リーンスタートアップで新規事業を立ち上げる魅力は、低コスト&短納期でプロジェクトを進められる点です。大手企業が活用した事例も多数存在しており、ビジネスに有効な手段として用いられています。

また、顧客が求める商品サービスのニーズを効率よく分析できるため、無駄な開発コストが発生しにくい部分も特徴です。

本記事ではリーンスタートアップの手順に触れつつ、業績が右肩上がりの事業として急成長した7社の成功事例を紹介します。

リーンスタートアップとは?

リーンスタートアップはMVP(必要最低限の機能だけを備えた試作品)を開発し、顧客からのフィードバックをもらいながら事業を成長させる経営手法です。

事業計画時に発生した仮説を立証するだけの試作品を活用し、人件費と工数を削減しながらスムーズにビジネスへ移行できる点がメリットといえます。

市場での顧客反応を低コストで確認できるため、資金投入をする前の方向転換やプロジェクト撤退も比較的容易となります。

低資金からの事業立ち上げに適しており、無駄を省いた筋肉質なビジネスを目指したい方におすすめです。

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リーンスタートアップにおける4つのプロセス

リーンスタートアップは4つの手順に分類されます。

  1. 構築→アイデアから仮説を立ててMVPを作成する
  2. 計測→少人数の顧客からフィードバックをもらう
  3. 学習→仮説に対しての結果を分析する
  4. 再構築→学習で得た成果をもとに再構築する

通常の事業立ち上げと異なるのは、必要な機能だけで開発されたMVPを使用する点です。商品サービスを実際に使用してもらうことで、顧客が必要とするニーズ分析に繋がる部分も魅力といえるでしょう。

本記事では、リーンスタートアップを構成している4つのステップを解説します。

構築

想定される顧客ニーズを元にアイデアを出し、仮説を立てます。その後、仮説を立証する「MVP」の開発に着手しますが、必要最低限の機能のみ搭載することを意識しましょう。

通常の事業運営では、構築段階でかかるコストが全体の上位を占めます。しかし、リーンスタートアップでは必要な機能以外をそぎ落としたMVPを活用。その分、工数と費用が大幅に削減されます。

顧客満足に繋がりそうな機能を盛り込むのではなく、商品サービスの機能を絞って素早く低コストで作ることがポイントです。

計測

アーリーアダプター(流行や口コミに敏感な早期購入層)へコンタクトを取り、実際の使用を通してフィードバックをもらいます。SNSで影響力を持つインフルエンサーと協力することも効果的です。

仮説に対しての結果を計測できるため、顧客目線の商品サービスを作る上で重要なステップとなります。思いもよらぬ要素にニーズが集まる場合も想定されるので、データが充分に集まるまで計測を続けましょう。

顧客フィードバックと仮説が噛み合わない場合、次のステップで対処できるため問題ありません。

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学習・改善

計測によって得られたデータを考慮し、顧客が求めるニーズを満たすための改善作業を行います。仮説から結果が大幅にズレていた場合、事業の方向転換や早期撤退で損失を最小限に抑えましょう。

リーンスタートアップはビジネスの失敗も考慮されており、学習によって得た知識と経験を次に活かすことも重要だといわれています。失敗を恐れず挑戦し、改善活動により事業の成功確率を引き上げていきましょう。

再構築

思うような成果が得られない場合、構築のサイクルに戻って再構築をおこないましょう。

計測で得られたデータを参照しながら仮説とズレていたニーズを修正し、顧客に沿った事業への方向転換が可能となります。

革新的なアイデアは、顧客からのフィードバックを改善し続けて生まれるものです。莫大な資金や堅実な事業計画がなくとも、リーンスタートアップを活用すれば事業立ち上げの力になってくれるでしょう。

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リーンスタートアップの成功事例7選

今では多くの人が利用するYouTubeやInstagramも、リリース当初は別の使われ方をしていました。事業計画時の仮説からズレていた場合も、顧客と誠実に向き合うことで急成長を遂げた企業も少なくありません。

事業立ち上げという大きなプロジェクトを抱え、先行きの見えない不安を感じる人も多いでしょう。しかし、大手企業や人気サイトも失敗を重ねながら今の地位を築き上げています。

本記事ではリーンスタートアップを活用し、急成長を遂げた企業を7社紹介します。仮説からズレた場所にニーズがあった事例も解説しますので、ぜひチェックしてみてください。

トヨタ

トヨタ日本の製造現場にLean(無駄のない)の考え方を定着化させた第一人者です。

必要なモノを必要なだけ生産する「JIT方式(ジャストインタイム)」により、大量生産のムダをとことん削除しました。

  • 本来発生しなかった作業
  • 過剰に抱える在庫
  • 不適合品となる製品

また運転に対して不満を持っているユーザーにアンケートを取り、ナビゲーションシステムの試作品を提供しながら改善を繰り返した事例も残っています。

試作品によって現場の意見を計測したからこそ見つかった改善点であり、研究室で議論を重ねることでは見つからなかったニーズといえるでしょう。

Instagram

Instagramはもともと「Burbn」という名称で開発され、自分の現在地を画像付きで共有するアプリでした。位置情報の共有は利用者のニーズとして求められなかった反面、写真のシェア率が高いことに気づきます。

アプリ名メインの機能反応
Burbn現在地のシェアニーズと不一致
Instagram画像のシェアニーズと合致

利用者の反応をみながら改善を行い、「画像」に主軸を置いたアプリへと方向転換することで大ヒット。市場に投入するまで見つけられなかった「写真共有」のニーズに注目し、画像の優先度を上げた結果の成功といえます。

Yahoo!

