2021年10月、Facebook社が社名を「Meta(メタ)」へ変更したことからメタバースへの注目が集まりました。

日本でもメタバースへの取り組みが行われており、その1つにKDDIが取り組む都市連動型メタバースがあります。

ただ、以下のような疑問を感じる方も多いのではないでしょうか。

  • なぜ大手携帯キャリアがメタバース事業に取り組んでいるのか
  • どんな特徴があるのか
  • どんなイベントをやっているのか

今回はそんなKDDIメタバースについて解説するとともに、NTTドコモとソフトバンクのメタバース事業についても解説します。

KDDIのメタバースの特徴とは?

「KDDIがメタバース事業?」と、ピンとくる人は少ないかもしれません。ただ、「バーチャル渋谷」なら聞いたことがあるのではないでしょうか。

そもそもメタバースとは3次元仮想空間のことを指し、身近なものだと任天堂の「あつまれどうぶつの森」などのゲームも広い意味でのメタバースです。

ただau版メタバースはゲームのようにできることが決められた空間だけでなく、ユーザー自身でイベントを開催できるなど「自由に活動できる空間づくりが可能」という特徴があります。

▼関連記事▼
任天堂にメタバースの注目が集まる理由とは?事例付きで徹底解説

都市連動型メタバース

メタバース空間に実在する都市を作り、その中で都市としての機能や経済圏を現実世界と連動させているもの。

メタバース上で得られた収益の一部は連動している自治体等に分配されています。

都市連動型メタバースの第1弾として、渋谷区公認の「バーチャル渋谷」が誕生しました。実在都市と連動させているため認知度が高まりやすく、音楽フェスやハロウィーンなど多くのイベントがメタバース上で開催されています。

最先端技術を掛け合わせた実証実験を行うことも

KDDIは渋谷と最先端技術を掛け合わせた実証実験にも多く取り組んでおり、株式会社Psychic VR Lab と「XRscape」の提供も開始しました。

「XRscape」では、5GやVPSなどのXR技術で実在の都市空間にバーチャル広告やコンテンツを重ねて配信することが可能です。

ユーザーは、スマートフォンなどのデバイスをかざすだけでコンテンツを体験できたりARを活用したスタンプラリーが可能なため街の回遊率上昇にも役立てられます。

また、ARスタンプラリーは従来の紙で行うスタンプラリーと異なりスマートフォンやタブレットを活用するため、インクや人件費などの削減が可能です。

東京、大阪、名古屋、札幌、福岡、京都が対応エリアになっており、現在は渋谷PARCOにて実施されています。

豊富なコラボイベントも人気

バーチャル渋谷ではスポーツ観戦やオンラインフェス、クリスマスなどさまざまなイベントが行われています。また人気アニメとのコラボイベントも行なっており、出演者とアバターで渋谷を回遊できるなどメタバース空間でしかできない体験が人気です。

超渋谷コナンフェス(名探偵コナン)

2022年3月に、学生や若者に青春を楽しみ尽くして欲しいという思いから、au「旅立つ君との超応援祭」と劇場版「名探偵コナン ハロウィンの花嫁」のコラボイベントが開催されました。

このイベントではコナンと安室透が劇場版最新作の公開を記念して映画の魅力を語るトークショーを実施。

トークショー以外にもバーチャル渋谷内を回遊、記念撮影、チャットを用いた交流などメタバース空間の特徴を活用したイベントが行われました。

伍ノ世界(鬼滅の刃)

2022年2月には、バーチャル渋谷と大人気アニメ「鬼滅の刃」がコラボした、「こころ、ゆさぶる伍の世界」が開催されました。

鬼滅の刃をイメージした演出や特設スポットなどが展開され、特にARを活用した「キャラになりきり拡張現実」では各キャラクターの呼吸の型を再現した撮影ができると話題に。

また、2022年3月には、竈門禰豆子の声を務める鬼頭明里さんが実際にゲームを体験、実況するなどのスペシャルイベントも開催されました。

#渋谷攻殻 NIGHT by au 5G(攻殻機動隊)

