商品やサービスを生産・販売していく上で重要になるのが「顧客ニーズを満たすサービスの提供」です。いくら独創的で魅力のあるサービスであっても、顧客のニーズを満たせないと安定して売上を伸ばせません。

顧客ニーズを踏まえたサービス提供は事業成功の上で必須と言えます。

そのためにぜひ活用して欲しいのが「PSF(Problem Solution Fit」と呼ばれる指標です。PSFを活用してサービスの設計・展開を進めていければ、顧客のニーズを素早く的確に満たせます。

本記事では新規事業の成功に欠かせないPSFについて詳しく解説します。新規事業の担当者の方や新たな事業創出を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

PSFとは

PSFとは「Problem Solution Fit」の略称で、顧客が抱えている課題と企業が提供しているサービスを通じた解決策がフィットしている状態です。凹凸が埋まるようなイメージで、顧客の課題にぴったりとハマる解決策を提示できればPSFは達成されていると言えます。

PSFは新規事業を立ち上げる際に重要視される指標の一つですので、この機会にしっかりと把握しておきましょう。

PSFが重視される理由

PSFは「顧客の問題や課題を正しく把握できている」上で、「提供するサービスが最適な解決策を提示できている」状態。いずれの要素も新規事業が市場に受け入れられたり、継続的に購入してもらったりする上で欠かせません。

また、新規事業で安定して利益を出すためにも、顧客の購入意欲を高める必要がありますが、購入意欲を左右する重要な要素が「課題の解決感」です。新規事業が課題の解決に役立っているか否かを判断するPSFは、新規事業の成功に密接にかかわっている重要な指標と言えます。

PSFとPMFの違い

PSFと混同しやすい指標として「PMF」が挙げられます。

PMFは「Product Market Fit」の略称で、自社で提供しているサービスが市場・顧客といった広い意味でのマーケットでフィットしている状態です。新規事業を立ち上げてから当面の間は、PMFの達成を目指すことになります。

PSFでサービスと顧客の課題解決がフィットできたか確認し、PMFを活用して市場全体でサービスの提供状況を確認する、というイメージです。PSFを整えた先にPMFがあると考えてよいでしょう。

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PSFを進める手順

PSFを進める手順は大まかに下記の流れになります。

①顧客が抱える課題を分析する
②自社サービスの顧客を再確認する
③課題の解決方法を見つける
④コミット率の検証を実施する
⑤顧客の購買意欲を確かめる

それぞれ詳しく見ていきます。

顧客が抱える課題を分析する

まずは顧客が抱える課題を分析しましょう。顧客が抱える課題の内容によって提供すべき解決策が変わってきます。

たとえば顧客が「家事の負担を減らしたい」という課題を抱えるとします。この課題の解決策としては「家事代行サービスの提供」「掃除用品・電気機器の開発」などが挙げられますね。顧客が抱える課題を把握し、初めて提供するべき解決策が見えてくるのです。

PSFは顧客サイドの視点を取り込んだ考えですので、顧客の課題を理解しなければ適切に利用できません。顧客がどのような課題を抱えているのか深堀っていきましょう。

顧客が抱える課題を深堀るには、可能な限り顧客の声を直接集めるのがおすすめです。顧客から意見を集めれば、抱えている課題を確実に把握できます。

アンケート調査やネットリサーチ、SNSを通じて顧客が抱える課題を直接把握しましょう。自社で調査するのが難しい場合は、調査・リサーチ会社に依頼するのもおすすめです。特に大規模な調査を実施したい際は専門業者に依頼した方が効率よく調査を実施できます。

また、メディアなどで報道されている消費者動向は一次情報とするには信ぴょう性が低い可能性があります。事業に活用できるような「顧客が抱える本当の課題」は、顧客の生の声に隠れていることも少なくありません。

