新しい事業領域として注目を集めるメタバース。新たに立ちあがろうとしている市場であるが故に、各企業におけるメタバースの活用事例はまだまだ少ない状況と言わざるを得ません。

そんな新興市場であるメタバース領域に関して、積極的に取り組む大企業の一つがソニーです。本記事では、ソニーが手がけるメタバース関連事業を5つ紹介し、ソニーのような大企業がメタバース事業に取り組む理由も解説します。

日本企業におけるメタバースの活用事例を理解することで、自社における新たなビジネスモデルの設計にも活かせるのではないでしょうか。本記事を通して、ソニーが手がける人の心を動かす独自の技術開発を知り、メタバース活用の参考にしましょう。

ソニーグループはどんな会社?

商号(会社名)ソニーグループ株式会社(Sony Group Corporation)
設立1946年5月7日
代表執行役会長兼社長CEO 吉田 憲一郎副社長兼CFO 十時 裕樹(ととき ひろき)
事業内容ゲーム&ネットワークサービス、音楽、映画、エンターテインメント・テクノロジー&サービス、AIなどを用いた各種新事業等
資本金8,804億円(2022年3月31日付)
連結従業員数108,900名(同日付)
2021年度連結売上高9兆9,215億円

ソニーグループは創業から75年を迎え、従業員数は約11万人、売上高は10兆円に迫る大企業です。おもな事業内容は、下記のようになっています。

ゲーム&ネットワークサービスPlayStation本体や周辺機器等の開発・販売
音楽アーティスト等の発掘・育成ライブエンターテインメント事業スポーツエンターテインメント事業等の新たなエンターテインメントビジネスの創出
映画映画等の企画や制作販売放送事業等
エンターテインメント・テクノロジー&サービススマホやイヤホン、テレビ等の製造・販売
AIなどを用いた各種新事業EV自動車やAI、エンターテインメントロボット等の開発宇宙体験事業の共創

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ソニーにおける5つのメタバース関連事業

ソニーグループCEOの吉田氏は、2022年度経営方針で、ソニーグループではエンターテインメントを中心としたメタバースを構想している旨を述べています。

本章では、ソニーグループが構想するメタバースの活用(予定)事例を紹介します。なお、ソニーグループ以外の企業におけるメタバース活用事例を知りたい方は、日本と海外のメタバース企業一覧|参入の価値は十分あり?将来性も解説をご覧ください。

ライブエンターテインメントの普及

ソニーにおけるメタバース関連事業の一つ目が、「ライブエンターテインメントの普及」です。長年培ったゲーム開発に関するノウハウを活かし、ゲーム・音楽・映画の各主要事業がメタバース空間で交差し合う「ライブエンターテインメント」の構築を目指しています。

ゲームの中にメタバースを取り入れるのは海外でも複数事例があり、収益構造がはっきりしています。加えて、ゲームを愛するファンがいることで、ゲーム事業にメタバースを取り入れた場合でも、支持基盤が揺るがないのは大きな強みといえるでしょう。

メタバースの活用によってエンターテインメントの体験をよりライブ的に体感できるサービスは、多角的な事業展開をしているソニーグループならではの戦略ともいえます。

スポーツ観戦のバーチャル化

ソニーにおけるメタバース関連事業の二つ目が、「スポーツ観戦のバーチャル化」です。

現在、テニスやサッカーなどで、ビデオ判定を用いたリアルタイム判定が行われています。テニスでは「チャレンジ」、サッカーでは「VAR」と呼ばれるビデオ判定ですが、これらはソニーグループの「Hawk-Eye(ホークアイ)」が提供する技術です。

プロスポーツにおける、人の視力の限界を超える素早いプレーを可視化することで、公平性や安全性を担保し、スポーツファンのエンゲージメントを高める効果が期待されます。

Hawk-Eyeのトラッキング技術は審判補助だけでなく、戦術の分析やスカウティングにも活用され始めています。スポーツ分野において、リアルタイムCG技術にメタバースを盛り込むというアイデアは、自社ビジネス創出のヒントになり得るでしょう。

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宇宙空間でのDTCサービス展開

ソニーグループにおけるメタバース関連事業の三つ目が、「宇宙空間でのDTCサービス展開」です。DTC(Direct to Consumer)サービスとは、中間流通業者を通さず、消費者に商品を直接販売する仕組みを指します。

ソニーグループが手がける「STAR SPHERE」は、宇宙をすべての人にとって身近なものにし、「宇宙の視点」でものごとを捉え、考える取り組みです。STAR SPHEREでは人工衛星に搭載したカメラを自ら操作し、自分だけの宇宙写真や動画が撮影できます。

STAR SPHEREによる「宇宙空間でのDTCサービス」提供を通じ、宇宙の視点を体感し、ユーザーに感動を直接届けて、人の心を動かす事業の展開を目指しているのです。

完全ワイヤレスイヤホンの開発

ソニーグループにおけるメタバース関連事業の四つ目が、「完全ワイヤレスイヤホンの開発」です。ソニーから販売されたLinkBudsは、「耳をふさがない」完全ワイヤレスイヤホンとして話題を集めました。

