「リクルートの新規事業にはどんなものがある?」

「リクルートの新規事業はどのように立ち上げられている?」

「なぜリクルートでは多数の新規事業が成功している?」

このような疑問を抱えていないでしょうか。

リクルートで立ち上げられている新規事業は多数です。ゼクシィやスタディサプリが有名ですが、その他にも毎年さまざまな新規事業が生まれます。

リクルートが多くの新規事業を立ち上げ成功させているのは、長年培ってきた独自のアプローチ方法があるためです。

この記事では、以下の内容を解説します。

  • リクルートで立ち上がった新規事業の内容
  • リクルートの新規事業立ち上げの流れ
  • 新規事業の育て方

リクルートの新規事業について知りたい場合は、ぜひ参考にしてみてください。

リクルートで立ち上がっている5つの新規事業を解説

リクルートでは、毎年さまざまな新規事業が立ち上がっています。直近ですと、以下のようなものです。

  1. termhyb
  2. Alumy
  3. オシタス
  4. knowbe
  5. エリクラ

それぞれの概要と、立ち上げの流れを解説します。

1. termhub〜利用規約やプライバシーポリシー管理のサービス

termhubは、以下の作業を一括で管理できるサービスです。

  • アプリやWebサイトの利用規約の作成
  • 当該Webサービスへの掲出
  • 規約の継続的なバージョン管理
  • ユーザーの同意記録管理

複数の規約画面を一括でまとめることで、管理不備によるミスを減らすのに役立ちます。

termhubの立ち上げにあたり、開発者は利用規約やプライバシーポリシーの管理を調査しました。

その結果、サービス担当者が自分のデスクトップ上にフォルダを作り、規約内容を保存していたことが判明します。

サービス担当者も管理内容を把握しきれていない状態であったことから、termhubの立ち上げにつながりました。

2. Alumy〜退職者再雇用サービス

Alumyは、無料で利用できる退職者情報管理システムです。

退職と同時に切れてしまっていた企業と退職者の関係性をつなぎ、即戦力としての再雇用をサポートします。

企業と退職者をサポートするのが、Alumyの「カムバックコーディネーター」です。退職者に最適なタイミングで、理想のカムバックを案内します。

現代の日本では「退職者=裏切り者」のような考えがあり、そのことによって失われてしまう機会をなくすために新規事情として立ち上げられました。

3. オシタス〜アイドルやアニメなどの「推し活カレンダー」を搭載

オシタスは、好きな対象をファンが応援する「推し活」をサポートしてくれるサービス。

最大の特徴は、自分の“推し”について、いつどこでどんな活動があるか分かる「推し活カレンダー機能」があることです。

推し活カレンダーがあることによって、告知を見逃してしまったり推しが多すぎて追いきれなかったりする悩みが解消できます。

推し活カレンダーは機能の一部で、今後もファン同士が活動できる機能を搭載する予定です。

4. knowbe〜障害者の業務支援サービス

knowbeは、障害者福祉に特化した運営支援のサービスです。47都道府県で導入実績があり、累計利用者数は72,000人を超えています。

従来は以下の作業を半日かけて手作業で入力したり、数時間かけてダブルチェックしたりしていました。

  • 勤怠管理
  • 国保連請求
  • ケース記録
  • 作業時間計算

konwbeを導入すると、これらの作業をシンプルな操作と入力で自動的に行えるようになります。業務が効率化され、転記ミスの発生も防げます。

konwbeは当初、メンタル不調で休職した人の復職を支援するプログラムとして開発されていました。

しかし職員の事務負担を軽減する業務支援サービスにこそ、大きな価値と市場があるのではないかと分析し、現在の形になっています。

5. エリクラ〜企業の軽作業と近隣のギグワーカーをマッチング

エリクラは、企業の軽作業とギグワーカーをつなげるスマホアプリサービスです。