自社サービスの顧客を再確認する

次に自社サービスの顧客を再確認します。自社サービスの顧客は誰なのか、どのような特徴を持った顧客層なのかチェックしましょう。特にターゲットの顧客層が広いサービスを扱う場合は、把握漏れがないよう注意してください。

たとえば「SNS用の画像制作サービス」を提供する場合、顧客層は使うSNSによって変わってきます。Instagram・TikTokであれば10~20代の若年層、Facebookであれば30~50代の中堅層がメインのターゲットになるでしょう。

単に年齢で分けてもこのようになりますが、さらに性別や目的、ニーズといった要素で細分化すると、母数が少なくなる一方、狙う顧客がどんどん明確になっていきます。

また、顧客層によって需要のある画像も異なるでしょう。このサービスで言えば、ニーズのある画像を制作・提供しないと事業の成長は目指せないため、正確な顧客把握がサービスの売上を左右します。

また顧客認識がズレてしまうと顧客の課題も見誤るでしょう。顧客から「別にそんな機能が欲しいわけじゃない」と思われてしまえば、当然ながら購買には結び付きません。狙う顧客を明確にし、それに付随して顧客が欲しい機能やサービスも明確にすることが大切です。

課題の解決方法を見つける

顧客が抱える課題を解決する手段は様々です。たとえば「家事の負担を軽減したい」という課題解決には「家事代行サービスの提供」「便利な掃除用品の開発・販売」が挙げられますね。どの解決策が自社にとって展開しやすいか考えることも重要です。

ここで重要なのが「事業の実現可能性」に目を向けること。どれだけ素晴らしいアイディアでも、実現しなければ事業にはならず、採算が取れなければ存続はできません。事業として成立し、自社にとって取り組みやすい形を考えることも非常に重要なのです。

また、一つの方法にこだわる必要はありません。必要であれば複数の解決方法を提供しても良いでしょう。上記の「家事代行サービスの提供」「便利な掃除用品の開発・販売」を並行して実施することも不可能ではありません。

顧客から「家事負担を軽減してくれる企業」という認識を抱いてもらえるでしょう。企業のブランディングという面でも、充実した解決策の提供は重要になるでしょうし、事業間でのシナジー効果も期待できます。

つまり、「家事のプロ」というブランディングが、「家事のプロ企業が開発した掃除用品」の価値を高めてくれるのです。余談ですが、新規事業はこうしたシナジー効果が生まれるものを創出するのがセオリーと言われます。

コミット率の検証を実施する

PSFを検証する際は、課題を抱えている顧客に対して開発プロセスへの協力を打診することも重要です。実際に顧客の意見を確認しながらサービスを開発しないと、企業側と顧客側の認識が合わない可能性があります。

顧客にとって有意義で価値のある解決策であれば、顧客は積極的に開発プロセスに協力してくれるでしょう。開発プロセスへのコミット率によってサービスに対する需要をある程度把握でき、開発段階では気付かなかった改善点が見つかる可能性があります。

開発プロセスへの協力を打診する際は、参加報酬は設けない方が得策です。報酬を設定してしまうと報酬を目当てに協力する顧客が加わってしまうため、正しいコミット率を検証しにくくなるでしょう。報酬はなるべく設けずに開発プロセスへの協力を求めることをおすすめします。

顧客の購買意欲を調査する

大詰めとして、提供する解決策を顧客が「買ってでも欲しい」というレベルで求めているのか確認しましょう。「お金を払ってまでは利用したくない」と思われてしまうと、事業としては失敗に終わります。

顧客の購買意欲が高くない場合は「解決策の内容」「解決策の料金」のいずれかに問題があると考えてください。サービス内容の見直しや料金の再設定を行い、顧客の反応がどのように変わるかチェックしましょう。

また、「売り方」「ラインナップ」といった水際に手を加えるだけでも購買意欲を刺激できる可能性があります。まずは水際に手を加え、それでも変わらないようであれば徐々に核の部分に手を加えていくのが良いでしょう。

