コロナウイルスの蔓延にともない、バーチャル空間におけるコミュニケーション体験や買い物体験の浸透・発展が急速に進んでいます。世界におけるメタバースの市場規模は、2020年に476.9億ドルに達し、 2028年には8289.5億ドルまで拡大するというアメリカの調査結果も。
急速に拡大するメタバース市場において、開発者である「エンジニア」の存在は必要不可欠です。メタバースエンジニアの需要は、今後ますます拡大していくと予想されます。
そこで本記事では、メタバースエンジニアの仕事内容や求められるスキルなどを徹底解説。メタバースエンジニアに興味のある方は、ぜひ最後までご覧ください。
メタバースエンジニアの仕事内容5選
一口に「メタバースエンジニア」といっても、その仕事内容は多岐に渡ります。メタバースエンジニアの仕事内容は、大きく5つに大別できます。
- ゲーム開発エンジニア
- サーバー開発エンジニア
- iOS・Androidエンジニア
- インフラ・セキュリティエンジニア
- デザイナー
プログラミングによってプラットフォームを開発する以外にもさまざまな関わり方があるため、各仕事の詳細を順番に見ていきましょう。
ゲーム開発エンジニア
「ゲーム開発エンジニア」は、一般的に想像される「メタバースエンジニア」の代表的な仕事に該当します。
メタバース世界の構築は、要するに3Dのゲーム制作とほぼ同じです。そのため、ゲーム開発エンジニアがメタバース制作における中心的な役割を果たします。
「ゲーム開発」といっても、役割はさらに細分化できます。
- ゲームプログラマー
- グラフィックプログラマー
- サウンドプログラマー
- ネットワークプログラマー
役割は違えど、プログラミング言語を扱うことに変わりなく、後述するゲーム開発エンジンを操作できるスキルは必須です。
サーバー開発エンジニア
メタバースを構築する裏側・土台を支えるのが、サーバー開発エンジニアの役割です。
メタバースは多くのユーザーが同時接続するため、大量のアクセスを問題なく・動作を重くさせることなく捌けるように、ネットワークを適切に設計する必要があります。
ハイクオリティなメタバースが完成したとしても、ネットワークが脆弱では安心して利用できません。サーバーの種類や速度はもちろん、運用コストも踏まえた最適なネットワーク環境の構築が必要不可欠です。
メタバース空間を快適に保つために、サーバーの監視やセキュリティのチェックなどは欠かせませんし、万が一障害が発生した場合は、速やかな復旧対応が求められます。
サーバー開発エンジニアは従来のWebアプリなどのサーバー管理に等しく、扱うサービスがメタバースに置き換わるというイメージで差し支えないでしょう。
iOS・Androidエンジニア
メタバースプラットフォームは、パソコン・ブラウザ版に限らず、スマホアプリの展開も想定されます。メタバースプラットフォームのスマホアプリ開発を担うのが、iOS・Androidエンジニアです。
ゲーム開発エンジニアとは扱うプログラミング言語も異なるため、異なる人材・スキルとして活躍できます。
iOS・Androidエンジニアはスマホアプリの開発を中心に、アプリのアップデートや保守、iOS・Androidの最新情報をウォッチするのがおもな業務です。
インフラ・セキュリティエンジニア
先ほど紹介したサーバー開発エンジニアの中で、「セキュリティの専門家」として活躍するのがインフラ・セキュリティエンジニアです。
ネットワークのセキュリティに関して、個人情報保護などの観点で必要性は高まる一方で、サイバー攻撃の手口・手段は巧妙化しています。そのためセキュリティ対策の専門家ポジションは、需要の高い業務のひとつです。
メタバース特有のセキュリティ対策というより、あらゆるネットワークに共通する対策です。そのため、Webアプリのセキュリティ対策を担当するエンジニアなどであれば、即戦力として活躍できるでしょう。
デザイナー
メタバース世界の構築には、デザイナーの存在が必要不可欠です。
- メタバース空間そのもののデザイン
- アバター
- プロップ(ユーザーが触れる小道具全般)
メタバース独自の世界観を演出するには、デザイナーの力なしには実現できず、目に見える部分を担当するため、責任・役割は極めて重要といえるでしょう。
メタバース構築に携わるデザイナーの場合は、3DCGやモデリングのスキルが欠かせません。一般的なデザイナーとは異なるスキルが求められる点も特徴的です。
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メタバースエンジニアに求められる3つのスキル