LinkBudsの開発にあたり、マイクロソフト社が提供する3Dオーディオマップアプリ「Microsoft Soundspace」と連携し、周囲の音を自然に聴きながら目的地方向からのビーコン音や周囲にある建物や交差点などの情報を音声で取得できるようになりました。

ワイヤレスイヤホン特有の没入感をあえて追求しない点も特徴的です。現実世界に溢れる生活音と、イヤホンから流れるデジタルの音を重ねることで、エンターテインメントから考えるソニー流のメタバースを実現します。

PlayStation5向け次世代VRシステムの開発

ソニーグループにおけるメタバース関連事業の五つ目が、「PlayStation5向け次世代VRシステムの開発」です。「PlayStation VR2」の発売日は、2023年初頭を予定しています。

初代PlayStation VRの4倍以上の解像度を持つ2000×2040の有機ELディスプレイを搭載し、視野角は10度近く改善され、レンズの調整も可能な次世代モデル。

初代のモデルに比べて性能は当然良くなり、装着感もより快適に仕上がりました。そのほかにも視線をトラッキングする機能や、3Dオーディオ技術などを組み合わせて、より深い没入感を生み出しています。

次世代VRシステムの開発は、ソニーグループが培ったゲーム事業を基盤に、メタバース関連事業を成長させる起爆剤になるでしょう。

ソニーがメタバース事業に参入する3つの理由

ソニーグループは、多角的に展開する事業内容を組み合わせ、メタバース関連事業に取り組んでいます。この章では、ソニーグループがメタバース事業に参入する理由を3つ紹介します。

CEOである吉田氏の「エンターテインメントからメタバースを考えたい」という言葉の真意や、ソニーグループがメタバース事業に明るい未来を描く背景を把握しましょう。

なお、メタバースとは何か、どのように始めれば良いかなどについて詳しく知りたい方は【具体例つき】メタバースとは?メリット・デメリットもわかりやすく解説をご覧ください。

VR機器など関連技術の開発ノウハウがある

ソニーグループがメタバース事業に参入する理由の一つ目が、「VR機器など関連技術の開発ノウハウがある」からです。メタバース空間におけるライブエンターテインメントや高度なリアルタイムCG技術など、事業展開の過程で培った各技術を組み合わせ、メタバース関連事業を立ち上げています。

また、VR機器はメタバース空間における没入感を生み出すには必要不可欠です。VR機器開発にあたって取り入れられている、視線をトラッキングする技術や3Dオーディオ技術なども、ホークアイやワイヤレスイヤホン開発におけるノウハウが根底にあります。

自社で扱う事業内容にメタバースを取り入れて新規事業を立ち上げる姿勢は、あらゆる会社で参考にできるでしょう。

メタバースと親和性が高いコンテンツを保有している

ソニーグループがメタバース事業に参入する理由の二つ目が、「メタバースと親和性が高いコンテンツを保有している」からです。ソニーグループは、ゲームや音楽など、すでにメタバースで活発に取り扱われているコンテンツを多数保有しています。

2021年度におけるゲームや音楽などの売上高の合計は、連結全体の50%を超えており、営業利益は約3分の2を占める状況です。ソニーにおけるメタバース事業参入の入口は、ゲーム事業と言っても過言ではありません。

またソニーグループは、ゲームスタジオ「Bungie」を傘下に加える旨を発表しました。同社が蓄積しているライブサービスに対するノウハウを活用し、ライブネットワーク空間の強化や、ライブゲームサービスの展開を予定しています。

ゲームエンジン会社と強い関係性を持っている

ソニーグループがメタバース事業に参入する理由の三つ目が、「ゲームエンジン会社と強い関係性を持っている」からです。

ネットゲーム「フォートナイト」の運営元であり、ゲームエンジン「Unreal Engine」の開発元でもあるEpic Gamesに対し、ソニーは累計14億ドル以上を出資しています。

メタバース内で使用できる3Dアセット制作やゲームエンジンを扱う会社との関係強化は、ソニーグループのメタバース事業成功に大きな影響を与える可能性が高いでしょう。

自社でのメタバース関連技術の開発に加え、関連企業と協業することで、メタバースを使ったライブエンターテインメントの普及に拍車がかかると期待されます。

なお、メタバースのビジネスモデルについてさらに詳しく知りたい方はメタバースはビジネスチャンスの宝庫?活用事例やメリット・デメリットを紹介をご覧ください。

ソニーはメタバース関連技術を続々と開発中!

ソニーグループは長年培ったゲーム開発技術を入口にした、ライブエンターテインメントの普及やVR機器開発などのメタバース関連事業に取り組んでいます。

多角的な事業展開をしてきたソニーグループだからこそできる取り組みもあるものの、自社の強みにメタバースを掛け合わせるという姿勢は、多くの企業が参考にできるでしょう。

ソニーグループが扱う事業領域の一つに、「人の心を動かす」事業があります。今回紹介した5つのメタバース関連事業はいずれも、ユーザーに感動を直接届けるサービスでした。

「エンターテインメントから考えるメタバース」を具現化するために、メタバース関連技術を続々と開発するソニーグループ。同グループがメタバース関連事業を立ち上げた背景などをヒントに、自社独自のビジネスモデルを検討しましょう。

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