事業の拡大や企業の発展のため新規事業に取り組む際は、立ち上げメンバーを選定する必要があるでしょう。新規事業を素早く立ち上げて軌道に乗せられるよう、メンバー選びは重要です。
この記事では新規事業立ち上げメンバーの集め方や選ぶコツ、メンバーに求められるスキルについて解説しています。立ち上げメンバーの選定に悩んでいる方は参考にしてください。
新規事業の立ち上げメンバーを集める方法
立ち上げメンバーを集める主な方法は次の4つです。
- 社内で育成する
- 自社雇用で採用する
- 専門企業のリソースを活用する
- M&Aで手に入れる
それぞれの特徴を解説します。
社内で育成する
社内で必要な人材を育成した上で新規事業立ち上げメンバーに登用すると、立ち上げにあたってのノウハウや経験を社内に蓄積できます。
従業員をしっかり育てる意味でも理想的な方法ですが、今すぐ新規事業を始めたいときには不向きです。新規事業の立ち上げを長期的な計画として「何年以内に何人以上の人材を育成して新規事業を立ち上げる」といった目標を立てて実行する場合に適しているでしょう。
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自社雇用で採用する
新規事業の立ち上げ経験のある人や、新規事業に必要なスキルを持った人を新たに採用する方法です。即戦力となる人材を採用できれば、会社にとってもプラスになるでしょう。
ただし、社歴の浅い人間を新規事業の立ち上げに抜擢すると、既存従業員にはよそ者が会社を荒らしに来た印象を持つ可能性があります。自分の方が会社に貢献しているのに仕事を任せてもらえないように感じ、意欲を失う従業員も現れるかもしれません。
待遇や接し方に差が出ないよう注意し、新たに雇い入れた人材が社内で反感を買わないよう配慮しましょう。
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専門企業のリソースを活用する
立ち上げをスピーディーに進めるなら、全てを自社でまかなおうとせず、社外の起業家やコンサルタントのアサインなども検討しましょう。新規事業に必要なノウハウを持った企業に外注したり、業務提携したりといった手法も有効です。
とはいえ、外部の人材に頼りきりであると、自社に必要なノウハウが蓄積されません。新規事業のアイデアが漏洩するリスクもあるので、社外の協力者とは適度な距離感を保って付き合います。
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M&A(買収・合併)で手に入れる
新規事業を立ち上げようと考えている分野において、既にノウハウや人材、設備などを持った企業を買収又は合併して傘下に加える方法もあります。新規参入が難しい事業でも、短期間で必要なものを揃えて仕掛けられるでしょう。
この場合、費用面の負担が大きくなる点と、既存従業員との摩擦が起きやすい点はデメリットとなります。適正な価格での取引ができるよう慎重に進めると同時に、従業員への理解を促す説明も積極的に行いましょう。
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新規事業の立ち上げメンバーは4つのポジション
新規事業の立ち上げには、次の4つのポジションがあります。
- プロジェクトマネージャー
- プロジェクトコーディネーター
- プロジェクトリーダー
- プロジェクトメンバー
それぞれの立場の違いや特徴について解説します。
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プロジェクトマネージャー
新規事業全体を統括する責任者として、1プロジェクトに1人のプロジェクトマネージャーを置きます。
プロジェクトマネージャーには、リーダーシップや全体を俯瞰できる視野はもちろん、チームをまとめて対外的な交渉もできるコミュニケーション能力が必要です。
負担の大きいポジションですが達成感も大きく、新規事業の立ち上げに成功すれば社内の評価を大幅に上げられる可能性があります。
プロジェクトコーディネーター(ファシリテーター)
