近年大きな話題となっている「メタバース」ですが、実際にどのような事業が展開されているかみなさんご存じでしょうか。実はメタバースは、よくいわれるVRやNFTなどの技術だけではなく、教育・広告・製造業・不動産など多岐にわたる分野での活用が期待されているのです。

この記事ではメタバース業界の市場規模やビジネスモデルについて、メタバース不動産などの注目分野も踏まえて国内外の実例を解説します。今後も成長が見込まれるメタバース業界でのビジネスを考えている方は必見です。

メタバース事業とは?

大きな注目を集める「メタバース」ですが、そもそもメタバースとはどういった意味で、どのように事業展開されているのでしょうか。ここでは、メタバース事業の概要について解説します。

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仮想空間を活用したあらゆるビジネスのこと

メタバースとは、「超える」という意味の「メタ」と「宇宙」という意味の「ユニバース」を合わせた造語です。インターネット上に構成された仮想空間で人々がコミュニケーションを取ったり、経済活動を行ったりできる場を意味します。

メタバース事業とは、このような仮想空間で行われるさまざまなビジネス全般のことです。VR(仮想現実)・AR(拡張現実)などの技術を用いて、よりリアリティのある仮想空間が開発されています。

中でもメタバースに大きな革新を与えた技術がNFT(非代替性トークン)です。NFTの活用によってデジタルデータの複製を困難にして保有者を明確にすることが可能となり、メタバース上のアバターやアイテムなどのデータが資産性を持つようになりました。

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メタバース事業が今注目されている理由

メタバース事業が今注目されている理由は、主に以下の3つです。

  • VR技術の発達による仮想空間のリアリティ向上
  • NFTによる仮想空間での経済活動の大規模化
  • コロナ禍によるオンラインコミュニケーションの需要増

1点目は、VR技術の発達です。メタバースの先駆けといわれる「Second Life」というサービスは2007年ごろに一時注目を集めましたが、当時の3DグラフィックやVR技術の低さからあまり広まりませんでした。

しかし現在ではパソコン・スマートフォンのスペック向上やVRヘッドセットなどのデバイスも開発されたことで、高い没入感で仮想空間を利用できるようになったためメタバースが注目されています。

2点目は、NFTの流行です。メタバース上でやり取りされるデジタルデータは簡単にコピーされたり、偽物のアイテムが作成されたりすると経済が成り立ちません。

NFTはブロックチェーン技術により複製困難なIDをデジタルデータに割り当てることで、その判別を可能にしました。これにより、メタバース上で経済圏が作られ始めています

3点目は、コロナ禍の影響です。感染症により物理的な接触が難しくなり、オンラインでのコミュニケーションに注目が集まりました。

これまでオンラインでのやりとりは音声やビデオによる通話がメインでしたが、よりリアルな対話ができるとして仮想空間やメタバースが注目されているのです。

メタバースにあたるサービスは10年前から存在していましたが、以上の3つの理由により技術的に進歩してきました。さらに、Facebook社が「Meta」へと社名変更したことからもビジネスの手段として大きく注目されるようになっています。

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メタバースの市場規模は5兆円を超えて拡大中

メタバースは多くの企業が注目しており、実際に市場は拡大しつつあります。具体的にどれほどの市場規模があり、これからどのように成長していくのでしょうか。ここでは、メタバースの市場規模について今後の予測を交えて解説します。

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2021年における世界全体の市場規模はおよそ5兆4,000億円

カナダの調査会社Precedence Research社は市場調査を行い、2021年のメタバースの市場規模は約5兆4,000億円であるというレポートを発表しました。2021年はMeta社の社名変更などメタバースが特に注目され、特に大きく躍進した年となっています。

また、NFTやブロックチェーンなど関連する技術の市場も含めると、実質的な市場規模はさらに大きなものである可能性もあります。

2030年の市場規模予測は200兆円以上

同レポートでは2022年以降も市場規模は拡大を続け、2030年には200兆円を超えるのではないかと予測しています。すでにMeta社・Microsoft社など最大手のIT企業が開発に大きく投資しており、その開発を踏まえてこれに続く企業が多数登場するためです。

また、今後はインドや中国などアジア太平洋地域でも市場規模が伸びていくと予想されています。予測数値は説によってかなり幅があるものの、今後もスタートアップの登場などによりさらなる市場拡大が期待されます。

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メタバース事業のビジネスモデルは2種類に分けられる

それでは、メタバース事業には具体的にどのようなビジネスモデルがあるのでしょうか。

ここには大きく、メタバース内で行われるビジネスと、メタバースのプラットフォームなどインフラを提供するビジネスの2種類に分けられます。異なるもののようで密接に関わっている両者について、詳しく見ていきます。

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メタバースで行うビジネス

メタバース内で行われるビジネスには、主に以下のようなものがあります。

  • メタバースでのイベント開催
  • 土地・NFT・建築物などの提供や売買
  • メタバースを利用した教育やトレーニング
  • ゲームの提供
  • メタバース広告業
  • メタバースマーケティング
  • 既存事業をメタバース化により最適化

