市場調査を行う際は、フレームワークを活用することで調査の精度・客観性を高めやすくなります。ただ実際にどんなフレームワークがあるのか分からない方も多いでしょう。

そこで本記事では、市場調査で活用できるフレームワークを詳しく解説します。市場調査のフレームワークを知りたい方、フレームワークを活用したい方はぜひ最後までご覧ください。

市場調査で活用するフレームワークとは

市場調査では、様々な顧客から情報を収集します。そのままでは単なる「たくさんの意見」ですが、そのなかに法則や一貫性を見出し、「意思決定に生かせる情報」へ変換しなければなりません。

情報を統合・整理・分析するために、情報の束を特定の型に落とし込むことがありますが、その際に用いられるのが「フレームワーク」です。感覚的に情報を扱うよりも整合性や視認性が高く、用途に合わせてさまざまな型を選べるので、適切な意思決定を行うためにも非常に役立つのです。

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市場調査で活用できるフレームワーク6選!

ここからは、実際に市場調査で活用できるフレームワークを見ていきます。今回紹介するフレームワークは下記の6つです。

・SWOT分析
・PEST分析
・3C分析
・5F分析
・4P分析
・AIDMA

それぞれ詳しく見ていきます。

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SWOT分析

SWOT分析とは、下記の4つの観点から自社の内部環境・外部環境を分析するフレームワークです。

・Strength(強み):自社や自社サービスの長所、得意な部分

・Weakness(弱み):自社や自社サービスの短所、苦手な部分

・Opportunity(機会):社会環境・市場の変化によって、自社や自社サービスにプラスに働く部分

・Tthrest(脅威):社会環境・市場の変化によって、自社や自社サービスにマイナスに働く部分

上記の4項目の頭文字を取って「SWOT」分析と呼ばれます。既存事業の強み・弱み、改善点を明確に把握できるだけでなく、一面しか見えていなかった事象を両面で捉えられることも少なくありません。

またSWOT分析の結果を踏まえ、新規事業やマーケティング戦略の立案にも繋げられます。自社の強み・弱みを正確に把握し、強みを最大限に生かした戦略を選択できれば、少ないリソースで高い成果が期待できるでしょう。

SWOT分析を行わず、強み「だと思っているもの」を基準に戦略を立ててしまうと、成果が出にくくなるばかりか、サービスそのものの舵取りが難しくなる可能性も。定量的なデータをもとにSWOT分析を行い、データドリブンな意思決定に繋げましょう。

PEST分析

PEST分析は自社を取り巻く外部環境を分析するフレームワーク。PEST分析を構成する分析項目は下記の4つです。

・Politics(政治)

・Economy(経済)

・Society(社会)

・Technology(技術)

上記4項目を分析すれば、自社を取り巻く外部環境の情報を整理できます。自社の内部環境よりもまずは外部環境の分析にパワーをかけたい際にPEST分析は最適です。また、数年で外部環境が大きく変わってしまうことも少なくないため、過去と今、未来の視点を織り交ぜて分析することをおすすめします。

たとえば「Politics(政治)」の項目では、政府による規制緩和や法律の制定、補助金の増加といった項目が分析対象。「Society(社会)」の項目では社会問題や人口の増減、カルチャーなどが分析対象になります。

4項目といっても細分化していくとカテゴリーが多くなるので、各情報をジャンルごとにグルーピングしていくのがおすすめです。また抽出する外部環境の情報は多いほどバランスが良くなります。特定の情報源に偏らず、様々なリソースを参考にして情報を集めましょう。

3C分析

3C分析とは下記3つの項目を分析して自社のマーケティング環境を把握するフレームワークです。

・Customer(市場・顧客):市場規模や成長、顧客ニーズ、購買意欲など

・Company(自社):自社の経営資源や収益性、優位性、技術、販路など

・Competitor(競合他社):競合他社の売上、市場シェア、技術など

「Customer(市場・顧客)」と「Competitor(競合他社)」の項目で外部環境を、「Company(自社)」の項目で自社の内部環境を分析します。SWOT分析よりも広範な情報を扱うため、市場における自社の立ち位置を把握しやすいです。

