メタバースは、ビジネスやエンターテイメント、医療分野でも注目され、すでにさまざまな企業が参入しています。

そして、山手線でお馴染みのJR東日本もそのうちの一社。数ある企業の中でもビッグネームであることから、大きな注目を集めている一方、

「JR東日本が力を入れているメタバースってなに?」
「メタバースステーション「Virtual AKIBA World」って?」
「JR東日本がメタバースに力を入れている背景はなに?」

と疑問を抱く方も多いでしょう。

そこで本記事では、JR東日本が手がけるメタバース事業「Virtual AKIBA World(バーチャル・アキバ・ワールド)」や、メタバース事業の展望を解説します。

大手通信業者NTTとの連携についても掲載しているので、ぜひ参考にしてください。

JR東日本のメタバース事業「Virtual AKIBA World」とは

JR東日本は、東日本全域の鉄道事業を手掛けている、日本を代表する鉄道会社です。

そして、JR東日本はメタバース事業にも注力しており、2022年3月25日には、世界初の「メタバース・ステーション」をうたった「Virtual AKIBA World」(バーチャル・アキバ・ワールド)を、山手線31番目の駅として開業しました。

次章では、JR東日本のメタバース事業「Virtual AKIBA World」について見ていきましょう。

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世界初の「メタバース・ステーション」

JR東日本が開業した「Virtual AKIBA World」は、世界初の「メタバース・ステーション」として注目を集めています。

JR東日本は、2021年8月に開催された世界最大のVRイベント「バーチャルマーケット6」にて「バーチャル秋葉原駅」を出展し、同イベントで企業出展ブースの中で最多の来場者数を記録しました。

「バーチャル秋葉原駅」では、実在する駅のように改札を通過したり、電車に乗ってVR世界をめぐることができ、エヴァンゲリオンやちぃたん☆、ホロライブといった人気キャラクターが空間を彩った世界を体験することが可能でした。

「Virtual AKIBA World」の特徴

「Virtual AKIBA World」では、リアルの秋葉原駅や秋葉原駅周辺エリアを再現したオリジナルのメタバース空間が広がっています。

駅に入ったり、駅から電車に乗ったりリアルの駅とも連携した新しいメタバース体験が提供されており、リアルの駅ではありえない、メタバースならではのコンテンツ体験をすることが可能です。

メタバースに参入する企業は多いですが、駅と鉄道に特化した体験を提供できるのは、鉄道事業のノウハウを持つJR東日本にしか提供できないメタバース体験。

数多くの企業が出展したVRイベント「バーチャルマーケット6」の中でも、JR東日本が最も大きな注目を集めたのは、鉄道まわりのメタバース体験にそれだけ需要があることの裏返しとも言えるでしょう。

「Virtual AKIBA World」はメタバースとリアルの融合体験も提供

「Virtual AKIBA World」では、メタバース内で駅や電車を体験できるメタバース体験が強調されますが、メタバースとリアルの融合体験を提供していることも特徴の一つです。

「Virtual AKIBA World」は、ユーザー同士の交流の深度化や、コンテンツ・イベントの活性化などの取り組みを進めており、仮想空間に留まらない、新たな体験の場や出会いの場になることを目指しています。

ビジネスの発信地やコンテンツの集積地でもある秋葉原駅を模した「Virtual AKIBA World」だからこそできる、新しい日常を創造していくことが狙いです。

JR東日本がメタバース事業に力を入れる背景

JR東日本がメタバース事業に力を入れる背景には、以下のビジネス戦略上の理由が挙げられます。

  1.  メタバースに注力するのは「Beyond Stations 構想」の一環
  2.  新型コロナで鉄道利用者が減少したためウェブ3.0に力を入れる
  3.  JREポイントやSuicaと連携して移動革命Maasに繋げる

順番に見ていきましょう。

メタバースに注力するのは「Beyond Stations 構想」の一環

JR東日本グループは、グループ経営ビジョンとして、「Beyond Stations 構想」を掲げています。

「Beyond Stations 構想」とは、駅を、「交通の拠点」を超えてヒト・モノ・コトがつながる「暮らしのプラットフォーム」にする構想のことです。

特に、上野駅、秋葉原駅、八王子駅を「Beyond Stations 構想」を象徴的に体現するモデル駅として整備を進める方針を進めており、駅空間とメディアを融合し駅空間の新しい媒体価値を追求する「メディアステーション」を進めることも構想の一環となっています。

ちなみに、秋葉原駅をモデルにしたメタバース事業「Virtual AKIBA World」は、同社の「Beyond Stations 構想」における取り組みの一つでした。

