新規事業を立ち上げたことがある人のほうが少なく、多くのビジネスパーソンがアイデア出しの時点でつまづいているのではないでしょうか。新規事業のアイデアを探すには、既存の成功事例から学ぶのが一番です。

そこで本記事では、新規事業アイデアの成功事例を5つ厳選して紹介し、フレームワークやアイデア出しのポイントもまとめました。記事の最後には新規事業立ち上げに活用できる助成金についても紹介しています。

新規事業立ち上げを任された方や、スタートアップで新しいアイデアを探している方は、本記事を参考にしてみてください。

企業の新規事業アイデアの成功事例5選

それでは早速、新規事業アイデアの成功事例を5つ紹介します。

  1. 独居高齢者の生活を見守るハローライトサービス
  2. オフィスのデットスペースを活用した福利厚生の開発
  3. バーチャルスタッフが店舗運営を行う遠隔接客サービス
  4. 農家とオンデマンドワーカーの農作業マッチング事業
  5. フードシェアリングによる飲食店舗の新たな集客方法

独居高齢者の生活を見守るハローライトサービス

高齢化が進む国内において、高齢者のひとり暮らしや高齢者同士の共同生活における健康問題・安否確認が不安視されています。そこで活用されているサービスが、IoT電球『ハローライト』を用いた「クロネコ見守りサービス」です。

ハローライトにはセンサー機器が設置され、電球が一定時間オンオフしない場合に、指定された通知先に異常検知のメールが送信される仕組みです。通知を受けた親族等が高齢者と連絡を取れない場合に、ヤマト運輸のドライバーが自宅に代理訪問します。

各自治体で「地域見守り協定」を結んでおり、民間企業も自治体と協定を結ぶことで、サービス利用を推進しやすくなるという利点も。

ハローライトはネット回線などがない家屋でも利用可能で、自治体によってはハローライト設置の補助制度も用意されています。

オフィスのデットスペースを活用した福利厚生の開発

リモートワークが浸透した昨今において、オフィスへの出社割合が減少した結果、オフィスにデッドスペースが生まれつつあります。スペースの有効活用施策として、マッサージコーナーを設けてセラピストを派遣する取り組みが、株式会社ジェイアール東日本企画で実施されました。

  • デッドスペースの有効活用
  • 従業員のエンゲージメントや生産性向上
  • 派遣されたサービス事業者の雇用確保

オフィスのデッドスペースとサービス事業者をつなぎ、福利厚生としてサービスを提供することで社員の生産性向上などにつなげる狙いがあります。

本取組はJR東日本グループの新規事業創出モデルとして、出向起業(企業に籍を残したまま、自分の会社を設立して事業立ち上げ)の形で立ち上げられました。

バーチャルスタッフが店舗運営を行う遠隔接客サービス

実店舗で非接触の接客スタイルが浸透しつつある中、在宅勤務をするスタッフがバーチャルで店舗の接客をする取り組みも普及し始めています。

複合カフェを展開する「スペースクリエイト自遊空間」の一部店舗では、遠隔で作業するスタッフがモニターを経由してリモート接客を提供しています。遠隔接客にすることで、同じスタッフが複数の店舗を兼任できるというメリットも。

遠隔接客機能を提供しているのが、タイムリープ株式会社の「RURA」というシステム。少人数で多拠点の接客を可能にする点が最大の特徴で、シェアオフィスの受付対応、ホテルのフロント業務などでも利用が考えられます。

スタッフとしても働き方の選択肢が増えるため、子育て中や介護で家から離れられない方の雇用機会創出にも役立つと期待されています。

農家とオンデマンドワーカーの農作業マッチング事業

日本全国の農業家数は2010年の36万世帯に対し、2019年時点で約23万世帯まで減少。農家の人材不足が深刻化している中、愛知県の東三河地域では、農家と農作業人材のマッチング事業が展開されています。

株式会社アグリトリオが提供する「農How(ノウハウ)」は、一日単位・時間単位で働けるオンデマンド型の人材マッチングサービスです。2021年4月末時点で働き手の登録者数は4,000名、農家の登録数は200件を超えています。

農Howでは多種多様な作物の動画を作成し、農業未経験者でも働きやすい仕組みを構築しました。求人サイトのように掲載料はかからず、マッチングが成立すると作業1時間当たりの手数料が支払われる仕組みです。

農Howは2022年末時点で東海・九州地方に展開しており、農業に興味のあるユーザーの獲得や、各地域の主婦層やシニア層などの取り込みも期待されています。

フードシェアリングによる飲食店舗の新たな集客方法

フードロス対策への取り組みが広がる中、廃棄食材を減らしつつ、集客につなげるサービスも登場しています。

株式会社コークッキングが運営する「TABETE(タベテ)」は、飲食店が当日に売れ残りそうな食品を出品して、当日中に取りに来られるユーザーをマッチングするサービス。

