ソフトバンクは3つのメタバース事業を中心に、バーチャル空間ならではのビジネスを展開中。仮想空間に日本初となるバーチャル店舗を出店するなど、メタバース領域へ積極的に出資しています。
また現実世界とデジタル世界から社会課題に向き合う「デジタルツイン」や、メタバース技術が医療や教育分野に進出するなど、メタバース領域の動向も目が離せません。
本記事ではソフトバンクが取り組むメタバース事例を紹介しつつ、仮想空間に期待が掛かる理由を徹底解説します。
ソフトバンクが投資している3つのメタバース事業
ソフトバンクはメタバース領域に注力しており、主に3つの事業を主軸としています。
- 日本初の仮想店舗『ソフトバンクショップ in ZEPETO』
- 球場ならではの臨場感を楽しめる『バーチャルPayPayドーム』
- ライブ空間を丸ごと再現する『VR SQUARE』
現実世界をそのまま仮想空間に置き換えるような事業を展開しており、自社店舗をメタバース空間に出店した事例も。
またライブ体験そのものをVRコンテンツで再現するなど、メタバース領域に着々と進出しているといえるでしょう。
そこで本記事では、ソフトバンクのメタバース事業を深掘りしつつ、注目点や魅力を徹底解説します。
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日本初の仮想店舗『ソフトバンクショップ in ZEPETO』
3億人のユーザーが登録している韓国のメタバースプラットフォーム「ZEPETO」に、日本初となるバーチャルショップを開店。実店舗と同様にカスタマーサポートが受けられるほか、スマホアクセサリーを購入することも可能です。
ソフトバンク社員がアバター化して接客を行うなど、現実世界と同様のサービスを受けられる環境が整っています。またAIボットの導入により、年中無休の24時間体制で顧客サポート力を強化。
実店舗と仮想空間の2刀流で顧客の分散化を図り、カスタマーサポートの待ち時間軽減が期待されています。また実店舗とシームレスに提携させることで、販売販路を拡大する狙いもあるようです。
実際の店員がアバター化してサービスを提供
自分の分身となるアバターを作成することで、実店舗に足を運ぶ手間がなくなります。実際の店員がアバター化して対応してくれるため、サービスの質が落ちる心配もありません。
仮想空間内で買い物やカスタマーサポートが受けられるため、利便性の向上が期待できます。またアバターを介してキャリア契約を結ぶことも可能です。
2022年6月にオープンしたばかりで課題も多く抱えているようですが、キャリアショップの新たな形として浸透する可能性も高いといえるでしょう。
球場ならではの臨場感を楽しめる『バーチャルPayPayドーム』
プロ野球チーム「福岡ソフトバンクホークス」が拠点とする、「福岡PauPayドーム」を丸ごと仮想空間に再現。
球場そのものを3D化することで、球場に居るような試合観戦を可能に。球場内を自由に見渡し、好きなように動き回れる没入感が話題を呼んでいます。
福岡ソフトバンクホークス戦を無料観戦できるエリアも設けられており、仮想空間から試合を楽しむことも。また試合内容と準リアルタイムで連動し、プロの投球を打者目線で疑似体験することも可能です。
選手の名場面をNFTとして購入し、コレクションできる仕組みも導入。デジタルコンテンツならではの強みを全面に押し出し、メタバースだからこそ実現できる魅力で差別化を図っています。
仮想空間で白熱した試合観戦をライブ体験できる
「バーチャルPayPayドーム」は、球場ならではの楽しみ方とされるジェット風船やラッパ応援など、本物に近いライブ体験が可能です。
観戦以外に様々なアクションが取れるため、メタバースの可能性を広げる事業といえるでしょう。フィールドやロッカールームも再現されており、普段なら立ち入れない場所を見て回ることも。
スマートフォン端末やパソコンからアクセスできるため、何処からでも球場にアクセス可能。場所を選ばず白熱した試合の臨場感を味わえる新体験コンテンツとして、メタバース領域で注目を浴びています。
ライブ空間を丸ごと再現する『VR SQUARE』
「VR SQUARE」はライブ映像を筆頭に、様々なコンテンツをVR化して楽しめる動画コンテンツです。視界を360°から180°に絞ることで画質向上を図り、美しい映像のまま没入感の高い仮想空間を実現。