メタバースエンジニアに求められるスキルは、大きく分けて以下の3点です。
- ゲームエンジン開発スキル
- プログラミングスキル
- クリエイティブスキル
ゲームエンジン開発スキル
「ゲームエンジン」とは、ゲーム開発に必要とされる基本的な機能をまとめて提供しているプログラムのことで、ゲームエンジンを開発するスキルが欠かせません。
現在、メタバースプラットフォームの多くが「Unity」「Unreal Engine」のいずれかで開発されています。
Unityはメタバース以外のゲーム開発にも多用されており、Unreal Engineはゲーム開発以外にも、自動車の設計や映画制作などにも使われ、汎用性が高いという特徴があります。
「メタバース開発に携わりたい」と考える方は、ゲームエンジン開発スキルが必須といえるでしょう。
プログラミングスキル
プログラミングスキルも、メタバースエンジニアになるためには欠かせません。
メタバース開発のどの部分に携わるかによって、必要とされる言語は異なります。先ほど紹介した「Unity」「Unreal Engine」も、それぞれ開発言語は異なるため、どのゲームエンジンを扱うかという基準で、いずれかのスキルを習得するのがおすすめです。
iOS・Androidエンジニアやサーバー開発エンジニアの場合もそれぞれに準じたプログラミング言語があるため、企業の求人情報をもとに言語を選別して学びましょう。
クリエイティブスキル
クリエイティブスキルとは、メタバース世界で使用するさまざまなアイテムなどを制作するスキルです。
- ワールド
- アバター
- バーチャル店舗
- 商品やアイテム
独自プラットフォームの開発はもちろん、企業におけるメタバース店舗の開発(既存プラットフォームの開発)といった場面でも、クリエイティブスキルは大いに発揮できます。
3DCGデザイナーとして活躍できるクリエイティブスキルがあれば、メタバースプラットフォームの開発会社以外にも、あらゆる企業で重宝されるでしょう。
メタバースエンジニアに必須のプログラミング言語3選
メタバースエンジニアとして活躍するためには、とくに以下で紹介する3言語のいずれかの習得が必須です。
- C#とUnity
- C++とUnreal Engine
- JavaScript
C#とUnity
「C#(シーシャープ)」は、メタバースエンジニアとして最も需要の高いプログラミング言語です。なぜなら、ゲームエンジンのUnityでC#が使われているからです。
国内外の人気メタバースの多くがUnityで開発されているため、C#の習得はメタバースエンジニアとして活躍するには必要不可欠。
そもそもC#は、2000年にマイクロソフトが開発したプログラミング言語です。メタバース開発以外にも使用されるメジャーな言語で、Windows向けのアプリ開発を中心に、iOS・Android、MacOSにも対応する汎用性の高さが特徴といえます。
Unity自体は、個人利用で一定の条件を満たせば無料で使用可能です。アセットと呼ばれる素材を組み合わせてゲーム開発できるため、操作しながら感覚をつかみ、複雑な処理や制御をする際にC#でコードを書いていきます。
C#とUnityをワンセットにして、スキルを磨いていきましょう。
C++とUnreal Engine
「C++(シープラスプラス)」は、C#同様に、メタバースエンジニアとして活躍したい方は必修言語のひとつです。
C++は、ゲームエンジンのUnreal Engineで使われています。そのため、これらもワンセットで習得していく必要があります。実際のところ、ゲームエンジンの市場シェアはUnityが最も高く、Unreal Engineは全体の20%ほどという調査結果も。
C++自体はC#よりも前にリリースされた言語で、汎用性が非常に広く、「C#とUnity」のどちらを選択するかは、自身でゲームエンジンを実際に操作した上で判断してもよいでしょう。
なお、Unreal Engineで開発された有名なゲームとしては、Fortnite(フォートナイト)があります。
Unreal Engineのシェアは現時点であまり高くありませんが、Web3系のメタバースプラットフォームがUnreal Engineで開発されるようになると、需要は必然と高まるでしょう。
JavaScript
JavaScriptは、メタバース開発に直接関係しない範囲も含めて、汎用性の高い言語として押さえておくべきです。
「メタバース」といってもつまるところWebサービスの一種で、Webエンジニア・フロントエンドエンジニアの知識が必要不可欠。その点において、JavaScriptは使用頻度が必然的に高まります。
