広告業界は常に変動し続けるダイナミックなフィールドであり、その変化を読むことはビジネスの成功のカギとも言えます。2023年、新たな技術の進化や経済の動き、各代理店の戦略など、多岐にわたる要因が業界のランキングに変動をもたらしています。この記事では、時価総額を基にした世界の広告代理店ランキングTOP80を紹介。どの企業がトップを走り、どの企業が急成長を遂げたのか、そしてその背後にある要因は何なのかを探っていきます。

世界の広告代理店ランキング:時価総額TOP80

下記の世界の広告代理店ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。

このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。

  • 地域分布:
    • アメリカの企業が最も多く、7社がランキング内に入っています。
    • 中国の企業が13社と、リストの中で最も多くを占めています。
    • 日本からは10社がランキング内に入っています。
    • 大韓民国の企業が6社、タイからは5社、香港からは8社がランキングに名を連ねています。
    • その他、多様な国からの企業がランキング内に入っており、広告・メディア産業の地域的な多様性が伺えます。

  • 時価総額の分布:
    • 1位のPublicis Groupe SAは25,649億円と、リストの中で最も高い時価総額を持っています。
    • 50位のホープは47億円、80位のSanguine Media Ltdは0億円と、ランキングの下位に行くにつれて時価総額が大きく減少しています。

  • トップ企業の特徴:
    • トップ5の企業は、フランス、アメリカ、中国、イギリスという4つの異なる国から来ています。これは、広告・メディア産業が各国で高い競争力を持っていることを示しています。
    • トップ5内には、アメリカの企業が2社、アジアの企業が1社、ヨーロッパの企業が2社含まれており、広告・メディア産業のグローバルな分布を示しています。

  • その他の観察:
    • 時価総額が高い企業は、主に北アメリカ、ヨーロッパ、東アジアに集中しています。一方で、ランキングの下位には、東南アジアや南アジアの企業も見られます。

以上の情報を基に、広告・メディア産業はグローバルに広がっており、特定の地域や国が独占しているわけではないことが分かります。しかし、トップランキングの企業は主要な経済大国からのものが多いことが確認できます。

以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。

1位:Publicis Groupe SA (フランス)

Publicis Groupeは、世界的に知られる広告・マーケティングサービス企業であり、複数のエージェンシーブランドを所有しています。デジタルマーケティング、クリエイティブ制作、メディア購入などの広範なサービスを提供しています。

Publicis Groupeは、クリエイティブなコンテンツとデジタル変革の能力を組み合わせることで、顧客エンゲージメントを高める戦略を実施しています。また、世界中に拠点を持つため、多様な市場での強いプレゼンスがランキングの上位を維持する一因となっています。

2位:Omnicom Group Inc (アメリカ)

Omnicomは、広告、マーケティング、コーポレートコミュニケーション分野でのサービスを提供する大手のグローバル企業です。

顧客との長期的な関係、強力なデジタルキャンペーン、そして多様なブランドや業界との協業により、高い収益性と成長を維持しています。

3位:Focus Media Information Technology Co Ltd (中国)

Focus Mediaは、中国で最も大きいデジタルメディアと広告会社の1つで、特にデジタルサイネージ(公共の場所に設置された大型ディスプレイ)に強みを持っています。

中国の巨大な市場規模と、急速にデジタル化が進む環境の中で、Focus Mediaは都市部の高トラフィックエリアにデジタル広告を配置し、効果的な広告露出を実現しています。

4位:The Interpublic Group of Companies Inc (アメリカ)

IPGは、マーケティングソリューションの幅広い範囲を提供するグローバルな企業で、数多くの代理店ブランドを所有しています。

世界中の市場での強力なネットワーク、デジタルマーケティングのエキスパートise、そしてクリエイティブなキャンペーン制作の能力が、IPGを業界のリーダーとして位置づけています。

5位:WPP PLC (イギリス)

WPPは、広告、公共関係、メディア投資管理など、多岐にわたるマーケティングサービスを提供する世界的な企業です。

WPPは、多数のエージェンシーと共にグローバルな展開を行い、デジタル変革にも力を入れています。イノベーションやデータ駆動のマーケティング戦略により、高い顧客エンゲージメントを実現しています。

これらの企業は、グローバル市場での強固な位置づけ、革新的な広告・マーケティング戦略、そしてデジタル変革の取り組みを通じて、業界でのリーダーシップを維持しています。

【世界の広告代理店ランキング:時価総額TOP80リスト】

※対象となる広告代理店として「上場企業」かつ「広告代理店業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年7月27日)の株価および為替レートで算出