スキマ時間を活用して好きな時に働ける仕事を見つけられ、20分の仕事をバラバラの時間に3つこなすこともできます。

エリクラはもともと、不動産管理会社がアパートやマンションでの現地作業のために長時間移動しているのを改善しようと開発されたものです。

しかし運用を開始すると、一部のヘビーユーザーが仕事を独占する状態になってしまいました。

それを改善するために仕様変更したことで現在の形になり、週に少しだけ働きたいユーザーに仕事が回るようになっています。

リクルート新規事業は「Ring」がベースになっている

リクルートではさまざまな新規事業が立ち上がっていますが、どれもRing」という制度から生まれました。

ここからは、リクルートのRingについて詳しく解説します。

Ringの概要

Ringは、リクルートの新規事業提案制度です。1982年のスタート以来、数々の新規事業を世に送り出してきました。

リクルートの事業として有名な以下3つも、Ringから生まれた事業です。

  • ゼクシィ
  • HOT PEPPER
  • スタディサプリ

2021年にリクルートは各事業会社を統合しましたが、同じタイミングでRingもリクルートの最新メソッドを加えてバージョンアップされています。

リクルートの社員からRingに寄せられる新規事業のアイデアは、毎年1,000件以上です。その中から審査を経て、5〜6件が新規事業開発のステップに進みます。

Ringの審査に上下関係は一切ない

Ringの最大の特徴は、上下関係が一切関係ないことです。審査では純粋にアイデアの内容だけを競い合っています。

他社の事業部では「この人に経験を積ませよう」と、人で選ぶこともあるでしょう。

しかしRingでは、社歴や担当業務は関係ありません。立場や年齢は関係なく審査してもらえるため、起案者側にとって魅力的な制度と言えます。

Ringには事業開発未経験でも挑戦しやすい仕組みがある

Ringには、事業開発未経験の人も挑戦しやすいサポートがあるのも特徴です。

エントリー前の段階で、事業開発のイロハを解説した『Ring NOTE』の配布や、ノートを基にしたワークショップの開催などをしています。

アイデアをビジネスモデルに落とし込む技術や市場調査のインタビュー技術などを教えてもらうことで、事業開発に必要な知識やスキルを得られるのです。

またRingの1次審査を突破した約30組には、資金の使い方や事業開発に必要な法務知識などの講座を計10時間以上用意しています。

事業開発未経験の人も十分な知識を身につけ、新規事業提案に挑戦できるのです。

リクルートの新規事業提案制度「Ring」の流れ

ここからは、Ringの審査がどのように行われるのかを解説します。

  1. Ringの審査プロセス
  2. Ringの審査でみられるポイント
  3. Ringの審査方法

順番に見ていきましょう。

Ringの審査プロセス

Ringの審査プロセスは、以下の通りです。

  1. エントリー:事業プランをまとめたプランシートをWebでエントリー
  2. 1次審査:事業開発、領域責任者による書類審査
  3. ブラッシュアップ:予算、伴奏者をつけたインタビューや定量調査
  4. 2次審査:魅力ある上位案件の選抜
  5.  最終審査:社長・役員へ直接プレゼン

Ringには毎年1,000件以上の応募がありますが、1次審査までで30件ほどしか残りません。

Ringの審査で見られるポイント

審査では、新規性以上に重要な以下4つの観点を見ていきます。

  1. 提供価値:どんな価値を提供できるか
  2. 市場性:どのくらいの市場規模があるか
  3. 事業性:収益性はどれくらいか
  4. 優位性:他社との違いは何か

新しい発想があったり着眼点がよかったりするだけでは、リクルートにおいては不十分。4つの基準をクリアして、ようやく『いいアイデア』と判定されるのです。

Ringの審査方法

Ringの1次審査では、1件のアイデアに多い場合で10数人の審査員がレビューし主観的・感覚的判断になるのを防いでいます。審査員は、既存事業の部長やプロダクトの責任者などです。