アイドルやアーティストのライブで好きなように身体を動かし、推しメンバーだけに熱視線を送ることも可能です。
またコンサート映像を映し出すカメラを演者の近くに設置することで、手を伸ばせば届きそうな至近距離からライブを楽しむ「超神席」という仕組みも用意しています。
音楽ライブを中心としたラインナップを揃える一方、日本の絶景や癒される動物映像も充実。奥行きまで表現された3D動画の拡充により、来るメタバース時代の準備を着々と整えています。
”触れられる”距離感がVR SQUAREの魅力
アーティストと”触れられる距離”に定点カメラを設置し、普段なら味わえない超至近距離でコンテンツを楽しめる点が魅力。仮想空間ならではの特徴を最大限に活かし、VR SQUAREならではの価値を提供しています。
複数の定点カメラから映像をリンクさせており、ボタン一つで視点を変えることも可能。好きな視点からライブを楽しめるため、現地では体験できない魅力が詰まっています。
また音楽ライブだけでなく、アイドルとの日常生活が疑似体験できる動画も用意。メタバース事業の中核として、新たなエンタメコンテンツの形を模索しています。
ソフトバンク以外の携帯会社が取り組む2つのバーチャル事業
5G化によって情報通信量が増加したことで、社会全体でメタバース事業が活性化。大手携帯会社も仮想空間に注力しており、様々な特徴を持ったサービスを展開しています。
- ドコモのバーチャル事業『XR City』
- auのバーチャル事業『VIRTUAL CITY』
ARを駆使して仮想空間を創出する『XR City』や、都市部公認のメタバースプラットフォーム『VIRTUL CITY』など、通信会社ごとに異なるサービスをリリース。
本記事では、ドコモ・auが運営しているメタバース事業の特徴を深掘りしつつ、それぞれの動向をチェックしてみましょう。
ドコモのバーチャル事業『XR City』
ドコモが運営している「XR City」は、Webブラウザ上からでもメタバース体験が楽しめるコンテンツです。アプリをインストールせず仮想空間を楽しめるため、気軽にメタバースの世界を体験できます。
ワールドと呼ばれる仮想空間が複数用意され、著名なアーティストを呼びこんで大型音楽イベントを開催した事例も。
- アニメソング専門の音楽雑誌が手がける音楽イベント「リスアニ!LIVE2022」
- タワーレコードに所属するアーティストの楽曲が楽しめる「TOWER RECORDS」
- EXILE TRIBEに所属している今市隆二さん専用ワールド「CHAOS CITY-RYUJI IMAICHI-」
仮想空間そのものをライブ会場にすることに成功し、メタバース領域で功績を残しました。今後は企業同士が提携しあう「オープンメタバース思想」に基づき、XR Cityを中心としたサービス展開を強める意向を示しています。
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auのバーチャル事業『VIRTUAL CITY』
auが運営している「VIRTUAL CITY」は、新宿や渋谷などの都心部を丸ごとバーチャル化したコンテンツです。メタバースプラットフォーム「cluster」内に架空の都市を建設し、仮想世界でイベントを開催しています。
東京の都心部をバーチャル化させることで、現実世界との連動が可能に。リアルな世界の出来事が仮想空間に反映されるなど、2つの世界がリンクするメタバース体験が楽しめます。
また渋谷ハロウィーンやクリスマスイベントなど、世界から大物ゲストを招いた大規模イベントを行った事例も。アクセスが殺到してサーバーがダウンするなど、リアルイベントを追い越す勢いでメタバース需要が高まっていることが伺えます。
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ソフトバンクがメタバース事業に出資する4つの理由
ソフトバンクがメタバース領域を強化する背景として、4つの理由が考えられます。
- 仮想空間で社会問題に着手する『デジタルツイン』の流れが加速
- VR・ARを活用した新体験コンテンツの拡充
- メタバース領域の技術が様々な分野に活用されている
- 大手企業でNFTビジネスに関心が高まっている
5Gによって情報通信量が増加したことを皮切りに、メタバース領域の可能性が広がりました。娯楽を中心とするエンタメ分野だけでなく、デジタル技術で社会問題を解決する手段に注目する企業も。