ランキング企業名所在国決算期 (決算期)時価総額(億円)
1Publicis Groupe SAフランス2022/1225,649
2Omnicom Group Incアメリカ2022/1221,973
3Focus Media Information Technology Co Ltd中国2022/1219,811
4The Interpublic Group of Companies Incアメリカ2022/1216,838
5WPP PLCイギリス2022/1214,762
6Lamar Advertising Coアメリカ2022/1213,627
7電通グループ日本2022/1212,517
8博報堂DYホールディングス日本2023/036,075
9JCDecaux SEフランス2022/125,670
10PT MNC Digital Entertainment Tbkインドネシア2022/123,992
11Stroeer SE & Co KGaAドイツ2022/123,366
12Outfront Media Incアメリカ2022/123,339
13Guangdong Advertising Group Co Ltd中国2022/122,073
14CHEIL Worldwide Inc大韓民国2022/121,932
15Hunan TV & Broadcast Intermediary Co Ltd中国2022/121,866
16Shenzhen Mason Technologies Co Ltd中国2022/121,757
17Plan B Media PCLタイ2022/121,374
18China Television Media Ltd中国2022/121,087
19Stagwell Incアメリカ2022/121,058
20Zhejiang Huamei Holding Co Ltd中国2022/12999
21Huawen Media Group中国2022/12890
22ラクスル日本2022/07852
23Innocean Worldwide Inc大韓民国2022/12836
24FS Development Investment Holdings中国2022/12737
25Simei Media Co Ltd中国2022/12658
26oOh media Ltdオーストラリア2022/12632
27Inly Media Co Ltd中国2022/12524
28Eletromidia SAブラジル2022/12523
29Gannett Co Incアメリカ2022/12520
30Guangdong Insight Brand Marketing Group Co Ltd中国2022/12469
31YG Plus Inc大韓民国2022/12361
32Shanghai LongYun Cultural Creation & Technology Group Co Ltd中国2022/12281
33Nasmedia Co Ltd大韓民国2022/12227
34Ezagoo Ltd中国2022/12159
35Master Ad PCLタイ2023/03159
36Oricom Inc大韓民国2022/12143
37Media Prima Bhdマレーシア2021/12136
38BC Technology Group Ltd香港2022/12128
39Portobello SpAイタリア2022/12109
40HS Ad Inc大韓民国2022/12104
41SinoMedia Holding Ltd中国2022/1277
42National CineMedia Incアメリカ2022/1276
43表示灯日本2023/0367
44Galaxia SM Inc大韓民国2022/1259
45Thumzup Media Corpアメリカ2022/1258
46Il Sole 24 Oreイタリア2022/1256
47Pressman Advertising Ltdインド2023/0355
48Far East Fame Line DDB PCLタイ2022/1254
49ゲンダイエージェンシー日本2023/0352
50ホープ日本2023/0347
51SEEC Media Group Ltd香港2022/1244
52Acquazzurra SpAイタリア2022/1236
53Ihlas Yayin Holdingトルコ2022/1234
54Stran & Co Incアメリカ2022/1233
55Jiading International Group Holdings Ltd香港2023/0333
56PT Star Pacific Tbkインドネシア2022/1230
57中広日本2023/0328
58Prakit Holdings PCLタイ2022/1228
59Great World Co Holdings Ltd香港2023/0328
60Logis Mon Inc大韓民国2022/1224
61Kingkey Intelligence Culture Holdings Ltd香港2022/1224
62セーラー広告日本2023/0320
63Insignia Systems Incアメリカ2022/1219
64Beijing Media Corp Ltd香港2022/1217
65PUC Bhdマレーシア2022/1216
66Cornerstone Financial Holdings Ltd香港2022/1215
67アイガー日本2022/1113
68TV Thunder PCLタイ2022/1212
69shopper360 Ltdマレーシア2022/0511
70Icon Culture Global Co Ltd中国2022/128
71Sadhna Broadcast Ltdインド2023/038
72Stream Ideas Group Ltd香港2023/037
73インサイト日本2022/067
74SV Vision Ltd香港2022/125
75China 33 Media Group Ltd中国2022/125
76P2Earn Incカナダ2022/123
77SLM Corp PCLタイ2022/123
78Network CN Inc香港2022/121
79Cinerad Communications Ltdインド2023/030
80Sanguine Media Ltdインド2023/030

出典:各社プレスリリースなど

世界の広告代理店ランキングの有用性

広告代理店のランキングは、業界関係者やクライアント、投資家など、さまざまな利害関係者にとっての意義があります。以下に、世界の広告代理店ランキングの有用性に関するいくつかのポイントを挙げてみます。

