最新技術として大きく広まっている「メタバース」ですが、具体的に各企業がどのようなメタバース開発を行っているかご存じでしょうか。日本国内・海外ともに、各社がすでに持っている技術を活用しながらそれぞれ特色ある事業に取り組んでいます。

本記事では、日本のメタバース企業・海外のメタバース企業について代表的なものを解説します。また、なぜそこまで多くの企業がメタバース開発に進出しているのか、その将来性についても見ていきましょう。

メタバースとは?

メタバースとは、「超越」を意味する「メタ」と「宇宙」を意味する「ユニバース」を組み合わせた言葉で、オンライン上に作られた仮想空間を意味します。

メタバースでは人々が現実世界と同じような生活を送れ、人々とのコミュニケーションやイベントの開催、デジタルアイテムの売買などが可能です。

メタバースを題材としたゲームやプラットフォームは、すでに開発が進められています。たとえば「The Sandbox(ザ・サンドボックス)」というNFTゲームでは、ゲーム内の土地データがNFTとして売買されており、とても高額です。

メタバースは、仮想空間という自由度の高いプラットフォームを人々の生活に深く結びつけられます。そのため、今後さらに幅広い分野に応用されるのではと期待されているのです。

メタバースについてさらに詳しく知りたい方は、「【具体例つき】メタバースとは?メリット・デメリットもわかりやすく解説をご覧ください。

日本のメタバース企業一覧

メタバースは、すでに日本の大手企業も次々と事業着手している領域です。ここでは、実際にどのような企業が何を目的に取り組んでいるのかについて、具体的な事例を交えながら紹介します。

より詳細な内容を知りたいという方は、「メタバースに参入した日本企業の業種別一覧!ブームの背景や将来性も解説」も参考にしてください。

ソニー

ソニーグループはさまざまな電化製品やIT領域、音楽・ゲームなどエンターテイメントまで幅広く取り扱う日本の総合電機メーカーです。そんなソニーは2022年5月18日の経営方針説明会で、メタバース関連サービスを強化するという経営方針を発表しました。

ソニーはメタバースの技術をさまざまな領域で活用すべく、ゲーム会社の買収に力を入れています。現在、すでに「PlayStation VR」というVRゲームをプレイできる端末をPlayStation 4の周辺機器として発売しており、メタバースへの注目度合いが伺えます。

また、ゲーム以外にも、スポーツ観戦の領域にメタバースを組み込む技術も開発中です。ソニーは「ホークアイ」というスポーツの審判員をサポートするシステムを開発しています。

人間の目では追えないほどの速い動きを光学トラッキングやAIなどのテクノロジーによって可視化し、それらをメタバース上に再現できないかと考えているのです。これが実現すれば、360度どこからでも観戦ができるメタバース上でのスポーツが可能となります。

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リコー

リコーは、おもにプリンターや複合機などの事務機器・電子機器を開発するメーカーです。リコーもメタバース領域に進出しており、「RICOH Virtual Workplace」というサービスを開発しています。

RICOH Virtual Workplaceは、さまざまな空間を仮想空間上に作り出し、集まった人々がリアルタイムにコミュニケーションを取れるサービスです。

VRヘッドセットを使うことでリアルな距離に人が存在するかのように感じられ、遠くにいる人とも自然なやりとりができるよう工夫されています。

また、RICOH Virtual Workplaceはバーチャルオフィスだけでなく、建設や土木の現場を再現するといった活用も考えられています。建設中の現場に近いバーチャル空間を再現することで、リアリティのある打ち合わせを可能にしているのです。

パナソニック

日本の大手電機メーカーであるパナソニックも、メタバース分野での開発を始めています。パナソニックは2018年4月にはIoT開発会社である株式会社Shiftallを完全子会社化しており、そこを通じて3種類のVR関連機器を開発中です。

1つ目の機器は、「MeganeX」という小型のメガネ型VRヘッドセットです。現状のVRゴーグルは没入感を与えるために装着者の視界を完全に覆う形をしていて、大型のものが多くなっています。

ところがMeganeXでは、それを最小限の大きさにして小型化しました。メタバースで現実世界と同じような体験にするにあたって、デバイスの重さなどから長時間の没入が難しいことは大きな課題の一つでした。