ブラウザ上で動くソフトの見た目(UI)を管理する上で、JavaScriptは必須です。
未経験からメタバース開発に携わっていきたいと考えるなら、JavaScriptの習得から始めて、Webアプリの開発経験を積みましょう。その上で、メタバース開発企業に挑戦する流れが比較的スムーズです。
メタバースエンジニアの求人・募集状況について
メタバースエンジニアの求人や募集状況を見てみると、以下の仕事内容や応募資格が掲載されています。
- ゲーム業界におけるUIデザインの実務経験
- Unityでの実装、UI組み込み経験
- イラスト制作スキル
- ゲーム制作におけるプログラミング経験
- AWS等のクラウドを使ったシステム構築を全体設計から行った経験
ご覧のとおり、ゲーム開発の経験やサーバーの全体設計といった実務経験は、メタバース開発の即戦力スキルとして活かせるでしょう。
詳しい求人情報は、それぞれの求人サイトで「メタバース」と検索すると出てきます。
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メタバースエンジニアの気になる年収
メタバースエンジニアの年収ですが、求められるスキルやポジションで異なります。その前提を踏まえ、先ほど紹介した仕事内容であれば、300万円〜1200万円と掲載されていました。
希少性や実務経験次第ではあるものの、日本全体の平均年収である約450万円(中央値は約400万円)を大きく上回る可能性を秘めています。
なお、「Solidity」というWeb3サービスの開発に必要なプログラミング言語を扱う海外のエンジニアは、平均年収134,000ドル(1ドル130円換算で約1,740万円)だそうです。
プログラミングスキルは世界共通であるため、「日本に住みながら海外の仕事をフルリモートで受注する」働き方ができると、市場価値と給与水準をかなり高められるでしょう。
メタバースエンジニアは未経験でもなれるのか
未経験からメタバースエンジニアを目指せるのかについて、決して楽な道のりではありませんが、スキルを徐々に身につけステップアップすれば十分可能です。
「メタバースエンジニア養成コース」というプログラミングスクールも提供されており、学習環境は整備できます。
もしくは、広い意味で「エンジニア」になることを目標に学習し、基礎技術や実務経験を積んだ後に、メタバースエンジニアへの転職を目指す道も考えられます。
いずれにしても、専門的な知識や実務経験は必須であるため、相応の準備期間は覚悟しておきましょう。
メタバースエンジニアの今後・展望
最後にメタバースエンジニアの今後や展望について、2つの視点で紹介します。
- 業界の規模拡大に伴って需要が高まる
- 新たなスキルやトレンドを追いかけ続ける姿勢が求められる
業界の規模拡大に伴って需要が高まる
冒頭でも紹介したように、メタバース市場は世界的に急拡大・急成長が見込まれています。現時点でVRヘッドセットの普及率はごくわずかですが、中長期的なスパンでみれば、より没入感のあるメタバース空間・体験を、誰でも手軽に味わえるようになるでしょう。
スマホアプリやPC・ブラウザで楽しめるメタバースプラットフォームは、現時点でも多数開発されています。
国内でもエンジニア不足が問題視されており、小学校でプログラミング教育が義務化されたことを踏まえても、メタバースエンジニアの需要はますます高まるでしょう。
新たなスキルやトレンドを追いかけ続ける姿勢が求められる
技術革新のスピードはどんどん早まり、メタバースやWeb3にまつわる技術やトレンドは目まぐるしく変化します。刻々と入れ替わるトレンドに対応し、スキルをアップデートし続ける姿勢は必須です。
現時点で通用するスキルだけではなく、常に新しいスキルを磨くことで、メタバースエンジニアとしての市場価値も高まるでしょう。
メタバースエンジニアは求められるスキルは高いが将来有望
メタバースエンジニアの仕事内容は多岐にわたり、「ゲーム開発」に限らず、広くIT全般にまつわる技術への理解が求められます。
ゲーム制作やアプリ開発の実務経験があると、メタバースエンジニアとして即戦力で活躍できる可能性は十分あり、専門性の高さや豊富な実務経験は年収に直結します。
メタバースエンジニアに求められるスキルレベルは高いものの、市場の成長を考えても、向こう10年の需要は高まり続けるでしょう。
知的好奇心が旺盛で、新しいことを学び続けるモチベーションさえあれば、未経験からでもメタバースエンジニアを目指すのは十分可能です。
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