  • 市場の洞察:ランキングは、特定の代理店やグループがどれだけ業界内で影響力を持っているかを示す指標として機能します。

    業界のトレンドや変化、どの代理店が成長しているか、あるいはどの代理店が市場シェアを失っているかなど、市場の動向を把握するための参考情報として役立ちます。

  • ビジネス戦略の策定:代理店はランキングを基に自らの位置を評価し、強みや弱みを明確にし、今後の戦略や方針を策定する際の参考情報とすることができます。

  • クライアントの意思決定支援:企業やブランドは、広告キャンペーンやマーケティング戦略を立案する際に、どの代理店とパートナーシップを結ぶかを決定する必要があります。

    ランキング情報は、代理店の信頼性や専門性、実績を判断する材料として利用できます。

  • 投資判断の参考情報:投資家は、代理店の経済的な健全性や成長の見込みを評価する際に、ランキングを一つの指標として使用できます。

    トップランキングの代理店は、一般的に安定した業績や強固な市場地位を有していると認識されることが多い。

  • リクルーティングと雇用の参考:求職者や業界のプロフェッショナルは、ランキングを参考にして、どの代理店で働くことがキャリアにとって有益かを判断する材料として使用することができます。

  • 競争力の強化:ランキングは競争意識を刺激し、代理店間での競争を促進します。これにより、サービスの質の向上やイノベーションが促される可能性があります。

  • 認知度とブランディング:トップランキングに位置する代理店は、その認知度やブランドイメージが強化される効果があります。これにより、新規クライアントの獲得やビジネスの拡大につながる可能性が高まります。

しかし、ランキングはあくまで一つの指標であり、それだけで全ての代理店の実力や品質を評価することはできません。ランキングの背後にある評価基準や方法論を正確に理解し、他の情報源と組み合わせて利用することが重要です。

世界の広告代理店ランキング:変化を与える要素

世界の広告代理店ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。

テクノロジーの進化

デジタル広告、特にプログラムバティック広告やAIを活用した広告の普及は、広告代理店の役割やビジネスモデルを変えています。このテクノロジーを上手く取り入れ、最適化する代理店がリーダーシップを取る可能性が高まります。

クリエイティブの品質

優れたクリエイティブはブランドと消費者との強固な結びつきを生み出し、ランキングの向上に寄与することが多いです。

新規クライアントの獲得

大手ブランドや注目のスタートアップなど、重要なクライアントを獲得することは、代理店の収益や評価を大きく高める要因となります。

経済環境

世界的な経済の停滞や好況は、広告予算に影響を与え、結果的に代理店のランキングにも影響を及ぼします。

M&A(合併・買収)活動

代理店が他のエージェンシーや関連するビジネスを買収することで、業績やサービスの範囲が拡大し、ランキングにポジティブな影響を与える可能性があります。

競合との提携やM&A

業界内外からの新規参入、既存企業同士の提携やM&Aによって、ランキングの順位に大きな変動が生じることがあります。

業界の規制と政策

データプライバシーや広告に関する新しい規制や政策は、広告代理店のオペレーションや広告配信方法に影響を与える可能性があります。

地域的な変動

特定の地域や国での経済成長や市場の拡大は、その地域に強い代理店のランキングを向上させる要因となり得ます。

新しい広告メディアやプラットフォームの出現

SNSの急成長や動画広告の普及など、新しい広告メディアやプラットフォームが出現すると、これを効果的に活用する代理店が優勢となることがよくあります。

代理店のスペシャリゼーション

特定の業界や分野に特化したサービスを提供する代理店は、その分野での専門性や知識を活かして高い評価を受けることがあります。

人材の流動性

優れた人材を確保し、育成することは、代理店のクリエイティブ力や戦略的思考能力を高め、結果的にランキングに良い影響を与える要因となります。

これらの要因は、時代や環境に応じて変動するため、代理店は常に市場の動向を注視し、柔軟に対応する必要があります。

まとめ

2023年の世界の広告代理店ランキング時価総額TOP80を見ることで、現在の広告業界のトレンドや市場の動向が鮮明になることでしょう。テクノロジーの進化、地域的な変動、そして各代理店の戦略やスペシャリゼーションによってランキングは形成されています。これからの広告業界の動向を予測する手がかりとして、ランキングの変動やその背後にある要因を注視することは、業界関係者はもちろん、マーケティングやビジネスに従事するすべての人々にとって有益であることを確信しています。今後もこのダイナミックな変化を追いかけ、最新のトレンドを掴むことで、成功への道を切り開いていきましょう。

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