東京海上日動は、メタバース事業に積極的に取り組んでいる保険会社と言われています。また、保険業界全体でみてもメタバースを活用した新しい保険の開発などに取り組んでいることが報道されていることをご存知かもしれません。
しかし、保険会社が独自に、または業務提携をしてまでメタバース事業に取り組んでどのようなメリットがあり、成果をあげているのか疑問に思うかもしれません。
そこで、当記事は東京海上日動のメタバース事業を対象に、その取り組み方やどのような成果物があるのか、顧客の反応など事例を解説しています。
保険業界の主要保険会社の事例についても記載していますので、ぜひ参考にしてください。
<東京海上日動の基本情報>
社名 | 東京海上日動火災保険 株式会社 |
代表者 | 広瀬伸一 |
設立日 | 1879年8月 |
本社所在地 | 東京都千代田区大手町二丁目 6 番 4 号 |
URL | https://www.tokiomarine-nichido.co.jp/ |
社名 | 東京海上日動あんしん生命保険 株式会社 |
代表者 | 川本 哲文 |
設立日 | 1996年(平成8年)8月6日 |
本社所在地 | 東京都千代田区大手町2-6-4 常盤橋タワー |
URL | https://www.tmn-anshin.co.jp/ |
東京海上のメタバース事業とは?
東京海上日動火災保険(以下、東京海上日動)と東京海上日動あんしん生命保険(以下、あんしん生命)は、保険業界のなかでも事業にメタバースを積極的に活用している保険会社です。
例えば、JR東日本が世界初となるメタバース・ステーション「VAW」を開設すると、いち早く「保険相談所」と「空飛ぶカーレース」を出展し、注目を集めています。
続いて2023年2月、XR事業を展開するNTTコノキューと提携し、メタバース上で発生するリスクを対象に保険の開発と販売を担うなど、メタバースで保険業界をリードしていると言えるでしょう。
これら東京海上日動のメタバース事業がどのようなものなのか、それぞれ見ていきましょう。
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東京海上がJR東日本のメタバース「Virtual AKIBA World」で協業
東京海上日動とあんしん生命は、JR東日本が2022年から提供しているメタバース空間「Virtual AKIBA World」に「保険相談所」と「空飛ぶカーレース」を出展しています。
上の画像は、そのスタート画面です。山手線の電車内広告に「Virtual AKIBA Worldに保険相談所を開設!」とあります。
駅の改札を出て中央通り出口に向かうと、
ありました、東京海上日動あんしん生命の保険相談所です。
インフォメーションに進むと、
「ご相談予約ページはこちら!」とあるので、これをクリック(タップ)すると、
上の画像のとおり、各種保険窓口予約へ画面が表示されます。
検討したい保険の種類をタップすると、
保険相談室の日時予約選択画面が表示されます。ご覧のとおり、かなり保険相談の予約が埋まっている印象です。
ここで都合の良い日時を予約選択すると、
保険相談予約の申し込みページが表示されます。
必要事項を記入して「確認」ボタンをクリックすると、予約確定メールが届きます。メール内の予約確定リンクをクリックすると相談予約の申込完了です。
相談担当者から予約した当日のアクセス方法など案内メールが届きますので、案内に従って操作すると保険相談ができます。
このように東京海上は、メタバースをうまく活用していると言えるでしょう。
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東京海上とNTTがメタバースで学校や自治体向けに防災教育
東京海上日動とNTTコノキューは2023年2月、メタバース上で防災教育などのサービスの提供をする目的で提携しました。
第一弾として、学校や自治体に地震や津波などの災害を疑似体験しながら防災を学べる教材の提供を2023年度内に始めるとしています。
主な取り組みは次のとおりです。
①メタバースコンテンツの共同開発
社会課題解決への貢献を目指した、メタバースを活用したコンテンツ開発。第一弾として、自然災害や事故の対応につながるコンテンツ開発と提供を目指す。
具体的には以下のとおり。
②メタバース空間専用保険の開発・提供
メタバース空間を安心・安全に利用できるための環境整備。NTTコノキューが今後展開するメタバース空間において発生するリスクを対象にした専用保険の開発・提供を東京海上日動が担う。
想定されるリスクと開発する保険例は、以下のとおり。
- 不測の事故によって、メタバースの出展事業者がユーザーに対して負う法律上の賠償損害や、イベントがキャンセルになった際にかかる費用を補償する保険の開発。
