パソナのメタバースへの取り組みとは？

限りなく現実に近い作られた仮想空間でビジネスやクリエイティブなチームワークに参加することもできるメタバースの世界。買い物やコミュニティーに参加して文化活動までできることを目指しているといいます。

どのようなビジネスや個人の活動ができてメリットがあるのか。現状、明確な答えはないものの参入企業は続々と増加中です。

そんな中で、ひと際メタバースに力を入れているのがパソナグループ。人材派遣会社がなぜメタバースと関係あるのか？と疑問に思う方がいるかもしれません。

そこで、当記事ではパソナのメタバースへの取り組み方、同社が開設した淡路アバターセンターの位置づけ、メタバース事業の現状などについてまとめました。

ご興味がある方は、ぜひ参考にしてください。

パソナのメタバースへの取り組みとは？
パソナのメタバース「淡路アバターセンター」の開設
パソナのメタバース「アバターコンシェルジュ」業務を運営
パソナのメタバース「Pasona Connect」を開始
パソナのメタバース「ANA子会社と提携し就業支援」
パソナのメタバース「ZENメタバース体験ツアー」の実施
パソナ「淡路島メタバースイタリアンフェア」を開催
メタバースの現状
まとめ
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パソナグループ代表の南部靖之氏は、2022年1月13日、日テレNewsの経済界インタビュー企画に応じ、次のように話しています。

「仮想空間を作って夢だとか、未来構想だとか、やりたいビジネスだとか、自分の夢をこのメタバースの中で成功させていきたいという若者を、どんどんパソナグループの中に入れていこうと考えている」

また、このように続けます。

「仮想空間をつくり現実の地域とつないで地方創生や雇用創出の事業を開始する方針」

「これからのパソナグループの社員は、淡路島で実体験として農業をやって、絵を描いて釣りをして、そして仮想空間で世界中を舞台にビジネスをやるんです。」

「そういう時代がね僕は近々くるだろうと…」

実際、パソナは2021年11月にアバター人材育成とビジネス・プロセス・アウトソーシング（BPO）拠点として、「淡路アバターセンター」を開設。パソナグループのメタバース事業に取り組んでいるのです。

このインタビューから1年以上が経過して、同社でどのように取り組まれてきたのか、見ていきましょう。

引用：日テレニュース「【パソナ】南部代表インタビュー」動画

パソナのメタバース「淡路アバターセンター」の開設

パソナ「淡路アバターセンター」概要
開設日	2021年11月17日
所在地	兵庫県淡路市岩屋鵜崎2942-26 パソナワーケーションハブ鵜崎内
業務内容	①アバター人材の育成：アバター操作ツールの使用方法や実際のアバターの操作、アバター接客、遠隔コミュニケーション、各種業務スキル等の研修を実施 ②アバターを活用したBPOサービスの運用販売・営業・受付・案内・相談等の対人接客業務をアバターが遂行するBPO（業務委託・請負）サービスや人材派遣サービスを提供
設置機能	研修室、アバターオペレーションスペース、ラウンジ等
連絡先	株式会社パソナグループ「淡路アバターセンター」TEL 050-3816-3666

アバター人材の育成とBPOサービス拠点を目的に開設された「淡路アバターセンター」ですが、開設後の11月23日〜12月12日まで、AVITA社と共同で次のイベントを行っています。

＜大阪道頓堀・戎橋のポップアップストアにおけるアバターでの接客販売＞

AVITA社が開発した3DCGアバターとアバターでのリモートワークに特化した「アバターコミュニケーションツール」を活用して、パソナ淡路アバターセンターのスタッフが、以下の商品を接客販売するというものです。

〇販売場所：TSUTAYA　戎橋店1F

〇販売商品：美容と健康に良いと人気で、⾃然の物のみを使ったナチュラルなエナジードリンク「UMAMI COLA」

クラフトコーラ「UMAMI COLA」（250ml）1,750円
クラフトコーラ「UMAMI COLA」（720ml）3,400円
入るクラフトコーラ 250円
テイクアウトドリンク 400円

このアバター接客実証実験の結果などは未公表ですが、一部のコメントから一定のデータは収集できたようです。

ローソンでも、「ヘルスケアローソン」や「ケアローソン」にアバター接客を2022年10月から試験導入しており、薬剤師・登録販売者やケアマネージャーをお店に常駐させるのではなく、アバター接客に切り替える試みが行われています。また、未来型店舗「グリーンローソン」でも11月から、無人店舗でアバター接客する実証実験を開始しているのです。