バーチャル渋谷のオープン時には大人気シリーズ、「攻殻機動隊 SAC_2045」とコラボした「渋谷攻殻 NIGHT by au 5G」が開催されました。

このイベントでは、攻殻機動隊のファンである、SEKAI NO OWARIのDJ LOVEさんや若槻千夏さんなどがアバターで登場し、トークイベントを実施。

コロナ自粛のお家時間ということもあり、オープニングイベントには延べ5万人以上のユーザーが渋谷スクランブル交差点に集結するなど大規模なイベントになりました。

▼関連記事▼
【具体例つき】メタバースとは?メリット・デメリットもわかりやすく解説
メタバース事業とは?市場規模、ビジネスモデルと実例、土地(不動産)まで解説

KDDIはいつからメタバースに参入?実現の経緯と目的を解説

現在さまざまなイベント開催により注目が集まる「バーチャル渋谷」ですが、そもそもなぜKDDIがメタバースに参入したのか疑問に感じる人もいるでしょう。そこで下記ではKDDIがメタバースに参入した経緯や目的について解説します。

プロジェクト自体は2019年にスタート

プロジェクトは2019年にKDDI、渋谷区観光協会、渋谷未来デザインの3社による「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」としてスタート。

インターネット上に「もう1つの渋谷」である「バーチャル渋谷」を作る構想はしていたものの、スタート当初は渋谷の魅力を発見・発信することを目的としてリアルでのイベントを中心に開催する予定でした。

ただ、新型コロナウイルスの影響により緊急事態宣言が予想され実際に渋谷でのイベントは難しいと判断し、自宅で渋谷を体感できる「バーチャル渋谷」が誕生します。

メタバース事業参入の目的

KDDIは、5G時代を見据えて現実世界と仮想世界が融合した未来感あふれる渋谷を作ろうと渋谷区観光協会、渋谷未来デザインと共同でプロジェクトを開始します。

当初はメタバース空間とリアルでのイベントを予定されていましたが、新型コロナウイルスによりリアルでのイベントを断念。

その後、コロナ禍でも誰かと渋谷を共有することを目的にバーチャル渋谷が誕生しました。

バーチャル渋谷のオープン時には「攻殻機動隊 SAC_2045」とコラボしたこともあり、海外のアニメファンも参加するなど国内外で話題になり、その後も多くのアニメとバーチャル空間でコラボを実施しています。

2021年11月からはメタバース空間でのイベントを開催したい企業に向けて「バーチャル渋谷1DAYパッケージ」の販売を開始し音楽ライブやスポーツ観戦など多くのイベントを実施。

今後は企業だけでなく、ユーザー自身でライブを開催したり、店舗を出店したりなど自由に活動でき、より現実世界と連動させる空間づくりを目指しています。

KDDIのメタバースを一挙紹介

上記でも解説したようにKDDIは、渋谷の活性化を目指した「渋谷エンタメテック推進プロジェクト」を進めていました。

ただ、新型コロナウイルスの影響により、メタバース上にもう1つの渋谷である「バーチャル渋谷」が誕生。

「バーチャル渋谷」は多くのイベント開催により大盛況を見せていますが、2021年には、「バーチャル大阪」と「バーチャル原宿」も誕生し、KDDIのメタバースは、さらに拡大が期待されています。

バーチャル渋谷

渋谷区公認の「バーチャル渋谷」は、2020年5月19日にKDDIを中心に73社の会社が参画する「渋谷5Gエンターテイメントプロジェクト」として誕生しました。

「バーチャル渋谷」では、メタバースとリアルを連携させることをコンセプトに毎年さまざまなイベントを開催。

そのイベントの1つとして2021年の「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」ではリアルな自分のアバターでメタバース空間を楽しめる「AVATARIUM(アバタリウム)」連携があります。

「AVATARIUM」連携とは、自分をスキャンすることでリアルな自分のアバターを作成する機能です。

また「AVATARIUMカスタマイズ(アプリ)」を使うことで自分好みの容姿になれたり、アニメとコラボし、自分のアバターにコスプレをさせたりと、いろいろな自分で楽しむことができます。

「バーチャル渋谷」のアクセス方法

  1. スマホまたはPCで「Cluster」をダウンロード(無料)
  2. 「バーチャル渋谷」のHPからアプリを起動
  3. 「Cluster」アカウント作成
  4. 好きなアバターを作成し「バーチャル渋谷」に入場

▼関連記事▼
clusterとは?メタバース業界で存在感を増す企業の動きに迫る!

バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス

2020年に40万人、2021年には55万人と世界中から参加者が集まる「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」。

ハロウィーン期間中は、アニメとコラボしたゲームやリアルとバーチャルを組み合わせた新感覚1人カラオケなどさまざまなイベントが日替わりで開催されています。

音楽フェスでは2020年には、きゃりーぱみゅぱみゅ、BiSH、2021年には、Creepy Nuts、新しい学校のリーダーズなど多くの有名アーティストがバーチャルライブを行いました。

また2021年からは、公式スタッフがアバターの姿になり操作方法やイベントの告知などを行う取り組みも開始。

この取り組みは、地方在住の方や外で働きづらい事情がある方でも安心して楽しく働いて欲しいと三井不動産グループの1つが始めた「メタジョブ!」によって実現しました。

バーチャル渋谷 au 5G シブハル祭

「バーチャル渋谷 au 5G シブハル祭」は、メタバース上で春に行われるイベントです。

2022年は、「バーチャル渋谷」と「バーチャル大阪」の2拠点で開催

森内寛樹、優里、さユりが参加した有料ライブ「JAMJAM powered by smash. ファンミーティング」、VTuberのライブイベント、サッカーメタバース観戦など多くのイベントが開催され各イベントの平均満足度が90%と大盛況を記録しました。

バーチャル大阪

「バーチャル大阪」は2025年の大阪・関西万博に先がけ、“City of Emergence”(創発する都市)をテーマに2021年12月にプレオープン、2022年2月28日に本格稼働。

「新市街」エリアは、道頓堀をモチーフに大阪の雰囲気を味わえるエリアと、梅田スカイビル、大阪城、海遊館など大阪の定番スポットを楽しめるエリアがあります。

また、公式Twitterではエリアやイベントのアイディアの募集を行うなどユーザーと「バーチャル大阪」を創り上げていく取り組みも実施中です。

「バーチャル大阪」では「バーチャル渋谷」と同様にさまざまなイベントが開催されており、2021年のオープニングイベントでは「M-1グランプリ」と連携し、人気お笑い芸人のミルクボーイが裏実況するイベントが行われました。

「バーチャル大阪」のアクセス方法

  1. スマホまたはPCで「Cluster」をダウンロード(無料)
  2. 「バーチャル大阪」のHPからアプリを起動
  3. 「Cluster」アカウント作成
  4. 好きなアバターを作成し「バーチャル大阪」に入場

バーチャル原宿

「バーチャル原宿」は「バーチャル渋谷」と同様に渋谷区公認のメタバース第2弾として2021年5月25日に誕生。

「神宮前交差点エリア」を中心とした街並みが再現されています。

オープニングイベント「バーチャル原宿 au 5G POP DAY OUT 2021」では人気ショップ「atmos」のバーチャル店舗やお笑い芸人のパンサー向井、りゅうちぇる、人気インフルエンサーのねおがトークイベントを開催するなど盛り上がりを見せました。

また原宿発のアーティスト、きゃりーぱみゅぱみゅがスペシャルサポーターに就任しています。

「バーチャル原宿」のアクセス方法

  1. スマホまたはPCで「Cluster」をダウンロード(無料)
  2. 「バーチャル原宿」HPからアプリを起動
  3. 「Cluster」アカウント作成
  4. 好きなアバターを作成し「バーチャル原宿」に入場

バーチャル渋谷はなぜKDDIなのか?携帯3社のメタバースを比較

ここまででKDDIのメタバース事業を解説してきましたが、NTTドコモ、ソフトバンクもメタバース事業に投資をしており、それぞれが異なったプラットフォームを採用しています。

例えば、NTTドコモと提携している「Vket Cloud」はアプリをインストールすることなくブラウザのみでの利用が可能です。

また、ソフトバンクが出資した「ZEPETO」はファッションに特化しておりディズニーやGUCCIなどとコラボも実現しています。

NTTドコモが運営するメタバース「XR World」

「XR World」は2022年3月25日にローンチされたNTTドコモの独自メタバースです。

「XR World」は、バーチャル空間内でコミュニケーションを行いながら、アニメやスポーツ、観光といったコンテンツを楽しめます。

最大の特徴はアプリが不要でブラウザのみで楽しめる点です。現時点ではスマートフォンとPCが対応デバイスとなっており、今後はVRヘッドセットにも対応するとされています。

