リーンキャンパスとビジネスモデルキャンパスは、ビジネスのスタートアップやスケールで利用できるフレームワークとして注目されています。
しかし、名称が似ている上に構成要素も多いことから、学習が進まないケースも少なくありません。そこで本記事では、そんな悩みを抱える方に向けて、リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスのメリットや、両者の違いを解説します。
両者の作成方法・実用例も掲載しているため、ぜひ参考にしてください。
リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスとは
ここではまず、リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスの概要や両者の相違点を確認しましょう。
- 新規ビジネス構築ならリーンキャンバス
- ビジネスモデルキャンバスは既存ビジネスのスケールに最適
- リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスの違い
適切に使い分けられるように、しっかり押さえておいてください。
新規ビジネス構築ならリーンキャンバス
リーンキャンバスとは、新規ビジネス構築における課題の解決に重点を置いたフレームワークです。
スタートアップ時の阻害要因を明確にしてソリューションを見出せるだけでなく、収益構造もクリアになるため、さまざまな領域で活用されています。
また、ビジネスモデルの軌道修正にも有用であり、定期的に実施することでより大きな効果が得られるでしょう。
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ビジネスモデルキャンバスは既存ビジネスのスケールに最適
ビジネスモデルキャンバスとは、自社が市場に対して提供できる「価値」を明確化するフレームワークです。
付加価値が生まれる構造を可視化し、ビジネスの強みを活用した優位性の高い事業展開が行えます。
ビジネスモデルキャンバスは、既存ビジネスのスケールに効果的であり、既存事業をベースにした新規事業のローンチにもおすすめです。
リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスの違い
リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスは、いずれも9つの構成要素を持っており、以下の項目が共通しています。
- 顧客セグメント
- チャネル・販路
- 収益の流れ
- コスト構造
そのため、一見すると両者に違いはないように思えますが、以下の5項目については大きく異なっているのです。
リーンキャンバス | ビジネスモデルキャンバス |
課題 | 主要パートナー |
ソリューション | 主要な活動 |
主要指標 | 主要な資源 |
独自の価値提案 | 提供価値 |
圧倒的な優位性 | 顧客との関係 |
上記はどれも根幹を担う構成要素。当然ながら、利用用途や適したシーン・アプローチにも影響を与えるため、リーンキャンパスとビジネスモデルキャンパスは明確に異なるフレームワークといえるでしょう。
両者を適切に使い分ければ、より多角的な視点から自社のビジネスを診断できます。
リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスのメリット3つ
リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスのメリットとしては、以下3つがあげられます。
- 事業ローンチ・スケールにおける問題点を可視化できる
- チーム内での認識と目線を統一できる
- ビジネスプランの優位性を説明しやすい
最大限活用できるように、それぞれ詳しく確認しましょう。
事業ローンチ・スケールにおける問題点を可視化できる
どちらのフレームワークも事業ローンチ・スケールにおける問題点を可視化できます。スムーズかつ的確な判断が可能となるため、効率的にビジネスを進められるでしょう。
実際のところ、問題点があやふやなまま議論を行っても、効果的な解決策は浮かびません。しかし、2つのフレームワークを用いることにより、時間を無駄にすることなく、最適解を導き出せるのです。
チーム内での認識と目線を統一できる
リーンキャンパスとビジネスモデルキャンパスは、ビジネスを進めるチーム内で認識と目線を統一できる点でも優れています。
シート1枚に現状をまとめれば、どれだけ多忙でも即座に情報共有が可能となり、コア業務をフル稼働しながらでも足並みを揃えられるでしょう。
ビジネスプランの優位性を説明しやすい
思考の中にあるビジネスプランの優位性を、図解などで見える化できるのも大きなメリットです。具体的には、以下のようなシーンで活躍するでしょう。
- 上長から承認を得る
- クライアントからの理解を得る
- 投資家などからの出資を引き出す
もちろん、上記以外にも活用場面は多岐にわたるため、1つの交渉術として覚えておくのがおすすめです。
リーンキャンバスの書き方
ここからは、リーンキャンバスの書き方を解説します。
作成手順・事例についても掲載しているので、ビジネスに活用したい方はぜひ参考にしてください。
リーンキャンバスの9つの構成要素
