モビリティ×デジタルがもたらす新たな収益源の探索:自動運転・EV・SaaS・プラットフォームを俯瞰した損保企業の新規事業ポートフォリオ構築支援

クライアント概要

国内大手損害保険会社。
自動車保険を中核に、モビリティ関連の保険商品・サービスを幅広く展開している。近年の自動運転技術、EVシフト、モビリティサービス化(MaaS)、デジタルプラットフォームの拡大を受け、従来の「保険」ビジネスに加えて、モビリティ領域におけるデジタルサービス事業の創出を中長期戦略の柱の一つに据えている。


背景・課題

モビリティを取り巻く環境は、自動運転、EV、コネクテッドカー、サブスク・シェアリング、モビリティプラットフォームなど、多様なプレイヤーとテクノロジーが複雑に絡み合う構造へと変化していた。
その中でクライアントは、

  • どの領域にどのようなポジションで参入すべきか

  • 既存の自動車保険・モビリティ関連ビジネスと、どのようにシナジーを生み出すか

  • 保険会社としての信用・データ・顧客基盤を活かしつつ、どのようにデジタル事業を設計するか

といった論点に直面していた。

特に、以下の点が課題となっていた。

  • モビリティ領域のトレンド情報は個別には存在するものの、全体像として整理されておらず、戦略的な「地図」がない

  • 自動運転/EV/SaaS/プラットフォームなど、どの領域が自社にとって魅力度が高いかを定量・定性の両面から比較できていない

  • 既存ビジネスとの親和性や、社内アセット(顧客基盤・データ・ブランドなど)との活かし方を踏まえた事業コンセプト・方向性が明確でない

  • 新規事業のシーズは点在しているものの、中長期を見据えた「事業機会ポートフォリオ」として設計できていない

こうした状況から、モビリティ領域の構造理解と新規事業開発の両面に知見を持つパートナーとして、支援を開始。


具体的なアプローチ・ご支援内容

Reinforzは、「全体像の可視化」と「有望領域の絞り込み」を軸に、クライアントと共創しながら事業機会の検討と方向性の具体化を行った。

モビリティ領域のトレンド調査と構造整理

  • 自動運転、EV、コネクテッドカー、モビリティSaaS、モビリティプラットフォームなど、主要テーマごとに市場構造・プレイヤー・バリューチェーンを整理
  • 国内外の先進事例、テック企業/スタートアップ/OEM/プラットフォーマーの動向を俯瞰
  • 保険会社視点での「価値が生まれやすい接点」を抽出

事業機会の全体像(オポチュニティマップ)の策定

  • モビリティのライフサイクル(企画・開発・販売・利用・保守・廃車)に沿って、提供可能なデジタルサービスアイデアを整理
  • B2C、B2B、B2B2Cなど、ビジネススキーム別に事業機会をマッピング
  • クライアントの既存事業・顧客接点・データアセットを重ね合わせた「自社ならではのポジション」を可視化

市場魅力度・自社親和性にもとづく有望領域の選定

  • 各事業機会候補について、
    • 市場規模・成長性
    • 競争環境・参入障壁
    • 既存ビジネスとのシナジー・収益性
    • 自社アセット(顧客基盤・データ・ブランド・規制対応力)との親和性を多面的に評価するスコアリングフレームを構築
    • 定量・定性の両面から評価を行い、優先的に取り組むべき有望領域を抽出
  •  事業の方向性・コンセプトの具体化
    • 選定された有望領域ごとに、想定ターゲット、提供価値、サービスコンセプトを整理
    • 将来的な保険商品との連携や、リスクデータの活用なども視野に、保険会社ならではの差別化要素を明確化
    • 短期(実装しやすいサービス)、中期(新たな収益柱候補)、長期(将来の事業ドメイン)といった時間軸でポートフォリオ化

 事業検討プロセスと次フェーズへの示唆整理

  • 経営層・関連部門への説明を前提としたアウトプット(オポチュニティマップ・評価結果・方向性案)を体系的に整理
  • 次フェーズで実施すべき検討(PoC候補テーマ、外部パートナー候補の方向性、必要な社内体制・スキルなど)を明文化

成果

本プロジェクトを通じて、クライアントはモビリティ領域におけるデジタル事業機会を「点」ではなく「地図」として捉えることが可能になり、戦略的な判断の起点を得ることができた。

  • モビリティ領域のトレンド・プレイヤー・事業構造が体系的に整理され、経営・事業部門が共通言語で議論できる基盤が整備された

  • 自動運転/EV/SaaS/プラットフォームなどの各テーマについて、市場の魅力度と自社親和性にもとづく優先領域が明確化

  • デジタル事業として取り組むべき方向性が具体的なコンセプトレベルまで落とし込まれ、次期中期計画における新規事業候補として位置づけられる案件群が抽出された

  • 事業機会の評価フレームが社内に残ることで、今後も新しいトレンドやテーマが出てきた際に、自社で継続的に事業機会を評価・更新できる体制づくりにつながった

結果として、クライアントは「何をやるべきか分からない」状態から、「どの領域に、どの順番で、どのようなコンセプトで挑むか」が見える状態へと進み、モビリティ領域のデジタル事業戦略を具体的に描き出すことができた。

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