ラテンアメリカのフィンテック大手NUホールディングス(NU)に対し、米国の公的年金基金であるカリフォルニア州教師退職年金基金(CalSTRS)が110万株を追加取得し、合計140万株を保有することが明らかになった。同基金は3,528億ドルの資産を運用する米国第2位の年金基金であり、NUの急成長を評価しているとみられる。
一方で、投資の神様と称されるウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、SEC提出の最新報告書でNU株の53.5%を売却し、保有株を4,010万株に縮小した。バフェットは2021年の同社IPO前から出資していたが、今回の売却は投資戦略の変化を示唆するものと考えられる。
NUはラテンアメリカでの市場拡大を続け、2024年12月時点で顧客数は1億1,420万人に達し、前年比22%増を記録。売上高も115億ドルに達し、前年比58%増と驚異的な成長を遂げている。CEOのデビッド・ベレス氏は、規制環境の変化を踏まえ、ケイマン諸島から英国への拠点移転や米国市場への進出を視野に入れていると発言しており、今後の戦略転換が注目される。
米年金基金CalSTRSがNUホールディングスに投資を拡大する理由

米国で2番目に大きな年金基金であるカリフォルニア州教師退職年金基金(CalSTRS)は、NUホールディングスの成長性に着目し、110万株を追加取得した。これにより同基金の保有株数は140万株に達し、同社への投資を強化する姿勢を示している。CalSTRSの総運用資産は3,528億ドルに及び、慎重な投資戦略を取ることで知られるが、NUの高い成長率を評価していると考えられる。
NUホールディングスはラテンアメリカ市場におけるフィンテックのリーダー企業であり、伝統的な銀行がカバーしきれていない層にデジタル金融サービスを提供している。同社の2024年第4四半期決算では、年間で2,040万人の新規顧客を獲得し、前年比22%増となった。売上高は115億ドルに達し、前年比58%増と驚異的な成長を記録している。このような急成長が、CalSTRSを含む機関投資家にとって魅力的な投資対象となっている要因の一つといえる。
さらに、NUホールディングスの成長戦略はラテンアメリカ市場にとどまらず、英国への本拠地移転の可能性や米国市場への進出計画も示唆されている。デジタル金融の発展が進む中、NUが新たな市場機会を活用できるかが、今後の株価動向を左右する重要な要素となるだろう。
ウォーレン・バフェットがNU株を半減させた背景
ウォーレン・バフェット率いるバークシャー・ハサウェイは、2024年の13Fフォーム提出を通じて、NUホールディングスの保有株を53.5%削減したことを明らかにした。売却後も依然として4,010万株(約5億4,300万ドル相当)を保有しているものの、過去の大型投資からは大幅に縮小している。バフェットは2021年のNUのプライベート資金調達ラウンドで5億ドルを投資し、同年12月のIPOに伴い同社の成長を支えてきたが、今回の売却は投資戦略の転換とみられる。
バークシャー・ハサウェイは、長期的な安定成長を重視する投資哲学を持つ。そのため、NUの急成長が続く一方で、リスク管理の観点から利益確定を図った可能性がある。また、フィンテック業界全体における規制リスクや競争激化の影響を考慮し、ポートフォリオの調整を進めたとみることもできる。
一方で、NUホールディングスの将来性に対しては依然として強気の見方も存在する。バロン・フィンテック・ファンドのポートフォリオマネージャーであるジョシュ・サルトマン氏は、同社のラテンアメリカ市場での成長機会を評価しており、高額な手数料や低品質なカスタマーサービスといった既存銀行の課題を解決することで市場シェアを拡大するとみている。バフェットの売却がNUの成長性に対する懸念を示唆するものなのか、それとも単なる投資戦略の一環なのかは、今後の動向を見極める必要がある。
NUホールディングスの市場拡大戦略と米国進出の可能性
NUホールディングスのCEO兼創業者であるデビッド・ベレス氏は、規制環境の変化を考慮し、同社の本拠地をケイマン諸島から英国へ移転する可能性に言及している。これに加え、米国市場への進出も視野に入れており、米国の金融規制の緩和が追い風となる可能性がある。
ベレス氏は、トランプ前大統領が進めた規制緩和政策に触れ、「フィンテック市場において米国がより開放的な環境を整備すれば、新たなプレイヤーの参入機会が拡大する」と指摘している。現在の米国市場はデジタル金融分野の成長が進んでおり、NUのような新興企業にとって魅力的な市場となっている。特に、暗号資産関連の規制緩和が進めば、Nubankのサービス展開にも影響を及ぼす可能性がある。
一方で、米国市場にはすでに多くのフィンテック企業が参入しており、競争は激化している。NUがラテンアメリカ市場で成功したモデルをそのまま適用できるとは限らず、適応戦略が求められる。さらに、今後の米国の金融政策の方向性や規制当局の対応も、NUの成長に影響を与える要因となるだろう。
Source: Investorsobserver