「JTBはどんなメタバース事業を手がけている?」
「JTBがメタバースで炎上してしまった理由は?」
「観光業にメタバースをどう活かせるの?」
あなたはこのような疑問を抱えていないでしょうか。
旅行会社として知られるJTBも、メタバースを活用した事業を展開しています。
他社との共同開発で立ち上げた事業でしたが、とある理由で炎上してしまい未だリリースに至っていません。
どんな事業で何が問題だったのか、疑問に感じる人もいるでしょう。
そこでこの記事では、以下の内容を解説します。
- JTBのメタバース事業の内容
- JTBのメタバース事業が炎上した理由
- JTB以外の観光業でメタバースに進出した事例
JTBのメタバース事業について知りたい人は、ぜひご一読ください。
JTBのメタバース事業「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」について解説
JTBはメタバースで「バーチャル・ジャパン・プラットフォーム」という事業を立ち上げています。
コロナ禍の影響を受けて始まった事業で、観光産業の回復や地域活性化が目的です。
バーチャル・ジャパン・プラットフォームがどのような事業か、詳しく解説します。
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業の概要
バーチャル・ジャパン・プラットフォームは、仮想空間上にバーチャルな日本を作りあげようという試みです。
世界中の人々が観光やショッピングなどを楽しみ、交流を深められるようにすることが考えられています。
2020年からのコロナ禍で人流が制限されたことで、これまでのように海外に行けなくなりました。
そこでメタバース上にバーチャルの日本を作ることで、人流が制限されていても持続できる新しい交流や流通の流れを生み出そうとしたのです。
また利用者の日本に行ってみたいという気持ちを喚起し、観光産業の回復と地域活性化を図ろうという狙いもあります。
JTBと「Fun Japan Communications」「FIXER」による共同開発
バーチャル・ジャパン・プラットフォームは、以下3社により共同で開発されました。
Fun Japan Communicationsは、JTBグループの企業です。運営している日本紹介メディア「FUN! JAPAN」を通してPRし、バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業を推進する役割があります。
株式会社FIXERは、クラウドに特化し、情報システムの設計・構築・運用等の全工程を一貫して請け負っている企業です。
プラットフォーム構築を担当しており、事業に欠かせない立場と言えるでしょう。
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業が始まった背景
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業が始まった背景には、新型コロナウイルスの世界的大流行があります。
感染拡大当初は人々の往来が制限され、観光地に人が来ない・旅行に行く人がおらず事業が成り立たないという状態でした。
新型コロナウイルスをきっかけに「人の動きが制限されるとビジネスとして成立しない」という、観光業の問題が浮き彫りとなります。
そこで人流が止まってもビジネスを動かせるスタイルを作り、日本の観光産業進化と地方創生につなげるため、事業が立ち上がったのです。
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業の目的
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業は、仮想空間上に世界中の消費者や日本各地の自治体・事業者が集まる、新しい場所を作ることを目的としています。
実現できれば、コロナ禍のような事態で人流が制限されても、観光業が継続できるためです。
事業が発表された2021年4月は、外国からの観光客はまだ来日できずインバウンド消費が止まっていました。
そのためバーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業は、インバウンド消費をECで復活させることを第一段階としています。
その後日本人が楽しめるサービスを充実させ世界の架け橋になる場所にしていき、観光業の活性化と地域経済への貢献につなげる計画です。
またプラットフォーム上での交流をきっかけに、コロナ収束後もリアルで関係を継続できるようにすることも、目的としてあります。
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業の構想
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業では、FIXERが保有するクラウド上にプラットフォームを構築することを考えています。
日本政府は訪日外国人旅行者数を、2030年までに6,000万人以上にすることを目標としました。
