世界の経済が拡大する中で、国際貨物フォワーダー業界もその波に乗り、日々の業務量の増加と技術の進化を経験しています。繁栄する経済、技術革新、さらには地政学的な変動や環境に対する取り組みなど、多くの要因がこの業界のランキングを日々変動させています。
そんな中、2023年の最新の動向を捉え、国際貨物フォワーダー会社の時価総額に基づくランキングTOP85をお届けします。
世界の国際貨物フォワーダー会社ランキング:時価総額TOP85
下記の世界の国際貨物フォワーダー会社ランキング一覧は、本メディアReinforz Insightが各社の公表情報を元に集計している時価総額ランキングです。時価総額は、各企業の株式時価に基づいて算定されており、企業の実質的な価値を示す指標となります。
このランキングを元に分析すると、以下が特徴として見えてきます。
- 地域的分布
- アメリカが時価総額ランキングの上位に多く名を連ねています。
- 日本の企業も多く、ランキングの中段から下位にかけて特に多い。
- 中国や香港の企業も複数回登場しており、アジア圏の物流・運輸企業の存在感が伺える。
- 時価総額の大小
- トップ3の企業(DHL Group, DSV AS, Kuehne + Nagel International AG)は明らかに他の企業と比べて高い時価総額を持っている。
- ランキングが下がるにつれて、時価総額の差が縮小し、中段以降はさらにその差が小さくなっている。
- ランキングの下位になると時価総額が非常に小さく、最下位の企業では0となっている。
- 業界の傾向
- 上位企業は、世界的に知名度のある物流・運輸企業が多い。
- 一方、ランキングが下がるにつれ、地域的な物流会社や特定の領域に特化した運輸企業が見受けられる。
- その他の特徴
- 欧州の物流企業が上位に多く、特にドイツやデンマーク、スイスなどが目立つ。
- アジアの新興国からもいくつかの企業がランキングに名を連ねており、経済の成長と共に物流業界も拡大している様子が伺える。
以上の分析から、時価総額ランキングは、各国・地域の経済や物流産業の規模・成熟度を反映していると言えそうです。特に、アメリカや日本、中国などの大国はランキングにおいて多くの企業を持ち、その経済規模の大きさや物流の需要が高いことが示されています。
以下は、ランキングトップ5にランクインしている企業です。
1位:DHL Group(ドイツ)
DHLは、国際的な宅配便および物流サービスを提供する世界最大の企業の一つです。航空、海上、陸上、鉄道を利用した国際的な輸送ネットワークを持っています。
多岐にわたる物流サービス、高度な技術基盤、世界中での確固たる地位、そして効率的なオペレーションがDHLの成功の要因となっています。
2位:DSV AS(デンマーク)
DSVは、国際的な輸送および物流ソリューションを提供するグローバル企業です。
積極的なM&A戦略、広範なグローバルネットワーク、および独自の技術ソリューションにより、業界のリーダーとしての位置を確立しています。
3位:Kuehne + Nagel International AG(スイス)
Kuehne + Nagelは、国際的な物流と輸送サービスを提供する大手企業の一つです。
この企業は、顧客のニーズを満たすための多様なサービスの提供、高い運営効率、そしてグローバルネットワークの構築に注力しています。
4位:Expeditors International of Washington Inc(アメリカ)
Expeditorsは、国際的な輸送、物流、および供給チェーン管理ソリューションを提供するグローバル企業です。
高度な技術インフラ、独自の物流ソリューション、世界中の拠点ネットワークを持ち、顧客との強力な関係を構築しているためです。
5位:日本郵船(日本)
日本郵船は、船舶輸送を主とする総合物流企業であり、多岐にわたる業種でのサービスを提供しています。
同社は、豊富な経験、国内外の大規模なネットワーク、そして多岐にわたるサービスラインナップを持つことで、業界内でのトップの位置を維持しています。
これらの企業は、グローバルでの大規模なオペレーション、先進的な技術、および広範なサービスの提供を通じて、物流業界でのリーダーシップを築いています。
【世界の国際貨物フォワーダー会社ランキング:時価総額TOP85リスト】
※対象となる国際貨物フォワーダー会社として「上場企業」かつ「国際貨物フォワーダー業を展開している企業」
※対象決算期はデータ入手が可能な直近決算期を採用
※時価総額は記事執筆時点(2023年7月27日)の株価および為替レートで算出
ランキング | 企業名 | 所在国 | 決算期 (決算期) | 時価総額(億円) |
1 | DHL Group | ドイツ | 2022/12 | 78,628 |
2 | DSV AS | デンマーク | 2022/12 | 59,815 |