その点、小型のデバイスであればメタバースに長時間没入できるため、ヘビーユーザーでも快適に利用できるようになっています。

2つ目の機器は、「Pebble Feel」という、背中に取り付ける小型のエアコンです。Pebble Feelは装着者に暑さ・寒さを体感させる機能を持っています。VR世界のデザインにあたって「温度」という新しい要素を取り入れられるようになる画期的なデバイスです。

3つ目の機器は、「mutalk」です。mutalkは口に装着することで、現実世界の周囲に自分の声を漏れにくくします。メタバースを利用している際の声を周囲に聞かれたくないというユーザーは多く、その問題解決のためこのデバイスが開発されました。

自分の声をメタバース空間にだけ届けるこのマイクによって、ゲームでの大声や、会議での機密情報などがあっても、どこでもメタバースが利用可能になります。

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キャノン

キャノンは、カメラやビデオ、プリンターなどを開発する大手精密機器メーカーです。キャノンはメタバース事業として「AMLOS」というアプリケーションを開発中であると発表しました。

AMLOSは、カメラ1台だけで複数の視点からの映像を同時配信できるソフトウェアで、おもにビジネスでのオンライン会議などに使われる目的で開発されています。

たとえば、会議室全体・プレゼンター・ホワイトボードなどさまざまな視点を一度に配信できるため、現実の会議室に近い環境でのミーティングが可能です。

これまで培ってきたカメラ技術などもあり、細かいホワイトボードの文字なども拡大して読める高画質になっています。また、AMLOSはMicrosoft社のチャットツールである「Teams」との連携が可能となっており、Teamsを利用する企業はスムーズな導入が可能です。

KDDI

KDDIは携帯電話など通信事業を手がける企業です。

同社は「バーチャルシティ」というメタバースのプラットフォームを開発していることが大きな話題となりました。バーチャルシティは5G、VR、XRなどの最新技術を用いることで時間・空間の制約がない都市体験の実現を目指しています。

実在する都市がバーチャルシティの仮想空間上に再現されており、現在のところ「バーチャル渋谷」「バーチャル原宿」が渋谷区公認のもと配信されています。過去にはこれらの空間を利用して「ハロウィーンフェス」「シブハル祭2021」などのイベントが行われてきました。

さらに特徴的なのは、メタバースと現実世界を連動させる機能がある点です。たとえばメタバース上の店舗で服などを購入すると実際に現実世界でそれが配達される仕組みになっており、世界中どこからでも日本のリアルな都市を体験できます。

今後、さらに日本のほかの都市もバーチャルシティに再現予定です。

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メタバース企業の海外における動向

メタバース業界への参入は、海外でも大きな波が起こっています。ここではアメリカ・中国・韓国の主要企業が開発しているメタバース分野のプロダクトについて、活用事例なども踏まえて解説します。

アメリカ

アメリカは巨大IT企業の多くがメタバース分野に参入しつつあります。ここではおもに、以下の企業の動向を見ていきましょう。

  • Meta(Facebook)
  • Microsoft
  • Nvidia

アメリカ企業でとくにメタバースに強く入れ込んでいるのは、Meta社(旧Facebook社)です。2021年10月28日には社名をMetaに変更してメタバース開発に巨額の費用を投じており、今後さらにメタバース分野の開発が進んでいくと考えられます。

Meta社の主な製品の一つが、「Meta Quest 2」です。Meta Quest 2はさまざまな機能を持ったオールインワンのVRヘッドセット・コントローラーで、ゲームやビジネスなど分野にとらわれずさまざまな用途に利用できるようになっています。

Microsoft社は、おもにメタバース関連のソフトウェア開発を行っています。たとえば同社の主要製品の一つ、チャットツール「Microsoft Teams」にメタバース上でのコミュニケーション機能を加えた「Mesh for Microsoft Teams」です。

Mesh for Microsoft Teamsでは、単なる会議室だけでなくイベント会場・パーティ会場などさまざまなロケーションを再現できます。現在広く利用されているTeamsの付随機能でもあり、メタバース会議ソフトとして有力であるといえるでしょう。

Nvidia社はアメリカの大手半導体メーカーで、コンピュータグラフィックを処理するGPUの開発で非常に有名です。メタバースでは3Dグラフィックを多用した複雑な処理が行われるため、今後が注目されます。

また同社は「NVIDIA Omniverse」と呼ばれる、3Dワールドなどのコンテンツを作成するソフトウェアをクリエイター向けに無償提供すると発表しました。新しい分野であるメタバースの開発がしやすいプラットフォームが整うことで、業界全体のさらなる成長が期待されます。