それに対しJTBを含む3社は、バーチャル交流人口の規模は訪日外国人旅行者数の目標を上回ると予想。
そのためバーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業は、2024年までに1,000万人のアクティブな交流人口を生み出すことを目標としています。
まずはバーチャル空間内でアバターを通じて、交流や観光などリアルに近い体験を実現。その後、日本のサービスを発信できる機能を拡充することを考えています。
JTBとJCBによるメタバース「XANA」も開発開始
JCBとJTBの合弁会社である「J&J事業創造」でも、2022年10月から新たなメタバース事業の開発が始まりました。
次世代型エンターテイメントテクノロジーカンパニー「NOBORDER.z」が開発するメタバースプロジェクト「XANA」と協業したものです。
J&J事業創造は、XANA上のメタバース土地「LAND」を取得し、観光振興・地域活性化支援を目的とした開発をしています。
LANDでの開発を通し、メタバース上でレンタルスペースの提供や観光活性化につながる支援をすることを計画しました。
具体的には「大規模なメタバースイベントを開催できるホール」や「アートギャラリー・ライブイベントに活用できるスペース」の構築などです。
バーチャル・ジャパン・プラットフォームと同じく、観光産業と地域経済の活性化を目的としています。
JTBのバーチャルジャパンがひどいと炎上してしまった理由
3社共同開発で始まったバーチャル・ジャパン・プラットフォームですが、サービス発表時に炎上する事態となりました。
バーチャル・ジャパン・プラットフォームが炎上した理由は、主に以下の2つです。
- グラフィックのクオリティがクオリティが不評
- 推定70億円の開発費がかけられている
順番に見ていきましょう。
グラフィックのクオリティがクオリティが不評
炎上した最大の要因は、グラフィックのクオリティが不評だったことです。SNS上でも、以下のように不評の声が相次いでいます。
担当者への取材では「グラフィックを極めることではなく、観光地での体験やコミュニケーションに力を入れている」という説明がありました。
発表されたのはあくまでイメージとしての資料動画であり、地元からの要望を受けてブラッシュアップしていきたいと語っています。
参照:https://www.j-cast.com/2021/04/09409212.html?p=2
しかしグラフィックが20年ほど前のゲームのような画面で、バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業が目指しているものからあまりに程遠いと受け止められ、炎上しました。
2. 推定70億円の開発費がかけられている
真偽不明ですが、ネット上では開発に70億円かかっているという情報があります。
バーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業の開発費について公式発表はないため、正確な金額は不明。つまり開発費70億というのも、噂でしかありません。
ただこういった噂があることで「70億円かけたにも関わらずクオリティが不十分」と受け止められてしまい、炎上につながっています。
JTBのバーチャルジャパンプロジェクトのその後【2023年1月時点公式サイトもなし】
発表後に炎上する事態となったバーチャル・ジャパン・プラットフォーム事業は、その後動きが一切ありません。
当初は2021年4月から、アジア地域の日本が好きな方を対象に登録開始を予定していました。
しかし2023年1月時点でも特に新しい発表はなく、公式サイトも開設されていません。
また2023年1月時点では事業発表当時よりもコロナも落ち着き、観光客も戻り始めています。
サービス開始の目的と合わなくなってきていますし、当初の予定より2年近く経過しても進展がない状態です。
そのため今後、サービス開始そのものがなくなる恐れもあります。
JTBだけじゃない!メタバースに進出した観光業の5つの事例
ここまでJTBのメタバース事業について解説してきましたが、観光業では他にも以下のメタ事例があります。
- バーチャル大阪
- バーチャル日本博
- メタ・リゾートTOKYO
- バーチャルOKINAWA
- KOTOBUS
順番に見ていきましょう。
バーチャル大阪
バーチャル大阪は、2025年の大阪・関西万博に向けて、大阪の魅力を世界に発信するための都市連動型メタバースです。
大阪府と大阪市、KDDIの共同開発で、バーチャルプラットフォーム「cluster」で公開されています。
バーチャル大阪には、以下の観光地もメタバース上に再現されています。
- 道頓堀
- 大阪城
- 梅田スカイビル
メタバース上の道頓堀に飛び込むと「バーチャルでも飛び込んだらアカンよ!」という注意書きが表示される遊び心も魅力です。
見慣れた大阪の風景でも、メタバース上にあることで不思議な感覚になれます。
▼関連記事▼
clusterとは?メタバース業界で存在感を増す企業の動きに迫る!