3 | Kuehne + Nagel International AG | スイス | 2022/12 | 45,839 |
4 | Expeditors International of Washington Inc | アメリカ | 2022/12 | 25,294 |
5 | 日本郵船 | 日本 | 2023/03 | 17,432 |
6 | C.H. Robinson Worldwide Inc | アメリカ | 2022/12 | 15,235 |
7 | Full Truck Alliance Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 10,346 |
8 | XPO Inc | アメリカ | 2022/12 | 10,122 |
9 | Landstar System Inc | アメリカ | 2022/12 | 9,694 |
10 | NIPPON EXPRESSホールディングス | 日本 | 2022/12 | 7,402 |
11 | Agility Public Warehousing Co | クウェート | 2022/12 | 7,236 |
12 | Sinotrans Ltd | 中国 | 2022/12 | 6,267 |
13 | Mainfreight Ltd | ニュージーランド | 2023/03 | 5,991 |
14 | Forward Air Corp | アメリカ | 2022/12 | 4,065 |
15 | Hub Group Inc | アメリカ | 2022/12 | 3,743 |
16 | 上組 | 日本 | 2023/03 | 3,718 |
17 | 三菱倉庫 | 日本 | 2023/03 | 2,846 |
18 | Kerry Logistics Network Ltd | 香港 | 2022/12 | 2,686 |
19 | CTS International Logistics Corp Ltd | 中国 | 2022/12 | 2,283 |
20 | 西日本鉄道 | 日本 | 2023/03 | 1,943 |
21 | PJSC TransContainer | ロシア連邦 | 2021/12 | 1,842 |
22 | Aramex PJSC | アラブ首長国連邦 | 2022/12 | 1,587 |
23 | Freightways Group Ltd | ニュージーランド | 2022/06 | 1,289 |
24 | Allcargo Logistics Ltd | インド | 2023/03 | 1,208 |
25 | Expolanka Holdings PLC | スリランカ | 2023/03 | 1,118 |
26 | 鴻池運輸 | 日本 | 2023/03 | 1,003 |
27 | Gemadept Corp | ベトナム | 2022/12 | 973 |
28 | John Keells Holdings PLC | スリランカ | 2023/03 | 863 |
29 | Eimpskipafelag Islands | アイスランド | 2022/12 | 854 |
30 | Farglory FTZ Investment Holding Co.,Ltd. | 台湾 | 2022/12 | 793 |
31 | COSCO SHIPPING International (Hong Kong) Co Ltd | 香港 | 2022/12 | 711 |
32 | LBC Express Holdings | フィリピン | 2022/12 | 700 |
33 | Shenzhen Prolto Supply Chain Management Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 610 |
34 | PT Samudera Indonesia Tbk | インドネシア | 2022/12 | 550 |
35 | 日新 | 日本 | 2023/03 | 515 |
36 | Radiant Logistics Inc | アメリカ | 2022/06 | 480 |
37 | エーアイテイー | 日本 | 2023/02 | 434 |
38 | Dimerco Express Corp | 台湾 | 2022/12 | 430 |
39 | T3EX Global Holdings Corp. | 台湾 | 2022/12 | 421 |
40 | Shanghai Ace Investment & Development Co Ltd | 中国 | 2022/12 | 381 |
41 | Transimex Corp | ベトナム | 2022/12 | 367 |
42 | Triple i Logistics PCL | タイ | 2022/12 | 356 |
