「リーンスタートアップは時代遅れの手法?」

「今から初めても効果がない?」

このような疑問を抱えていないでしょうか。

リーンスタートアップは2008年に誕生した手法で、ビジネスやマネジメントの世界を大きく変えました。

最近は時代遅れの手法だと言われることも多く、以前ほど注目度は高くありません。「現代ではもう通用しなくなった手法なのか?」と、疑問に感じている人もいるでしょう。

リーンスタートアップは確かに以前ほど有効な手法ではありませんが、現代でも使い方や業界次第では十分効果的です。

今回はリーンスタートアップはどう誕生し発展したのか、なぜ時代遅れと言われるようになったのか、歴史や時代背景を振り返ります。

その上で現代でも活用できる業界を解説するため、現代のリーンスタートアップについて知りたい場合はご一読ください。

リーンスタートアップは時代遅れ?歴史と背景を振り返る

リーンスタートアップの誕生は、インターネットの登場がきっかけでした。

しかし皮肉にもインターネットのさらなる発展により、リーンスタートアップは時代遅れと言われていくのです。

ここからは年代ごとに、リーンスタートアップの歴史と背景を振り返ります。

〜1990年代:事業計画書中心の時代

インターネット登場までの事業で主流だったのは、アイデアを磨き事業計画書を整えてから一気に資源を投入するやり方です。

当時はユーザーのニーズが把握しやすく、事業を進める前からある程度成果が予想できました。計画を描きそのとおり実行すれば、成果が得られたのです。

またビジネスにおける情報の流通速度も遅かったため、変化は非常にゆるやかです。そのため競合の動きや市場の脅威もゆっくり観察でき、余裕を持った行動ができていました。

2000年代:インターネットの登場で産業構造が変化

2000年代に入りインターネットが登場したことで、ビジネスを取り巻く状況が一変します。

インターネットの登場で、これまでゆるやかだった情報の流通速度が一気に早まり、ユーザーのニーズが多様化したのです。

事業計画書中心のビジネスモデルは、ニーズが把握しやすい時代では有効でした。

しかしニーズが多様化したことで把握するのが難しくなり、事業を計画通りに進めても想定外の事態が頻発していきます。

そのため事業計画書中心のやり方では、必要とされていない商品・サービスに時間とお金を投入する結果となり、損失を生み出すようになりました。

そこで活用されるようになったのが、事業計画書中心のやり方の問題点に着目し生産効率を重視した手法です。

コストをかけずに短期間で試作品を作り顧客の反応を見ていくため、必要のない商品・サービスに時間とお金をかけ、損失を出すリスクが抑えられます。

もし試作段階で成功の見込みがないからと中止にしても、あまりコストをかけていないため損失が少なくてすむのです。

ニーズの多様化に適応したことで「見込みのある分野で事業アイデアを練り上げた方が成功確率が上がる」という、起業の新しい常識ができあがりました。

2008年:リーンスタートアップの誕生

リーンスタートアップは、アメリカのシリアルアントレプレナーである「エリック・リース」が提唱する、新規事業開発および起業プロセスです。

事業開発プロセスの「失敗事例・パターン」に着目して誕生しました。

エリック氏は2008年にブログサイトを開設し、自身の起業体験を「リーン・スタートアップ」と名付けて紹介。大きな反響を呼びました。

2011年には書籍『リーン・スタートアップ』を発売しており、2012年には日本語訳も出版されています。

エリック氏の提唱によりリーンスタートアップは、エンタープライズにおいても事業開発プロセスのスタンダードとなっていきました。

2010年代〜:リーンスタートアップの流行

2010年代にはリーンスタートアップを導入して成功する企業が多数登場します。一例は以下の表の通りです。

導入企業事例
Yahoo!アプリ開発で、ユーザーの意見を受けて改善していくサイクルを実践した。
Dropboxユーザーの行動パターンや意識調査を行い、現在のWebブラウザ型のストレージサービスを展開した。
Instagram構築・計測を繰り返すうちに写真の共有機能が人気であることが分かり、現在の形に移行した。
食べログ掲示板に届いたユーザーからの要望をもとに改善していったことで利用者が増え、売り上げが右肩上がりとなった。

このように多くの企業が、リーンスタートアップを実践し成長していきました。

ただ2022年現在はSNSや最新テクノロジーのさらなる発展により、多くの分野でリーンスタートアップの利点が生かせなくなり、リスクの方が大きくなってきています。

次は、リーンスタートアップが古いビジネスモデルとなっている理由を見ていきましょう。

リーンスタートアップが時代遅れと評価される3つの理由

リーンスタートアップは以下3つの理由から、時代遅れのビジネス手法と評価されています。

  1. SNSで良くない評判が広まりやすい
  2. 最新テクノロジーとはコスト面で相性が悪い
  3. 参入障壁が低くなり激しい競争にさらされる

順番に見ていきましょう。

SNSで良くない評判が広まりやすい

リーンスタートアップは、SNSで悪い評判が広まりやすいリスクがあります。

試作品とはいえ中途半端な状態で商品・サービスを出すと、ネット上であっという間に悪評が広がる恐れがあるためです。

SNSは拡散力も強いため、悪評により企業ブランドや信頼度の低下につながりかねません。

一度広まった悪評を覆すことは非常に難しく、試作品を出すにもSNSを意識する必要があるのです。

対策としてDropboxのように、説明動画で仮説検証をする方法もあります。

それでもSNSを意識しなければいけなくなったことで、従来より実践しづらく時代遅れと評価されることが増えたのです。

最新テクノロジーとはコスト面で相性が悪い

リーンスタートアップは何度も検証と改善を繰り返すため、コストのかかる最新テクノロジーとは相性が良くありません。

最新テクノロジーは導入・運用にも多くのコストがかかります。修正するごとにコストがかかると、リーンスタートアップの「コストを抑えて仮説検証できる」利点を生かせないのです。

