「メタバース」という言葉が突如として世間を賑わしたのは、2021年10月のことでした。

きっかけは、世界の月間アクティブユーザー数が約29億人(2022年1月時点)にものぼる「Facebook」を運営するフェイスブック社の、「Meta」への社名変更です。

「メタバース(Metaverse)に事業をシフトする」という強い意気込みがみてとれますが、Metaが目指すメタバースの世界・未来はどのようなものなのでしょうか。

そこで本記事では、Meta(旧Facebook)が取り組むメタバース事業を徹底解説。Metaが積極的に投資する理由や、現在の主力商品・サービス、メタバースの将来性をまとめているので、メタバースの現在地点を把握したいビジネスパーソンは必見です。

「Meta(旧Facebook)」はどんな会社?

会社名Meta
創業2004年
代表取締役・CEOマーク・ザッカーバーグ
事業内容SNSプラットフォーム事業SNS広告事業メタバース事業
売上高1,166億USドル(15兆6,200億円)
営業利益289億USドル(3兆8,700億円)

※1ドル134円換算

Meta(旧Facebook)は、2004年に設立されたソーシャルメディア事業が中心の企業です。2012年にはInstagramを、2014年にはWhatsAppを買収し、巨大テック企業として成長しています。

2022年1月時点における各SNSの月間アクティブユーザー数は、Facebookが29.1億人、Instagramが14.7億人、WhatsAppが20億人にのぼります。Metaが運営するSNSは世界中で利用されており、メタバースへのビジネス展開は、多くのユーザーを抱えるMetaにとって千載一遇のチャンスといえるのです。

「Meta(旧Facebook)」は2021年10月に社名変更

SNS事業で世界の覇権を握っていた旧FacebookがMetaへの社名変更を発表したのは、2021年10月29日のことでした。

発表がなされたのは、年次の開発者向けイベントである「Connect 2021」の基調講演。約1時間半の講演では、CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が「メタバース」のビジョンを紹介する内容が大半でした。基調講演の最後に発表されたのが、「Meta」への社名変更です。

同氏は講演内で、VRやARを向上させるために行っている取り組みや、将来的にメタバースのソーシャルな可能性を実現するためにどのようなことに取り組んでいるかを紹介。

ソーシャルVRプラットフォームの「Horizon」に関するアップデートや、VRでのMessanger通話が可能になるなどの発表も。エンターテインメントやソーシャル体験にとどまらず、ビジネスの現場などでも幅広くメタバースが活用される未来が期待されます。

「Meta(旧Facebook)」がメタバースに投資する3つの理由

Metaがメタバースに投資する理由は、大きく分けて以下の3点です。

  • 自社ビジネスを多角化させるため
  • メタバース事業を牽引して市場を開拓するため
  • Facebook利用者以外の新規ユーザーを獲得するため

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自社ビジネスを多角化させるため

Metaの収益モデルは、SNSユーザー向けの広告ビジネスによる広告収入が大半を占めています。2021年度の収益は約1,179億ドルで、そのうち約1,149億ドル(97%)が広告収入です。

Facebook・Instagram広告は精度の高いターゲティングが強みで、Meta社の売上を強力に支えています。しかし、ひとつの事業に偏りすぎる収益モデルは、企業の永続的な発展という意味ではリスクといえます。

世界の月間アクティブユーザーも相当数に達しているため、広告事業でさらに売上を伸ばすのも、頭打ちする可能性があるでしょう。

そこでメタバース事業に乗り出し、新たな収益源を求め、ビジネスの多角化に舵を切ったのです。

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メタバース事業を牽引して市場を開拓するため

Meta社としては、「メタバース=次世代の新しいインターネット」と捉え、巨大なビジネスチャンスがあると見込んでいます。

その巨大市場に対して先陣を切るかたちで、市場を開拓する狙いがあります。

Metaは2021年10月の決算発表において、メタバースの構築に同年だけで少なくとも100億ドルのコストが必要になると発表。今後数年間で投資費用はさらに増加する可能性が高いと述べており、向こう10年は収益を生み出せないと発言しています。

それでも、メタバースが2031年までにアジア太平洋地域にもたらす経済効果は1兆ドルと試算されています。さらに、2035年までに日本にもたらす経済効果は日本円で約12〜24兆円との見込みも。

Metaはこうしたリターンを期待し、メタバース事業を牽引して市場で先行者優位の獲得を目指しているのです。

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Facebook利用者以外の新規ユーザーを獲得するため

総務省が発表した令和3年度におけるFacebookの利用者を年代別でみると、30代が最も多く、続いて40代、次いで20代という結果でした。TwitterやInstagramは20代が最も多く利用しており、TikTokは10代の利用が最多です。

Facebookの利用者層は他のSNSに比べて高い傾向にあり、メタバース事業の展開を通じ、新規ユーザーの獲得を狙う意図が伺えます。

トレンドに敏感である若年層が、次世代のインターネットであるメタバースに興味を持つかどうかは、Metaのさらなる成長を大きく左右するでしょう。

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「Meta(旧Facebook)」が開発したメタバース関連商品やサービス4選

Metaが開発した代表的なメタバース関連商品やサービスは、以下の4つです。

  • Horizon Workrooms
  • Meta Quest
  • Horizon Worlds
  • 次世代XRクリエイター向け教育プログラム

Horizon Workrooms

Horizon Workrooms(ホライゾンワークルームス)は、ビジネス向けのメタバースプラットフォームです。メタバース上にバーチャルなオフィスを作り、世界中のユーザーと共同作業ができます。

