世界各地で多くの人々の移動を支えるバス輸送業界。近年、経済の変動や技術革新、燃料価格の変動、そして政策や規制の変更など、さまざまな外部要因が業界の変化を促しています。
これらの背景を踏まえ、2023年の最新時価総額に基づくバス輸送会社のランキングをご紹介します。日本をはじめとするアジアの企業が上位を占める中、世界のバス輸送業界の現状とその動向を探る手助けとして、本ランキングが役立てられれば幸いです。
世界のバス輸送会社ランキング:時価総額TOP39
下記の世界のバス輸送会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 国別の分布
- 日本: 17社
- 中国: 8社
- シンガポール: 2社
- イギリス: 2社
- 香港: 3社
- インドネシア: 3社
- マレーシア: 3社
- 台湾: 1社
- 大韓民国: 2社
- タイ: 1社
- もっとも多くの企業がランキング内に名を連ねているのは日本であり、次いで中国が続く。
- 時価総額の範囲
- トップ企業の時価総額は10,072億円で、最下位の企業の時価総額は11億円。
- 上位6社はすべて2,953億円以上の時価総額を持っているが、その後は大きなギャップが見られる。
- 業種の傾向
- 日本の企業は主に鉄道業がランキングを占めている。
- 他の国では、バス、タクシー、運輸関連の企業が含まれている。
- 地域の偏り
- ランキング上位に位置する企業の多くは日本に集中しており、特に鉄道業の企業が目立つ。
- 中国の企業も多くランキングに名を連ねており、様々な運輸関連の企業が見られる。
- 時価総額の急激な差
- 上位の企業と下位の企業との時価総額の差は非常に大きい。1位の京成電鉄の時価総額は10,072億円であるのに対し、39位のPT Steady Safe Tbkは11億円である。
- アジアの企業が中心
- ランキングに名を連ねる企業は全てアジアの企業であり、その中でも日本、中国、シンガポール、イギリス(香港含む)の企業が主力を担っている。
総括: このランキングは、主にアジアの運輸関連の企業を中心にしたものであり、日本の鉄道業が特に強い影響を持っていることが分かる。時価総額の差が大きく、上位の企業は非常に高い評価を受けているのに対し、中〜下位の企業は比較的小規模であることが分かる。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:京成電鉄(日本)
首都圏を中心に活動する鉄道会社。特に成田空港へのアクセスに強い。
成田空港と東京都心を結ぶ重要な路線を持ち、観光客やビジネスマンの利用が多い。都市部と空港を結ぶ独自の位置づけにより高い収益を上げている。
2位:近鉄グループホールディングス(日本)
大阪と名古屋を結ぶ大手私鉄の一つ。さらに観光地や不動産、ホテル事業も展開。
都市間輸送の要であること、多岐にわたる関連事業を持ち、経済的な収益を多角的に確保している。
3位:京阪ホールディングス(日本)
大阪と京都を結ぶ主要な鉄道路線を持つ。観光客の利用が特に多い。
京都観光の主要なアクセスルートであり、特に外国人観光客からの需要が高い。また、関連事業も強化している。
4位:京浜急行電鉄(日本)
東京都心と横浜、三浦半島を結ぶ路線を持つ私鉄。
ビジネスエリアや住宅地を結ぶ路線網を持つため、通勤・通学需要が高い。また、観光地へのアクセスも提供している。
5位:南海電気鉄道(日本)
大阪と関西国際空港、和歌山を結ぶ鉄道会社。空港アクセスが特に知られている。
関西国際空港へのアクセスが非常に便利であり、国内外からの観光客やビジネスマンの利用が多い。大阪都市圏の利用者も多い。
これらの企業は、主要都市や観光地、交通の要所を結ぶ鉄道路線を持っているため、常に高い需要がある。また、それぞれが独自の事業展開や位置づけを持ち、多角的な収益源を持っていることがランキング上位に位置する大きな理由として考えられる。
【世界のバス輸送会社ランキング:時価総額TOP39リスト】
※対象となるバス輸送会社として「上場企業」かつ「バス輸送業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年7月26日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | 京成電鉄 | 日本 | 2023/03 | 10,072 |
2 | 近鉄グループホールディングス | 日本 | 2023/03 | 8,801 |
3 | 京阪ホールディングス | 日本 | 2023/03 | 4,250 |
4 | 京浜急行電鉄 | 日本 | 2023/03 | 3,636 |
5 | 南海電気鉄道 | 日本 | 2023/03 | 3,391 |
6 | 富士急行 | 日本 | 2023/03 | 2,953 |
7 | ComfortDelGro Corp Ltd | シンガポール | 2022/12 | 2,675 |
8 | 西日本鉄道 | 日本 | 2023/03 | 1,943 |
9 | FirstGroup PLC | イギリス | 2023/03 | 1,630 |
10 | Dazhong Transportation (Group) Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,396 |
11 | Hainan Haiqi Transportation Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 1,107 |
12 | VRL Logistics Ltd | インド | 2023/03 | 1,054 |
13 | Mobico Group PLC | イギリス | 2022/12 | 970 |
14 | Transport International Holdings Ltd | 香港 | 2022/12 | 859 |
15 | SBS Transit Ltd | シンガポール | 2022/12 | 798 |
16 | Hubei Three Gorges Tourism Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 779 |
17 | Beijing Bashi Media Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 664 |
18 | 三重交通グループホールディングス | 日本 | 2023/03 | 587 |
19 | PT Blue Bird Tbk | インドネシア | 2022/12 | 510 |
20 | Longzhou Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 443 |