同サービスは有料コンテンツと無料コンテンツに分かれており、広場のモニターでライブ映像を視聴できたり、将来的には別のメタバース空間に繋げることも想定されています。

コンテンツは随時追加されており、2022年4月29日には、三代目 J SOUL BROTHERS from EXILEの今市隆二のソロプロジェクト「CHAOS CITY」を再現したバーチャル空間も登場しました。

▼関連記事▼
ドコモのメタバース関連サービス|5G時代に向けた戦略や他社比較を紹介

ソフトバンク一押しのおしゃれ系メタバース「ZEPETO」

「ZEPETO(ゼペット)」は、Z世代を中心に世界中に約3億ユーザーを抱える大規模なメタバースです。

もともとは、簡単に写真の加工ができるアプリ「SNOW(スノウ)」から派生し、現在は韓国NAVER Z(ネイバーZ)が運営しています。

「ZEPETO」の特徴は、簡単にアバターが作れるだけでなく、約400万のアイテムの中から自分好みにカスタマイズできたり、有名ブランドとのコラボアイテムも豊富に存在している点です。

また、「ZEPETO」内にバーチャル店舗「ソフトバンクショップ in ZEPETO」を2022年6月23日にオープンしました。

「ソフトバンクショップ in ZEPETO」では、実際にスマホやアクセサリーを購入できたり、アバター姿の公式クルーとの会話も楽しむことができます。

▼関連記事▼
ソフトバンクが取り組むメタバース事例3選!仮想空間に期待が掛かる理由も解説

KDDIがタッグを組んだ国産メタバース「Cluster」

「Cluster」はクラスター株式会社が運営するメタバースプラットフォームで、2022年7月に100万ダウンロードを達成しました。

本記事でもご紹介した通り、KDDIの「バーチャル渋谷」のプラットフォームとしても使用されています。

「Cluster」の特徴は、誰でもバーチャル空間を作れたりイベントを開催できるという点です。

例えば2021年9月には、三菱UFJ信託銀行が「Cluster」を使ったバーチャル空間で新卒採用イベントを開催しました。

メタバース上で採用イベントを行うメリットとして、現場へ訪問することなくオフィス体験ができることが挙げられ、働くイメージやお互いの理解を深めていくことが可能です。

上記以外にも「Cluster」では、毎日さまざまなイベントに活用されており、ただ楽しむだけでなく、新たな出会いやビジネスのきっかけにも活用されています。

NTTドコモソフトバンクKDDI
提携メタバースXR WorldZEPETOCluster
開始日2022年3月31日2018年8月2018年5月31日
運営会社NTTドコモ(日本)NAVER Z(韓国)クラスター株式会社(日本)
料金無料(一部有料)無料(一部有料)無料(一部有料)
利用者数約3億人約100万人
利用デバイスPC、スマホ、タブレットPC、スマホ、タブレットPC、スマホ、タブレット、VR
特徴Webブラウザのみで利用可能アバターのカスタム種類が豊富自分で空間を作れる
コラボの例松任谷由実、今市隆二などワンピース、ディズニーなどコナン、鬼滅の刃など

▼関連記事▼
clusterとは?メタバース業界で存在感を増す企業の動きに迫る!

まとめ

KDDIメタバースは実在都市と連動させ、さまざまなイベントを仮想空間上で行ったり、新しい働き方を提案したりと、おもしろい取り組みが行われていることをご紹介しました。

特に日本はアニメ大国と呼ばれていることもあり、アニメキャラクターとのコラボイベントは国内外から多くのユーザーが参加する人気コンテンツです。

KDDI以外にも日本のメタバース事業は、わずか数年で仮想空間ならではのイベントが開催されたり、新たな空間が作られたりと今後の発展が期待できます。

またメタバース市場はさらに拡大していくことが想定されており、実際に世界のメタバース市場は2028年に8,300億ドルまで成長すると米調査会社エマージェンリサーチが発表しました。

そのため今のうちにメタバースの理解を深め、ビジネスチャンスを逃さないよう上手く活用したいところです。

▼関連記事▼
メタバースはビジネスチャンスの宝庫?活用事例やメリット・デメリットを紹介
メタバースの市場規模(2021〜2030予測)と今後伸びる業界ランキング

Reinforz Insight
ニュースレター登録フォーム

最先端のビジネス情報をお届け
詳しくはこちら

プライバシーポリシーに同意のうえ