自治体と連携してフードシェアリングサービスに取り組むケースも増えており、TABETEは2022年末時点で19の自治体と連携協定を締結しています。2022年3月時点でTABETEの累計登録ユーザーは50万人、累計登録店舗数は2,000店舗を突破しました。

サービス利用者はお店の食事を安価で手に入れられ、飲食店は廃棄を減らしつつ売上を伸ばせます。新規事業のアイデアを探す上で、「誰かと誰かをマッチングさせる」という考え方はひとつのポイントになりそうです。

新規事業アイデアを生み出す際に用いたい3つのフレームワーク

続いて、新規事業アイデアを生み出す際に用いたいフレームワークを3つ紹介します。

  1. マンダラート
  2. SCAMPER(スキャンパー)
  3. MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)

マンダラート

「マンダラート」は、3×3の9つのマスを書き、真ん中にテーマを記入してそのテーマに関連するアイデアを周囲に書き込むものです。

最初のテーマに対して8つのアイデアを書き込んだら、各アイデアに対して再度8つのアイデアを深堀りします。

マンダラートの活用として有名なのが、メジャーリーガーの大谷翔平選手です。大谷選手が高校1年生のときに「目標達成シート」として、今回紹介するマンダラートを活用しました。

彼の目標は「8球団からのドラフト1位指名」。その目標を達成するために、「体づくり」「人間性」などの8項目を掲げ、それぞれを達成するための具体的な要素も書き出していました。

アイデアの整理や言語化だけでなく、目標を具体化させるためにも活用できるアイデア発想法がマンダラートです。

SCAMPER(スキャンパー)

SCAMPER(スキャンパー)は、7つの切り口をもとにアイデア発想するフレームワーク

  • Substitute(代用):ほかのものに置き換えられないか
  • Combine(結合):複数の製品を組み合わせられないか
  • Adapt(適用):過去のアイデアを応用できないか
  • Modify(修正):アイデアのカタチを変更できないか
  • Put to other uses(転用):ほかの使い方はないか
  • Eliminate(削減):既存の製品から取り除けるものはないか
  • Reverse・Rearrange(逆転・再編成):並べ替えても可能か

それぞれの頭文字からSCMAPER法と呼ばれ、これら7つの質問に答えてアイデアの発想を促します。

MVV(ミッション・ビジョン・バリュー)

新規事業を進める際の指針になるのが、MVVです。

  • Mission:使命、社会の中で果たすべき役割を定義
  • Vision:未来像、なすべき事や中長期的に目指す姿や目標を定義
  • Value:価値観、MissionとVisionを実現するための姿勢や価値観・行動指針を定義

これら3つの観点で、新規事業に求める理念やビジョンを明確にします。MVVを策定することで、メンバー全体の方向性が定まり、他社との差別化や市場内でのセグメント化にも効果的。サービスのブランディングにも役立つでしょう。

MVVは新規事業における根幹をなすものです。上記2つのフレームワークで発想されたアイデアに対し、MVVを策定して新規事業を具現化していきましょう。

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新規事業アイデアを考える際のポイント5選

フレームワークを用いて新規事業アイデアのタネを探しますが、考える際のポイントも理解しておくと、より多くのアイデアが思い浮かぶはずです。具体的には、以下5つのポイントを押さえておきましょう。

  1. 既存のビジネスにとらわれない
  2. まずは質より量にこだわる
  3. あらゆる「不」をみつける|まずは課題設定
  4. ターゲットになりきってみる
  5. 既存の要素と組み合わせてみる

既存のビジネスにとらわれない

ビジネスパーソンとして業界に長く携わるほど、既存事業や固定観念を意識しすぎる傾向にあります。

新規事業アイデアを出す際は、既存のビジネスはすべて忘れて、自由な発想でアイデアを出しましょう。既存事業から着想を得ようとするとアイデアの幅は広がりにくいため、ゼロベースで考えるのがおすすめです。

まずは質より量にこだわる

新規事業アイデアは、質より量にこだわりましょう。良し悪しの判断をするのは後からでOK。アイデアを絞り出すことで、アイデア同士を組み合わて新たな発想が生まれる可能性もあります。

ブレインストーミングなどを用いて、まずは自由にアイデアを出し合うとよいでしょう。

あらゆる「不」をみつける|まずは課題設定

まずは世の中にある、さまざまな不安や不公平などの「不」を探しましょう。新規事業が生まれる背景には、現状の不便や不満などの「不」があります。さまざまな「不(課題)」を解決する手段として、新規事業が立ち上がるのです。