21 | Sichuan Fulin Transportation Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 434 |
22 | 神奈川中央交通 | 日本 | 2023/03 | 396 |
23 | Jiangxi Changyun Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 298 |
24 | 広島電鉄 | 日本 | 2023/03 | 246 |
25 | 神姫バス | 日本 | 2023/03 | 218 |
26 | Advanced Lithium Electrochemistry (KY) Co Ltd | 台湾 | 2022/12 | 188 |
27 | Kwoon Chung Bus Holdings Ltd | 香港 | 2023/03 | 141 |
28 | 北海道中央バス | 日本 | 2023/03 | 107 |
29 | 京福電気鉄道 | 日本 | 2023/03 | 82 |
30 | 新潟交通 | 日本 | 2023/03 | 79 |
31 | Chunil Express Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 76 |
32 | G Capital Bhd | マレーシア | 2022/12 | 41 |
33 | Dongyang Express Corp | 大韓民国 | 2022/12 | 41 |
34 | AMS Public Transport Holdings Ltd | 香港 | 2023/03 | 36 |
35 | Epicon Bhd | マレーシア | 2022/12 | 31 |
36 | ATP30 PCL | タイ | 2022/12 | 28 |
37 | One Glove Group Bhd | マレーシア | 2021/09 | 20 |
38 | PT WEHA Transportasi Indonesia Tbk | インドネシア | 2022/12 | 19 |
39 | PT Steady Safe Tbk | インドネシア | 2022/12 | 11 |
出典:各社プレスリリースなど
世界のバス輸送会社ランキングの有用性
世界のバス輸送会社ランキングを考える際の有用性について、以下の点で詳しく考察します。
- 投資判断の参考
- 投資家やアナリストはランキングを参考に、各会社の経済的健全性や業界内での競争力を判断する材料として使用できます。
- また、上位企業は安定した経営基盤や高い市場占有率を持つ可能性があるため、投資対象として魅力的になる可能性があります。
- 業界のトレンド分析
- ランキングの変動を追跡することで、業界内での動向やトレンドを掴むことができます。
- 新規参入企業や急速にランクアップする企業は、新しい技術やビジネスモデルを導入している可能性が考えられます。
- ベンチマーキングの材料
- バス輸送会社は、ランキングを参考にして自社の業績やサービスを他社と比較することができます。
- これにより、改善点や新しい戦略の方向性を見つけ出す手助けとなるでしょう。
- 消費者の選択の参考
- ランキング情報は、消費者がサービスを選ぶ際の一つの判断材料となることが考えられます。
- 信頼性や安定性が求められるバス輸送業界において、ランキングは消費者にとっての安心感を与える要素となり得ます。
- 国際的なビジネス展開の参考
- グローバルに事業展開を考えるバス輸送会社にとって、国際的なランキングは各国や地域の市場規模や競争状況を理解する上で有用です。
- M&Aや提携の際のターゲット企業選定の参考ともなるでしょう。
- PRやマーケティングの材料
- 上位にランクインすることは、会社のブランド価値向上やPR活動の一環として利用できます。
- 新規顧客の獲得や、既存顧客の信頼維持に寄与する可能性があります。
- 政策や規制の参考
- 政府や関連団体は、ランキングを元に業界の健全な成長をサポートする政策や規制を検討する材料として利用できます。
以上の点から、世界のバス輸送会社ランキングは、さまざまなステークホルダーにとって有益な情報として活用される可能性が高いと考えられます。
世界のバス輸送会社ランキング:変化を与える要素
世界のバス輸送会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
経済の変動
国や地域の経済成長やリセッションが、バス輸送の需要に大きく影響します。経済が好調なときは、旅行や通勤の需要が増え、逆に経済が停滞すると需要が減少する可能性があります。
技術革新
バスの電動化や自動運転技術の進展、シェアリングサービスの普及など、技術の進化は輸送サービスの質やコストに大きな影響を与えます。
燃料価格の変動
石油価格の変動は、バス輸送業界の運営コストに直接的な影響を及ぼします。特に、石油依存度が高い業界においては、価格の変動がビジネスの収益性に影響を与える可能性があります。
政策や規制の変更
環境問題への対応や交通安全のための新しい規制が導入されると、バス輸送業界の運営コストやサービスの提供方法に変化が生じることがあります。
社会的・文化的トレンド
人々のライフスタイルや価値観の変化、都市化の進展、リモートワークの普及など、社会的・文化的なトレンドはバス輸送の需要に影響を及ぼすことがあります。
競合との関係
他の輸送手段との競争(例: 鉄道、自動車、航空など)や、新規参入者との競争が、市場のシェアや収益性に影響を及ぼす可能性があります。
災害や事故
大規模な自然災害や事故が発生した場合、一時的にサービスが停止することや、長期的な収益の減少が生じる可能性があります。
国際的な事象
戦争や政治的な危機、国際的な経済制裁など、国際的な事象もバス輸送の需要や業界全体の状況に影響を及ぼす可能性があります。
企業の経営戦略
各企業のM&A活動や業務提携、新サービスの開始、運賃の改訂など、経営戦略の変更もランキングに変動をもたらす要因となり得ます。
これらの要素は、バス輸送会社のランキングに直接的または間接的に影響を与える可能性があります。特に、業界内外の変動が大きい時期や状況では、ランキングの順位に大きな変動が生じることが考えられます。
まとめ
2023年のバス輸送会社ランキングを通じて、業界の最新の動向や各企業の立ち位置を確認することができました。技術革新や環境問題への対応、さらには経済状況の変動など、多岐にわたる要因がランキングの変動を引き起こしています。
今後もこの業界は、持続可能な移動手段としての役割を担いながら、さまざまな変化とともに進化していくことでしょう。今回のランキングをキッカケに、世界各地のバス輸送業界への関心を深めていただければ幸いです。