この中でも現在特に注目されているのは、メタバースでのイベント開催です。コロナ禍によって人がオフラインで集まるイベントの開催が難しくなり、その代替としてのメタバースイベントが注目されました。

イベントの開催はそれ自体が大きな経済活動となります。メタバース空間を貸し出す不動産業者だけでなく、イベントワールドを作る事業者、また実際に株式会社博報堂が開発を進めるメタバース広告などのビジネスが成り立つのです。

また、既存事業をメタバース化するNvidia社の「Omniverse」も大きな話題を呼んでいます。これは現実世界と同じ空間をメタバースに再現する「デジタルツイン」を作成するサービスです。

工場の製造工程などを高い精度でシミュレーションすることで、効率的な稼働を測定することを可能にしています。

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メタバースプラットフォーム自体やインフラを提供するビジネス

メタバースのインフラに関わるビジネスは、主に以下のようなものがあります。

  • メタバース空間の提供
  • 土地・NFT・建築物などを売買する市場の運営
  • メタバース用デバイスの開発

メタバースプラットフォームの具体例としては「The Sandbox」が挙げられます。これはユーザーが好きなように自分のアイテムや土地をカスタマイズできるメタバースプラットフォームで、立方体を組み合わせた「ボクセルアート」のデザインが特徴です。

実際にユーザーが作成したアバターやアイテムをNFTとして販売できるほか、自分が保有する土地を貸し出して収益を得たり、イベントを開催して広告収入を得たりと幅広い経済活動が行えます。

また、メタバース用デバイスの開発も大きく注目されるビジネスの一つです。VRゴーグルとしてMeta社が開発する「Meta Quest 2」などが有名ですが、大型のため長時間の装着が難しいなど課題もあります。

Shiftall社が開発するメガネ型VRデバイス「MeganeX」などより利用しやすい機器が開発されており、今後も市場は成長すると期待されています。

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日本におけるメタバース参入企業と事業の実例

日本企業にも、メタバースへ大きく力を入れる企業が多数存在します。ここでは、その一例を見ていきます。

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KDDI

通信事業大手のKDDIが力を入れているのが、実際の都市をモデルに作成されたメタバース空間での都市体験です。渋谷区公認のもと「バーチャル渋谷」「バーチャル原宿」がすでに作成されています。

バーチャル渋谷では、実際にさまざまなイベントが行われてきました。例えば、2021年10月に開催された「バーチャル渋谷 ハロウィーンフェス」です。「Cluster」と呼ばれるメタバースプラットフォーム上にスマートフォンやパソコンから誰でも入場できるイベントとして開催されました。

有名アーティスト・有名人などによるライブやトークイベントなどを見ながら、たくさんの人とコミュニケーションができる場としてメタバースを活用しています。

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三越伊勢丹

日本の老舗百貨店である三越伊勢丹が展開するのは、仮想都市空間プラットフォームの「REV WORLDS」で営業しているメタバース上の店舗です。

このプラットフォームは新宿をモデルに作成されており、メタバース上の「仮想伊勢丹新宿店」にはインターネット上どこからでもリアルなショッピング体験ができます。

メタバース上の伊勢丹では陳列された商品をそのままオンラインストアで購入が可能です。また、アバターに使えるオリジナルの服装があるなどファッションをより楽しめる機能も存在します。

さらに、大規模なカスタマイズがしやすいというメタバース不動産の利点を生かして、時期ごとに有名アーティスト・企業とコラボした販売フロアが制作されています。

例えば2022年8月には、「Ultimate Princess Celebration」をテーマとしてディズニープリンセスをイメージした内装がデザインされ、関連する商品が展示されました。

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ソニー

大手総合電機メーカーであるソニーも、メタバースへ参入しています。特に話題となっているのは、スポーツの審判を補助するシステム「ホークアイ」を利用した3Dのスポーツコンテンツです。

ホークアイは、人間の目で追うのが困難なスポーツの審判をサポートするためにボールトラッキングやビデオリプレイなどをAIが自動的に行うシステムです。実際にテニス・サッカー・ラグビーなどの種目で実用化されています。

このホークアイを活用して、撮影されたビデオデータを三次元コンテンツにしてメタバース上でどこからでも見られるようにしようというのがソニーの試みです。より直近でリアルなスポーツ映像を楽しめるとあって、大きな期待が集まります。

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海外におけるメタバース参入企業と事業の実例

それでは、具体的にメタバースに参入している企業にはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは特に海外企業について、そのビジネスモデルなどを紹介します。

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ナイキ

ファッション業界大手のナイキはメタバース事業に早くから参入した企業の一つです。ナイキの世界観を楽しむことができるメタバース空間として、「Roblox」というオンラインゲーム内に「NIKELAND」という3D空間を制作しました。

NIKELANDでは、複数のプレイヤーが集まって鬼ごっこやドッジボールといったスポーツゲームを遊ぶことができます。また、ユーザーがオリジナルのミニゲームを作ることも可能です。