- 一般の利用者がメタバースの利用により現実世界で生じた自身のケガ、家具等の破損、他人等への賠償責任等をパッケージにした保険の開発。
③メタバース空間におけるリスクおよびリスクマネジメントの研究
コノキューと東京海上日動が主体となり、メタバースに関わるリスク実態の調査や責任の在り方などを産学で研究し、ルール整備を行う。
それと共に、コノキューが実施していくメタバースイベント等へのリスクマネジメントの提供や、不正アクセス等の検知、トラブルの事前予測・アラート発報等、メタバース空間において発生しうるリスクへの対処につながる新たなサービス開発を行う。
ご覧のとおり、東京海上日動とNTTコノキューの提携は具体性のあるものとなっており、今後メタバースが大幅に普及していくことを示唆しているとも言えます。
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保険業界のメタバースへの取り組み事例
ここでは、保険業界全体のメタバースへの取り組み事例から、以下の保険会社にフォーカスしてご紹介します。
- 三井住友海上保険
- 損保ジャパン
- あいおいニッセイ同和損保
- 明治安田生命
- 楽天生命
三井住友海上保険
三井住友海上火災保険は、2022年3月、メタバースが浸透した未来を目指して「Metaverse Project」の立ち上げを発表しました。
メタバース上で発生する新たな損失を補償する商品やサービスの提供を通じて、メタバースが普及し、人々が安心して楽しめる環境を構築することを目的としています。
同社とテクノロジーを活用した新規事業推進で最先端のノウハウを有するPwCコンサルティング合同会社との業務提携で取り組むとし、その内容は以下のとおりです。
- サービス提供者、プラットフォーム提供者、ユーザーなどが被るリスクを特定し、損失を補償する商品・サービスの開発
- メタバース業界団体への参画や他業界の企業・専門家との協議を行い、新しい価値観を持つ未来のお客様との対話の場として、実空間とメタバースを横断した新しい保険の開発
- これらの事業をグローバルマーケットで展開する
損保ジャパン
①ANA NEOと提携
損害保険ジャパンは2022年5月、ANA NEOと提携してメタバースにおける新たな保険商品開発やサービスに関する可能性を実証すると発表しました。
ANA NEOでは、ANAマイレージ会員約3,400万人、国際線・国内線搭乗者5,442万人を会員と見据えた最大規模のメタバース「SKY WHALE(現在のANA GranWhale)」を開発し2022年8月からサービスを開始しています。
損保ジャパンは、ANA GranWhaleに参画し、保険・リスクマネジメントを中心とした、以下のケースに関する検証を実施している模様です。
- 保険商品開発に関する市場性・事業性
- 各種取引等に関するリスク実態
- 保険や関連事業の適合性
- 各種データ分析、有用性
- 保険、リスクマネジメント分野以外での事業連携、ビジネス共創
現状、実証実験の結果や保険の新商品は未発表ですが、ANA GranWhaleサービス開始から一定の時間が経過しているため、近い将来発表される可能性が高いでしょう。
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②「ジャパン・メタバース経済圏」創出に向けた基本合意書を締結
損保ジャパンは2023年2月、「ジャパン・メタバース経済圏」創出に向けた基本合意書を締結したと発表しました。
この基本合意は、株式会社ジェーシービー、株式会社みずほフィナンシャルグループ、株式会社三井住友フィナンシャルグループ、株式会社三菱 UFJ フィナンシャル・グループ他、全11社が締結しています。
これは、JP GAMES 株式会社が開発したメタバース構築フレームワーク「PEGASUS WORLD KIT」を用いた BtoB オープン・メタバース基盤「リュウグウコク(仮)」の構築と「ジャパン・メタバース経済圏」の創出を目指した合意です。
近年、企業や行政機関において仮想領域を活用したDX需要が急速に高まっているなか、合意書締結各社は、それぞれのテクノロジーやサービスを統合し、企業向けオープン・メタバース基盤「リュウグウコク(仮)」を構築します。
「リュウグウコク(仮)」は、幅広い世代に受け入れられやすい、ゆるやかなファンタジーを演出するRPGの世界観です。
初夏を目途にメディア発表会を予定しており、今後もさまざまな方向からジャパン・メタバース経済圏を拡げていきたいとコメントしています。
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あいおいニッセイ同和損保
①国内保険初となるメタバース専用パッケージ保険