プロジェクトの規模によってはプロジェクトコーディネーターを置くケースもあります。プロジェクトコーディネーターはプロジェクトマネージャーを補佐し、リソース不足を補うポジションです。
プロジェクトマネージャーと同様の能力が求められますが、時にはプロジェクトメンバーとの間に入って調整役に回ることもあるでしょう。また、プロジェクトの参画者が多いと、全員の状態を見るのが難しくなるので、プロジェクトマネージャーと協力して全体のとりまとめに努めます。
プロジェクトリーダー
プロジェクトリーダーは、プロジェクトを担当領域ごとに小分けしてチームを作った際、その領域の代表者となります。1チームに1人ずつ置かれ、担当領域を統括する存在です。
リーダーシップやチーム内でのコミュニケーション能力も重要ですが、担当領域の知識や経験が豊富であることも求められます。
プロジェクトメンバー
プロジェクトに参画する中で、最も人数比率の大きくなるポジションがプロジェクトメンバーです。
役職のない気楽な立場のようにも見えますが、新規事業を成功させるには、メンバー1人1人の努力や協力が不可欠です。ただのプロジェクトメンバーだからと手を抜かず、責任を持って担当業務にあたる責任感が求められます。
なお、一般的に1チームのメンバーは10人以内、できれば6人程度までが望ましいとされています。人数が多いと情報共有や意見のとりまとめに時間がかかり、足並みを揃えるのが難しくなるでしょう。人数が多くなる場合はチームを分割し、担当領域を細分化するのがおすすめです。
新規事業の立ち上げメンバーを選ぶコツ
ここからは、新規事業の立ち上げに加えたい存在や、メンバーを選ぶ際の判断基準となるポイントを紹介します。
経験者を1人以上入れる
新規事業の立ち上げメンバーを選ぶなら、最低でも1人は経験者を入れておきたいところです。
事業を立ち上げた経験者からの発言は、実践経験による裏付けがあるため、説得力を持ちます。立ち上げメンバーをまとめ、プロジェクトを進める上で大いに役立つでしょう。
ただし、経験者の意見を偏重し、独壇場となってしまうのも問題です。要所要所で経験者の意見を参考にしつつ、メンバーからも積極的に発言できるチームを作りましょう。
将来性のある社員を起用する
新規事業の立ち上げは、貴重な実践経験の宝庫です。また、既存事業とは異なる取り組みを始めるには、古い考え方や習慣に囚われない、新しい発想を持つ人も必要です。
立ち上げを経験させたい、新しい発想を持つ人物といえば、若手社員や将来を期待する従業員などがそれにあたります。今後の企業としての発展も考え、そうした人材を積極的に起用しましょう。
多様な意見を出せるメンバー構成にする
新規事業を進めるメンバーは、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーに賛同するばかりのメンバーで固めない方が良いでしょう。賛同するメンバーが集まると意見をまとめやすく、進行しやすくなるものの、意見の偏りが起こりやすくなります。
意見に偏りがある状態で進めると、視野が狭くなって問題点に気づけず、気付いたときには方針転換が難しくなっているかもしれません。
多様な意見を出し合い、時には意見を戦わせながら、新規事業をより良くするための発言ができるメンバーも加えておきましょう。
新規事業のMVVを浸透・共有する
メンバーが新規事業の目的を理解し、そこに向けて行動できないと、チームの足並みは乱れやすくなります。それを防ぐには、新規事業のMVVの浸透・共有が重要です。
- Mission(任務、使命)
- Vision(目指す未来)
- Value(求める価値)
この3つの頭文字を取った「MVV」は、企業にとってもビジネスにとっても大切なものになります。MVVが曖昧であると、その場の問題を解決することばかりに気を取られ、長期的な計画を立てて動けません。新規事業を立ち上げる際もMVVが明確でないと、共通のゴールを目指した行動が取りにくくなります。
MVVが浸透するようにしっかりと共有し、理解してくれるメンバーで新規事業を立ち上げましょう。
新規事業立ち上げメンバーに必要なスキル
新規事業の立ち上げメンバーには、必須となる新たな事業に関する知識のほかにも必要なスキルがあります。リーダーシップやチャレンジ精神、行動力に柔軟性といった能力を持った人物であれば、新規事業の立ち上げに貢献してくれるでしょう。