たとえば「Customer(市場・顧客)」の項目で市場規模や顧客ニーズを把握した上で「Competitor(競合他社)」の売上・市場シェアを分析すれば、競合がどんな立ち位置で、どの層をターゲットに売上を伸ばしているのかが把握できます。

その後に「Company(自社)」の売上や収益性を整理すれば、競合他社との比較もしやすいでしょう。

上記項目をより詳細に分析するために、他のフレームワークと組み合わせて活用するのもおすすめ。いずれかのフレームワークから見えてきた情報を別のフレームワークで分析し直してみると、さらに深い本質へ迫れることも少なくありません。

一つのフレームワークのみを使う決まりはありませんので、併用できる部分は積極的に組み合わせていきましょう。

5F分析

5F分析は外部環境を下記の5つの要素に分けて分析するフレームワークです。

・競合他社の脅威:競合他社が自社の売上や市場シェアなどに与える影響・脅威

・代替品の脅威:自社サービスの代替商品が出現する脅威

・新規参入者の脅威:業界内に新規参入する企業の脅威

・買い手の交渉力:買い手となる顧客・企業と自社の力関係

・売り手の交渉力:自社商品の仕入れ先と自社の力関係

たとえば競合他社が急成長して市場シェアを伸ばせば、自社商品の売上は落ちてしまうでしょう。代替商品の出現や新規参入企業の増加も同様です。自社の脅威となりうる情報を網羅的に整理したい際に、5F分析は有効になります。

注意点として、5F分析のみでは新規事業の創出や戦略立案には繋がりにくい点が挙げられます。5F分析は自社を取り巻くネガティブな要素を抽出するフレームワークです。自社の強み・特徴などを前向きな情報を整理したい際は、他のフレームワークも合わせて活用しましょう。

4P分析

4P分析とは下記の4項目を整理してマーケティング戦略の立案に繋げるフレームワークです。

・Product(製品):製品・サービスの特徴やコンセプト、デザイン、機能など

・Price(価格):製品・サービスの価格

・Place(流通):製品を顧客に届ける際の流通経路・環境

・Promotion(販売促進):製品の認知度拡大・プロ―モーションの方法

具体的にどのようなサービスを作って、どのような方法・価格帯で販売していくのか整理する際に4P分析は最適です。特に新規事業を創出する際は、商品やサービスの情報を具体化しなければなりません。

感覚的に情報を羅列しても漏れが出てしまうので、4P分析を活用し、項目ごとに商品やサービスの情報を整理しましょう。各項目を詳細に整理していけば、そのまま事業計画にも落とし込めますね。

また既存事業やサービスの情報を再確認したい際にも4P分析は最適です。既存サービスの情報を4P分析で整理すれば、サービスの改善点や伸ばしていくべき長所などを発見できるでしょう。

ただし外部環境の把握に関しては他のフレームワークで補う必要があります。先述した5F分析などを活用して外部環境の分析も抜かりなく進めましょう。

AIDMA

AIDMAは消費者の購買行動のプロセスを分析するフレームワーク。下記5つの項目で構成されています。

・Attention(注意)

・Interest(興味・関心)

・Desire(欲求)

・Memory(記憶)

・Action(行動)

消費者の購買行動を上記のプロセスに細分化して、各フェーズにおける消費者の行動を整理していきます。

たとえば「Attention(注意)」のフェーズでは、消費者は特徴的な広告宣伝に注意を注ぎやすいです。どんなに魅力的なサービスでも消費者の注意を引き付けないと認知してもらえません。ターゲット顧客に合わせた広告媒体の選定、プロモーション方法の設定を進める必要があります。

