任天堂は老若男女問わず愛されている『どうぶつの森』を筆頭に、人気ゲームコンテンツを開発している企業です。アバターを作成して仮想空間で生活し、『スローライフ』という言葉を世の中に浸透させました。
メタバースとゲームコンテンツは相性が良く、どうぶつの森をきっかけに仮想空間にのめり込む人も。任天堂は幅広い年齢層が楽しめる作品を開発し続けており、メタバース領域と馴染みがないユーザーを引き込むキーマンといえるでしょう。
そこで本記事では、任天堂にメタバースの注目が集まる理由を解説します。有名ゲーム会社のメタバース活用事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
任天堂にメタバースの期待がかかる理由とは?
任天堂のヒットタイトル『あつまれどうぶつの森(以下、あつ森)』では、ゲーム内の機能と大手企業がコラボしている事例が数多く残っています。
「マイデザイン」や「夢番地」と呼ばれるゲーム機能を活用し、仮想空間内でブランドを認知させようとする企業も増えてきました。
- 「マイデザイン」→洋服や家具の模様などを自分でデザインできる機能
- 「夢番地」→相手の島に訪れて見学できる機能
あつ森はゲーム空間でスローライフを送れるだけでなく、企業ブランドをバーチャルに体験できるコンテンツともいえます。ゲームとしての枠組みを超え、仮想空間を有効活用する活路を見出しつつあるといえるでしょう。
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仮想空間とゲームは親和性が高い
メタバースは広義的な意味で仮想空間そのものを指しており、自分の分身を作り出すエンタメ事業と相性が良いといわれています。
とくにゲームコンテンツは幅広い年齢層に愛されており、メタバースに触れる最初のきっかけになることも珍しくありません。ゲームコンテンツの体験を通じてバーチャル空間への抵抗を減らし、そのままメタバースの世界に引き込むことも可能です。
昨今、メタバース要素を取り入れたゲームの勢いが増しており、有名アーティストとコラボイベントを開催している事例も。核となるゲームコンテンツでユーザーを集め、仮想空間を活用したイベントが行われています。
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どうぶつの森がメタバースとして優れている3つの理由
どうぶつの森のメタバース要素が優れている理由として、次の3つが挙げられます。
- ゲームコンテンツそのものが面白い
- 社内ミーティングなど遊び以外に活用されている
- アパレル企業とのゲーム内コラボを展開
コンテンツに魅力を感じるからこそ、プレイヤーが増えることを忘れてはいけません。メタバース領域の需要が増えているからといって、ユーザーが集まるとは言い切れないからです。
どうぶつの森は『のんびりスローライフ』というプレイヤー体験を提供しつつ、メタバース要素を活用したコミュニケーションも行える点が特徴。
本記事ではゲームコンテンツの魅力だけでなく、メタバース領域で評価される具体的な理由を解説します。アパレル企業とのコラボ事例も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
ゲームコンテンツそのものが面白い
メタバース領域に注目が集まっていることは確かですが、利用者が増えなければ事業として大きくなることもありません。任天堂はゲームコンテンツでユーザーの心を掴んだ結果、メタバース要素の有効活用に成功しています。
事業を成功させるためには、一定数のユーザー獲得・維持が絶対条件です。メタバースとしての機能を充実させることも大切ですが、ユーザーにとって何らかのベネフィットが無ければサービスは長続きしません。
どうぶつの森はゲームコンテンツであり、厳密にいえばメタバースのプラットフォームではありません。しかしリアルタイムのオンラインプレイや、マイデザインなどで企業コンテンツが生まれたことで、メタバースとして認知された事例といえるでしょう。
社内ミーティングなど遊び以外に活用されている
どうぶつの森のリアルタイムチャットを活用し、一風変わった形で社内ミーティングを行う会社が話題となりました。雑談を混ぜながらコミュニケーションが取れるなど、ゲーム以外に活用されるケースも珍しくありません。
