Microsoftは、既に発表済の大規模な人員削減の一環として、メタバース部門を構成する約100人の従業員からなる部門を閉鎖する。
メタバース領域へのリソース配分を縮小
Microsoftは、ソフトウェアを通じて産業環境にメタバースをもたらすことに焦点を当てた約100人の従業員で構成されるIndustrial Metaverse Coreグループの解散を社内で発表したと、一部の海外情報誌が伝えた。
同社は、わずか4か月前に上記グループを設立したばかり。発電所、産業用ロボット、交通ネットワークの制御といったユースケース向けにメタバースを実装するための橋渡し役としての実ションを追っていた。グループを構成する100人の従業員が解雇されたが、Microsoftは彼らが開発した製品は引き続きサポートするとしている。
報道によれば、Microsoftの人員削減はすでに他のメタバースプロジェクトにも検討が及んでおり、特にMixed Reality部門のものが対象となっているという。中には、Azure AI、Meshの没入型ソリューション、Mixed Reality Toolkit(MRTK:MicrosoftのHololens VRデバイス用のソフトウェア開発キット)、Hololens本体、AltspaceVRの開発が含まれている。
Microsoftが買収したAltspaceVRは1月、3月での閉鎖を発表。同プラットフォームは2015年5月に創設者で当時のCEOであったEric Romo氏の下で立ち上げられ、2017年の資金繰り難で閉鎖した直後に、MicrosoftはAltspaceサービスを買収していた。
Microsoftは今年の1月23日、GPT-3やGPT-4、ChatGPTインターフェースの開発を手掛けるOpenAIへの「複数年にわたる数十億ドル規模の投資」を発表。メタバース領域に配賦されていたリソースの一部を、AIイニシアチブ、すなわちChatGPT/ジェネレーティブAIに充てていると考えられる。
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MicrosoftのCEOであるSatya Nadella氏は、「AIはすべてのソフトウェアカテゴリを根本的に変える。その最初の対象は、最も大きなカテゴリである検索だ」と述べている。
マイクロソフトのメタバース部門縮小から見えること
Microsoftのこの方針転換は、企業が将来のテクノロジートレンドに対応するために戦略を調整していることを示している。メタバースやVR技術への投資からAI技術へのシフトは、Google他のテック企業との競争が激化する市場でリーダーシップを維持するための取り組みと考えられる。
ChatGPTを始めとするジェネレーティブAI技術は、検索だけでなく、製品開発、マーケティング、カスタマーサポートなど、あらゆる産業や業務に大きな影響を与える可能性がある。そのため、あらゆる企業はAI技術の活用や競争力を維持するための戦略を見直す必要があり、マイクロソフトは迅速な対応を見せている。
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また、Microsoftの戦略転換は、他の企業にも影響を与える可能性がある。GAFAを始めとするテック系の競合他社は、Microsoftの動向を注視し、自社の戦略や投資を再評価するだろう。テクノロジー業界では、新興技術の開発や市場シェアの獲得が競争力の維持に不可欠であるため、迅速な適応が求められる。
このような状況を踏まえ、国内企業も、自社の業務や市場環境において、AI技術がどのような形で活用できるかを検討し、将来の成長や競争力を確保するための計画を立て、リソース配分を検討することが肝要だ。また、Microsoftのような大手企業の動向に注意を払い、業界全体の変化に対応する柔軟性を持つことも必要だろう。