新型コロナで鉄道利用者が減少したためウェブ3.0に力を入れる

「Virtual AKIBA World」のようなメタバース・ステーションへの取り組みを進めている鉄道会社は、JR東日本だけではありません。

2022年8月には、JR西日本が大阪駅のメタバース「バーチャル大阪駅」を開設し、「フルスクリーンドア」の先行体験や、人型重機ロボットと鉄道工事用車両を融合させた「多機能鉄道重機」、大阪駅の大屋根のすべり台体験など、メタバースならではのコンテンツ体験を提供。

さらに、2022年12月にはJR東海が、VRイベント「バーチャルマーケット2022 Winter」で名古屋駅のメタバース「バーチャル名古屋駅」を開設し、「リニア中央新幹線」と「東海道新幹線」の乗車体験をメタバースを通じて広めました。

以上の動きは、新型コロナ感染拡大による業界全体の減収をきっかけに、その解決策として「場所の制限がないメタバース」を始めとするウェブ3.0の技術に注目が集まったと推測されています。

JREポイントやSuicaと連携して移動革命MaaSに繋げる

JR東日本は、鉄道事業に加えて、Suica」を手掛けるキャッシュレス決済大手でもあります。

JR東日本は、Suicaで得た移動のビッグデータを使うことによって、移動革命MaaS(マース)を推進できる最たる企業です。

移動革命MaaS(Mobility as a Service)とは、バスや電車、タクシー、ライドシェア、シェアサイクルなどあらゆる公共交通機関を、ITを用いてシームレスに結びつけて、人々が効率的に移動できる社会を構築するものです。

MaaSにおいては移動のビッグデータが重要になってくるため、Suicaで人の動きのビッグデータを得られるJR東日本にとっては次世代成長産業として欠かせません。

「Virtual AKIBA World」でも、JR東日本パスを購入した方が、メタバース内に展示する宝箱を探して写真撮影した際、パス購入金額相当のJREポイントが貰えるキャンペーンを実施するなど、JREポイントやSuicaと連携したサービスを実施しています。

「Virtual AKIBA World」が提供しているメタバース体験

「Virtual AKIBA World」で提供されている具体的なメタバース体験としては、次のようなものがあります。

  1. 山手線31番目の駅「シン・秋葉原駅」をメタバース上で探索できる
  2. メタバースで共有した仲間との「オフ会」を実施
  3. インフルエンサーやVtuberとのコラボイベントを実施
  4. メタバース上で飛行カーレースと保険相談ができる

順番に見ていきましょう。

山手線31番目の駅「シン・秋葉原駅」をメタバース上で探索できる

「Virtual AKIBA World」では、「シン・秋葉原駅」「シン・秋葉原駅構内」「シン・秋葉原駅前広場」「中央通り/大通り」の4エリアを探索できます。

  • シン・秋葉原駅:秋葉原駅や山手線の電車が忠実に再現されており、隅々まで見て回れる。
  • シン・秋葉原駅構内:リアルとメタバースを繋ぐゲートが設置されており、リアル⇄メタバースの連動したコンテンツが体験できる。企業やポスターを見て様々な日本カルチャーに触れることも可能。
  • シン・秋葉原駅前広場:日本カルチャーを代表するオブジェが待ち構えており、各企業のワールドに繋がるゲートからコンテンツを楽しめる。

参考までに、「中央通り/大通り」は、日本カルチャーの発祥地である秋葉原の街を再現したエリアです。

また、将来的に5番目の探索エリアとして、JR東日本グループの「アトレ -atre-」が追加される予定となっているので、ぜひ探索してみてください。

メタバースで共有した仲間との「オフ会」を実施

「Virtual AKIBA World」には、入場者同士がコミュニケーションできる空間「オフ会ルーム」が実装されているため、メタバース内でいつでも仲間とのオフ会が楽しめます。

電車やアニメ、ゲームなど共通の話題で盛り上がれる仲間とルームを作成したり、オンライン飲み会も開けるので、まるでリアルで集まっているかのような体験が味わえるでしょう。

チャットのようなテキストだけでなく、音声やトークでもやり取りできる上に、友だちとのプライベート空間や、ミーティングルームも設けられます。

上記の機能や体験は、JR東日本が提供するメタバースとリアルの融合体験と言えるでしょう。

インフルエンサーやVtuberとのコラボイベントを実施

「Virtual AKIBA World」では、インフルエンサーやVtuberといった人気キャラクターとのコラボイベントも実施しています。

オープンイベントでは、シン・ゴジラ、シン・ウルトラマン、シン・仮面ライダー、シン・エヴァンゲリオン劇場版の4作品から構成された企画「シン・ジャパン・ヒーローズユニバース」が開催されました。

また、【JR山手線駅員】×【アイドル】 駅や街を盛り上げる音楽・ボイスドラマプロジェクト「STATION IDOL LATCH!」とのコラボイベントも盛んであり、「Virtual AKIBA World」ではその他にも頻繁にイベントを開いています。

