メタバースは主に海外で開発が進んでいますが、日本国内においても、大手企業や新興企業によって盛り上がりを見せつつあります。

世界におけるメタバースの市場規模は、アメリカのEmergen Researchの分析によると、2020年に476.9億ドルに達し、2028年には8289.5億ドルまで拡大する見込みです。

メタバースにまつわる事業展開やプラットフォーム開発は、グローバルを見据えたサービス展開が重要になります。人口が減少する日本において、メタバース関連事業への投資・参入は、日本が世界で再び輝く起爆剤になる可能性も。

時流の波にうまく乗れるよう、急成長している国内におけるメタバース事業の現状や将来性を把握しておきましょう。

メタバースとは3次元の仮想空間

メタバースとは、一言で言うと「3次元の仮想空間」です。

インターネット上の仮想空間にアバターで参加し、他者とコミュニケーションを取ることなどができるSNSの新たなサービスの一つといえます。仮想空間を提供するサービスを総称するキーワードとして「メタバース」という言葉を使うことも少なくありません。

なお、メタバース(Metaverse)の語源は、「Meta(超越)」と「Universe(宇宙)」を組み合わせた造語です。メタバースの事業展開は多岐に渡り、ゲームコンテンツとして提供されることもあれば、ブロックチェーンやNFTと絡めて経済活動を行うものもあります。

メタバースに関する詳細は「こちら」をご覧ください。

日本文化に見られるメタバースの例

過去に制作されたゲームや映画にも、メタバースを用いた描写などがされています。

日本の文化は古来、海外の文化を取り入れ、多様な形に発展してきました。伝統的な文化に基づき、漫画やアニメ、ゲームなどのキャラクター文化・ビジネスが大きく発展した点も特徴的です。

国内で活動するクリエイターも多く、日本の文化を活かしたメタバースへの参入は、大きなビジネスチャンスといえます。

具体的な作品などから、日本文化に見られるメタバースの例を確認しましょう。

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ゲーム

実は、日本発のメタバースゲームはまだありません。しかし、あつまれどうぶつの森やファイナルファンタジー14(FF14)などは、広い意味でのメタバースゲームとして扱われることもあります。

メタバースゲームが今までのゲームと大きく異なるのは、NFTや仮想通貨を用いてゲーム内で土地やアイテムなどをリアルに売買できる点です。

要するにメタバースゲームは「ゲームでお金を稼げる」プラットフォームであり、海外発では次のようなものが人気を博しています。

  • フォートナイト
  • Decentraland(ディセントラランド)
  • Axie Infinity(アクシー・インフィニティ)
  • The Sandbox(ザ・サンドボックス)

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映画

日本の映画においてメタバースをテーマにした有名な作品には、「サマーウォーズ」があります。

サマーウォーズは、2009年に公開されました。映画の中では、全世界で10億人が利用しているインターネット上の仮想空間が存在。仮想空間で起きた出来事が現実世界に影響が出るほど、仮想空間が拡張されました。

そんな仮想空間で引き起こされた混乱から、現実世界を守り抜く戦いに臨むというストーリーが展開されます。

サマーウォーズの中で描かれる仮想空間では、ゲームやショッピングだけでなく、行政手続きや交通システムといった主要インフラまで支えており、メタバースという仮想空間のメリットを活かす事例になりそうです。

近い将来、私たちの現実世界にも、同様の仮想空間が実現する可能性もあります。

バーチャル日本博

日本博は、2020年東京オリンピックをきっかけにスタートしたプロジェクトです。日本人と自然をテーマとする、日本の美を国内外へ発信するために設けられました。

その中で開催されたバーチャル日本博は、実際の会場でのリアル体験と、デジタルコンテンツによる仮想空間をオンライン上に設置したバーチャル体験を融合。美術や舞台芸術などさまざまな日本文化を発信しています。

最も特徴的なのが、国内外からアクセス可能な体験型のバーチャル空間を構築している点です。1万年前の縄文時代の文化財から、浮世絵、きもの、漫画・アニメなどの展覧会、伝統芸能などのコンテンツを日本語と英語で掲載しています。

