MVP開発は、コストを抑えながら効率よく商品サービスを作り出すことに優れています。
開発サイクルが他の開発手法より短く、市場の変化が激しいIT分野でも力を発揮できる点が魅力です。
本記事ではMVP開発の利点や特徴に触れつつ、具体的な手法について紹介します。開発プロセスも一つずつ解説するので、ぜひチェックしてみてください。
MVP開発とは?
MVP開発とは、商品ニーズの多様化に対応するため生み出された開発手法です。低コスト・短納期で商品開発できる上、市場の変化に対応しやすいのが特徴。
規模の大きな開発に不向きである反面、市場や顧客に適応しながら小規模の開発を繰り返す際に適した手法です。
資金が少ないベンチャー企業でも積極的に採用され、フットワークの軽いビジネスを目指したい方におすすめ。ここではMVP開発とはどのような手法かなど、基礎知識を振り返っていきましょう。
MVPの意味は「必要最低限の機能を備えた試作品」
MVP(Minimum Viable Product)とは、商品開発時に顧客の悩みや課題に仮説を立て、ニーズを満たせる最小限の機能に絞って開発を進める手法です。
商品サービスの機能を限定して無駄を省くことで、早い段階で市場投入できるメリットを持ちます。
低コストかつ短納期で開発しつつ、顧客からのフィードバックを参照して改善するため、市場ニーズに対応しやすい点も魅力です。
リーンスタートアップと相性がよい
リーンスタートアップは、市場の意見を反映させながらビジネスを成長させる経営手法です。MVP開発と組み合わせることで相乗効果を生むため、相性のよい関係性といえるでしょう。
リーンスタートアップでMVP開発を活用するおもなメリットは3つです。
- 開発費用や開発工数の削減
- 市場や顧客が求めるニーズの把握
- 開発スピードによる先行者利益
コスト削減はもちろんのこと、開発速度を活かした先行者利益を得られる点も魅力といえるでしょう。
しかし、MVP開発によるデメリットも存在します。
- 大規模な商品サービスには不向き
- 検証を重ねるごとに事業の方向性を見失いやすくなる
MVP開発を大規模商品サービスで運用する場合、試作品によるニーズ検証にコストが掛かりすぎるため不向きです。
また、商品サービスが顧客の影響を受けやすく、中途半端な製品になるリスクも避けられないでしょう。
それぞれのメリット・デメリットについて詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
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MVP開発と他の開発手法との違い
開発手法は商品サービスによって向き不向きが存在し、開発の進め方や運用する目的もそれぞれ異なります。
MVP開発は作業工程が少ないため、スピーディーな開発を得意としますが、規模が大きく保守管理の必要なシステムには不向きです。
本記事では、MVP開発以外に2つの開発方法を解説します。
通常のソフトウェア開発
通常、ソフトウェア開発は致命的なバグやエラーを避けるため、開発工程を増やして長期的に開発されます。
開発納期や開発費といったコストが掛かる反面、スケジュールに余裕を持たせた品質重視の開発が可能です。
プロトタイプという試作品も作成しますが、量産前の最終チェックとして扱われ、MVPとは使用目的が異なります。
設計段階で必要な機能を盛り込んでスケジュールを立てられるため、大規模なシステム開発で運用しましょう。
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アジャイル開発
アジャイル開発は、システム全体ではなく機能ごとに開発を進める開発手法です。
優先度の高い機能から作り込むことで開発速度を上げ、仕様変更にも対応しやすい特徴を持ちます。
リーンスタートアップの考え方と似ていますが、使用する目的や判断基準が異なるため、ビジネスによって使い分けることが重要です。
手法名 | 使用目的 | 判断軸 | 重要視するポイント |
リーンスタートアップ | 市場や顧客ニーズの調査 | 仮説に対しての検証結果 | 市場ニーズ |
アジャイル開発 | 優れた品質を持つ商品開発 | 開発の進捗スピード | 商品品質 |
