新規事業を立ち上げる際にはマーケティングが欠かせません。市場が飽和しつつある現代では、適切なマーケティングをもとに新規事業を運用しなければ失敗につながります。
そこで、この記事では新規事業で失敗しないためのマーケティング手法を紹介します。あわせて新規事業のマーケティングで失敗しがちな理由も4つ紹介しているので、これから事業の創出に取り組む方は参考にしてください。
なぜ新規事業でマーケティングが大切なのか?
「新規事業ではマーケティングが大切だ」と言われてもなかなか納得できない方もいるでしょう。そこで、まずはなぜマーケティングが大切なのかを定量的なデータをもとに解説します。
まず、2017年中小企業白書のデータから確認していきましょう。中小企業白書によると、以下4つの施策をマーケティング活動と定義しています。
- 自社の強みの把握
- 市場ニーズの把握
- 自社の製品、サービスのPR活動
- マーケティング活動の評価・検証
上記4つのマーケティング施策のすべてに取り組んだ企業は経常利益において増加傾向が見られており、取り組んだのに経常利益が減少した、という企業は19.5%に留まります。一方で、いずれのマーケティング施策にも取り組んでいない企業のうち、40.0%は経常利益が減少してしまいました。
「参考:中小企業白書」
中小企業に限った統計ではありますが、新規事業の成功にはマーケティング施策が必須と言っても過言ではありません。特に技術の水準が高まり、製品での差別化が難しくなってきた現代では、マーケティング活動の有無が売上のカギを握ります。
そのため、新規事業で失敗しないためには適切なマーケティング施策に取り組む必要があります。しかし、具体的なマーケティング施策を知らない方もいるはずです。以下の内容では新規事業に使えるマーケティング施策を5つ紹介します。
【今すぐ使える】新規事業におすすめのマーケティング分析手法5選
新規事業に使えるマーケティング手法を5つまとめました。マーケティングの鉄板と呼ばれる手法から、ニッチながらも効果的な手法まで網羅的に紹介していますので、これから新規事業の創出に取り組む企業は参考にしてください。
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3C分析
3C分析とはマーケティング環境を分析する手法です。3C分析は以下3つの単語の頭文字から名付けられました。
- Customer…市場や顧客
- Competitor…競合
- Company…自社
以上のように3C分析は外部要因を中心とした分析を得意としていて、市場の分析に役立ちます。そのため、マーケティング活動に取り組む際のファーストステップとして用いられることも多いです。
実際に3C分析で上記3つの項目を調査する際は、以下のポイントを大切にしてください。
- Customer…市場や顧客のニーズの変化
- Competitor…競合がどのような施策を実施しているのか
- Company…上記2つの項目を踏まえたうえで自社が成功する要因はあるのか
上記のポイントを意識すると、自社よがりなマーケティングを避けられます。顧客や競合視点など、第三者の目線から市場を俯瞰することで、客観的な自社の強みを発見可能です。
ポジショニングマップ
ポジショニングマップとは、2つの軸をもとに自社の立ち位置を確認するマーケティング手法です。自社の立ち位置を客観的に理解し、どの市場で勝負していくのかを決めるために活用します。
マーケティング段階におけるポジショニングの確認によく利用される手法で、他社との差別化にも役立ちます。ポジショニングマップは以下の流れで決めていくのが一般的です。
- 軸の決定
- 4象限のマップを作成
- 全体の確認
特に上記のなかでも軸の決定が大切で、適切な軸を決定しないとマーケティングが失敗する可能性があります。そのため、軸を決定する際は慎重に取り組みましょう。
SWOT分析
SWOT分析は自社を取り巻く外部環境を調査するのに役立つマーケティング手法です。SWOT分析は以下4つの単語の頭文字から名付けられています。
Strength(強み) | 自社の製品やサービスの長所 |
Weakness(弱み) | 自社の製品やサービスの短所 |
