宅配便業界は、近年のオンラインショッピングの急激な増加と、それに伴う物流ニーズの変化により、絶えず変動と進化を続けています。各企業は新しい技術の採用やサービス拡充を急ピッチで進めており、市場は日々のように新しい動きを見せています。
そんな中、2023年の最新のデータをもとに、世界の宅配便会社ランキング時価総額TOP40をご紹介します。このランキングを通して、現在の宅配便業界のトレンドや、各企業のポジションを把握することができます。
世界の宅配便会社ランキング:時価総額TOP40
下記の世界の宅配便会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 地域的な集中度
- アメリカの企業はリストの上位に位置しており、特にUnited Parcel Service Incは最も高い時価総額を持っています。
- 中国の企業がリスト内に多数含まれている。
- 日本とインドもそれぞれリストに複数の企業を持っています。
- しかし、リスト内の国の多様性は広く、多くの国からの企業が含まれています。
- 時価総額の差
- 1位の企業の時価総額は他の企業と比較して非常に高く、次にランクされる企業とのギャップも大きい。
- 1位と40位との時価総額の差は非常に大きく、これは業界内の企業間の競争力の格差を示している可能性があります。
- アジアの成長
- 中国、日本、インドなどアジアの国々からの企業がランキングに多数含まれており、これはアジア地域の物流業界の成長を示している可能性があります。
- 小さな時価総額の企業
- リストの下位には、非常に小さな時価総額を持つ企業も含まれています。これは、小規模ながらも公開企業として活動している物流業界の企業が存在することを示しています。
- 特定の国の代表性
- 一部の国は、特定の企業1つや2つのみがランキングに入っています(例:オーストリア、オランダ、ベルギーなど)。これは、それらの国における物流業界の市場構造や競争状況を示している可能性があります。
総じて、このランキングは、物流業界における国や地域の競争力や市場の動向、さらには業界の多様性や格差を示す興味深いデータとなっています。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:United Parcel Service Inc(UPS)(アメリカ)
UPSはアメリカを代表する国際的な宅配便・物流サービス企業であり、世界中の多くの国や地域で事業を展開しています。
地域や国を問わず、非常に強固なネットワークを持っており、物流インフラの充実や技術的な革新により、顧客の信頼を獲得しているため。
2位:FedEx Corp(アメリカ)
FedExもまた、世界的な宅配便・物流サービスを提供するアメリカの企業。空輸を中心とした高速なサービスで知られています。
その名の通り、急速な配送が可能な航空インフラを持ち、多くのビジネスや個人顧客のニーズに応えることができるため。
3位:DHL Group(ドイツ)
ドイツを拠点とする国際的な物流会社。航空貨物、海上輸送、陸上輸送など幅広いサービスを展開している。
世界中に広がる強固なネットワークと、高い運用効率を持つため。また、ヨーロッパを中心に高い市場シェアを持っていることが強み。
4位:SF Holding Co Ltd(中国)
中国の主要な宅配便・物流会社。近年、中国国内での物流ニーズの増加に伴い、急成長を遂げている。
中国の経済発展とともに、国内の物流ニーズが急増している中で、SF Holdingは迅速かつ効率的なサービスを提供し、多くの顧客からの信頼を得ているため。
5位:日本郵政(日本)
日本の公共の郵便事業者であり、郵便サービスのほかに、銀行や保険といった金融サービスも提供している。
郵便サービスを中心とした強固なネットワークを持つとともに、金融サービスを提供することで、多岐にわたる収益源を確保しているため。
これらの企業は、それぞれの国や地域での強固なネットワーク、効率的なサービス提供、そして顧客からの高い信頼を背景に、物流業界におけるランキングの上位を維持しています。
【世界の宅配便会社ランキング:時価総額TOP40リスト】
※対象となる宅配便会社として「上場企業」かつ「宅配便業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年7月27日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | United Parcel Service Inc | アメリカ | 2022/12 | 213,474 |
2 | FedEx Corp | アメリカ | 2023/05 | 91,166 |
3 | DHL Group | ドイツ | 2022/12 | 78,628 |
4 | SF Holding Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 43,666 |
5 | 日本郵政 | 日本 | 2023/03 | 35,303 |
6 | ZTO Express (Cayman) Inc | 中国 | 2022/12 | 29,220 |
7 | Poste Italiane SpA | イタリア | 2022/12 | 17,502 |
8 | JD Logistics Inc | 中国 | 2022/12 | 13,948 |
9 | SGホールディングス | 日本 | 2023/03 | 13,759 |
10 | President Chain Store Corporation | 台湾 | 2022/12 | 12,623 |
11 | YTO Express Group Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 10,126 |
12 | ヤマトホールディングス | 日本 | 2023/03 | 9,953 |
13 | Yunda Holding Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 5,402 |
14 | Delhivery Ltd | インド | 2023/03 | 4,884 |
15 | セイノーホールディングス | 日本 | 2023/03 | 4,027 |
16 | International Distributions Services PLC | イギリス | 2023/03 | 3,489 |
17 | STO Express Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 3,231 |
18 | Oesterreichische Post AG | オーストリア | 2022/12 | 3,149 |
