事業開発を進めるには、仮説検証が重要・必須といわれます。しかし、単語レベルで理解していても、仮説検証の正しいプロセスやサイクルの回し方を理解している人は少ないのではないでしょうか。

そこで今回は下記について紹介します。

  • 仮説検証の2大プロセス
  • 仮説検証で使える5つのフレームワーク
  • 企業における仮説検証の例

本記事ではいわゆるノウハウだけでなく、企業の具体的な仮説検証の例も紹介。本記事の内容を参考に仮説検証の正しいプロセスを理解し、新規事業開発などに役立てましょう。

仮説検証とは予想した結論の答え合わせをすること

仮説検証とは、予想した物事や状況の結論に対し、答え合わせをすることです。

たとえば、「商品の売上が思うように伸びなかったのは商品の認知度が低いからで、広告を出稿すれば売上が伸びるはず」という仮説を立てます。実際に広告を出稿した結果、売上が前月比で改善されたかどうか確認する一連の流れが仮説検証です。

仮説検証をすることで、「その仮説が正しいかどうか」を判断するために分析をすればよいため、開発スピードを上げられるメリットがあります。そのため仮説検証は、リーンスタートアップなどのスピード感ある事業開発でも重要な手法です。

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仮説検証の2大プロセス

仮説検証の2大プロセスは以下のとおりです。

  • PDCAを回す
  • 仮説検証サイクルを回す

また仮説検証のプロセスは、一般的に以下の3段階に分けられます。

  1. 状況分析:目的(最終的な目標)・背景(なぜ行うのか)・条件(範囲を指定)の3つをクリアにする
  2. 仮説設定:実際に仮の答え(仮説)を立てる
  3. 検証:データを集めて仮の答えが正しかったかどうかの答え合わせをする

または「PDCA」の4ステージに分けてサイクルを回し、スピード感を持って精度の高い開発を進めることも多い傾向にあります。

PDCAを回す

PDCAは以下の頭文字を取った仮説検証プロセス・サイクルの略称です。

  • P(Plan):目的とゴールを設定して、何をするのか仮説を立案するフェーズ
  • D(Do):Planを実行するフェーズ
  • C(Check):実行内容の検証や評価を行うフェーズ
  • A(Action):Checkの内容を踏まえたさらなる改善を行うフェーズ

Plan:状況を分析し仮説を立てる

PDCAサイクルにおける「Plan」は、事業開発などに対して目的やゴールを設定し、現在置かれている状況を分析して何をしていくのか仮説を立てる段階を指します。

何をするにしても「おそらくこうなるだろう」という仮説を持つのが非常に重要で、仮説がないまま市場分析や次の一手を考えるのは非効率です。漫然と市場などを分析し、なんとなく施策をとったところで、施策の効果があったかどうかは検証できません。

仮説検証サイクルを回す上で、Planを立てることで適正に「Check」できますし、施策(Do)の具体性も増します。

状況を分析して仮説を立てることは、事業開発などを進める上で最も重要なポイントといえるでしょう。

Do:仮説を実行する

PDCAサイクルにおける「Do」は、Planで立てた仮説が正しいか確認するために施策を実行する段階です。

仮説を立てただけではもちろん意味がなく、仮説が正しいか判断できる施策を実行しない限り、次のフェーズである「Check」はできません。Doを考えるにあたって重視すべきポイントは、大きく分けて以下の3点です。

  • タスクとスケジュールの細分化
  • 確実な実行
  • 実行中に発生した問題への対応

Planに基づく施策を確実に実行するためにも、チーム全体で立てた計画・タスクは個々が実践する内容まで具体化させましょう。また、Doを実行する過程で発生した問題・課題はチーム全体で共有し、開発スピードや仮説の精度向上につなげる意識が重要です。

Check:仮説が正しいか検証する

PDCAにおける「Check」は、最初に設定したPlan(仮説)に基づいて実施された施策(Do)が正しいか検証する段階を指します。

仮説に基づく実行結果に関して「よかった」「ダメだった」という結果を振り返るだけでは足りず、その結果が生まれた原因について深掘りするのが重要です。

とくに、施策が失敗した場合には要注意。失敗した原因の犯人探しをするのではなく、うまくいかなかった原因として次に活かす姿勢をチームで作り上げておきましょう。

結果の正しさを検証するにあたり、原因(問題点)を特定し、その原因を解決・改善する対策まで落とし込む必要があります。Checkの段階で具体的な対策を立案できると、次のActionをスムーズに実施できるでしょう。