43 | GDEX Bhd | マレーシア | 2022/12 | 316 |
44 | Hanjin Transportation Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 303 |
45 | 内外トランスライン | 日本 | 2022/12 | 286 |
46 | Hayleys PLC | スリランカ | 2023/03 | 253 |
47 | Sebang Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 249 |
48 | Accel SAB de CV | メキシコ | 2021/12 | 239 |
49 | Clasquin Group SA | フランス | 2022/12 | 237 |
50 | Chung Lien Co Ltd | 台湾 | 2022/12 | 226 |
51 | WICE Logistics PCL | タイ | 2022/12 | 211 |
52 | Aitken Spence PLC | スリランカ | 2023/03 | 198 |
53 | TASCO Bhd | マレーシア | 2022/03 | 194 |
54 | Lancer Container Lines Ltd | インド | 2023/03 | 172 |
55 | Orian SH.M. Ltd | イスラエル | 2022/12 | 162 |
56 | Swift Haulage Bhd | マレーシア | 2022/12 | 129 |
57 | KCTC Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 127 |
58 | ケイヒン | 日本 | 2023/03 | 116 |
59 | Dongbang Transport Logistics Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 106 |
60 | YTO International Express and Supply Chain Technology Ltd | 香港 | 2022/12 | 106 |
61 | Singapore Shipping Corp Ltd | シンガポール | 2023/03 | 103 |
62 | FM Global Logistics Holdings Bhd | マレーシア | 2022/06 | 95 |
63 | Soonest Express Co Ltd | 台湾 | 2022/12 | 90 |
64 | Leo Global Logistics PCL | タイ | 2022/12 | 78 |
65 | Intergis Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 78 |
66 | Hansol Logistics Co Ltd | 大韓民国 | 2022/12 | 76 |
67 | Tiger Logistics (India) Ltd | インド | 2023/03 | 67 |
68 | Asia Energy logistics Group Ltd | 香港 | 2022/12 | 65 |
69 | Bremer Lagerhaus-Gesellschaft | ドイツ | 2022/12 | 53 |
70 | GKE Corp Ltd | シンガポール | 2022/05 | 49 |
71 | Vibrant Group Ltd | シンガポール | 2022/04 | 45 |
72 | NCL International Logistics PCL | タイ | 2022/12 | 43 |
73 | Dafeng Port Heshun Technology Co Ltd | 香港 | 2022/12 | 42 |
74 | Ever Harvest Group Holdings Ltd | 香港 | 2022/12 | 41 |
75 | TransOcean Holdings Bhd | マレーシア | 2022/12 | 37 |
76 | タカセ | 日本 | 2023/03 | 32 |
77 | Aspinwall and Co Ltd | インド | 2023/03 | 31 |
78 | Janco Holdings Ltd | 香港 | 2022/12 | 26 |
79 | See Hup Consolidated Bhd | マレーシア | 2022/03 | 23 |
80 | Chasen Holdings Ltd | シンガポール | 2023/03 | 19 |
81 | Tri-Mode System (M) Bhd | マレーシア | 2022/12 | 17 |