バーチャル日本博
バーチャル日本博では、バーチャル空間の中で舞台芸術や自然といった、日本の美しい産物や伝統文化にバーチャル上で映像を通して触れられます。
2021年にオープンしていたものが、メタバースとして大幅リニューアル。アバター機能を搭載することで、日本文化体験により没入できるようになりました。
スマートフォンやパソコンから気軽にアクセスできるため、メタバースにより世界に向けて発信可能です。
実際の会場での「リアル体験」と仮想空間での「バーチャル体験」の融合を目指しており、コロナ禍でのサービス提供と収束後の展開を想定しています。
メタ・リゾートTOKYO
メタ・リゾートTOKYOは、ピクセルカンパニーズ株式会社が発足させたプロジェクトです。
VRプラットフォーム「Decentraland(ディセントラランド)」上に東京をイメージした仮想空間を作り、その中に複合リゾート施設を建設し公開することが予定されています。
建設する施設は、以下のようなものです。
- 国際会議場
- 映画館
- ショッピングモール
- 劇場
- アミューズメント施設 など、
さまざまな機能を持つ施設を多くの人々が行き交うようにすることで、コロナ禍で来られなかった東京を体験可能です。
また日本文化の発信だけでなく、音楽ライブやイベントの実施、NFTを活用したコンテンツビジネスの検証なども考えられています。
バーチャルOKINAWA
バーチャルOKINAWAは、VRプラットフォーム「VRChat」内で公開されている沖縄発のメタバースです。
以下のような沖縄の観光地をメタバース上で再現しています。
- 国際通り商店街
- ビーチ
- 首里城
世界中どこからでも沖縄の世界遺産を体感でき、沖縄をより身近に感じられる空間です。
2022年10月28日〜11月7日には「OKINAWA JAPAN VIRTUAL FES 2022」というバーチャルイベントを開催。10万人ものイベント動員を記録しました。
KOTOBUS
「琴平バス」が実施している、オンラインバスツアーです。
観光地の景色を動画で見ながら現地についての話を聞いたり、他の参加者たちと話したりできます。
琴平バスでは、以前からZoomで実施していたオンラインバスツアーを、メタバース上で開催しました。
高知県のご当地VTuverr「花琴いぐさ」とコラボし、2022年5月22日に実施。四万十川の佐田沈下橋や足摺などをメタバースを通して訪れました
メタバースを活用することで、オンラインバスツアーへの新たな顧客層を狙っています。
観光業がメタバースに進出するメリット
観光業のメタバース進出には、以下のようなメリットがあります。
- メタバース上で旅行を疑似体験できる
- どこからでもアクセス可能
- アバターを通して交流できる
順番に見ていきましょう。
メタバース上で旅行を疑似体験できる
メタバース上では、現地まで行くことなく旅行を体験できます。
メタバースでは現実に限りなく近い世界が再現されており、アバターを通じて中に入り込めるためです。
自分の見たい場所に行ったり買い物をしたりなど、実際の旅行と同じような体験もできます。
サービスによっては現実世界以外にも行けるため、過去の世界を旅行するというようなことも可能です。
実世界の旅行から、現実では行けない場所への旅行も擬似体験できます。
どこからでもアクセス可能
メタバースはオンライン上のプラットフォームなので、場所を選ばず利用可能です。
自宅から海外の観光地へのアクセスもできますし、時間も予算も500〜1,500円程度しかいりません。
遠くに住んでいる家族や友人であっても、時間を合わせれば一緒に観光に行くこともできます。
また低予算で旅行できる分、複数の観光地を回って楽しむのも良いでしょう。
アバターを通して交流できる
アバターを通じて、現地の人や自分と同じ参加者と交流可能です。
実際の旅行さながらに交流することで、旅の体験をより充実したものにできます。
アバターを通じたコミュニケーションは動きや表情が滑らかで、Zoomのようなテレビ会議ツールより対面に近い感覚です。
メタバース上で実際に会っているかのような交流をしてくことで、現地への誘客も期待できるでしょう。
観光業がメタバースに進出するデメリット
観光業のメタバースへの進出には、以下のようなデメリットもあります。
- 継続的な運用が必要
- 費用がかかる
順番に見ていきましょう。
1. 継続的な運用が必要
メタバースのプラットフォームをユーザーに続けてきてもらうためには、コンテンツの用意やイベントの実施が必要です。
継続的なプロモーションを行わないと、サービスそのものを続けられなくなります。
メタバースの設計技術については未発達な部分が多く、対応できるエンジニアはあまりいません。
現在はメタバースに限らず、エンジニアそのものが不足している状態です。人手不足という面でも、メタバースの運用は容易ではありません。
▼関連記事▼
メタバースエンジニアになるには?必要なスキルや必修言語などを徹底解説
2. 費用がかかる
メタバースは3DCGで仮想空間を構築するため、多額の初期費用がかかります。
長期的に運用するなら、その分より多くのコストが発生するでしょう。
明確な根拠はないですが、バーチャル・ジャパン・プラットフォームにも70億の開発費がかかったという噂があるほどです。
もしうまくいかなければ、赤字になった場合の損失も大きいでしょう。
メタバース進出前にどのくらいの費用がかかるかを試算し、事業として成立するかの判断しておくことが必要です。
▼関連記事▼
メタバースのビジネスモデルとは|事例と収益化のポイントを徹底解説
メタバース事業とは?市場規模、ビジネスモデルと実例、土地(不動産)まで解説
メタバース開発の基本と流れが丸わかり!実際の開発例や費用も紹介
まとめ
JTBは他社との共同開発でメタバースに進出しましたが、炎上する事態となりサービス開始自体が危ぶまれています。
大企業であってもメタバース事業は容易ではないため、進出するなら周到な準備がいるでしょう。
ただ観光業でメタバースに進出した事例は多数あり、やり方次第で新たなビジネスを作り上げられます。
この記事の内容も参考に、メタバースへどう進出すると良いか検討してみてください。
▼関連記事▼
メタバース旅行とは?おすすめのメタバース旅行7選を紹介
ANAが手がけるメタバース『GranWhale』とは?提供する3つのサービスなどを解説