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リーダーシップ
リーダーシップは、プロジェクトマネージャーやプロジェクトリーダーに必須のスキルですが、プロジェクトメンバーも備えている方が望ましいです。
リーダーシップというと、強い求心力によってチームを引っ張っていくタイプの能力を思い浮かべる人も多いでしょう。しかし、リーダーシップにも様々な形があります。
- メンバーの不足を補う提案によって全体をまとめるタイプ
- チームメンバーに歩み寄りながら協力を促すタイプ
- 率先して行動する姿を見せてメンバーのやる気を駆り立てるタイプ
一例ですが、こうした多様なリーダーシップが存在し、いずれも共通するのは目標達成のために進んで行動を起こせる点です。積極的に意見を発信し、責任を持って行動・判断できる能力が立ち上げメンバーには必要です。
失敗を恐れないチャレンジ精神
新たなチャレンジには失敗がつきものであり、修正を繰り返しながら成功に向けてアプローチを繰り返します。よって、失敗を恐れていては、新規事業の立ち上げは前進しません。
はじめから完全な状態で運用できる事業はほとんどないので、失敗を学びとして受け入れるマインドが重要です。
考えながら実行する行動力
物事を進める上で、事前の検証は重要ですが、考えるばかりでは何も始まりません。慎重に考えすぎるのは時間のロスとなり、刻々と変化する状況に対応できないこともあるでしょう。
考えながら実行できる行動力が取り組みを前進させます。
臨機応変な対応や多様な意見を受け入れられる柔軟性
新しいことを始めた際は、想定外の出来事が起こる場合もあります。マニュアルを整備されていない状況で対処しなければならないこともあり、自身の知識や経験を生かして柔軟に動ける姿勢が求められます。
また、問題解決には偏った考え方ではなく、幅広い意見を聞き入れる必要もあるでしょう。多様な意見を受け入れて最善策を見つけるためにも柔軟性が必要です。
新規事業立ち上げの障害となる存在
新規事業の立ち上げを成功させるには、障害となる存在に注意しましょう。メンバーの意欲をそぎ、結果に悪影響を及ぼす可能性があります。
新規事業への熱意に乏しい責任者やリーダー
新規事業を立ち上げる際は、メンバーのリーダーシップやビジョン共有が重要であると先述しました。もしも、新規事業への熱意がなく、役職だけで選ばれたリーダーやマネージャーを据えてしまうと、メンバー全体の士気を下げるでしょう。
経験や知識が豊富であっても、熱意を持って行動しない統率者は、プロジェクトの妨げとなります。メンバーを選ぶ際はこの点にも注意したいところです。
他部門からの根拠のない指摘や批判
新規事業の立ち上げについて、社内全体の理解が進んでいないと、メンバーに批判の目が向けられることあるでしょう。
新規事業は立ち上げて軌道に乗せ、費用回収できるまで時間がかかるものです。その間に発生する赤字は、既存事業の売上によって補填される形になります。そのため、従業員の中には新規事業の立ち上げメンバーに対して、不公平感を持つ人も現れるでしょう。不公平感から新規事業への批判が強くなると、立ち上げメンバーの意欲を削ぎます。
新規事業と既存事業、どちらが優れているというものではありません。どちらも企業にとって重要な存在であり、携わる事業によって従業員の優劣はないと認識してもらえるよう、経営者側のアプローチも大切です。
新規事業を成功に導く人材を立ち上げメンバーに集めよう
新規事業の立ち上げメンバーを集める場合、社内での人材育成や新たな採用のほか、外部のリソースを活用したり、M&Aで手に入れたりといった方法もあります。
メンバーを選ぶ際は、立ち上げ経験のある人や将来性のある社員を起用し、様々な意見を出せる構成にしましょう。また、MVVを理解したメンバーであるかも重要です。
リーダーシップやチャレンジ精神、行動力に柔軟性といったスキルを備えた立ち上げメンバーを集め、新規事業を成功させましょう。
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