  • 人材を有効活用したい
  • 農業人口の減少に歯止めをかけたい
  • フードロスを減らしたい

本記事で紹介した新規事業も「誰かと誰かをつないで不便さを解消するマッチングサービス」を提供しています。世の中に存在する「不」を探し、課題を設定することから始めましょう。

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ターゲットになりきってみる

新規事業アイデアを出す際は、特定のターゲットになりきってみてもよいでしょう。

あなたが感じる不満や不公平をイメージして消費者になりきってみたり、自身の環境に置かれた特定人物をペルソナに設定してみたりすると、アイデアが思い浮かぶこともあります。

販売者目線ではなく、消費者・ターゲット目線でサービス設計するのは、新規事業アイデアの発想に限らず、既存事業の展開においても重要な視点です。

既存の要素と組み合わせてみる

新規事業アイデアの着想として、他社が既に提供しているサービス同士を組み合わせて考えるのも効果的。まったく新しいアイデアが思い浮かんだとしても、その多くが既に実用化されている、もしくは事業として立ち上がらなかったケースが多いという実情です。

この世に存在していないサービスを開発・発想することのほうが、むしろ難しいでしょう。「既存サービスのターゲットをズラす」「既存サービスの不満を解消できる機能を付加する」などして、思いついた要素を組み合わせてアイデアを出してみましょう。

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新規事業の成功と失敗をわける3つのポイント

新規事業アイデアを出せたとしても、事業化に至るかどうかは別問題です。ここでは、新規事業の成功と失敗をわけるポイントを3つ紹介します。

  1. 積極的な人材の育成と採用ができているか
  2. 仮説検証にスピード感があるか
  3. ターゲットが明確かどうか

積極的な人材の育成と採用ができているか

新規事業を成功させるためには、人材の育成及び採用が必要不可欠です。

新規事業は誰も経験したことのない業務も多く、既存事業の運営以上にエネルギーを必要とします。事業開発に携わるメンバーの役割を明確にし、その役割を果たしてもらうような働きかけが重要です。

人材を新たに採用した場合も、チーム内で円滑にコミュニケーションをとり、相互理解を深めながら新規事業立ち上げの困難を共に乗り越える一体感を醸成していきましょう。

人材が育てば事業も成長し、事業が成長するにつれて人材がさらに集まるという好循環が重要です。

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仮説検証にスピード感があるか

新規事業を成功させる秘訣は、スピード感のある仮説検証です。

確実なニーズがあるか分からない新規事業は、「とりあえず試してみる」くらいのスピード感が大切。完ぺきを求めてサービスのローンチが遅れ、競合に先を越されては元も子もありません

必要最小限の機能を搭載して、市場のニーズを確かめながら仮説検証を繰り返すサービスの開発手法に「リーンスタートアップ」があります。

市場からのフィードバックを迅速に検証し、スピード感をもって仮説検証を繰り返すことで、新規事業開発をスムーズに進められるでしょう。

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ターゲットが明確かどうか

すべてのサービスに共通するのが、「ターゲット(顧客)の悩みを解決すること」です。つまり、新規事業アイデアを形にする上で、ターゲットが明確かどうかは何よりも重要です。

世の中にある「不」を抱くターゲットを想像し、そのターゲットが新規事業で提供するサービスを使えば「不」を解消できる。そんなサービスを開発・提供しましょう。

ターゲットが明確になるほど、必要とされるサービスの機能や要件も明確になるはずです。

新規事業立ち上げに役立つ助成金・補助金

新規事業立ち上げには当然資金が必要です。収益化までの期間が読めず、事業として立ち上がるか分からない新規事業を開発する際は、国や自治体が支給する助成金を有効活用しましょう。

  • ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)
  • 事業再構築補助金
  • JAPANブランド育成支援事業

上記は一例ですが、新規事業が助成金・補助金支給の要件に該当するなら、活用しない手はないでしょう。

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新規事業アイデアを成功させるために必要なのは市場を見極める力

新規事業アイデアが生まれる背景やきっかけは、世の中のちょっとした不満や不便さにあります。消費者の目線に立つことで見つかるさまざまな「不」や課題を解決するモノとして、新たなサービスや商品が生まれるのです。

既存ビジネスにとらわれず、身の回りのサービスを組み合わせれば、さまざまなアイデアが浮かびます。生まれた新規事業アイデアのタネを、スピード感のある仮説検証で磨いていくのがポイントです。

本記事を参考に、既存の市場で提供できていないサービスやニーズを嗅ぎ分け、新たな価値を提供していきましょう。

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