もし気になる方は、公式Twitter(@v_akiba_world)で情報が公開されているため、チェックしておくようにしましょう。

メタバース上で飛行カーレースと保険相談ができる

2022年12月には、保険会社大手の東京海上日動とあんしん生命が、「Virtual AKIBA World」上に「東京海上日動VAW保険相談所」と「VAW・空飛ぶカーレース」を開設することを発表しました。

「東京海上日動VAW保険相談所」では、保険代理店のアバターが、保険に関する相談に対応し、メタバース空間上での商品説明に加え、オンライン保険加入まで可能となります。

メタバースを活用することで、保険相談への心理的負担を減らし、気軽に保険が選べる環境が整うでしょう。

さらに、「VAW・空飛ぶカーレース」は、空飛ぶ車を乗りこなして、VAWの最速レーサーを目指すゲームです。

ゲーム内では、架空の損害保険や生命保険を利用することによってレースを有利に進めることができ、保険の特性を楽しく体験できるゲームコンテンツになっています。

(引用:JR東日本|東京海上日動が JR 東日本のメタバース空間「Virtual AKIBA World」に出展)

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JR東日本が今後展開を予定しているメタバース体験とは

JR東日本はメタバース事業を積極的に進めており、今後も次のようなメタバース展開を進めるとのことです。

  1.  NTTドコモなどと企業連携を強化して新たな体験を提供
  2. リアル駅とメタバースステーションのコラボレーション
  3. NFT(非代替性トークン)を使ったコンテンツの拡充

順番に見ていきましょう。

NTTドコモなどと企業連携を強化して新たな体験を提供

JR東日本は、通信大手のNTTドコモとの企業連携を強化して、「Virtual AKIBA World」上で新たなメタバース体験を提供する取り組みを進めています。

NTTドコモは、XR事業「NTT XR」を展開しており、アプリ不要且つブラウザで手軽に楽しめるメタバース「XR World」を展開していることからも注目です。

また、JR東日本は、日本中央競馬会(JRA)や株式会社ビームスとの提携も進めており、「Virtual AKIBA World」ではJRAの空間が登場し、BEAMSと連携した企画が実施されるなど、さまざまな企業との連携を強化しています。

(引用:JR東日本|世界初の「メタバース・ステーション」“Virtual AKIBA World” がオープンします︕)

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リアル駅とメタバース・ステーションのコラボレーション

JR東日本は、リアルの駅空間で、メタバースの世界観を体験できるスペースを作り、リアルとバーチャルの融合を加速させる取り組みを進めています。

例えば、リアル空間で出稿した駅広告がバーチャル空間と連動して出現してダイナミックに表現される、バーチャル空間で購入した商品がリアル空間でシームレスに受け取れるといったものです。

なお、秋葉原駅では、「Virtual AKIBA World」が開設した2022年3月に、秋葉原駅1階改札内のエキナカスペースに、メタバースと連動する「VAW ゲートウェイ」を期間限定で設置して好評となりました。

秋葉原駅を模した「Virtual AKIBA World」のほか、JR西日本による大阪駅のメタバース「バーチャル大阪駅」、JR東海による名古屋駅のメタバース「バーチャル名古屋駅」など、メタバース・ステーションは続々とオープンしています。

将来的には、大手鉄道3社のメタバース・ステーションで行き来できるようになる可能性もゼロではありません。

NFT(非代替性トークン)を使ったコンテンツの拡充

NFTとは、ブロックチェーンによって発行される非代替性トークン。簡単に言うと、発行時点のタイムスタンプや識別情報を付与することで、この世に2つ以上同じものが存在しなくなる技術です。

そして、NFTはメタバース上における価値の担保手段として期待されており、すでにブロックチェーンゲーム*上で活用されています。
*ブロックチェーン技術で作られたゲームであり、基本的に仮想通貨がゲーム内通貨として用いられる。

実際に、「Virtual AKIBA World」では、限定入場券をNFT配布するなど、来訪者同士の交流の深度を図るイベントを実施。

将来的には、メタバース上でのお買い物体験や、購入した商品を駅で受け取れるなど、リアルのサービスとの連動によるこれまでにない体験の実現を目指しているとのことです。

まとめ

本記事では、JR東日本が手がけるメタバース事業や、今後の展望を解説してきました。

JR東日本は、NTTドコモなどとメタバースでの企業連携を強めており、リアル駅とメタバース・ステーションのコラボレーションや、NFTを使ったコンテンツの拡充などを進めています。

将来的に、より事業が拡大する可能性もあるため、今のうちからJR東日本のメタバースプロジェクトに注目しておきましょう。

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