「zoom」や「Microsoft Teams」など、ミーティングツールと比較すると数段劣りますが、ゲーム内で社内会議が行われる光景は革新的といえるでしょう。
また参加メンバーとの適切な距離感を学ぶために、どうぶつの森を参考としている企業も。仮想空間を活かしたゲーム以外の楽しみ方が生まれるなど、メタバース的な側面を数多く持っている点で評価が高まっています。
アパレル企業とのゲーム内コラボを展開
有名アパレルブランド『アナスイ』や『ジェラートピケ』などがタッグを組み、ゲーム内で使用できる限定デザインアイテムを提供。仮想空間を通じてアパレル事業と協業することで、メタバース領域に経済性を生んでいます。
ゲーム内コラボはアパレル関係に留まらず、飲食店や観光地のプロモーション活動して利用されることも。名古屋発祥の喫茶店『コメダ珈琲』は、店内をイメージした島を『夢番地』で共有するプロモーション施策を打ち出しました。
メタバース要素がゲームの枠組みを超え、企業のプロモーション活動として利用されています。仮想空間を利用して複数のユーザーと関係性を築くことで、新しい広告塔としての役目を担う日も遠くないといえるでしょう。
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メタバース要素を含んだ3つのゲーム事例
ゲームのメインコンテンツだけでなく、仮想空間を楽しむメタバース要素で更なる人気を集めた作品も珍しくありません。
- 億超えの大ヒットを獲得した『マインクラフト』
- 多様な遊び方ができるMMORPG『FF14』
- 米津玄師のライブで話題となった『フォートナイト』
億超えの爆発的なヒットで名を知らしめた『マインクラフト』を筆頭に、メタバース要素で成功を収めているゲームから学ぶことも多いでしょう。
メタバース要素によってゲームの魅力を底上げし、ゲームコンテンツと見事に調和した作品を3つ紹介します。開発会社が語るメタバースの方針も解説するので、ぜひチェックしてみてください。
億超えの大ヒットを獲得した『マインクラフト』
マインクラフトはMicrosoft社が運営している人気ゲームです。ブロックを積み上げることでオリジナルの建築物を作り、思い通りに世界を創造できるのが特徴。
児童の創造性を刺激するために教育現場に導入されるケースも散見されるなど、世界的に注目されているゲームといえるでしょう。
ゲーム内でアトラクションやイベントが楽しめる世界を創り、マインクラフト内でビジネスを展開する事業も増えてきました。マイクラは自分だけが楽しむゲーム空間から、世界中にアクセスできるメタバース市場へと変化しつつあります。
「クリエイティブモード」を使用することで、世界構築だけが楽しめる専用モードに切り替えることも可能。ゲームとして楽しみつつ、メタバースをフル活用できるプラットフォームとしても利用できるのが魅力です。
『Microsoft』が掲げるメタバースへの方針
Microsoft社はゲームコンテンツを主軸として、メタバース領域に投資する意向を示しています。人気スマホゲーム「キャンディクラッシュ」を開発した大手ゲーム会社「アクティビジョン・ブリザード」を買収(※)してデジタル領域の土台を強化を図る動きも。
メタバース領域に投資対象として、VR・ARデバイスの開発を公表しています。バーチャル空間の整備だけでなく、没入感の高い器具によって新体験を創造するのが狙いといえるでしょう。
潤沢な資金力を活かして技術を持つ事業を買収し、メタバース時代に向けて活動している姿勢が伺えます。
(※)2023年1月現在、米連邦取引委員会が買収を阻止するために提訴中のため、買収の動きはストップしています。
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多様な遊び方ができるMMORPG『FF14』
FF14はスクウェア・エニックス社が開発した「FFシリーズ」のナンバリングタイトルです。オンラインプレイに特化しており、仲間と協力してボスに挑戦するRPG要素だけでなく、チャットを楽しみながら麻雀を遊ぶことも。
仮想世界で人それぞれの遊び方が楽しめるため、メタバース要素を持ったゲームといえます。コミュニケーションツールとして活用している人も多く、SNSのように使っている人も珍しくありません。