また「Desire(欲求)」のフェーズでは顧客がサービスを購入・使用したい感情が出てきます。サービスのどのような点に購買意欲が刺激されるのか、消費者の目線に立って情報を整理する必要があるでしょう。

フェーズごとに消費者行動を整理すれば、改善すべき点を各フェーズごとに確認でき、全体的な改善点をぼやっと考えるよりもずっと理にかなったPDCAを回せます。見直しのみならず、新たにマーケティングや販売の戦略を立てる際にもAIDMAを活用するのがおすすめです。

市場調査でフレームワークを活用するポイント

市場調査にフレームワークを活用する際のポイントとして下記の3つが挙げられます。

・目的に合ったフレームワークを活用する

・分析する情報を明確にする

・ターゲットのニーズ・悩みを把握する

それぞれ詳しく見ていきましょう。

目的に合ったフレームワークを活用する

フレームワークを活用する際は、目的に合ったものを活用しましょう。たとえば自社の内部・外部環境をトータルで分析したい場合はSWOT分析が最適ですが、自社の外部環境を分析する際はPEST分析が良いでしょう。

目的に合ったフレームワークを活用すれば効率よく情報が整理できます。フレームワークごとに分析対象の情報は異なりますので、特定のフレームワークに固執せず、柔軟に使い分けていきましょう。

分析する情報を明確にする

分析する情報を明確にすることもフレームワークを活用する上で重要なポイントです。分析する情報の種類によって、利用すべきフレームワークは変わってきます。

たとえば自社サービスに最適なマーケティング方法を分析する場合は4P分析が最適ですが、競合他社の脅威を退けたい場合など、自社にとってのリスクを扱う場合は5F分析を活用します。

分析する情報を踏まえてフレームワークを活用すれば、より効率よく市場調査を進められます。

ただし分析する情報の種類によっては活用できないフレームワークも出てくるので要注意です。フレームワークごとの特徴・分析対象を踏まえた上で、目的に合った最適なフレームワークを活用しましょう。

ターゲットのニーズ・悩みを把握する

ターゲットのニーズ・悩みを把握することもフレームワーク活用時のポイント。ターゲットが自社商品に対してどのような考えを持っているのか把握できれば、自社商品に対する客観的な認識を踏まえ、分析ができるでしょう。つまりフレームワークに落とし込める情報の質が高くなると言えます。

フレームワークはあくまでも情報を整理する枠組みですので、扱う情報の精度によって効果の大小が変わります。ターゲットがどのようなニーズ・悩みを抱えているか、インターネットリサーチやアンケート等を実施してデータを集めておきましょう。

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分析で終わらせず意思決定に生かす

フレームワークを活用して各種情報を分析したら、分析結果を意思決定に生かしましょう。分析で満足するのでは本末転倒になってしまうため、フレームワークによる分析は「事業創出・戦略立案の手段」であると心得ましょう。

フレームワークによる分析結果は単体の情報よりも具体的かつ高密度のものです。適切な意思決定に生かせるよう、フレームワークの分析結果を従業員間で共有することも忘れずに。ミーティングの際に分析結果を共有したり、データドリブンな意思決定に生かしたりしましょう。

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市場調査のフレームワークを活用して戦略立案・意思決定に活かしていこう!

市場調査のフレームワークを活用すれば、自社を取り巻く環境やサービスの強み、弱みといった情報を整理でき、情報を視覚的に整理すればチームメンバーへの共有もスムーズになります。事業に関する共通言語や共通理解を生み出し、前提を揃えられるのは新規事業を創出する際に大きなアドバンテージとなるでしょう。

また、感覚的に情報を把握するだけでは正しい意思決定や戦略立案には至りにくいと言えますが、フレームワークを活用して市場調査を進めれば、得られたデータに基づく「実態に即した意思決定」が可能になるでしょう。

市場調査のフレームワークには様々な種類があります。分析対象や目的に合わせ、本記事で解説したフレームワークを活用していただき、市場調査を効果的に進めてもらえれば幸いです。

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