リーンスタートアップが市場ニーズによって改良を重ねるのに対し、アジャイル開発は商品機能のテスト結果によって品質改善をおこないます。
開発サイクルを機能ごとに分けて回転率を上げているため、システムの継続的なアップデートにも適した開発手法といえるでしょう。
リーンスタートアップとの違いや関係性について詳しく知りたい方は、こちらの記事もチェックしてみてください。
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ウォーターフォール開発
ウォータフォール開発は、通常のソフトウェア開発で使用される開発手法です。通常のソフトウェア開発で使われることが多く、開発工程は6つと多めに設定されています。
- 要件定義
- 設計
- 開発
- テスト
- 納品
- 運用保守
滝のように上から工程を進めるため工数が可視化されやすく、スケジュール管理が容易となるメリットを持ちます。
しかし、1つ前の工程が終わらないと開発が進まないため、アジャイル開発のような開発スピードは期待できません。
また、仕様変更に対して脆く、変更に対しての修正が完了するまで開発がストップするデメリットも存在します。
ウォータフォール開発は予測型の開発と呼ばれており、長期的に安定したシステムが求められる分野で活躍するでしょう。
MVP開発の代表的な5つの手法
MVP開発のおもな手法は、検証できる仮説やコスト面で5つに分類されます。
手法名 | 検証できる仮説 | コスト | 製作物の有無 |
コンシェルジュ | 商品価値 | 低 | 無し |
オズの魔法使い | 商品価値 | 中 | 有り |
LP(ランディングページ) | 市場ニーズ | 低 | 有り |
プレオーダー | 市場ニーズ | 高 | 有り |
デモ動画 | 市場ニーズ | 中 | 有り |
プログラミングが書けるエンジニアが不在の場合でも、一部の手法を使えばMVP開発は可能です。
本記事では、5つの手法について具体的な利用方法を紹介します。
コンシェルジュ
コンシェルジュは、商品サービスとして提供する予定のビジネスを、システムを使わずに手動で提供する手法です。
ビジネスアイデアが浮かんでもシステムが組めない場合、試作品の代わりに自分が動くことでMVPの代行をします。
システムを初めとする製作物の必要もなく、開発コストをほぼゼロに抑えられる点がメリットです。
アイデアを持って市場に売り出すことで、利用してくれる顧客がいるか判断できるため、コストを掛けずに市場ニーズを調査できます。
オズの魔法使い
オズの魔法使いは、Webサイトなどの見た目だけを完成させて公表することで、完成してるように見せかける手法です。
注文システムなどを未実装で完成させ、注文が入った場合は手動で処理します。
自動化できる部分を手動にしているため、システム開発にコストが掛かりません。開発初期の費用を軽減できるMVPといえるでしょう。
コンシェルジュと似ていますが、完成品と同じ見た目の作成物が必要になるため、コストが若干必要となります。
LP(ランディングページ)
LP(ランディングページ)はサービスが完成する前にWebページを作成し、告知や登録を促す手法です。
リリース前にユーザーからの声が届くため、前もって商品ニーズの検証ができます。
アンケートを実施して意見を吸い上げたり、事前登録を促して顧客の情報を集めたりすることで、どのターゲット層に刺さるのか予測することも可能です。
大掛かりなWebサイトを構築せずとも、ページ単位で充分な効果が得られるため、開発コストは低くなります。
プレオーダー
プレオーダーは、リリース前に購入者を募集する手法です。
顧客が金銭を払って正式に購入するため、本当に使いたい人がどの程度いるのかテストする際に役立ちます。
Webサイトやシステムが構築できない場合、クラウドファンディングなどを活用することで容易にプレオーダーを行えるでしょう。
ただし、規模が大きくなるほど返礼品の費用も増えるため、コストが割高になる可能性に注意してください。
デモ動画
デモ動画は、リリース前に使用用途や商品イメージを動画で紹介する手法です。
テキストではなく映像を使うことで、直感的に商品のよさが伝わる利点があります。
前述したLPと似ていますが、動画を使用する性質上、デザインをほぼ完成させる必要があるのがネックです。