リーンキャンバスは、企業側・顧客側・資金面の視点に加えて、独自の価値提案に分類される9つの要素で構成されています。
以下でそれぞれ詳しく確認しましょう。
顧客セグメント
顧客セグメントとは、自社がターゲットとするユーザーを特定の条件で分類したグループを指しています。
ちなみに、リーンキャンパスでは「アーリーアダプター(最初の顧客)」が特に重要。もちろん、顧客セグメントから割り出せるため、後のプロセスを左右する要素としてきちんと取り組まなければなりません。
課題
課題の項目では、顧客が抱える悩み・問題点を記載します。優先度に応じて3つほど記載するのがおすすめであり、課題だけでなく代替サービスも書き出せると、その後の理解が進みやすくなるでしょう。
独自の価値提案
自社の強みを考えた上で、独自の価値提案を考案しましょう。記載が難しい項目ですが、他社との違いを顧客へアピールするには重要な要素。
自社だからこそ差別化が可能な理由や、「顧客視点での価値とはなんたるか」などを深く追求すれば、より効果的に進められます。
ソリューション
顧客側の課題を分析し、適切なソリューションを考えていきます。その際重要となるのが自社の独自性であり、他社にはないノウハウやサービスなどを提供することで、競争力のあるビジネスプランが策定できるでしょう。
チャネル・販路
サービスや商品価値がどれだけ高くても、肝心の顧客に届かなければ意味がありません。SNS・LPを始めとするオンラインメインか、ポスティングなどでオフラインに注力するかなど、顧客の流入経路・アプローチルートを検討しましょう。
収益の流れ
事業を円滑に進めるには、収益の流れを明確に把握しなければなりません。そして、顧客がマネタイズポイントに到達するまでのルートを見える化すると、より大きな効果が見込めます。
主要指標
ビジネスの最終目標を達成するには、ただやみくもに取り組むのではなく、主要指標にもとづいた中間目標を設定する必要があります。
可能な限り具体的な数字を用いることが大切ですが、あまりハードルが高くなりすぎないよう、現実的な範疇に留めましょう。
コスト構造
サービス・商品のクオリティ向上はもちろん重要ですが、きちんと収益を確保するには、コストも考える必要があります。
たとえば、人件費や外注費、材料費などが代表的であり、できる限り正確な費用を記載して、具体性を持たせましょう。
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圧倒的な優位性
圧倒的な優位性とは、他社には絶対提供できない自社の強みを指しています。
競争力のあるビジネスを行う上では最重要といっても過言ではなく、可能な限り再現性の高いアイデアを記載しましょう。もし思い浮かばなければ、空欄でも問題ありませんが、「何が圧倒的な優位性につながるのか」は最低限考えてみてください。
リーンキャンバスを作成する手順
リーンキャンバスを作成する際は、最初に「課題」から記載しましょう。
次に、課題に対するソリューションを考案するために、自社が提供できる価値を見つけていきます。
そして、独自性の高い解決策が見出せたら、しっかり顧客へ到達するような提供ルートを検討し、ビジネスを実行に移してください。
リーンキャンバスの作成事例「Tinder」
「Tinder」とは、男女のマッチングアプリであり、安全性と使いやすさから、大きな人気を誇っています。
そして、サービスの開発時には、以下のようにフレームワークが活用されました。
顧客セグメント | 真剣に恋人を探している人 |
課題 | マッチングアプリは安全性に不安がある結婚相談所に行くほどでもない |
独自の価値提案 | アプリを使い真剣な交際の場を設ける |
ソリューション | Facebookからサイトに登録するユーザーに合わせた効率的なマッチングを行う |
主要指標 | プレミアムサービスの入会率や継続率 |
チャネル・販路 | 業界大手のブランド力メディアや口コミ |
収益の流れ | プレミアムサービスによる収益アプリ内に掲載されている広告による収益 |
コスト構造 | 開発料マーケティングにかかるコスト |
圧倒的な優位性 | なし |
Tinderのビジネスモデルと一致せずとも、フレームワークを使った成功事例の1つとして参考にしてください。
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ビジネスモデルキャンバスの書き方
次は、ビジネスモデルキャンバスの書き方を確認します。
作成事例として「Google」も取り上げているため、しっかり押さえておきましょう。
ビジネスモデルキャンバスの9つの構成要素
ビジネスモデルキャンバスの構成要素も9種類となっています。の要素から構成されています。
それぞれ詳しく解説するため、スムーズにビジネスシーンで活用できるよう、ぜひ参考にしてください。
顧客セグメント
顧客セグメントは、自社の方針などを考慮しながら、「どんな人に価値を提供するか」「どのようにアプローチしたいか」を主軸に考えましょう。
一般顧客を対象にするなら、日常生活における困り事・希望にフォーカスし、法人の場合はビジネス形態をもとに考えるのがおすすめです。
提供価値
自社のサービス・商品が、いかに特別な価値を提供できるかを検討します。ただし、主観だけで考えても、市場で通用するアイデアは生まれないため、できる限り顧客目線に立ち、ニーズを適切に捉えましょう。