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PSFを進める際のポイント

PSFを進める際は下記のポイントを押さえてください。

・顧客にとって重要度の高い課題であるか
・解決策が顧客にとって有用であるか
・PSF達成の基準が明確であるか

それぞれ詳しく見ていきます。

顧客にとって重要度の高い課題であるか

まずは顧客にとって重要度の高い課題なのかを確認しましょう。顧客が抱える課題はすべて同じ重要度ではありません。課題によっては優先順位が低いものもあるでしょう。優先度の低い課題と、それに対するサービスはいわゆる「ニッチ産業」と呼ばれるものです。

一方、重要度の高い課題と、それに対するサービスは、当然ながら需要も高く、競争率が高くなりやすいと言えます。しかし、「既存サービスではこのニーズが満たせない」といった抜け漏れは存在するでしょう。

そうした抜け漏れを満たす新たなサービスを打ち出せば、市場における優位性が手に入ります。アンケートや市場調査を実施し、顧客の課題に対する重要度や既存サービスでは満たしきれない抜け漏れを調査することから始めましょう。

解決策が顧客にとって有用であるか

サービスを通じた解決策が顧客にとって有用であるかどうかも要チェックです。解決策が顧客にとって有用でないと、たとえ課題を解決できる場合でも利用してもらえません。

たとえばサービスの利用方法が複雑では、課題を解決できるとしても離脱者が増えてしまいます。サービスの価格が高すぎる場合も、費用対効果が理由で顧客の足は離れてしまうでしょう。

解決策の提供が第一ですが、顧客視点で有用性や利便性を考慮し、サービス設計を進めましょう。

PSF達成の基準が明確であるか

PSF達成の基準が明確であるかどうかも重要です。PSFは数値化・定量化するのが難しい指標であり、事前に基準を明確にしないと方向性を見失ってしまいます。基準の設定は各企業の裁量になりますが、少なくとも下記の2点を押さえた基準を設定してください。

・課題の解決策に対する顧客の考えを検証できる

・顧客の賛同基準は「過半数以上」

たとえば顧客が「子供の送迎を代行して欲しい」という課題を抱えていると想定します。PSF達成を確認するためには「本当に顧客が上記の課題を抱えているのか」「お金を払ってでも課題を解決したいか」という点を検証しなければなりません。

例としては、上記の点を確認するために顧客に対して「お金を払ってでも子供の送迎代行サービスを利用したいですか?」という質問をするのがベターです。この質問にYesと答える顧客が過半数いれば「子供の送迎を代行して欲しい」という課題の存在を確定できます。

基準の賛同数を過半数ではく8割以上など高く設定すれば、PSFの確度を高められます。もちろん基準値が高すぎるとPSF達成が難しくなりますが、基準を満たせればそれだけ顧客の課題を正確に認識できている証になりますね。

さらに詳しく、「送迎のために月々いくらくらいなら支払えますか?」という質問を加えてみるのも良いでしょう。言い換えれば、顧客が「その課題をどれくらいの重荷と感じているのか」を測る質問です。「送迎の時間や負荷は、お金にするといくらくらいの重さなのか」が分かれば、サービスの価格帯もぼんやりと見えてきます。

ただし、上記の質問をする際には、価格帯をイメージするためというよりは、数値化できないはずの顧客の課題感を通貨に置き換える、という統計的な考え方を主軸にしましょう。顧客の声を鵜呑みにして料金を設定すると、後手に回る事業に育ってしまいます。

PSFを基準に顧客が抱える課題を解決しよう!

PSFを活用すれば、顧客の課題解決に繋がるサービスを提供できます。顧客の課題を解決できるサービスが開発できれば、その後に控えるPMFを達成しやすく、新規事業の成功がグッと近付くでしょう。

本記事の内容を参考に、指標としてのPSFを取り入れた「成功する新規事業開発」を進めてみましょう。

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