言葉だけではよさが伝わりにくい商品サービスの場合、開発工数を割いてデモ動画を採用することも視野にいれましょう。
MVP開発の進め方
MVP開発は製品ではなく、ビジネスを成功させる手段として開発されます。
欲を出して機能を盛り込まず、必要最低限の機能を持たせることに意識を向けましょう。
また、開発部門と他部門の方向性を揃えておくことも重要です。完璧な製品よりも低コストで要件を満たす製品が求められるため、意識のすり合わせをしておくことがトラブル回避に繋がります。
ここでは基本的なMVP開発のプロセスに加え、プログラミングの知識なしでも使えるツールを紹介します。
基本的なプロセス
MVP開発の基本的なプロセスは5つです。
- 想定する顧客ニーズに仮説を立てる
- 仮説を立証するための機能を必要最低限に絞る
- MVP(必要最低限の機能を備えた試作品)を開発する
- 顧客に使用してもらいフィードバックを得る
- 検証結果を元にして改善・再実装する
MVP開発は通常の開発手法と比べて顧客ニーズを中心に進めるため、コミュニケーションコストが多くかかります。理想としてはメンバーを厳選し、意思疎通の負担を減らせると望ましいでしょう。
また、必要な機能を実装した後、仮設検証できるレベルであれば、未完成でも次工程に移ることが重要です。
顧客からのフィードバックを元に改善を行うため、仮設検証までの時間をなるべく早めることを意識しましょう。
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MVP開発をサポートする3つのツール
MVP開発で作成するWebサイトやアプリケーションは、プログラマーやエンジニアが不在でも開発可能です。
本記事では、プログラミングコードが書けない方向けに、Web開発のサポートツールを3つ紹介します。
strikingly
strikinglyは数時間でWebサイトが作成できるツールです。プログラミングの知識がない人でも扱えるよう、プログラミングコードは使用しません。
画面を直接クリックして直感的に編集し、すぐさまWeb上に公開できます。
Eコマースにも対応しており、物販サービスに必要なシステムが簡単に搭載可能です。
解析ツールや会員登録機能も作成できるため、ビジネスアイデアを既に持っている方はMVP開発の即戦力になってくれるでしょう。
webflow
Webflowは複雑な動きを加えたWebサイトが構築できるツールです。
本来、サイト作成にはフロントエンド言語と呼ばれるプログラミングの知識を必要とします。
- HTML→テキストの表示
- CSS→テキストの装飾
- JavaScript →動的な動き
Webflowは上記のプログラミング言語をフル活用することで、カスタマイズ性の高いWebサイトが作成できます。
「HTMLとCSSの知識は持ってるけど、Webサイトを作り込むのは難しい…」という方にぴったりの開発サポートツールといえるでしょう。
AppSheet
AppSheetはグーグルのスプレッドシートを活用し、アプリケーションを構築できるツールです。
スプレッドシートの情報をAIが読み取りシステム化することで、表計算ソフトで手動処理している管理作業を自動化できます。
売上管理や顧客管理など、小規模の業務系システムを構築できるため、エンジニア不在の状況でもアプリケーション開発を進められるツールといえるでしょう。
スプレッドシートのデータと画像を紐づけることで、特定の条件で画像を映し出すSNS風アプリも作成可能です。
MVP開発とは低コストかつスピーディーな開発手法!
MVP開発は不必要な機能を省くことで、低コストかつ短納期で開発が進められます。
- 必要な機能に絞ることでコストを削減できる
- 試作品を市場に出して顧客ニーズを調査できる
- 開発スピードを活かして先行者利益が狙える
開発をサポートするツールを使用することで、非エンジニアでもWebサイトやアプリが作成できます。MVP開発は低予算から商品サービスを生み出せるため、新規事業への取り組みとして採用しやすい点も魅力です。
大規模な商品サービスだけが、成功を掴めるわけではありません。MVP開発によって顧客から愛される改善をおこない、よりよい商品作りに活用してください。
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