パソナのメタバース「アバターコンシェルジュ」業務を運営

パソナグループのメタバースイベント活用例です。

パソナHS（代表：八木孝子）は、2022年3月15日に開催された観光庁「Next Tourism Summit 2022」で、次の運営を担いました。

VR空間プラットフォーム「DOOR™」（提供：NTT）内に設置されたバーチャル会場にてアバターを活用して来場者の誘導や受付応対をする「アバターコンシェルジュ（受付）業務」
来場者への音声及びチャットでのインフォーメーションアナウンス・アバター操作方法の説明・報告会会場への案内・質問対応
VR空間「DOOR™」会場において同報告資料の展示や商談ルーム、サブセッションルームを設置
資料の閲覧や動画視聴、質疑応答などのコミュニケーション運営によりリアル会場・バーチャル会場における相互送客を実現

コンシェルジュ業務はパソナお得意の業務でしょうから、このようなメタバースイベントでも力量発揮というところでしょう。

パソナのメタバース「Pasona Connect」を開始

パソナグループは、メタバース空間上で「人や企業、地域をつなぐ」をコンセプトに自治体と連携し、地方創生プラットフォームサービス「Pasona Connect」を2022年11月より開始。

これを、DX観光や関係人口創出、ビジネスマッチングを実現するプラットフォームと位置づけ、具体的には以下のサービスを提供するとしています。

地方自治体のニーズに合わせて各観光地や特産品等を購入できる場所をメタバース空間上で再現
プラットフォーム来訪者は、地域の写真や動画、生配信の映像などを通して地域の魅力を体験したり、特産品の購入ができる
同空間上で、地方と都市部の企業や人同士がコミュニケーションし新たな交流から関係人口の創出、ビジネスマッチング、産業振興の後押しをする

このようにパソナは、メタバースを地方自治体に提供して地方創生に活用しようとしています。

パソナのメタバース「ANA子会社と提携し就業支援」

パソナグループは2022年9月6日、ANAホールディングス傘下でメタバース空間を開発するANA NEO株式会社（東京都中央区）と提携し就業支援すると発表しました。

ANA NEOが開発を進める仮想旅行プラットフォーム｢ANA GranWhale｣内での就業支援や、メタバース空間で働くためのスキルを身につける研修プログラムを提供し、オペレーションは共同で取り組むtという提携内容です。

｢ANA GranWhale｣は、世界の様々な都市や絶景スポットをバーチャル空間で再現し、同空間に来訪した人が観光や買い物などを体験できるANA独自のメタバースになります。また、独自にNFTを設定していることも特徴の一つです。

パソナは淡路アバターセンターを開設し、物理的な移動に制限がある人材の就業支援に取り組んでおり、アバターを操作するオペレーター体制を整えたいANAに就業支援することなります。

パソナのメタバース「ZENメタバース体験ツアー」の実施

パソナは、メタバースを活用した体験型観光サービスの提供を「禅坊靖寧」というユニークな取り組みから始めています。既に昨年実施され現在は終了していますが、どのような内容で行われたのかを見てみましょう。

禅坊靖寧「ZENメタバース体験ツアー」概要
開催日	2022年9月14日、28日、同10月12日
目的	メタバースを活用した体験型観光サービスの提供
対象	参加者によるコミュニティ形成に鑑み、各回対象者が異なる第1回 9月14日／地方創生事業に興味のある企業、自治体、個人の方第2回 9月28日／関西在住で淡路島の観光地を探している個人の方第3回 10月12日／外国人の方、インバウンド誘致関係者の方（英語で実施） ※個人でデバイス（PC、スマートフォン、ヘッドマウントディスプレイ）を所持している方　 VRミーティングアプリ「Spatial（スペーシアル）」の利用に同意頂ける方
定員	各回20名
内容	メタバース空間を活用した座禅リトリート体験及び懇親会
料金	無料
予約開始	8月30日（火）
URL	https://www.zenbo-seinei.com/

「禅」の体験だけあって、没入型メタバースとするためヘッドマウントディスプレイの所持が必須とのことです。

また、サイト内ではリアルな「禅坊靖寧」の宿泊プランが予約ができるよう、メタバース空間と公式サイトがうまく連携されています。

つまり、メタバースで「禅」を体験し、「リアルでも体験したい」というニーズに応えて、リアルビジネスに繋げる工夫をしている訳です。

パソナ「淡路島メタバースイタリアンフェア」を開催

メタバースを観光や店舗販売に活用した次の試みは「淡路島メタバースイタリアンフェア」というイベントでの活用です。これも2023年2月27日に終了しているイベントですが、その概要は以下のとおりです。