リーンスタートアップは検証と改善を繰り返すため、どれだけ無駄を省いてもコストがかかります。最新テクノロジーと組み合わせるのは、非常に難しいといえるでしょう。

ただ最新テクノロジーの中でもEV(電気自動車)は、部品が従来の車より6割少なくコストも減らせます。

実際にタイやバングラデシュでEVのスタートアップ企業が、リーンスタートアップを活用しました。

そのため最新テクノロジーすべてと相性が悪いわけではありませんが、コスト面で活用しづらいことが多い傾向です。

参入障壁が低くなり激しい競争にさらされる

リーンスタートアップへの参入障壁が低くなり、激しい競争にさらされるようになっています。

Amazonが提供するサーバーのようなクラウドサービスが発展したことで、誰でも低コストで参入できるようになったためです。

IT分野だとネットを活用することで、予算面・技術面のいずれでもリーンスタートアップへの参入障壁が低くなります。

そのためサービスを世に出した途端類似サービスが立ち上がり、一瞬でレッドオーシャン化してしまうのです。

よほど独自の技術や強みをもっていなければ、他社との競争に勝てないでしょう。

グルーポンはリーンスタートアップを実践し成果をあげましたが、すぐにサービスをコピーされ2020年9月にサイトおよびアプリ内でのクーポン販売を終了しています。

リーンスタートアップが時代遅れではない業界5選

リーンスタートアップが向かなくなった業界が増えたのは事実ですが、以下5つのようにまだまだ有効に使える業界も存在します。

  1. Webサービス
  2. セミオーダー市場
  3. 業務改善・改革にかかわるビジネス
  4. ニッチ市場に打ち出す商品
  5. 市場トレンドが読みにくい分野

順番に見ていきましょう。

Webサービス

ホームページやWebを活用したサービスは、リーンスタートアップと相性が良いです。

Web関連のサービスは、リアルタイムのアクセス解析や検索サイトでのキーワードから、顧客の反応を随時確認できます。

そのため他の業界より顧客のニーズを素早く把握し、改善につなげられるのです。

Webの世界は昨日までの「正解」が「不正解」になってしまうことも多いほど、変化の大きい業界です。

顧客の反応を細かく確認できるWebサービスは、リーンスタートアップと組み合わせることで大きな成果が期待できるでしょう。

セミオーダーメイド市場

セミオーダー市場は、リーンスタートアップにより顧客が求める商品を形にしやすいため向いています。

セミオーダーを依頼する顧客自身、どんな商品を求めているのか正確に把握できていないことが多い傾向です。

リーンスタートアップの手法で実行と改善を繰り返すことで、顧客が求めるものが見えてきます。

そのため顧客が本当に求めるものを提供しやすくなり、サービスの質向上にもつながるでしょう。

業務改善・改革にかかわるビジネス

ロボットやAIなどによる作業の自動化など、起業の業務改善や改革につながるビジネスは、リーンスタートアップと相性が良いです。

ユーザーはサービス導入が業務改善につながることはわかっても、どれくらい仕事を変えられるのかはっきりしていないことが多くあります。

サービスの提供価値が分からないと、顧客も導入に踏み切りません。

そのため初期顧客とリーンスタートアップによってサービスを作り込み、価値を感じてもらうことが有効となります。

顧客が価値を感じるもので他社にない優位性もあれば、サービスを導入してもらえる可能性は高まるでしょう。

働き方改革のため、業務改善につながるサービスを導入したい企業は多く存在します。

リーンスタートアップによって、顧客のビジネスを改善する価値あるサービスの開発に繋げられるのです。

ニッチ市場に打ち出す商品

大規模メーカーが取り込めないニッチ市場の商品には、リーンスタートアップが効果を発揮します。

例えば富裕層向けのコスメティクスでは、MVPを特定のユーザーのみに購入してもらい、意見をもとに改善していく手法をとっていくケースもあるのです。

ニッチ市場には、大手メーカーが作る一般大衆向けの商品に不満を抱いている消費者もいます。

特定のユーザーに限定したニッチ市場でのアプローチは、ユーザーの受容性を測る上でも重要です。

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市場トレンドが読みにくい分野

ニーズがあるのか分からない市場トレンドが読みにくい分野は、リーンスタートアップが適しています。

かつての事業計画書時代と同じく、資金と時間をお金を投入すると損失のリスクがあるためです。

リーンスタートアップのコストを抑え検証していく手法は、市場トレンドが読みにくい分野でも損失のリスクを抑えられます。

SNSが発達した現代でも、市場トレンドが読みにくい分野でリーンスタートアップは効果を発揮する手法です。

まとめ

リーンスタートアップは活用しづらくなったものの、完全に時代遅れの手法ではありません。

業界や使い方によっては、十分に効果を発揮します。

ただSNSの拡散のように考慮すべき要素は増えているため、活用には注意が必要です。

今回の内容を参考に、リーンスタートアップを活用してみてください。

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