19 | Blue Dart Express Ltd | インド | 2023/03 | 2,812 |
20 | 福山通運 | 日本 | 2023/03 | 2,031 |
21 | Bpost SA de Droit Public | ベルギー | 2022/12 | 1,165 |
22 | Singapore Post Ltd | シンガポール | 2023/03 | 1,154 |
23 | PostNL NV | オランダ | 2022/12 | 1,117 |
24 | VRL Logistics Ltd | インド | 2023/03 | 1,054 |
25 | TCI Express Ltd | インド | 2023/03 | 941 |
26 | Pitney Bowes Inc | アメリカ | 2022/12 | 867 |
27 | Kerry TJ Logistics Company Limited | 台湾 | 2022/12 | 730 |
28 | CTT-Correios de Portugal SA | ポルトガル | 2022/12 | 687 |
29 | Kerry Express (Thailand) PCL | タイ | 2022/12 | 656 |
30 | GDEX Bhd | マレーシア | 2022/12 | 316 |
31 | Gati Ltd | インド | 2023/03 | 311 |
32 | DX (Group) PLC | イギリス | 2022/06 | 311 |
33 | Hanjin Transportation Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 303 |
34 | Taiwan Pelican Express Co., Ltd. | 台湾 | 2022/12 | 171 |
35 | POS Malaysia Bhd | マレーシア | 2022/12 | 130 |
36 | CTI Logistics Ltd | オーストラリア | 2022/06 | 126 |
37 | CJ Century Logistics Holdings Bhd | マレーシア | 2022/12 | 78 |
38 | BEST Inc | 中国 | 2022/12 | 59 |
39 | Patel Integrated Logistics Ltd | インド | 2023/03 | 15 |
40 | Corporate Courier and Cargo Ltd | インド | 2022/03 | 0 |
出典:各社プレスリリースなど
世界の宅配便会社ランキングの有用性
世界の宅配便会社ランキングの有用性について考える際、いくつかの側面から評価することができます。
- 市場調査・競合分析:企業が新しい市場への参入を検討する場合や、既存市場での競争力を評価する際に、ランキングは競合他社の規模やポジションを把握する上で有用です。
- 投資判断の参考:投資家やアナリストが企業の投資価値を評価する際、業界内での地位や規模を示す指標としてランキングが利用されることがあります。
- ビジネス戦略の策定:企業が自らの市場シェアや地位を評価し、中長期的な戦略や目標を策定する際に、ランキングの情報が参考になります。
- ブランド価値の向上:ランキング上位の企業は、その地位をマーケティングやPR活動に活用することができ、ブランドの信頼性や認知度を高める効果が期待できます。
- 消費者の選択基準:顧客がサービスを選択する際、ランキング情報は信頼性やサービス品質の指標として利用されることがあります。
- 業界の動向や傾向の把握:時間を跨いでのランキングの変動を分析することで、業界内の成長企業や衰退企業、新興市場の動向などを読み取ることができます。
- 供給業者やパートナー企業の選定:B2B取引の際、供給業者やパートナー企業を選定する基準として、その企業の業界内でのランキングや評価が参考にされることがあります。
ただし、ランキングは単一の指標に基づいて作成されることが多いため、全体的な企業の実力や品質を判断する際には、他の情報やデータと併せて検討することが重要です。ランキングだけに偏った判断は誤った結論を導く可能性があるため、注意が必要です。
世界の宅配便会社ランキング:変化を与える要素
世界の宅配便会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
技術革新・デジタル化
ドローンや自動運転車の宅配利用、最適化されたルート計画のAI技術などの導入により、サービスの効率や範囲が拡大する可能性があります。
市場の拡大・収縮
新興国の経済成長や都市化が進むことで、新しい市場が開かれる可能性があります。一方、経済の停滞や縮小により、市場が収縮することも考えられます。
規制や政策の変化
各国の宅配業界に対する規制や政策が厳しくなる、または緩和されることで、業界の動向やランキングに影響が出ることが考えられます。
環境への配慮
サステナビリティやエコロジーへの需要が高まる中、環境に優しい宅配サービスやエコパッケージの導入は、企業の評価を高める要因となる可能性があります。
消費者の需要の変化
オンラインショッピングの増加や、即時配送の需要拡大など、消費者のライフスタイルや行動の変化は、宅配便業界に大きな影響を及ぼします。
競合との提携やM&A
業界内外からの新規参入、既存企業同士の提携やM&Aによって、ランキングの順位に大きな変動が生じることがあります。
地域的な事象
天災や政治的不安定、経済制裁など、特定の地域に起こる事象が宅配業務に影響を及ぼすことがあります。
労働環境や人手不足
良好な労働環境の提供や適切な給与・福利厚生による人材の確保、一方での人手不足や労働問題は、サービスの質や範囲に影響を与える要因となります。
物流インフラの整備
交通網や物流施設の整備状況は、宅配の効率や範囲に直接的に影響を与える要素です。
これらの要素は、特定の企業だけでなく業界全体の動向に影響を与える可能性があります。従って、ランキングを評価する際はこれらの背景要因を理解することが重要となります。
まとめ
このランキングからも明らかなように、アメリカや中国をはじめとした大国の企業が上位を占めていますが、各国の宅配便業界が独自の発展を遂げていることも確認できます。技術革新、市場の拡大・収縮、消費者の需要の変化など、多岐にわたる要因がランキングの変動を引き起こしています。
今後も、これらの要因によりランキングは変動し続けるでしょう。宅配便業界の今後の動向に注目しつつ、消費者としての利便性向上や、投資の観点からも各企業の動きを追い続けることが求められる時代となりました。