専用のVRヘッドセットを利用すると没入感が高まり、通常のビデオ通話でも参加可能。オフラインの会議をメタバース上で行えるイメージで、リアルのオフィスと同様に仕事ができます。

Metaはウェブ会議システムの「Zoom(ズーム)」やMicrosoftなどとも連携し、機能の拡充や相互運用性を高めています。

Microsoftは独自のVRプラットフォームである「Mesh(メッシュ)」を開発しており、相互運用性を高めることでネットワーク効果が高まることを期待しています。

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Meta Quest

「Meta Quest」は、Metaが開発するVRヘッドセットです。

いわゆる「没入感を高めるための専用装置」ですが、現在発売されているモデルは本体をPCやスマートフォンにつなぐ必要がなく、ヘッドセットだけで動作します。

Meta Questの利用シーンはVRゲームや動画視聴などのエンターテインメントが中心となっていますが、先ほど紹介したビジネスシーンでの活用に向けた開発も進められています。

Horizon Worlds

「Horizon Worlds(ホライゾンワールド)」は、Metaが運営・開発しているメタバースプラットフォーム。従来は「Facebook Horizon」というサービス名でしたが、社名変更に伴いサービス名が変更されました。

VRヘッドセットを装着したユーザーがアバターの姿でバーチャルの世界に入り、ゲームを楽しんだり、ユーザー同士のコミュニケーションを取ったりできます。

2022年10月時点におけるHorizon Worldsの月間アクティブユーザー数は20万人に満たないとされており、当初の予定である50万人を大幅に下回っているようです。

2023年2月時点において、Horizon Worldsを利用できるのは、アメリカやイギリス、フランスなどの7カ国で、日本では使用できません。

今後の利用エリアの拡大に期待しましょう。

次世代XRクリエイター向け教育プログラム

Metaは2022年9月、次世代XRクリエイター向け教育プログラム「Immersive Learning Academy」のローンチを発表。

初心者からプロまで、あらゆるレベルのVR・ARクリエイターがスキルを身につけるための機会が提供されます。

基本的なARエフェクトの作り方を学べるコースや、より高度な内容を学べるオンラインカリキュラムが順次公開予定。

将来的なメタバース市場拡大を視野に、クリエイター支援にも積極的な姿勢がうかがえます。

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「Meta(旧Facebook)」が描くメタバースの将来性や今後の展望

Metaが描くメタバースの将来性や今後の展望は、大きく分けて以下の3点が考えられます。

  • 没入感・臨場感・相互運用性を満たすメタバース世界の実現
  • ゲームやエンターテインメント業界以外にも広く普及
  • スマートグラスの開発によりスマホを置き換えるデバイスを創造

没入感・臨場感・相互運用性を満たすメタバース世界の実現

Metaの考えるメタバースには、没入感(Immersiveness)、臨場感(Presence)、相互運用性(Interoperability)という3つの特徴があります。

現在、メタバースプラットフォームは各社が開発している状況で、アバターがプラットフォーム間を移動することはできません。

Metaが掲げるメタバースは、こうした制約は解消され、アバターの装着するデジタルグッズも自由に持ち運べる未来を想像しています。

VRヘッドセットのさらなる改良により、没入感と臨場感がさらに高まる未来も期待できるでしょう。

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ゲームやエンターテインメント業界以外にも広く普及

現在メタバースがおもに使用されるシーンは、ゲームやエンターテインメントが中心です。今後、ビジネス利用を中心に、教育や医療福祉といった生活に密着した場面での利用も増えると予想されます。

なかでも、メタバースを使った研修や没入型トレーニングといった、教育分野への導入が進んでいます。

これらのコンテンツ制作や機能拡充を図るためにも、クリエイター支援を積極的に進めているのです。

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スマートグラスの開発によりスマホを置き換えるデバイスを創造

MetaはVRヘッドセットだけでなく、スマートグラスの開発にも力を入れています。

2021年9月には、スマートグラス「Ray-Ban Stories」を発表。内蔵のカメラで1人称視点の写真や動画をいつでも撮影でき、facebookViewアプリと連携してシームレスに共有できます。

Ray-Ban Storiesは通話も可能で、将来的にはスマートフォンに取って代わるような、ハンズフリーで利用できるスマートグラスの開発も期待できるでしょう。

メタバースはなぜ注目されているのか

そもそも、なぜこれほどまでにメタバースが注目されているのでしょうか。

アメリカの調査会社によると、世界のメタバース市場は、2020年時点で476.9億米ドルに到達しました。それが2028年には、8289.5億米ドルまで成長すると予想されています。

8年間で約20倍の市場拡大が見込まれ、同様の成長率が期待できる業界はまずないでしょう。

超高速データ通信やさらなる技術革新により、「次世代インターネットとしてのメタバース」が広く普及する未来が想像できます。

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Metaの取り組みを筆頭に今後のメタバース事業の広がりに期待

「Meta」に企業名を変更し、メタバース市場のシェア獲得を狙う強い覚悟が見てとれる旧Facebookの取り組み。2023年2月時点で収益化に至るほどの成果は出ておらず、消極的に見ている方も多いかもしれません。

しかし、世界のメタバース市場は向こう10年で急成長が見込まれ、Metaに限らず、Microsoftを中心に巨大テック企業も積極的な開発を進めています。

ガラケーからいつの間にかスマートフォンに置き換わったように、次世代のインターネットとしてメタバースが普及する未来がやってくるのか、これからの開発に期待しましょう。

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