淡路島メタバースイタリアンフェア概要
実施期間	・2/21(火)12:30-13:00(2D)　※限定50名様まで・2/22(水)12:30-13:00(2D) & 19:00-19:30(2D)　※各回限定50名様まで・2/27(月)19:00-19:30(3D)　※限定10名様まで ※日時により実施場所が異なります。2Dは「oVice」、3Dは「Spatial」という空間を利用しております。
参加費	無料
抽選プレゼント	・淡路島イタリアンフェアのチケット（20名様）：本チケットは青海波海の舎・波乗亭でのランチビュッフェやバレエ鑑賞、仮面舞踏会での着席ディナーへの参加などに利用可・仮面舞踏会マスク（20名様）：淡路島イタリアンフェアに参加できない方でも、実際に仮面舞踏会で利用されるマスクを着用し、イタリア気分を味わえる・淡路島の食材・食品（20名様）：色と香りの和パスタフルーツオニオンスープ 3種飲み比べセット・淡路島西海岸クーポン淡路島西海岸の各施設で利用できる5~20％OFFクーポン

このイベントは、リアルな「AWAJISHIMA-ITALIANFAIR2023」というイベントをメタバースで疑似体験できるというものです。

抽選プレゼントでは、実際に淡路島に観光で訪問したくなるようなお得感のあるものが配られているのが分かります。

出典：https://awajishima-resort.com/news/italianfairmeta/

つまり、実際の淡路島観光に誘引するという目的でメタバースイベントを活用しているのです。

メタバースの現状

メタバースを実現する技術や運営ノウハウについては、やはりゲーム業界やエンターテイメント系アプリ開発・運営業界が先行しています。

近年、xR メタバースが主流化してきているのも、ゲーム業界の影響が大きいと言えるでしょう。

ここでは、以下の業種に分けてメタバースの現状を見ていきましょう。

エンターテイメントにメタバースを活用
仮想通貨業界にメタバースを活用
広告業界にメタバースを活用
旅行観光業界にメタバースを活用
小売業界にメタバースを活用
教育業界にメタバースを活用
就職活動にメタバースを活用

なお、xRメタバースについて、詳しくは以下の関連記事を参照してください。

エンターテイメントにメタバースを活用

メタバースでもっとも先行しているゲーム業界。例えば、子供達から絶大な人気を得ているロブロックス（本社：米国カリフォルニア）では、月間利用者が2億人を超え、売上は22.3億USドル（約2,900億円）に達しています。

ロブロックスの最大の特徴は、ゲームをプレイするだけでなく、誰でもゲームの作り方を学べ、作ったゲームのアイテムなどを販売できるところです。ネットで知り合った友人とチームを組んで役割を分担して開発を進めることもできます。

また、NIKEやウォルトディズニー、GUCCIなどのグローバル企業がロブロックス上で独自に販売店や遊園地を展開し、PRや販売で業績をあげていることも優位性がある点です。

「ロブロックス」とライブ配信アプリで1,000万ダウンロードを達成した「REALITY」に関する詳しい情報は、以下の関連記事をご参照ください。

仮想通貨業界にメタバースを活用

メタバースは、仮想通貨業界でも、積極的に活用されており一定の実績があがっています。

単に仮想通貨を販売するのではなく、仮想通貨のなかでNTF（代替不可能なトークン）というトークンに分類したものを美術作品やキャラクターなどに関連付けます。それらが売れると同時に仮想通貨（NFT）も売れるという仕組みです。

ゲームの中で使用するアイテムや衣装などにNFTが任意の価格で割り当てられ、アイテムや衣装が転売されるとその作者に報酬が還元されるという点が受け入れられています。

ただし、NFTの価値は法定通貨と比較して変動幅が大きく、数十分の1に値が下がるなど、長期保有すると損失が膨らむことが多いので注意が必要です。また、ビットコインの価格相場に大きく影響されるため、短期的な保有にも神経を使うでしょう。

仮想通貨のメタバース活用事例で代表的な「エンジンコイン」について、詳しくは以下の関連記事をご参照ください。

広告業界にメタバースを活用

広告業界でのメタバース活用も、比較的他業種に比べ、先行しているといえます。日本では株式会社電通を中心に、株式会社博報堂ＤＹホールディングスなどがそれぞれ独自に展開をはじめています。