82 | PT Indah Prakasa Sentosa Tbk | インドネシア | 2022/12 | 16 |
83 | ABC India Ltd | インド | 2023/03 | 7 |
84 | PT Dewata Freight International Tbk | インドネシア | 2022/12 | 5 |
85 | Rajasthan Petro Synthetics Ltd | インド | 2023/03 | 0 |
出典:各社プレスリリースなど
世界の国際貨物フォワーダー会社ランキングの有用性
国際貨物フォワーダー会社のランキングの有用性を考慮する際、以下の点が挙げられます。
- 市場の認識: このランキングを見ることで、どの企業が市場でリーダーとしての位置を占めているかを把握することができます。これは、新しい市場参入者や投資家にとって価値のある情報源となります。
- ベンチマーキング: 既存のフォワーダー企業は、自社のパフォーマンスや市場価値をランキングに基づいて他の企業と比較することができます。
- ビジネス戦略の策定: 企業はランキングを参考にして、自社の地域的なプレゼンスやサービスオファリングを強化するための戦略を策定することができます。
- 顧客の信頼構築: 上位ランクに位置する企業は、その認識を活用してブランドの価値を向上させ、新しい顧客を獲得するための信頼を構築することができます。
- 投資判断の参考: 投資家やアナリストは、ランキングを参考にして各企業の市場での競争力や将来の成長ポテンシャルを評価することができます。
- 業界の動向の理解: ランキングの変動や新規参入者、落ちていく企業などを通じて、業界の動向や技術の変化、市場のニーズなどを把握することができます。
- サービスの選定: 顧客はランキングを参考にして、どのフォワーダーが信頼できるか、また自分のニーズに合ったサービスを提供しているかを判断する材料として利用することができます。
しかし、ランキングだけでは完全な情報を得ることはできません。ランキングは一般的な市場の認識や企業の規模を示すものですが、特定のニーズや要件に合わせたサービスの質や実際のパフォーマンスは、より具体的な研究や顧客のレビューなどを参考にしなければなりません。
総じて、国際貨物フォワーダー会社のランキングは、業界の全体的な動向や市場のリーダーを理解するための有用なツールとして考えることができます。
世界の国際貨物フォワーダー会社ランキング:変化を与える要素
世界の国際貨物フォワーダー会社ランキングに変化を与える要素は、以下の通りです。
経済の動向
全体的な経済の成長や不況が、貿易の量や需要に大きな影響を与えます。経済が好調な場合、輸出入の需要が増加し、フォワーダーの業務量も増える可能性が高まります。
技術の進化
デジタル技術やAIの進化により、サプライチェーンや物流の効率が向上することが期待されます。先進的な技術を導入する企業は、競争上の優位性を得る可能性があります。
法規制の変更
貿易関連の法規制や関税、環境基準などの変更は、国際物流のコストや手続きに影響を与えます。
インフラの発展
港や空港、鉄道、道路などのインフラが発展すると、物流の効率が向上します。これにより、特定の地域やルートに特化したフォワーダーが利益を上げることができるかもしれません。
サービスの質
高品質なサービスやカスタマーサポートを提供するフォワーダーは、顧客からの評価が高まり、ビジネスの拡大が期待されます。
戦略的な提携や合併
大手フォワーダーが他の企業と提携や合併を進めることで、市場シェアを拡大し、ランキングに影響を与える可能性があります。
価格競争力
物流業界は価格競争が激しい業界の一つです。価格競争力を持つフォワーダーは、多くの顧客を獲得し、業績を伸ばすことができます。
地政学的な変動
戦争、政治的な不安定性、自然災害などの地政学的な変動は、特定の貿易ルートや市場へのアクセスを制限する可能性があり、ランキングに影響を与える可能性があります。
環境への取り組み
環境保護や持続可能な物流に取り組むフォワーダーは、環境に対する意識が高まる現代社会での評価やビジネスチャンスを獲得する可能性があります。
地域的な専門性
特定の地域や国に特化したサービスを提供するフォワーダーは、その地域の貿易が活発化することでランキングが向上する可能性があります。
これらの要因の中には、短期的な影響を及ぼすものと長期的な影響を及ぼすものが含まれており、フォワーダー各社の戦略や対応によって、ランキングに与える影響も異なります。
まとめ
2023年の国際貨物フォワーダー会社のランキングを通じて、業界の最前線での動きや競争の激しさを目の当たりにしました。技術の進化や地政学的な変動、環境問題への対応など、多岐にわたる要因がランキングに影響を与えていることが確認できます。
この業界のプレイヤーたちは、常に変わる環境に柔軟に対応しながら、世界の物流を支えています。今後も、国際貨物フォワーダー業界の動向から目が離せません。