にしており、今後もその勢いは続くと予想される。他国の海運企業にとっては、大きな脅威となっている。

日本企業の存在感と競争力

日本の海運企業も世界で高い存在感を示している。日本郵船は4位、商船三井は5位、川崎汽船は9位に位置している。これらの企業は長い歴史と高い技術力を持ち、信頼性の高いサービスを提供している。

特に、環境規制への対応やデジタル化の推進など、先進的な取り組みを積極的に行っている。これにより、国際的な競争力を維持しつつ、新たなビジネスチャンスを創出している。

日本企業の強みは、高品質なサービスと安定した経営基盤にある。今後も市場の変化に柔軟に対応し、その地位を確固たるものにするだろう。

海運業界の現在の動向と未来展望

海運業界は、新型コロナウイルスの影響や世界的なサプライチェーンの混乱により、大きな変動を経験している。需要と供給のバランスが崩れ、運賃の高騰やコンテナ不足が深刻化している。しかし、この状況は一時的なものであり、中長期的には安定を取り戻すと見られている。

一方で、環境問題への対応が業界全体の課題となっている。各社は脱炭素化に向けて、新エネルギーの開発や省エネ技術の導入を進めている。これらの取り組みは、将来的な競争力の源泉となるだろう。

技術革新や市場の変化に迅速に対応できる企業が、今後の海運業界をリードすることになる。

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