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Action:仮説を修正する

PDCAにおける「Action」は、Checkで見つかったさらなる改善策をもとに、仮説を修正する段階です。

「仮説→実行→検証」を通じて検証結果と課題が鮮明になったため、それらをもとに軌道修正します。PDCAは一度行って終了させるといった単純なものではなく、よりよいサービスや商品開発などのために仮説と検証を繰り返し、改善し続けることが重要です。

Checkで浮かび上がった課題に対し、次のPDCAサイクルに回すための行動(Action)に移しましょう。

仮説検証サイクルを回す

仮説検証サイクルとは、仮説検証にまつわる以下の3ステップを繰り返し実践することです。

  1. 仮説の立案
  2. 仮説を検証するための情報収集
  3. 仮説の検証

仮説検証サイクルと呼ばれるように、仮説検証は上記1サイクルを複数回繰り返します。

また仮説検証サイクルは、いわば「スパイラル(螺旋状)」で徐々にプラス方向へ向かうイメージです。思考と行動を反復し、仮説検証を重ねるごとに仮説の精度を向上させます。

仮説検証サイクルを回す際は、以下5つのコツを押さえましょう。

  1. 思考と行動のバランス
  2. 間違ってもOK
  3. 仮説のない調査は無駄
  4. 役に立つ情報を意識
  5. 表現を磨く

間違いを恐れず、仮説を立ててからフットワークを軽くして行動。足で稼いだ役立つ情報を収集して、仮説を誤解されないシンプルで分かりやすい言葉で表現できると、仮説検証サイクルはうまく機能するでしょう。

仮説検証で使えるフレームワーク5選

仮説検証のプロセスについて理解できても、実践する際にどうしたらいいか分からない人も多いのではないでしょうか。そこで「フレームワーク」と呼ばれる、考えるべきポイントをパターンで落とし込み、再現性高く実践できるようにした枠組みを使用しましょう。

本記事では以下5つのフレームワークを紹介します。

  • アブダクション
  • ロジックツリー
  • SWOT分析
  • 4P分析
  • MVPキャンバス

各フレームワークの実施内容や、どのような場面で活用できるかといった仮説検証との関係性などについて解説します。

アブダクション

アブダクションはロジカルシンキング(論理的思考)の一手法で、観測した事実(結果)に対して法則を当てはめ、結果をうまく説明できる仮説を導き出すフレームワークです。

もともとロジカルシンキングには、以下2つの論理展開手法が存在します。

  • 演繹法:ルールや法則に、観測した事実を当てはめて結論を出す
  • 帰納法:複数の実例を挙げ、それらの共通点から結論を出す

従来の論理展開手法は、仮説が先行し結論を導き出す流れでした。一方アブダクションにおいて先行するのは事実(結果)で、その事実を説明できるような仮説を立てます

アブダクションのメリットは、事実を説明する法則の数だけ仮説を立てられる点です。そのため、経験から法則を見出す習慣を身につけると、仮説を立てる力が強化できるでしょう。

ロジックツリー

ロジックツリーとは、物事や事象(結果)を構成する要素について、属性で構造的に分解した樹形図で可視化するフレームワークです。「売上が下がった」という課題の原因を分析する際や仮説検証に活用し、効率よく原因の特定などができます。

ロジックツリーを作る上で重視すべきは、漏れやダブりがない状態にすることで、ロジックツリーで課題を要素分解する際は以下の4点に注意しましょう。

  • 目的を持って分ける
  • いきなり細分化しない
  • 曖昧な表現は使わない
  • 全体を俯瞰する

ロジックツリーで課題について漏れなくダブりなく深掘りできると、課題の全体像を掴みやすくなります。ロジックツリーの作成を通じた仮説検証から、本質的な原因を特定し、改善するためのアクションを検討しましょう。

SWOT分析

SWOT分析は、企業を取り巻くさまざまな要因を分析し、経営環境を見極める際などに使用するフレームワークです。「SWOT」は以下の英単語が由来となっています。

  • S:Strength(強み)
  • W:Weakness(弱み)
  • O:Opportunity(機会)
  • T:Thread(脅威)

SWOT分析では、「外部要因・内部要因」と「ポジティブ・ネガティブ」の2要素を掛け合わせたマトリクス上に、市場を取り巻く環境や社内のリソースなどを当てはめます。

ポジティブネガティブ
内部要因強み(Strength)弱み(Weakness)
外部要因機会(Opportunity)脅威(Thread)

企業や既存ビジネスなどの現状をマトリクスに落とし込むことで、客観的に現況を把握できるため、次の一手(仮説)を導きやすくなるでしょう。

4P分析

4P分析とは、自社商品やサービスの販売を拡大するためのフレームワークです。

  • Product(製品)
  • Price(価格)
  • Place(流通)
  • Promotion(販売促進)

