NVIDIAが市場で圧倒的な収益成長を示し、投資家の間でテスラを凌駕している。The Future Fund LLCを率いるゲイリー・ブラック氏は、同ファンドでNVIDIAを最上位、テスラを5位に位置付ける理由を分析。この背景には収益予想の上昇と、それに伴う評価指標の違いがある。
NVIDIAのPEG比は1.6倍と割安感を示す一方、テスラは3.2倍と高水準で取引されている。両社の2025年に向けた株価収益率や成長予測が、投資戦略における重要な判断材料となっている。こうしたデータに基づく戦略が、Future Fundの高い運用成績を支える鍵となっているといえよう。
NVIDIAが収益予想を押し上げた背景にある要因
NVIDIAが市場で圧倒的な収益成長を示している要因の一つは、AI需要の急速な拡大にある。同社の主要製品であるAIチップは、生成系AIやデータセンターの需要増加を背景に、他社製品を圧倒する性能を発揮している。特に、H100 GPUはその計算能力の高さが評価され、多くのクラウドプロバイダーや企業が採用を進めている。これにより、NVIDIAは新規受注の獲得だけでなく、長期的な契約の確保にも成功している。
また、NVIDIAは戦略的提携を活用して市場の支配力を拡大している。例えば、主要クラウド企業やAIスタートアップとの共同プロジェクトにより、新技術開発への道筋を確保し、競争優位を維持している。これらの取り組みによって、ウォール街のアナリストは同社の収益予想を相次いで引き上げた。ゲイリー・ブラック氏の指摘通り、これがファンド内での高評価に直結している。
一方で、この成長が持続するか否かには課題も存在する。AIブームの持続性や競合他社の反撃は、NVIDIAにとって無視できないリスク要因である。だが、現在の成長基調とその背景にある要因を考慮すれば、同社が近い将来も市場をリードする可能性は高いとみられる。
テスラの高PEG比が示唆する成長への懸念
テスラのPEG比が3.2倍という数値は、投資家にとって重要な警鐘を鳴らしている。この数値が示唆するのは、現在の株価が長期的な収益成長率に対して過大評価されている可能性である。特に、2025年の株価収益率(P/E)が102倍と高水準であることから、テスラの将来的な収益改善が市場において過剰に織り込まれていることが考えられる。
ゲイリー・ブラック氏が指摘するように、ウォール街がテスラの収益予想を引き下げ続けている点も見逃せない。EV市場の競争激化やコスト上昇圧力が、収益性の改善を妨げているとみられる。特に、欧州や中国市場における新興EVメーカーの台頭が、テスラの市場シェアに与える影響は無視できない。
一方で、テスラには他社にない強みもある。ソフトウェア主導の事業モデルや再生可能エネルギーとの連携など、収益の多角化が進んでいる点だ。しかし、それが現在の高評価を正当化するには、収益性と成長速度のさらなる向上が必要である。これらの要因を考えると、現時点での株価水準は投資家にとって慎重な判断を促すべきものである。
データに基づく投資戦略が示すファンド運用の未来
ゲイリー・ブラック氏率いるFuture Fundが高い運用成績を維持している背景には、データに基づいた投資戦略がある。同ファンドが運用するFuture Fund Active ETFは、年初来で28.30%のリターンを達成し、S&P 500を上回る成績を記録している。こうした成果は、株式評価の際に厳格な指標を活用していることに起因している。
特に、ブラック氏が強調する「安く買い、高く売る」という原則は、ファンドの成功を支える重要な要素である。このアプローチは、短期的な市場の動揺に影響されず、長期的な成長に焦点を当てていることが特徴である。例えば、テスラ株の平均購入価格が162ドル、売却価格が252ドルであることは、計画的な投資判断が収益に直結していることを物語る。
しかし、このアプローチが他のファンドにも通用するかは一概に言えない。市場環境や個別銘柄の特性が異なるため、適用の際には柔軟性が求められる。それでも、Future Fundの成果は、データと規律を重視する投資手法の有効性を示しているといえる。今後、こうした運用スタイルが投資業界全体で広がるか否かは注目すべきポイントである。