Opportunity(機会) | 市場や外部環境の変化によるプラス要因 |
Threat(脅威) | 市場や外部環境の変化によるマイナス要因 |
SWOT分析はマーケティングにおける市場分析の段階で利用するのが一般的です。自社が抱える新規事業の弱みの発見に役立つうえに、将来的なリスクに備えるためにも役立ちます。マーケティング活動におけるリスクヘッジに役立つ手法といえるでしょう。
バリュープロポジションキャンバス
バリュープロポジションキャンバスとは、自社の製品と顧客のニーズの状況を可視化するのに役立つマーケティング手法です。2015年に発売された「バリュー・プロポジション・デザイン 顧客が欲しがる製品やサービスを創る」という本から注目を集めた本手法は、比較的新しいマーケティング手法といえるでしょう。
バリュープロポジションキャンバスではまっさらなキャンパスのうえに以下の2つの項目を記します。
- 左側…顧客への提供価値
- 右側…顧客セグメント
それぞれの項目が用意できたら、まずは顧客セグメントから埋めていきます。顧客セグメントを埋める際は以下の項目を記してください。
顧客が解決したい課題 | 顧客視点で解決したい課題を考える |
顧客の利得 | 課題を解決することで顧客が得られるメリットを考える |
顧客の悩み | 課題を解決する際に直面する課題を考える |
以上の項目を用意できたら、「顧客への提供価値」の欄も埋めていきます。
製品とサービス | 自社の製品やサービスを記載 |
顧客の利得をもたらすもの | 顧客の利得に貢献できる製品やサービスを記載 |
顧客の悩みを取り除くもの | 顧客の悩みに対応できる製品やサービスを記載 |
以上のように製品やサービスと顧客の関係を可視化することで、価値ある差別化が可能になります。市場が飽和しつつある現代では他社と違うことが「差別化」と捉えがちですが、顧客に価値を与えられる製品やサービスでないと、そもそも差別化につながりません。
本当の意味での差別化に取り組みたい企業は、バリュープロポジションキャンバスを利用してみるとよいでしょう。
PEST分析
PEST分析は自社を取り巻く環境がどのような影響を与えるのかを分析するマーケティング手法です。PEST分析は以下の4つの英単語の頭文字から名付けられています。
Politics(政治) | 法律や国の政策、外交関係など政治にかかわるあらゆる要素 |
Economy(経済) | 景気や金利、経済成長率などの要素 |
Society(社会) | 人口や教育、健康、文化など社会に関するさまざまな要素 |
Technology(技術) | 最先端の技術動向や時代の変化に伴う新たな技術などの要素 |
市場において外部環境は一定ではなく、常に変動し続けるものです。固定概念をもとにマーケティング施策に取り組んでいては、時代に取り残されてしまいますが、PEST分析によって世の中の流れや流行を分析し、外部環境を味方につけられればマーケティング施策を成功させられます。
特にPEST分析は新規事業の戦略立案の場面で利用されるため、ぜひ参考にしてみてください。
新規事業のマーケティングでありがちな失敗例
新規事業のマーケティングでありがちな失敗例を4つ集めました。失敗例を参考に、適切なマーケティング施策に取り組むようにしてください。
事業のゴールやターゲットが明確でない
新規事業ではゴールやターゲットが明確でないと、マーケティング施策に失敗する可能性があります。何となくニッチだからという理由や競合が少ないからという理由で新規事業に取り組んでしまうと、適切なマーケティング施策が練りづらく、長期的な目線で見ると事業が成功しにくいです。
しかし、事業のゴールやターゲットを明確にしづらいというのは、どの企業においても共通の悩みとして知られています。株式会社ロイヤリティ マーケティングが実施した調査によると、企業のマーケティング課題として6番目に多いのが「顧客ターゲティング」です。
「参考:マーケターが抱える課題感に関する調査」
上記のことを踏まえると、ターゲティングの難しさは共通課題ですので、特に慎重に取り組む必要があります。
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事業がターゲットのニーズを満たしていない