4P分析は上記4つの「P」を切り口に、事業計画を立案し実行に移す手法です。他社と比較しながら自社商品などを深く理解でき、新規事業開発や既存商品の戦略を改める際に利用されます。

4P分析を用いてあらかじめ戦略や計画を立てて施策を実行すると、分析の切り口が明確になるため、問題点や課題を突き止めやすくなります。それにより、効率的に戦略や計画を修正できるメリットがあるのです。

4P分析から商品の具体的な展開手法を分析し、考え出された仮説をもとに効率よく検証を進めましょう。

MVPキャンバス

MVP(Minimum Viable Product)とは、リーンスタートアップと呼ばれるマネジメント手法の活用にあたり、検証の初期段階において制作する「必要最小限の機能を実装したもの」です。

MVPを用いて顧客ニーズを検証することで、製品やサービス開発の際に発生する無駄を省けるメリットがあります。このとき、検証したい仮説と検証方法のズレが生じないようにするため、MVPキャンバスというフレームワークを用います。

  • 仮説
  • 目的
  • 実証方法
  • データ・条件
  • 金銭的・時間的コスト
  • リスク

MVPキャンバスは、上記などの合計10要素で構成される各項目をチーム全体で共有し、目的に向かって無駄をなくして効率的に開発を進めるフレームワークです。

なお、MVPについて詳しく知りたい方は「MVP開発とは?他の開発手法との違いや基本的な進め方を徹底解説」をご覧ください。

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企業における仮説検証の例

仮説検証サイクルの回し方や具体的なフレームワークを踏まえ、実際の企業における仮説検証事例について、以下の2社を紹介します。

  • ワークマン
  • セブンイレブン

ワークマンは「高機能・低価格」という市場を開拓し、作業着を販売する会社というイメージから脱却しました。セブンイレブンはPOSシステムにより蓄積された膨大なデータをもとに、商品の陳列方法を毎日変更するなどして仮説検証を繰り返し、堅実な成長を遂げています。

ワークマン

ワークマンが実践した仮説検証の内容は、以下のとおりです。

要素内容
仮説作業服業界自体が構造的にアウトドアウェア業界より優位にあり、作業服業界がアウトドアウェア業界に進むと構造的に強みが出ると仮説
実行内容売り場のディスプレイを変更してどちらの商品を前に出した方が売れるか、マネキンに着せたら売れるのではないかなど
検証結果成果はデータ活用のレポートとしてまとめ、必要に応じて社内で共有

ワークマンは入社するとすぐに店長を任され、店長が主導して、売り場で毎月データを見ながら仮説、実験、検証サイクルを実行します。若手の柔軟な発想と失敗を恐れない社風により、現場で仮説検証サイクルを短期間に回した結果、売上向上と市場開拓につながりました。

作業服のイメージが強いワークマンですが、「高機能・低価格」という商品の特徴を活かし、アウトドアウェア業界に参入。その結果4,000億円の空白市場を開拓し、10期連続で最高益を記録しています。

セブンイレブン

セブンイレブンが実践した仮説検証の内容は、以下のとおりです。

要素内容
仮説「商品をどこに陳列するか」という行為そのもの
実行内容店舗ごとの売上に限らず、商品ごとの売上の変化を毎日追跡
検証結果売れる商品は棚割を増やす、陳列位置を変える、発注量を増やすなどして売上を最大化

コンビニエンスストアは、「商品の陳列=仮説」「売れ行きデータの分析=検証」として仮説検証をシステム化しています。

POS(Point of sale system:バーコードを読み取り、何がどれだけ売れたか記録するシステム)を使用し、商品ごとの陳列場所最適化を日々行うことで、発注量の調整などにも活かしているのです。

その日の気候や近隣でイベントが開催されるなど、外的要因・環境も加味して陳列場所を調整。こうして毎日仮説検証を繰り返すことで、セブンイレブンは継続的な成長を続けています。

課題解決に向けて仮説検証を繰り返そう!

新規事業開発や既存商品の売上改善などを目指す際、仮説を立てて施策を実行し、成果を検証して再び仮説を立てて改善し続けるという一連のサイクルが非常に重要です。

仮説のない施策の実行や、一度きりの仮説検証では意味がありません。基本的な仮説検証プロセスは、PDCAサイクルに代表されるような循環型の改善フローでした。仮説検証で使えるフレームワークも多数あるため、状況に応じて使い分ける、組み合わせて使うなどするとよいでしょう。

成長している企業の裏には、数えきれないほどの仮説検証が行われています。本記事の内容を参考に、仮説検証の正しいプロセスを理解し、課題解決に向けて仮説検証を繰り返しましょう。

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