JALは国内大手の航空会社として知られており、近年はメタバース事業にも積極的に参加しています。
また、同じく航空大手ANAもメタバース事業「ANA NEO」を展開するなど、航空・観光産業におけるメタバース活用の動きがとても活発です。
そこで本記事では、JALのメタバース事業に関する以下の内容を解説します。
- JALのメタバース事業とJALがメタバース事業に注力する背景
- JALの競合であるANAのメタバース事業「ANA NEO」について
- JALと関係が深い観光大手JTBやHISが進める観光メタバースについて
航空産業における新たなメタバースプロジェクトを把握し、次のトレンドに乗り遅れないようにしましょう。
JALはメタバース事業に力を入れている
JAL(日本航空)は、日本を代表する航空大手企業です。
JALは近年、メタバース事業にも力を入れており、KDDIやパナソニックと協業してメタバースを進める動きを見せています。
また、JALはパイロットや客室乗務員への教育の一環としてメタバースを活用するなど、航空産業ならではのメタバース活用も推進中です。ここからは、JALが進めているメタバース活用の動きを見ていきましょう。
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JALの客室乗務員が「バーチャル渋谷」にアバターガイドとして登場
2022年3月25日、KDDIの都市連動型メタバース「バーチャル渋谷」と「バーチャル大阪」において、JALの客室乗務員(CA)がアバターガイドとして登場したことが話題となりました。
なお、「バーチャル渋谷」はKDDIが2020年5月にオープンしたメタバースで、ハロウィン期間中に行われた「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーンフェス」は、2020年には40万人、2021年には55万人のアバターが世界中から訪れるなど、代表的なメタバースの一つとして知られています。
「バーチャル渋谷」で2022年3月に開催されていた「シブハル祭」では、多くのアーティストやVtuberとのコラボイベントが開催され、JALのCAは「おもてなしスタッフ」として参加しました。
JALのCAは、JALはっぴアバターを操作して、「バーチャル渋谷」に訪れた参加者をおもてなし。
また、「バーチャル大阪」でも同様のイベントが実施され、関西出身のJAL社員が操作するスタッフアバターが「バーチャル大阪」にて参加者をお出迎えし、おススメのお店や観光スポットの紹介など、メタバース上に再現された大阪を観光案内しました。
この取り組みは、KDDIなどが展開する都市連動型メタバースと、JALが長年培ってきたホスピタリティを組み合わせた新たなメタバースとして注目されています。
(引用:PRTIMES|空のおもてなしをメタバースで!シブハル祭開催中の「バーチャル渋谷」にJALの客室乗務員によるアバターガイドが登場)
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JALとパナソニックはアバター式リモート案内サービスを進める
JALは、2020年の新型コロナで大きな打撃を受けた企業の一つでしたが、新型コロナでも新しい旅行体験の実現に向けて、メタバースなどのデジタル方面に力を入れていました。
新型コロナ真っ只中の2020年9月には、非接触・非対面でも高品質な接客を実現するため、パナソニックが提供するアバター式リモート案内サービスを用いた共同実証実験を開始。
アバター式リモート案内サービスとは、お客さまから離れた場所にいる係員がディスプレイ上のアバターを通して、出発ロビーや搭乗口にてお客さまへの案内をするものです。
アバターは操作している係員の表情を認識・反映するため、リモートによる非接触・非対面でも表情豊かで、対面に近い案内が可能となります。
アバター式リモート案内サービスは、有人での「リモート対話」に加えて、チャットボットによる「AI対話」も可能となるため、人手不足に対応したアフターコロナのサービスとしても注目されています。
(引用:JAL プレスリリース|JALとパナソニック、アバター式リモート案内サービスの共同実証実験を開始)
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JALのコクピットが体験できる「JAL「コックピットVR 2」」
VRプラットフォームを手掛けるハコスコは、JALのコクピットを体験できる「JAL「コックピットVR 2」」を限定販売していました。
このVRソフトは、フライトシミュレーター内を360度見渡すことができ、まるでパイロットになったかの様なVR体験が可能で、現役のJALグループパイロットによる運航の様子を間近で体験できるコンテンツとなっています。
映像内容としては、「羽田空港テイクオフ/進路変更/ニューヨークJFK空港ランディング」「福岡空港テイクオフ/鹿児島空港ランディング(副操縦士視点への切り替え有り)」鹿児島空港テイクオフ/松山空港ランディング(旋回し陸地からのアプローチ)」の3つが収録されていました。
JALの宣伝活動などを展開するJALブランドコミュニケーションは、「世界各地の旅へいざなう」というテーマで様々なコンテンツを制作しており、今後もVRを活用したリアル体験を提供していくとのことです。