さらに、加速度センサーが内蔵されたデバイスを用いて現実世界での運動記録をメタバース上のゲームに反映させることもできます。

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マイクロソフト

マイクロソフトはメタバース要素の強いゲームである「マインクラフト」を買収したことが話題となりました。マインクラフトは広大なワールドを探索したり、ブロックを組み合わせてオリジナルの建造物を制作することが可能なゲームです。

マインクラフトはディズニーやラコステなど大手企業とコラボレーションしたワールドが制作されるなど、幅広く空間をデザインできることを前面に押し出しています。複数のユーザーが同時にログインすることで対戦や交流も可能です。

また、ビジネスに利用されるメタバースプラットフォームも開発しています。例えば、マイクロソフトのチャットツール「Teams」のサービスにメタバース上での会議を可能にする拡張機能「Mesh for Microsoft Teams」です。

会議室の仮想空間に参加者のアバターを配置することで、実際の会議室のようにリアルなコミュニケーションを可能にしています。

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メタ(フェイスブック)

メタバースが流行するきっかけになったとも言える社名変更を行ったメタ社では、特にメタバースの利用に必要なVRゴーグルの開発に力を入れています。

メタ社の開発する「Meta Quest 2」は、それだけでVR空間を体験できるVRゴーグル・コントローラーのセットです。リアルなグラフィックやサウンドによる高い没入感はもちろん、CPUを内蔵しているためパソコンなどへ接続せず単体の動作も可能となっています。

また、実際にMeta Quest 2が動作するプラットフォームも開発中です。メタ社の開発する「Horizon Worlds」では、ユーザー同士の交流・スポーツや音楽のイベント・映画鑑賞などをVRで行うことができます。

仮想空間上でできるさまざまなことを可能にする、メタバース最大手ならではのプラットフォームといえます。

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メタバース事業において土地(不動産)が今注目されている

幅広いメタバース事業の中でも特に注目されているのが、メタバース不動産の事業です。メタバース上の不動産はNFTによって希少性が担保されているため、現実世界の不動産と扱いに大差はありません。

実際に「The Sandbox」の土地は、エイベックス社長の松浦勝人氏や世界的ラッパーのスヌープ・ドッグ氏などの有名人、GUCCIやadidasといった世界的な企業にも購入されています。

メタバース不動産の販売総額は2021年にはすでに580億円を超えており、2022年には1300億円以上になるという予想データもあるほどです。

ここでは、メタバース不動産とはどのようなものなのか、また具体的にどのようにビジネス化されているのかについて解説します。

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土地(不動産)とは、仮想空間上の一区画を表すNFTデータのこと

そもそもメタバース上の土地(不動産)とは、どのようなものなのでしょうか。これは、メタバース上の土地の区画をNFTデータにしたものを指します。

NFTとはブロックチェーン技術により複製が困難なデジタルデータのことで、メタバース不動産はこの技術によって希少性が担保されています。

例えば、「The Sandbox」の土地には区画ごとのNFTが存在します。そのNFTを保有している人が土地を自由にカスタマイズしたり、貸し出したりできるという仕組みです。

このように、NFTはその土地の権利書のようなものですので、現実の不動産と扱い方にあまり違いはありません。

仮想空間上に家や店舗を建てるために売買・賃貸される

仮想空間上の土地に家や店舗を建てるには、その土地に対応したNFTを保有する必要があります。土地NFTは、NFTマーケットプレイスなどで取引することで購入が可能です。

もちろん、現実の土地と同じように価格が上下する場合があります。特に人が集まりやすい場所の土地は価格が高騰し、逆に人気の下がったプラットフォームの土地は価格が下がるというデメリットもある点を理解しておきましょう。

現実世界の不動産と異なる点は、NFTによって保有者がすぐに分かり、その移転に面倒な手続きがいらないことです。また、プラットフォームによっては土地の貸借も簡単に行える場合があります。現実の不動産よりも手軽に売買・購入ができるのがメタバース不動産の特徴です。

現時点で土地を取引可能なメタバースサービスは限られる

注意点として、現状のメタバース不動産はどれでも売買できるわけではありません。どのプラットフォームの不動産かによって扱い方に大きく違いが出ているので、必ず購入前に利用方法について確認しておきましょう。

また、法律がまだ整備しきれていないという点にも注意が必要です。NFTには保有者が誰であるかデータ上記載されているものの、その所有権が法的に認められるかはまだグレーな状態です。

まだ発展途上なため活用に制限がかかることもあるメタバース不動産ですが、今後はプラットフォーム規格の統一や法律面の整備などが期待されています。が行われることが期待されます。

まとめ

メタバース領域の事業は2021年に大きく躍進しましたが、これからもさらに多くの企業が参入し、市場規模が伸びていくと考えられます。まだ技術や法律整備が追いつかない面がありますが、早くに参入することで今後拡大する市場をおさえられるでしょう。

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