またゲーム内で結婚式を挙げたり、家を建てて自分好みの内装にできるなど、現実世界と同じような生活が送れる点も特徴。メタバースの先駆者として話題に挙がることも多く、ゲームを通して仮想空間の生活が楽しめる見本事例といえるでしょう。
『スクウェア・エニックス』が掲げるメタバースへの方針
メタバースを利用したゲームの開発・運営を加速させるため、ブロックチェーンゲーム『The Sandbox』と提携することを公表。香港の『Animoca Brands』に約2億円を投資しており、メタバース領域に自社タイトルを導入する動きを見せています。
またNFTなどの暗号資産に注目しており、GameFi事業に注力するプロジェクトも始動中。自社タイトル「資産性ミリオンアーサー」で使用できるアイテムをNFTとして限定販売するなど、多方向からメタバース領域に進出する準備を整えています。
米津玄師のライブで話題となった『フォートナイト』
フォートナイトはepic games社が開発したバトルロイヤル型TPSゲームです。クリエイティブモードを選択すると、マイクラ同様に自分だけの世界を構築することも。
メタバースを活かしたイベントも多く、国内外の有名アーティストとコラボしている事例も散見されます。海外アーティスト「トラヴィス・スコット」はゲーム内で生ライブを配信し、同時接続数者数で1,000万を超える大記録を打ち立てました。
Travis Scott and Fortnite Present: Astronomical (Full Event Video)
フォートナイトはバトルロイヤルからスタートし、今では仮想空間を利用したコンテンツの拡充が続いています。多人数対戦ゲームとしての殻を打ち破り、今後はメタバース領域で活躍する可能性も高いといえるでしょう。
『epic games』が掲げるメタバースへの方針
epic gamesは公式HPにて、20億ドルの資金調達ラウンドを発表し、メタバース領域に注力する姿勢を示しています。日本の「ソニー株式会社」や、LEGOブロックの親会社である「KIRKBI」から10億の出資を受け、没入型体験コンテンツの構築を強化。
epic gamesのCEOであるティムスウィーニーは「仮想空間で友人と楽しめるスペースや、クリエイターがコミュニティを構築できる環境を整備する」と公言しており、今後の動向に目が離せません。
任天堂のメタバースに対する方針は?
任天堂は2022年の決算報告会の質疑応答において、メタバースやNFTについての取り組みについて回答。メタバース領域の拡大よりも、プレイヤーに驚きや感動を提供することを重視したいと公表しています。
多くの企業がメタバース成功事例としてどうぶつの森を取り上げる一方、任天堂はゲームとしての娯楽を突き詰める方針を取っているようです。とはいえメタバースに関心がないわけではなく、「任天堂なりのアプローチ」を模索している状態だと回答しました。
経済性よりも「プレイヤーの体験」を重要視
任天堂はメタバースの拡充よりもプレイヤーとしての感動体験を重視しており、愛されるゲーム開発に注力する意向を示しています。仮想現実でコンテンツを楽しむ技術に注力している企業も多いなか、揺らぐことのない強い姿勢を持っている企業といえるでしょう。
とはいえ、どうぶつの森で培った経験を活用し、メタバースを活用したゲームコンテンツが登場する可能性もゼロではありません。任天堂がメタバース領域から退いた訳ではなく、再びメタバースの成功事例として名を残す可能性も考えられるでしょう。
任天堂の作品がメタバースに影響を与える可能性は高い
任天堂はプレイヤー体験を重視する意向を示す一方、ゲームコンテンツの拡充によって再び注目される可能性も高いといえます。
- どうぶつの森がメタバースへの着火剤となった
- 大手ゲーム会社が仮想現実の技術に多額の投資を行っている
- 有名アーティストやクリエイターが活躍する土壌が育ちつつある
メタバースの認知度は、ゲームやアーティストとのコラボを通じて徐々に浸透。億単位の投資によってバーチャル技術の強化を図る企業も多く、今後に更なる期待が掛かっています。
ゲーム業界全体でメタバースへの関心が高まる中、任天堂はプレイヤーを感動させる娯楽性を重要視すると公言しました。遊び手の心を鷲掴みにするようなゲームを引き下げ、再びメタバースの火付け役になることが期待されています。
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