いざ新規事業を展開してみると、思ったよりも売上が伸びていないということもあるでしょう。その場合は、新規事業がターゲットのニーズを満たしていない可能性があります。
特に、マーケティング施策における市場分析を疎かにしていると、ターゲットのニーズを満たせない可能性が高いです。3C分析やSWOT分析などのフレームワークを利用して、まずは市場の分析から取り組みましょう。
事業を実施する市場が飽和している
新規事業を実施する市場が飽和していると、事業に失敗する可能性があります。例えば、横浜中華街で小籠包のお店を出店するとしましょう。横浜中華街の大通りの長さはわずか300m程度にも限らず、小籠包を提供しているお店は10店舗以上あります。
つまり、小籠包のお店はすでに市場に飽和しているため、よほどの施策がない限りでは成功する可能性が薄いです。以上のことを踏まえると、自分たちがやりたいことだけをしていれば新規事業が成功するわけではありません。
入念な市場分析をもとに、適切なポジションで新規事業を展開する必要があります。
マーケティングコストを出し惜しみしている
マーケティングコストを出し惜しみしていると、求めていた効果が出ない可能性があります。広告費や宣伝費、販売管理費など適切に計算したうえでマーケティング施策に取り組んでください。
また、費用対効果をもとにマーケティング施策に取り組まないと、費用に見合った効果が出ない可能性が高いです。見込み額でも良いのである程度の利益を加味したうえで、費用対効果を計算してからマーケティングに取り組みましょう。
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新規事業のマーケティングの流れ
新規事業のマーケティングの流れは主に以下の通りです。5つの行程をもとに進んでいきますので、これから新規事業のマーケティングに取り組む企業は参考にしてください。
①市場分析
まずは自社を取り囲む市場の分析から始めます。市場分析に役立つマーケティング手法は以下の通りです。
- 3C分析
- SWOT分析
- PEST分析
以上のマーケティング手法をもとに分析すれば、自社の外部環境を把握できます。いずれかのマーケティング手法に限定する必要はありませんので、リソースに余裕があれば3つのマーケティング施策に取り組んでおきましょう。
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②セグメンテーション
市場の分析結果をもとに、自分達の新規事業に最適な市場を選択するために細分化します。できる限り競合が少なく、かつニーズのある市場を選択できれば、売上を作りやすいです。
実店舗型の新規事業を展開する際は地域特性などを踏まえたうえで、市場を細分化しましょう。
③ターゲティング
細分化された市場に適切なサービスを提供するためにはターゲティングが大切です。自社の新規事業が本当にニーズのある顧客に届けるためには、あらゆる顧客を対象にしていてはいけません。ある程度顧客層を絞る必要があります。
ターゲティングの際は誰に届けるかをペルソナにまで落とし込むのがおすすめです。ペルソナとはサービスを利用する具体的なユーザー像のことを意味します。ペルソナにまでユーザー像を落とし込むことでマーケティング施策を考えやすくなり、事業の成功率を高められます。
④ポジショニング
ポジショニングでは市場においてどのポジションで事業を展開していくのかを選びます。ポジショニングを決める際にはマーケティング手法のポジショニングマップを利用するのがおすすめです。
2つの軸をもとに展開していく事業のポジションを決めることで、他社との差別化を図りやすくします。
⑤実行と評価
これまで考えてきたマーケティング施策をもとに、戦略を実行していきます。戦略を展開したら、評価するまでを1セットとしてください。
マーケティング施策には正解がなく、試行錯誤が求められます。一度の施策に満足するのではなく、定量的な評価から課題を抽出し、再びマーケティング施策に取り組みましょう。
新規事業のマーケティングで失敗しないためには?
新規事業のマーケティングで失敗しないためには、さまざまなマーケティング手法を覚えておくべきです。本記事を参考に、ここぞという場面で活用できるよう身に付けておきましょう。