本記事では、メタバース事業に起こりつつある変化を解説しつつ、ソフトバンクがメタバース事業に注力する理由を解説します。
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仮想空間で社会課題に着手する『デジタルツイン』の流れが加速
デジタルツインとは、現実世界で集まったデータを分析し、仮想空間内でシミュレーションすることで課題解決に導く手法です。仮想空間に現実世界と同じ環境を再現し、まるで双子のように見えることから名づけられました。
メタバースを活用して素早くPDCAサイクルを回し、現実世界に素早くフィードバックできる点が特徴。また精確なシミュレーション精度を活かし、これから備えるべき社会課題の解決法として期待されています。
- 少子高齢化
- 気象変動
- エネルギー問題
社会全体に浸透しているSDGsの影響もあり、世界が直面する社会課題の取り組みに注力する企業も増加。デジタルツイン技術によって仮想空間内で仮設検証を行い、現実世界に反映させる流れが加速化しています。
VR・ARを活用した新体験コンテンツの拡充
コロナ自粛の影響を受け、メタバース領域のバーチャルコンテンツに注力する企業が増加。メタバースはVR内のイベント活動だけでなく、AR(拡張現実)を活用したプロモーションに利用されるシーンも珍しくありません。
またメタバースの勢いは留まることを知らず、仮想空間内で触って楽しむ「体験軸」が盛り込まれた5Dコンテンツも登場。テクノロジーの発達が進むにつれ、急速に浸透する可能性も高いといえるでしょう。
ソフトバンクもVR動画が楽しめる「VR SQUARE」や、現実世界の球場とリンクした「バーチャルPayPayドーム」など、メタバースコンテンツを拡充しています。
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メタバース領域の技術が様々な分野に活用されている
新たなSNSや娯楽としてのエンタメ要素が注目されるメタバースですが、医療や教育など様々な分野での活用が広まっています。臓器手術の仮想シミュレーションや、社会見学の映像に活用されるなど、幅広い分野で利用されている事例も。
またソフトバンクはメタバース事業の関係者向けに「METAVERSE EXPO JAPAN2022」と呼ばれる展示会を開催。エンタメやゲーム分野だけでなく、教育・福祉・医療分野にも展開したい意向を示しました。
世界的にメタバースへの関心が高まり、仮想空間を活用したビジネスも増加傾向に。今後は業種問わず様々な分野での利用が予想され、メタバースの波が社会全体に押し寄せています。
大手企業でNFTビジネスに関心が高まっている
NFTは改ざん不能のデジタル資産として注目されており、ゲームアイテムやアート作品を中心に市場規模を拡大。メタバースの普及によって現金取引が減少し、NFTを利用したビジネスの増加が予想されています。
仮想空間の売買が現金からNFTに置き換わる場合、新しい経済が発達する可能性も。またデジタル空間内で雇用が生まれる事例も散見されており、将来的にNFTを報酬とした働き方も生まれるかもしれません。
また国境やプラットフォームの壁を越えて取引できるため、世界をターゲットにしたビジネスが展開できる点も魅力といえるでしょう。
ソフトバンクはPayPayドームを中心にメタバースへ注力
5Gによって情報通信量が増加し、世界的にメタバース領域が目まぐるしく発展。デジタル世界を活用し、新たなビジネスを打ち立てる企業も珍しくありません。
- ソフトバンクは3つのメタバース事業を運営している
- 現実とデジタル世界から課題解決を図る「デジタルツイン」が加速
- メタバース領域はエンタメから医療や教育にも広がっている
ソフトバンクは仮想空間に球場を再現した「バーチャルPayPayドーム」を中心に、メタバース領域に注力。さらにメタバースに関連する企業を招いてカンファレンスを開催するなど、業界を牽引する存在として名を轟かせています。
またメタバースの時代背景として、デジタルツインの活用やエンタメからの脱却など、世界的に注目されている点もポイントです。
日本初となるデジタル空間への店舗出店や、球場そのものを仮想空間に再現した「バーチャルPayPayドーム」など、今後もソフトバンクの動向が期待されます。
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