チャネル・販路
チャネル・販路はサービスの提供ルートを決めていきます。
オンライン・オフラインのどちらで行うか、告知方法などに集中しがちですが、この時にターゲットの属性もないがしろにしてはいけません。
一例として、インスタグラムを用いるのなら高齢層より若年層の方がリーチしやすいため、チャネルの特性を意識しながら構築しましょう。
顧客との関係
収益を得る上では、新規顧客はもちろんのこと、既存顧客の再購買も大変重要です。しかし、リピーター化してもらうには、顧客との関係性を保つ必要があるため、維持していく不法・アイデアを具体的に書き出してください。
収益の流れ
サービス・商品を販売して収益を得る場合は、売切り型・サブスクリプション制の2つに大別されます。
リーンキャンパスでも解説したマネタイズポイントなども考慮しつつ、ターゲット層に適した支払方法やタイミングを明確にしましょう。
主要な資源
ビジネスにおける資源(リソース)とは、人材・資金・物資・情報です。
自社のリソース保有量・キャパシティーから、プロジェクトへの適切な配分バランスを検討しましょう。
主要な活動
ビジネスの発展に繋がる活動を具体的に考えていきます。たとえば、営業活動・商品制作やシステム開発などが代表的であり、可能な限り明確に設計することが重要です。
主要パートナー
どれだけ綿密にビジネスモデルを構築しても、自社だけで完遂できるとは限りません。
そのため、リソースの補完や技術的な協力体制を築ける企業・個人を書き出し、解像度の高いビジネススキームを想定しましょう。
コスト構造
サービス・商品を生み出すために必要なコストを書き出します。
人件費や材料費だけでなく、外部への委託費も考慮する必要があり、販売促進費も欠かせません。
ビジネスモデルキャンバスを作成する手順
ビジネスモデルキャンバスを作成する際は、顧客セグメント・自社の提供価値を書き出します。
そして、ターゲットやサービスの価値が明確になった後は、主要な資源、主要パートナー、チャネル・販路を記載しましょう。
最後に、コスト構造を考察し、要求されるリソース・パートナーを踏まえて適切なコストを算出してください。
ビジネスモデルキャンバスの作成事例「Google」
今や世界的な検索エンジンとして知られる「Google」も、実はビジネスモデルキャンパスを用いて開発されたサービスの1つ。以下の事例を参考に、自社のビジネスへ落とし込んでみてください。
顧客セグメント | 検索エンジンの利用者Webサイトの運営者広告を掲載したい事業者 |
提供価値 | 世界中のサイトにアクセスできるターゲット層を絞り広告が掲載できる |
チャネル・販路 | Google ChromeAndroidデバイス |
顧客との関係 | 主要な検索エンジンになる広告のプラットフォームになる |
収益の流れ | いくつかのプレミアムサービスからの収益広告収入など事業者からの収益 |
主要な資源 | 検索アルゴリズムWebクローラー業務にあたる人材 |
主要な活動 | アルゴリズムの作成ソフトウェアの開発検索エンジンの運営 |
主要パートナー | ユーザーWebコンテンツの制作者 |
コスト構造 | 研究開発費運営費人件費 |
Googleレベルのプラットフォームであっても、フレームワークの進め方は一切変わらないため、各項目の設定・考え方を取り入れてみましょう。
リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスの注意点2つ
ここからは、以下2つの注意点を解説します。
- 必ず効果を検証する
- 定期的にビジネスを見直す
フレームワークを最大限に活かすためにも、しっかり押さえておきましょう。
必ず効果を検証する
リーンキャンバス・ビジネスモデルキャンバスは、ただ完成させてビジネスモデルを走らせるだけでは不十分です。
フレームワークから導きだされた施策をきちんと効果検証して、浮き彫りになった問題点をさらに改善しなければなりません。
そして、改善策を実施した後に課題が浮き彫りとなった場合は、再度フレームワークを用いて軌道修正し、少しずつビジネスモデルをブラッシュアップさせましょう。
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定期的にビジネスを見直す
フレームワークは、スタートアップのタイミングで用いるケースがほとんどです。しかし、より市場での最新トレンドを反映させたいのなら、ローンチ時に限らず定期的に作成した方がいいでしょう。
定期的にビジネスモデルを見直せば、隠れた問題点や気付きもあるため、健康診断のようなイメージで実施してみてください。
リーンキャンバスとビジネスモデルキャンバスを適切に使い分けよう
本記事では、リーンキャンバス・ビジネスモデルキャンバスの概要や書き方、事例についても解説してきました。
両者は一見すると大変似ていますが、一部の構成要素や適したビジネスシーンも異なっています。
それぞれを適切に使い分けつつ、効果検証を継続することでビジネスをブラッシュアップしていけるため、ぜひ本記事を参考にさっそく各項目を書き出してみてください。
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