(引用:ハコスコの利用事例|JAL「コックピットVR 2」VRパッケージ制作)
JALがメタバース事業に力を入れる背景
航空会社であるJALがメタバース事業に力を入れる背景には、旅客満足度の総合的な満足を目標とした「JAL SMART AIRPORT」構想があります。
また、JALは、VRを活用してパイロットや客室乗務員の研修を行うなど、VRが話題になる以前からVRを積極活用してきた企業としても知られているため、ここからは詳しく見ていきましょう。
JALが進める「JAL SMART AIRPORT」構想
JALは、「空港での過ごし方をスマートに」をコンセプトに、「JAL SMART AIRPORT」構想を進めています。
そもそも、「スマートエアポート」とは、国土交通省が推進する取り組みの一つで、先端技術を活用することにより、旅客にストレスフリーで快適な旅行環境を提供して、訪日外国人旅行者・日本人出国者の旅客満足度の向上を図るものです。
「JAL SMART AIRPORT」は、次の5つのコンセプトとしています。
- スムーズにご移動いただけること
- 落ち着いてお手続きいただけること
- お手続き方法の選択肢が豊富であること
- ニーズに合わせたサポートがあること
- 「旅全体」へサポートがあること
「JAL SMART AIRPORT」構想は2018年から始まっていましたが、チェックインなどの非接触対応を進める取り組みは新型コロナ禍では不可欠なものとなりました。
JALが、アバターを使ったメタバースサービスなどに力を入れる背景には、「JAL SMART AIRPORT」構想の一環であると考えてよいでしょう。
(引用:ビジネス+IT|JALに聞く「スマートエアポート構想」、アフターコロナで空港はどう変わったのか?)
JALはVRを積極活用してきた企業として知られている
新型コロナ禍以前から、JALはVRを積極活用してきた企業として知られています。
JALのプレスリリースで「VR」で検索してみると、次のようにVRを使った取り組みが多いことが明らかです。
- VRを活用したグループ社員対象の「緊急脱出研修」を開始(2020年9月30日)
- 日本初、マルチプレイVRを活用した客室乗務員訓練の実証実験を開始(2020年9月30日)
- VRを活用した整備訓練トライアルを実施(2019年7月3日)
- 日本初、航空機の牽引訓練にVRシミュレータを導入(2019年4月8日)
- VRを活用した海外法人セールスの実証実験をスタート(2018年7月4日)
- 国内初、機内でのVRサービス実証実験を実施(2017年9月5日)
マルチプレイVRを活用した客室乗務員訓練の実証実験、航空機の牽引訓練へのVRシミュレータの導入、機内でのVRサービス実証実験は、いずれも国内初の取り組みとなっていました。
また、VRを活用した緊急脱出研修やVRを活用した整備訓練トライアルなど、JALは社員教育においてもVRを積極活用している企業であると言えます。
JALと競合するANAもメタバースには積極的
国内航空業界トップのANA(全日空)は、JALの競合他社であり、メタバース事業にも積極的です。
特に、ANAのメタバース事業「ANA NEO」およびメタバースプラットフォーム「ANA GranWhale」は、バーチャルトラベル型のメタバースとして大きな注目を集めています。
ここからは、ANAが展開するメタバースについて見ていきましょう。
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ANAのメタバース事業「ANA NEO」とは
ANA NEOは、ANAホールディングスがニューノーマル時代における新しい旅の体験価値の創造に向けて2021年9月に設立した、ANAグループのメタバース専業会社です。
ANA NEOでは、ANAグループの顧客基盤やブランドと、ゲーム開発会社JP GAMESの開発・技術力を結集。
メタバースプラットフォーム「ANA GranWhale」をはじめとする様々なサービスで都会的な創造性を生み出し、ユーザーが現実(リアル)と仮想(バーチャル)を楽しむ新たな場所やライフスタイルを提供することを掲げています。
ANA NEOの総合プロデューサーには、スクウェア・エニックスの国民的RPGゲーム「ファイナルファンタジーXV」を手掛けたゲームクリエイターの田畑端氏が就任したことでも大きな注目を集めました。
また、音楽企画監修には、世界的なヴァイオリニスト・作曲家として活躍する葉加瀬太郎氏が就任し、臨場感溢れるメタバースの世界観を作り上げてくれることはほぼ間違いありません。
ANA NEOは、メタバースにおいて企業提携も進めており、損保大手の損保ジャパン、人材サービス大手のパソナグループ、金融サービス大手の三菱UFJ銀行などが協賛企業として名を連ねています。
さらに、メタバース上において日本の魅力創造、発信を行うため、日本を代表する観光都市である京都府や北海道とも提携を結んでいます。
(引用:ANA HOLDINGS NEWS|バーチャルトラベルプラットフォーム「SKY WHALE」の開発・運営を担う「ANA NEO株式会社」を設立 バーチャル空間での新しい旅体験提供へ)
ANA NEOのメタバースプラットフォーム「ANA GranWhale」