スマホアプリ、PCブラウザから楽しむことができ、メタバースを利用して文化を発信する好事例といえるでしょう。

メタバース事業に取り組む日本の3大企業

スタートアップ企業がメタバース事業に取り組む印象が強いかもしれませんが、日本の有名企業においても、メタバース事業に力を入れている企業がいくつか存在します。

海外における世界的企業のメタバース事業参入に注目が集まりますが、日本企業の事例を把握した方が、自社のビジネスにも取り入れやすいですよね。

メタバース事業に取り組む日本の3大企業について、それぞれの取り組みをまとめました。

なお、日本企業の取り組みに関する詳細は「こちら」をご覧ください。

ソニー

音楽やゲーム、アニメなどさまざまな事業を展開するソニーですが、2022年5月に開催された経営方針説明会において、メタバース事業への参入を強調しています。ソニーの事業の核であるゲーム技術と組み合わせて新しいエンターテイメント体験を創出し、ゲーム、IP、音楽が交差するライブネットワーク空間を構築する予定です。

また、ライブサービスを提供する会社の買収や、スポーツチームとの協業によるスタジアムのバーチャル化への取り組み、PlayStation5向け次世代VRシステムの開発なども予定しています。

さらに、スポーツの判定を支援するカメラシステムを活用して、ライブ映像でとらえた動きを、リアルタイムで仮想空間上に再現するサービスなども提供される予定です。

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リコー

オフィス向けの複合機やプリンターの開発・生産を行うリコーは、リアルよりも便利に働ける世界を実現するために、「リコーバーチャルワークプレイス」というサービスを開発しました。

リコーバーチャルワークプレイスは任意の空間をVR上で再現し、各自がVRヘッドセットを使って同じ空間に集まれるサービスです。

オフィスワーク空間をVR上で再現して、在宅勤務でも同じオフィスにいるかのようなコミュニケーションもとれるようになります。

そのほか、建築業界において活用する例も。普段使っている3次元データをバーチャル空間上に出現させ、発注者・設計者・施工者などの所属会社や部署の異なる関係者が、同じバーチャル空間上で議論するという使用方法もあります。

リコーのサービスは、BtoBビジネスを念頭に置いたメタバース事業といえるでしょう。

パナソニック

家電や空調などの各種電気設備を開発・製造・販売するパナソニックですが、パナソニックの100%子会社である「Shiftall(シフトール)」から、メタバース事業への本格参入を象徴する3製品が2022年1月に発表されました。

VRヘッドセット「MeganeX(メガーヌエックス)」は、超高解像度・超軽量のVRヘッドセットです。年間2,000時間以上メタバース内で過ごすといわれるヘビーユーザーも快適に装着できるよう、軽さを追求しています。

そのほかにも、ウェアラブル冷温デバイス「Pebble Feel(ペブルフィール)」、メタバース対応音漏れ防止機能付きマイク「mutalk(ミュートーク)」を発表しました。

今後、パナソニックの持つ高い技術力を活用したさらなる開発が期待されます。

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日本発のメタバースプラットフォーム3選

メタバース空間を提供しているプラットフォームは、海外だけでなく日本の会社が提供しているものもあります。

実際にメタバースを体験したいと思ったとき、海外より日本のプラットフォームの方が安心感を得られる方もいるでしょう。また、日本発のメタバースプラットフォームの方が自社ビジネスの参考にできる点も多いですよね。

そこで、日本発のメタバースプラットフォームを3つ紹介します。気になるプラットフォームがあれば、ぜひ利用してみましょう。

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cluster(クラスター) 

clusterは、クラスター株式会社が運営するメタバースプラットフォームです。2022年7月時点でアプリのダウンロード数が100万ダウンロードを突破し、イベントの累計動員数は1000万人を超えようとしています。

clusterはVRヘッドセットがなくても、アプリから気軽に楽しめるのが特徴です。clusterでは「ワールド」と呼ばれる様々な仮想空間をユーザー自身で制作でき、合計44,000のオリジナルワールドが誕生しています。

週に6〜7日間に渡ってログインするヘビーユーザーの中には、1日当たりの平均滞在時間が4時間を突破しするケースも。バーチャル空間で余暇時間などを過ごすユーザーが日々増えている、という点も大きな特徴です。