あいおいニッセイ同和損害保険は2023年2月6日、国内保険初となるメタバース専用パッケージ保険の提供を開始すると発表しました。
メタバース保険パッケージの補償概要は以下のとおりです。
リスク | 補償例 | |
① | サイバー攻撃・情報漏洩えい等のリスク | サイバー攻撃等による個人情報の漏えいによりmメタバース運営・管理事業者に発生した損害賠償責任に対する補償 |
② | メタバース上で発生する詐欺等のリスク | なりすましによるフィッシング詐欺等を原因として暗号資産やNFT等の盗難が発生した際、メタバース運営・管理事業者等が負担する原因調査費用 |
③ | メタバースイベントが中止となる等のリスク | コンピュータシステムの機能停止等によりメタバースイベントが中止となった際にかかる代替開催費用 |
このパッケージは、アイデアクラウドならびにアイデアクラウドが提供するメタバース空間を運営・管理する事業者やメタバース上でサービスを提供する事業者を対象としています。
また、同社は保険業界で初となるアバター制作と仮想空間(メタバース)を独自に開発すると発表しました。第一弾として、同社代表取締役社長の新納啓介氏のアバターを制作し、そのアバターを活用した社内外コミュニケーションを、以下のとおり開始しています。
- 社内報でのアバターによる動画配信
- 入社式等m社内イベントでのアバターによる挨拶
- 代理店説明会等、社外向けイベントでアバターが登壇
②Fortnite上にメタバース空間を制作する株式会社NEIGHBORとメタバース空間を共同制作
あいおいニッセイ同和損保は、人気PC向けゲームのFortnite上にメタバース空間を制作する株式会社NEIGHBORと共同で、独自のメタバース空間を制作しました。上の画像がその成果物です。
以下の対応をすると、フォートナイト内で実際にプレイすることができます。
- https://www.epicgames.com/fn/1872-5871-2890を開いて、登録してフォートナイトをインストールする
- メニューのクリエイティブに進んで以下のマップコードを入力
1872-5871-2890
- 既にEPIC IDを所有している場合は、「プレイリストに追加」をクリックすることでお気に入りに登録される
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明治安田生命
明治安田生命は、日本最大のメタバースプラットフォーム「クラスター」上で、Jリーグのスタジアムをモチーフとしたバーチャルスタジアムを開設しました。
このスタジアムでは以下のことができます。
- バーチャル上で健康や保険の知識を学べるクイズ・ゲーム
- 明治安田生命Jリーグ(J1、J2、J3)の試合映像配信など様々なコンテンツを他ユーザーと共に楽しむ
同社は、需要が拡大する非対面コンテンツとして、メタバースの活用をさらに推進するとコメントしています。
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楽天生命
楽天生命保険株式会社(以下「楽天生命」)は、2022年12月3日から12月18日にかけて、株式会社HIKKYがメタバース上で行う世界最大のVRイベント『バーチャルマーケット2022 Winter』へ「楽天生命 FITNESS CLUB」を出展しました。
生命保険会社としては初の出典で、「健康増進」をコンセプトとした出展です。楽天生命 FITNESS CLUB内の設備は以下のとおりです。
- 1階:様々なトレーニング機材に触れて遊びながら、ポップアップで保険についての知識を学ぶ
- 2階:ボクシングリングで、実際に飛んでくる障害物をパンチしながらVRでのエクササイズを楽しむ
- 屋上:楽天カードマンの衣装を着た「Vketちゃん」のパネルに触ることで自分のアバターも楽天カードマンになれる衣装を獲得することが可能
なお、楽天生命 FITNESS CLUBは、バーチャルマーケット2022 Winterに出展後は、公開されていません。
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まとめ
東京海上のメタバース事業への取り組みについて現状と、保険業界全体のメタバース事業への取り組み事例をご紹介しました。
2022年から2023年は、保険業界がメタバース実現に向け、全力で取り組んでいる様子がうかがえます。
近年、中小企業であってもメタバースを活用した事業を実施されている、または前向きに検討されているケースが増加しています。
当記事ならびに当サイトを参考に、ぜひメタバースの活用をご検討ください。
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