ただし、2021年に米国Meta社が提供するVRゲームコンテンツ内において、「広告表示をテストする」と同社が発表すると、そのコンテンツページで批判コメントが殺到。コンテンツ提供元が参加を見送る事態となり、メタバース利用者がいかに広告を嫌っているかが明らかになりました。

こうした問題に、広告業界は現在も対応していると言われています。

電通のメタバースへの取り組みについて、詳しくは以下の関連記事をご参照ください。

▼関連記事▼
電通グループのメタバース | 取り組みと広告の現状

旅行・観光業界にメタバースを活用

パソナのメタバース取り組み事例にもあったとおり、旅行・観光業界ではメタバースが注目され、ANAやJALなど積極的に参入する大手企業が増加しています。

新型コロナウイルス感染症の影響をもろに受けた経験があるからです。また、今後5Gや6Gなど通信容量が大きくかつ高速になることから、3D空間での画像表現における違和感が軽減され、観光スポットを積極的に紹介できると見られているからです。

上の画像はANA NOE社が開発したメタバースサイトの一例になります。このメタバースサイトでは、単なる観光地紹介サービスではなく、ANA NEO社がNFTを独自に設定して販売するという直接ビジネスに繋げる取り組みをしています。

観光業界では、各観光地にある自治体が主導して取り組むケースが多く、例えば以下の活用事例があります。

引用元：Coincheck

小売業界にメタバースを活用

2022年からは、小売業界でもメタバースの活用事例が急増しています。例えば、リアルな世界で地雷系と言われるファッション分野で「DearMyLove」のブランドを展開し、若者から支持を得ている夢展望社の活用例です。

同社は、創作物の総合マーケット「BOOTH」という独自のメタバース対応サイトを構築し、リアルで販売した服をデジタル化し、アバターに着せる服としても販売して成果をあげています。

また、リアル世界では販売していないアバター専用のファッションアイテムなども販売を伸ばしており、今後に期待できる状況と言えるでしょう。

夢展望のメタバースについて、詳しくは以下の関連記事をご参照ください。

教育業界にメタバースを活用

教育業界でメタバースを活用することに期待されているのは、さまざまな理由で学校に通えない生徒に対しても十分な教育が受けられる機会を提供できることです。

メタバースはアバターを操作してさまざまなコミュニティに参加できるのが特徴で、リアルに顔出ししなくても良いという点が、授業参加へのハードルを下げます。

また、時間や場所、環境などの制約に捕らわれず、可能な時間を選択して録画で授業を受けられることも魅力の一つと言えるでしょう。

今後は、体験学習や仮想世界ならではのカリキュラム、メタバースならではの友達のコミュニティー参加などに期待が集まります。

2023年3月現在、教育にメタバースを活用した事例の一部を以下にご紹介します。

角川ドワンゴ学園：
令和四年度 N中等部・N/S高「メタバース入学式」、Zホールディングス川邊社長祝辞や音楽家SASUKEさん、校歌斉唱LIVEで6,000名以上の新入生を歓迎
長岡工業高等専門学校：
最先端の技術を用いたバーチャルキャンパスは、新しい学び舎を提案します。近未来的なデザインが印象的なバーチャル空間で、時間・空間・言語・身体性を超えた、多様で新しい学びを生み出します。
スタンフォード大学：
アメリカのスタンフォード大学がVirtual Peopleを開始

就職活動にメタバースを活用

近年、求人・人材紹介業界では、メタバースを活用した採用イベントが活発に企画され、企業に導入が促されています。

現在は、「就活に効くメタバース会社説明会」や「メタバース×就職相談会」、「就活メタバース」などのキャッチコピーが目立つところです。

就活する側の方々にとっては、場所を選ばず参加できるハードルの低さがあり、複数の企業の説明会に参加したり面接を受けたりもできます。

一方、企業側にとっては広く人材を集められる可能性があることから、メリットを感じられる取り組みとなっているのです。

まとめ

パソナのメタバース事業への取り組みと、業界別メタバース活用事例について解説しました。

2023年からは、メタバースを活用する企業がさらに加速すると見られています。業種や販売する商品、サービスによって取り組む方法は変わってくるでしょう。

しかし、中小企業であってもメタバースを有効に活用できる点がある場合は、検討してみる価値があるのではないでしょうか。

当記事を参考に検討されるよう、おすすめします。