米国による対中関税の一時停止発表にもかかわらず、NVIDIAやBroadcomなど主要半導体銘柄は大幅に反落し、NVIDIAは5.9%の下落を記録した。前日にはPHLX半導体指数が18.7%急騰していたが、一転して利益確定売りが広がった格好だ。しかしアナリストらは、AI関連分野の成長が中長期的には投資妙味を保つと指摘し、関税の影響も最小限にとどまる可能性があると見ている。
特にNVIDIAは新型サーバー「GB200」のメキシコ生産体制を整備中で、アジア圏からの移行によるコスト増も限定的との観測がある。短期的には不透明感が残る一方で、AI市場の構造的拡大は評価が続くとみられる。
AI関連銘柄に再評価の兆し NVIDIAはなお市場の中心に

4月に入り半導体市場に急激な値動きが生じた。PHLX半導体指数は関税措置の一時停止を受けて18.7%も上昇し、翌日にはNVIDIAが5.9%、Broadcomが6.9%、Micronが10%下落するなど、乱高下が続いている。この急騰・急落の背景には、AI需要を背景とする投資期待と、依然としてくすぶる通商リスクの綱引きがある。Cantor FitzgeraldのC.J. Museは「投資家は再び攻勢に出ている」と述べ、AI銘柄に引き続き資金が流入していると指摘する。NVIDIAやTSMC、BroadcomはいずれもAI分野の中心的存在であり、とりわけ生成AI向けGPUの需要は根強い。
一方で、市場では過度な楽観論を戒める声も出始めた。Morgan StanleyのJoseph Mooreは「景気後退がGPU需要に直結するとは限らず、むしろ金融面でのひずみが脅威」と分析している。特にスタートアップ投資の冷え込みが、長期的な需要創出に影響を及ぼす可能性がある。株価は短期的な利益確定に押されているが、AIという成長軸を持つNVIDIAに対して、市場が再び高い評価を与える局面も訪れると考えられる。
NVIDIAのメキシコ移管計画が関税リスクを和らげる可能性
NVIDIAは、次世代サーバー「GB200」の生産体制をメキシコに移行する計画を進めている。Morgan StanleyのJoseph Mooreは、この動きがアジア圏に課される関税の影響を抑制し得ると分析する。GB200はBlackwellアーキテクチャに基づく高性能モデルであり、大量生産には至らないが、製造難易度は平均的な受託生産案件を上回る。にもかかわらず、北米移管のハードルはそれほど高くなく、短期的には価格感応度も低い製品であることから、関税による需給の急変は起こりにくいと見られている。
また、サーバー向けGPU市場は構造的に成長が見込まれる分野であり、短期的なコスト増以上に、サプライチェーンの地政学的安定性が重視される局面にある。その観点から見れば、NVIDIAの生産移管は単なる防衛策にとどまらず、中長期的な競争優位を築く布石となる可能性がある。価格ではなく性能と信頼性が求められる領域であることを踏まえれば、この移行は戦略的な判断として市場から評価される余地があるだろう。
Source:msn