ANA NEOのメイン事業として注目されるのが、メタバースプラットフォーム「ANA GranWhale」です。
ANE NEOの創業時には「SKY WHALE」という名称でしたが、2022年8月23日に「ANA GranWhale」が正式名称となりました。
「ANA GranWhale」は、世界中の素晴らしい旅先や文化をVR技術によって再現することで、後世に伝承しながら、安全かつ快適に楽しんで頂けるメタバース旅行サービスです。
「ANA GranWhale」は、旅のテーマパーク空間となる「Skyパーク」、ショッピング空間となる「Skyモール」、未来の街をイメージした空間である「Skyビレッジ」という、3つのサービスから構成されています。
2023年3月時点では、「ANA GranWhale」は正式リリースに向けたクローズドβテストを実施しており、正式リリースに向けた品質向上に努めているとのことです。
スマートフォン・タブレットに対応していますが、今後は「Meta Quest2」などのVRヘッドセットにも対応する予定となっており、順次機種を拡大する予定となっています。
また、クローズドβテストでもNFTの販売を実施しており、「ANA GranWhaleマーケットプレイス」においてメタバース上の商品を買うことが可能です。
(引用:ANA NEO|正式名称「ANA GranWhale」に決定!~バーチャル空間での新しい旅体験の提供に向けてVRヘッドセットにも対応予定~)
JALと関係が深いJTBなど旅行大手はメタバース観光に注力
JALとも関係が深い旅行会社大手のJTBやHISは、新型コロナを受けた新たな取り組みとして、メタバース観光に力を入れています。
- JTBのメタバース事業「バーチャル ジャパン プラットフォーム」
- HISのバーチャル支店「HIS トラベルワールド」
メタバース観光サービスとして注目される旅行大手の取り組みについて見ていきましょう。
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JTBのメタバース事業「バーチャル ジャパン プラットフォーム」
JTBは旅行最大手企業として知られていますが、メタバースプラットフォーム「バーチャル ジャパン プラットフォーム」で大きな話題を集めました。
「バーチャル ジャパン プラットフォーム」は、XR技術を駆使した仮想空間上にバーチャルな日本をつくりあげ、進化し続ける街や施設に世界中の人々が集い、観光やショッピング、様々なコンテンツを楽しみながら交流を深めることができるメタバースです。
「バーチャル ジャパン プラットフォーム」は、旅行業界が新型コロナの影響を受けてインバウンドも壊滅していた2021年4月7日に発表されました。
ただ、「バーチャル ジャパン プラットフォーム」は、動画が公開されると、SNS上では仮想空間のクオリティーが「初代プレステ並み」と酷評の嵐となってしまいました。
2023年3月時点においても続報となるニュースは特に見当たらず、インバウンドも2022年10月から完全解禁されるなど旅行需要も戻ってきたこともあり、雲行きが怪しいメタバースプロジェクトになってしまっていると言わざるを得ません。
HISはバーチャル支店「HIS トラベルワールド」が好評
旅行大手のHISも、メタバースを積極活用していることで知られています。
HISは、企業の「研修・施設見学」や「プロモーション」向けに「HISメタバースsolution」を提供しています。
HISが持つ国内外のネットワークを駆使して、多数の拠点と連携し、自国の魅力を発信する場所・演出・ツアーを提案するBtoBサービスとなりました。
また、HISは、グリーの子会社REALTYが展開するスマートフォン向けメタバース「REALITY World」に、期間限定でバーチャル支店「HIS トラベルワールド」を2022年6月29日から7月27日まで開催。
「HIS トラベルワールド」は、「入り込めるパンプレット」を体験する場として、ハワイや沖縄など人気旅行先のフォトスポットなどをメタバース空間内に展開したものです。
「HIS トラベルワールド」の来場者数は130万人を超えるなど、国内外問わず好評となりました。
HISは、今後もメタバースやNFTなどウェブ3.0領域への事業展開を進めていくとのことです。
(引用|トラベルボイス|HIS、メタバース空間のバーチャル支店に、1カ月で130万人が来場、18~24歳が6割、女性が6割)
まとめ
JALはVRを積極活用してきた企業として知られており、客室乗務員が「バーチャル渋谷」でアバターガイドを務めたことでも注目を集めました。
JALがVRやメタバースへの取り組みを進める背景には、「空港での過ごし方をスマートに」をコンセプトとした「JAL SMART AIRPORT」構想があるものと思われます。
JALの競合他社であるANAもメタバースに積極的な企業として知られており、メタバースプラットフォームの開発をスタートしました。
旅行大手のJTBやHISも、新型コロナで打撃を受けたことから観光メタバースを進める動きが見られるため、業界の動向を引き続きチェックしておきましょう
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