あらゆるジャンルの事業で成功を収めているYahoo!も、事業立ち上げ高速化のためにリーンスタートアップを活用しています。

「Yahoo!ファイルマネージャー」と呼ばれるアプリは、Android標準のファイル管理機能に不満を抱くメンバーの意見から誕生しました。あえて完成形を作らず走り出し、利用者からの反応を取り入むことでユーザー目線のアプリ開発を成功させています。

リーンスタートアップはベンチャー企業のみならず、大手企業でも積極的に採用されている手法といえるでしょう。

食べログ

利用者が飲食店に5段階評価を付けるシステムが特徴の「食べログ」。膨大なデータベースに情報が蓄積され、好みにあわせた飲食店が探せる人気サービスです。

食べログはもともと開発者だけでデータを打ち込んでおり、利用者も少ない小規模サービスでした。ユーザーが自由に書き込める掲示板機能からの要望で改善を行い、今のスタイルに落ち着いたといわれています。

利用者の増加に比例し、店舗からの広告収入で売り上げも増加。登録された店舗は執筆時点で約84万という驚異的な数字を叩き出しています。

YouTube

動画投稿プラットフォームのトップに君臨するYouTubeですが、実はマッチングアプリとして開発されました。現在とは異なる用途として活用されており、事業の方向転換が功を奏して大ヒットした例といえるでしょう。

本来はプロフィール紹介用の動画を投稿するシステムでしたが、男女の出会いとは無関係の動画投稿に人気が集まったことに運営が注目しました。

ニーズを元に仮説を立てた「男女の出会い」から「動画プラットフォーム」に方向転換した結果、いまでは知らぬ者のいない革新的なサービスへと進化を遂げています。

Techpit

Techpitは実際のサービスを作りながらプログラミングを学べるサービスです。基礎スキルではなく、その先にある商品サービスの作り方を知りたいニーズに狙いを定めました。

  • SNSサービス
  • マッチングアプリ
  • ゲームアプリ

多種多様なサービスが作れるプログラミングは幅広いニーズに答えられる反面、利用者が望まぬ教材を作る可能性も考えられます。

そこで開発者は本当に必要だと思う内容を絞り込むため、学習者側ではなく講師側の意見を反映した教材を用意しました。このとき、利用者の状況に応じて、求められる教材を徐々に準備するリーンスタートアップの考え方を取り入れたのです。

現在はメディア露出も徐々に増え、企業へのプログラミング研修も多数導入している人気サービスとして成長を遂げています。

シェアグリ

シェアグリは農業に特化したマッチングアプリです人手が足りなくなる農繁期のタイミングに募集をかけ、仕事を探している派遣外国人とマッチングさせることで成功を収めています。

農家の方へ飛び込み営業を行い、LINEを使って手作業で連絡をおこなっていました。システムの完成を待たず仮説検証が完了したため、農作業マッチングのニーズを確認してから開発に専念できたといえるでしょう。

また、実装に時間の掛かるメッセージ機能をそぎ落とし、チャット機能のみを搭載する方向にシフトチェンジ。アプリ作成の立案から約3週間で開発を完了させた点もポイントといえます。

リーンスタートアップは時代遅れ?

リーンスタートアップは、どんな時代でも通用する経営手法です。低資金かつ短納期で事業を進められるため、ベンチャー企業のみならず大手企業でも採用されています。

その一方、リーンスタートアップは時代遅れと言われる原因が3つ存在します。

  • SNSによる情報拡散力
  • 時代に沿ったビジネス手法の増加
  • 顧客が商品サービスを見切る速度が早くなった

SNSでネガティブな評価が拡散されてしまえば、事業としての信用問題に繋がりかねません。商品サービスを徐々にアップデートしていく手法に対し、時代背景と噛み合わないことから、時代遅れと感じる人も多いようです。

以上を踏まえると、軽はずみにフィードバックを促すのではなく、マイナス評価に対するケアが大切になってくるといえるでしょう。試作品を試してもらう人数を絞り、クローズドな環境を整えることが有効打に繋がります。

リーンスタートアップが時代に逆光していると言われる反面、この手法が輝く業界も多数存在します。

  • オーダーメイドジャンル
  • 市場が未知数のジャンル
  • 大手企業が参入していないジャンル

とくに多種多様なサービスが存在するWeb業界では、仮説検証によってブルーオーシャン市場を見つけやすくなる点も魅力です。

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リーンスタートアップで成功している事例も多い!

リーンスタートアップは大成功した企業も採用しており、今でも通用する効果的な手法といえます。

  • 低資金でスピーディーな事業立ち上げが可能
  • YouTubeやInstagramもリーンスタートアップで成功を収めている
  • 使用する際はSNSなどの情報拡散力をケアする必要がある

リーンスタートアップは顧客の反応をみながら事業を進められるため、真のニーズに沿ったビジネスを展開できる点が魅力です。社内アイデアをすぐさま形にできるテンポ感の良さも、運用しやすいポイントといえるでしょう。

すべてが計画通りにいかないのは、ビジネスの難しさであり面白い部分です。市場の動きが読めずに動けない時は、リーンスタートアップ手法を運用しながら事業を進めていくことも視野に入れましょう。

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