暗号資産SUIの価格が5月1日に8.36%上昇し、過去1週間の上昇率は16.32%に達した。上昇の直接要因は、スイス拠点の21Sharesが米証券取引委員会(SEC)に対してSUI現物ETFを申請したことにある。また同日、21Sharesはレイヤー1ネットワーク「Sui」との提携も発表し、機関投資家向け製品の共同開発を含む戦略的協業を開始した。

この一連の動きは、暗号資産市場におけるETF承認機運の高まりと、トランプ再登板後の規制緩和傾向を背景に、SUIの中長期的な投資対象としての魅力を強めていると見られる。ただしSECの最終判断や市場全体のボラティリティを踏まえると、価格の先行きには慎重な見極めが求められる。

SUI現物ETF申請と価格急騰の背景にある21Sharesの狙い

スイス拠点の21Sharesが米証券取引委員会(SEC)にSUIの現物ETFを申請したことを受け、SUIトークンは5月1日に8.36%上昇、週次でも16.32%の値上がりを記録した。これは、ビットコインなど他の主要資産の上昇と時を同じくして起きたが、SUIの価格変動は21Sharesの動きにより直接刺激されたものと見られる。

21Sharesは暗号資産ベースの上場投資商品(ETP)に特化した企業であり、SUIのような中堅トークンへのETF適用は稀である。この申請により、SUIは機関投資家への訴求力を増し、将来的な流動性の拡大にもつながる可能性が出てきた。

ETF申請は単なる価格材料にとどまらず、Suiプロジェクト自体の正当性や規制面での信頼を市場に印象づける効果も持つ。ただしSECの審査は依然として厳しく、XRPやドージコインといった既存申請が審査延期されている現状からは、即時の承認は見通しにくい。ETF承認期待による一時的な価格上昇が現実化するか否かは、最終的なSECの姿勢次第であり、短期的な期待先行と中長期の制度的整備との間に隔たりが存在する点に留意が必要である。

21SharesとSuiの提携が意味する制度適応と商品開発の次元拡大

SUIの価格上昇を後押ししたのはETF申請だけではない。21Sharesは同日、レイヤー1ブロックチェーンであるSuiとの戦略的提携を発表し、製品開発や共同リサーチを含む協業体制を公表した。この動きは、単なる金融商品の提供にとどまらず、Suiネットワークのエコシステム全体に機関投資家の資本と知見を誘導する枠組みを形成する意図がうかがえる。

21SharesのようなETP専業企業がブロックチェーンインフラそのものと提携するのは異例であり、これが示唆するのは、単一トークンのパフォーマンスではなく、基盤技術全体への投資促進という視座である。

このような提携は、伝統金融と分散型技術の橋渡しを加速させるものであり、制度的受容の促進にもつながりうる。ただし、この枠組みが即座に商業化されるとは限らず、製品の具体化、リサーチ成果の応用には時間がかかる可能性もある。Suiエコシステムが単なる実験的ブロックチェーンから、資本市場と制度環境を備えた成熟領域へと脱皮するには、今後の成果と透明性あるプロセスが不可欠である。提携の発表はその第一歩にすぎず、市場は今後その実効性を冷静に見極める必要がある。

トランプ再登板とSECの規制姿勢が変動要因となる可能性

SUI現物ETF申請の背景には、米国の政治情勢と規制環境の変化もある。記事によれば、第2次トランプ政権の下でSECは暗号資産に対してより柔軟な姿勢を見せており、2025年初頭には多くの調査・訴訟が取り下げられたという。

こうした動向は、ETF申請に対する市場の楽観姿勢を裏付ける材料となっている。また、トランプ・メディア・アンド・テクノロジーズ(NASDAQ: DJT)とCrypto.comの協業など、政権と暗号資産業界との距離感が近づいていることも示唆される。

ただし、規制当局の姿勢が一貫して緩和に向かうとは限らない。政権交代の影響が法的整合性や審査プロセスにどのような影響を及ぼすかは不透明であり、政策的な変動リスクも伴う。短期的には申請ラッシュや価格反応を招くが、制度化の本質はあくまで法的基盤と市場信頼の蓄積に依存する。SUIをはじめとするトークンが持続的に評価されるためには、政治に依存しない構造的成長と透明性がより重要となるであろう。市場は今後、政局と規制の相関に過度に依存することなく、本質的価値に基づく評価眼を養うことが求められる。

Source:Finbold