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SATCH X(サッチエックス) 

SATCH Xは、KDDIが提供するAR/VRコンテンツを楽しめるアプリケーションです。

雑誌やカードの上にキャラクターが表示される従来のAR機能に加え、空間上に3Dコンテンツが出現するなどの体験ができます。アプリのダウンロード数は、500万ダウンロードを突破しました。

QRコードリーダーとしての機能も備えており、メタバースプラットフォーム以外の用途があるのも特徴的です。また、世界中のアーティストやクリエイターが制作した10,000以上のAR/VRコンテンツにも簡単にアクセスできます。

今後、街の風景など周囲の空間を認識してコンテンツを表示し、同一のコンテンツをリアルとバーチャルから体験できる「空間認識XRコンテンツ」も実装予定です。

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REALITY(リアリティ)

REALITYは、GREE(グリー)の子会社であるREALITY株式会社が運営するバーチャルライブ配信アプリです。

アプリのダウンロード数は、約850万ダウンロード。誰でもスマホ1台で好きなアバターの姿に変身でき、顔出しすることなくライブ配信やゲーム、コミュニケーションを楽しめます。

スマホのインカメラで表情を読み取り、アバターの表情を連動させたり、複数人でコラボ配信したりすることも可能です。ライブ配信中にギフトやコメントを送ってコミュニケーションを取り、ユーザー同士のバーチャルコミュニティに参加するのも人気となっています。

clusterとコラボでき、REALITYのアバターをclusterと共有して配信を行えるのも大きな特徴です。

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メタバース事業をサポートする日本の団体も続々と発足

現在、国内では「日本メタバース協会」「メタバースジャパン」という、メタバース事業の発展をサポートする2つの団体が発足されています。

日本メタバース協会は、メタバースを「アイデア次第で現実世界ではできないことを実現できる可能性にあふれた空間」と位置づけ、2021年12月に設立されました。

同協会は、今後誕生するメタバース関連ビジネスのサポーターになることを目指し、勉強会やビジネスマッチングなどの活動を予定しています。日本メタバース協会の詳細は「日本メタバース協会とは?設立メンバーを紹介|関連団体の一覧も」をご覧ください。

一方、メタバースジャパンは2022年3月に発足。「日本の可能性をメタバースを通じて世界に解き放つハブになる」ことを目的に、産官学の垣根を越えた横断的なサポートをする予定です。

日本のメタバース事業は海外を超える?

現時点で日本国内のメタバース利用者数は非常に少ないものの、世界のメタバース事業と十分戦えるポテンシャルを秘めています。

モバイル市場専門の調査会社「MMD研究所」が、2022年4月に18歳から69歳の男女7255人を対象に行った「メタバースに関する調査」によると、日本国内においてメタバースを利用したことがあると回答したのは5.1%(367人)でした。

しかし、日本はアニメや漫画、ゲームなどのキャラクタービジネスに長けており、初音ミクを筆頭とするサブカル的なアバターも豊富に存在します。

世界的な時代の変革期が訪れる中、日本が培ったアニメ文化をメタバース事業で活用できれば、世界中でヒットする可能性は十分あるでしょう。

ただし、メタバース事業は新興市場であるために、法整備が間に合っていないのが実情です。公正かつ適切な利用のためにも、国内に限らず世界共通の法整備が急がれます。

日本のメタバース事業は急成長の可能性あり!

日本のメタバース事業は、伸び代しかありません。メタバースを実際に利用するユーザー数もごく少数で、メタバース事業を手がける企業やプラットフォームも数えるほどしかないのが現状です。

しかし、日本には高度経済成長を支えた高い技術力や、日本独自のアニメ・漫画文化があります。日本のアニメや漫画キャラクターを用いたオリジナルコンテンツを海外向けにブランディングできれば、日本のメタバース事業が再び世界で輝く日もそう遠くはありません。

世の中にメタバースが急速に浸透していく中で、スピード感をもって開発を進められるか…それが日本におけるメタバース事業の成長に大きく影響するといえるでしょう。

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