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中国

メタバースに投資する企業は中国でも増えつつあります。とくに大きく成長しているのは、以下の企業です。

  • アリババグループ
  • テンセントホールディングス
  • バイドゥ

この中でもとくに開発を進めているのは検索サイト大手のバイドゥで、中国初の大規模なメタバースプラットフォーム「希壌」を開発しました。

グラフィック性能の低さなどから悪い評価も一定数あるものの、10万人規模のイベントを開催できたことから十分な機能性をもったプラットフォームといえます。

一方で中国では、行政の規制により開発がしにくい点が問題視されています。多くのメタバース開発では暗号資産やNFTなどのブロックチェーン技術が関わることがありますが、中国ではこれらが禁止されているのです。

中央政府はデジタル人民元の開発などでそれらを補う計画を進めていますが、そのほかの国と比べるとメタバース進出へのハードルは高いといえそうです。

韓国

韓国では、国をあげてメタバース事業に力を入れる大きな動きがあります。実際に行政機関や自治体などでもメタバースへの参入が話に挙がっており、とくに競争が激化しているのは韓国の通信キャリアである以下の3社です。

  • LGユープラス
  • SKテレコム
  • KT

各社はそれぞれ異なるメタバース事業を展開しています。たとえばLGユープラスは、「国際XRコンテンツ制作通信事業者アライアンス」という、日本・カナダ・中国など各国の通信事業者を集めた制作アライアンスを設立しました。

また、SKテレコムもメタバース上でより体感的なコンテンツを制作しています。ゴルフ中継を3Dで再現して視聴できる「メタバースゴルフ」や、複数ユーザーが同時にプレイできるメタバースゲーム「Crazy World VR」などです。

一方でKTは、メタバース上で買い物体験ができる「ARショールーム」や、語学学習ができる「VR語学研修」などを開発しています。韓国はほかの国と比べて若い世代がメタバースに興味を持っている傾向にあり、今後さらに革新的なサービスの開発が期待されます。

メタバース業界の最盛期は何年後に訪れる?

日本や海外の大手企業が次々に開発に取り組んでいるメタバースですが、実際に多くの人がメタバースを使う世界はいつ頃やってくるのでしょうか。ここでは具体的にいつメタバースが最盛期を迎えると予測できるのか、またその根拠について解説します。

2025年には経済圏が確立

メタバースは現実世界と同じように経済活動ができるという大きな特徴があります。このメタバース経済圏が、2025年には確立するのではないかと元Facebook Japanの馬渕氏は述べました。

その根拠として、現在のメタバースで課題とされているVRデバイスの小型化が挙げられます。デバイスの使いにくさから参入できないライト層を取り込むことでメタバース人口が増大し、2025年には十分な経済圏ができると考えられるのです。

その後は、5Gに代わる通信規格の6Gによりさらに高速で大容量な通信が可能となり、現実世界とほぼ変わらないスピードで人々との通信ができると予想されます。

暗号資産やNFTの技術応用によってデジタルデータも現実のお金と変わらない資産として扱われ、それらがスムーズに取引されるようになるのです。

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産業用メタバースも急成長

さらに大きなポテンシャルを秘めているのが、産業用メタバースです。現在のメタバースはおもにゲームなどの娯楽や人々とのコミュニケーションを中心に開発されています。しかし、製造業などの産業にもメタバース技術は十分に応用できると考える動きがあるのです。

具体的な産業用メタバースの例としては、製造ラインのシミュレーションによる先回りがあります。現実世界で行われている製造ラインをメタバース上で再現することで、高精度なシミュレーションを可能にし、予想される事故のリスク回避などが行えるのです。

大規模な産業用メタバースの開発は、業界全体をさらに拡大することに繋がります。これからも多様な分野にメタバースが利用されるようになれば、現実世界を完全にコピーした仮想世界が誕生する日も遠くないでしょう。

メタバース企業は今後も続々と増える可能性大!

デバイスなどの問題点からまだ一般的に利用されているとはいえないメタバースですが、すでに多くの企業が開発に着手しています。これは、メタバースがいくつかの課題を解決すれば急速に広まり、また今後の拡大分野も多く存在するためです。

まだ多くの企業が手探りの状態の今だからこそ、早いうちからのメタバースへの参入をぜひ検討してみてはいかがでしょうか。

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