審査員のレビューが完了した後は、新規事業開発室でさらに絞り込んでいきます。

12月に新規事業開発室で2次審査を行い、選ばれた5〜6件が進むのが役員による最終審査です。翌2月には、春から新規事業開発に取り組む案件の最終決定です。

さらに「Ring AWARD」というイベントを開催し、Ringのグランプリを選出しています。

表彰する場を設けるのは、受賞者のみならず次のRingに応募を検討している社員の気持ちを盛り上げることが目的です。

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リクルートが新規事業を育てていく4つのSTEP

リクルートの新規事業は、頼られたら放っておけない皆で。 推し活支援サービス『オシタス』 | 株式会社リクルート (recruit.co.jp)

リクルートでは、新規事業の種を「ステージゲート」というやり方で育てます。新規事業を以下4つのステージに分け、仮説検証しながら段階的に予算と人員を投入しています。

  1. MVP(Minimum Viable Product)
  2. SEED
  3. ALPHA
  4. BETA

4つのステージについて、順番に見ていきましょう。

1. ​​MVP(Minimum Viable Product)

MVPは、本当にニーズがあるかどうかを検証していくフェーズです。仮説を検証して判明した課題や、ニーズ対象の広さなどを見ていきます。

ニーズはRing選考中にも調査しますが、MVPで投入される予算はRing選考中の10倍です。

新規事業は、MVPで撤退するものが半数。そのためMVPフェーズは、起案者が本来の仕事と兼務する割合は20%のみです。

割合を少なくすることには、仮に事業を撤退した後も元の部署に戻りやすくするという狙いもあります。

2. SEED

SEEDは実際にプロトタイプを少数のユーザーに利用してもらうことで、実現できるか検証するフェーズです。検証すべき項目(KPI)を絞り込み、最小機能のみを試していきます。

プロトタイプ作成によるコストを抑えるだけでなく、検証内容がぼやけてしまうことを避けるのも狙いです。

事業の大前提の検証ができたら、顧客・製品・店舗などの単位で収益性をチェック。

リクルートでは次のステージに進む基準を、シリコンバレーの3倍以上に設定しています。

3. ALPHA

ALPHAは、事業を拡大できるかを検証するフェーズです。

例えば起案者たちの熱意ある営業活動によって売れたものの、他の担当になった途端売れなくなったというのでは事業拡大が困難となります。

そのためALPHAの段階で、組織的に事業を拡大できるかを試していくのです。

起案者にはアイデアだけではなく、組織マネジメント力や採用力のリーダーシップも求められます。

もし能力が伴わないと判断されれば、他の人がリーダーになるケースもあるほどです。

4. BETA

BETAでは自社の戦略に合致しているのか、大規模に投資すべき事業かどうかを検証していきます。

時代によって社内の戦略も変わっていくため、既存事業との相性を議論するのです。

事業開発に数年はかかりますし、会社としての戦略も数年で変化する傾向です。タイムリーに事業を進行するためにも、この段階で判断します。

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リクルートの新規事業は失敗を防ぐため小さく始めて軌道修正する

リクルートでは、最初から多くの予算と人員を投入して一気に立ち上げることはしません。新規事業を小さく始めて、徐々に軌道修正していきます。

大前提として新規事業は失敗するもので、未来の正解は誰にも分かりません。小さく生んで段階的に育てることによって、失敗したときのダメージを最小限に抑えられます。

このやり方は、新規事業につきものである軌道修正がやりやすいのが利点です。

最初に一気に立ち上げその後修正していくと、トータルで多くの時間がかかってしまいます。小さく始めて改善を繰り返した方が、費用も時間も短縮できるのです。

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まとめ

リクルートではさまざまな新規事業が立ち上がっていますが、そのベースとなっているのがRingという制度です。

全社員が平等に挑戦でき、未経験者に向けたサポートもしています。

リクルートでは新規事業を立ち上げ育てていく仕組みが整っているため、多くの新規事業が誕生しているのです。

立ち上げの流れだけでなく、新規事業の内容も時代に沿った参考になるものが多数あります。

この記事の内容も参考に、リクルートが培ってきたアプローチ方法を新規事業に取り入れてみてください。

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