メタバースを取り入れたマーケティング戦略を考える際に、気になるのがメタバースの市場規模でしょう。どのくらいの市場規模があるのか、またこれからどのくらい市場規模が大きくなるかの情報があれば、ビジネス戦略も立てやすくなりますよね。
そこで本記事では現在のメタバースの市場規模や、これからの市場予測を解説します。それに加えて日本のメタバースへの取り組みや、ランキング形式での業界別の市場規模予測も紹介しているので、最後まで読んでみてください。
メタバースの市場規模:2021年〜2030年予測は?
初めに2021年・2022年でのメタバースの市場規模はどのくらいあるのかの推定値、2030年に市場規模はどのくらいになっているのかの予測を解説します。
海外のレポートを参考にして解説していますが、レポートによって数字にかなり幅が出ている状況です。そのため本記事で紹介している推定値や予測値もかなり幅があります。レポートの数字に幅が出ている理由については後述します。
2021年・2022年の推計値は約400億〜5,000億ドル
2021年・2022年のメタバースの市場規模は約400億〜5,000億ドルと言われています。このうち2,000億ドル以上の市場規模を占めていると推定されるのが、ゲームソフトウェアとそのサービス、ゲーム内広告の売上高とゲームハードウェアの売上高です。
これに加えて既存のゲームがメタバースに対応するようになれば、メタバースでのゲーム市場の売上高はさらに伸びるとされています。
ゲームに次いで注目されるのが、メタバース上でのコンサート、映画上映、スポーツなどのライブイベントです。実際にEpic GamesやRobloxなどのゲームメーカーは、既にゲーム内でのコンサートのサービスを開発しています。
既存のゲームのメタバース化、ライブコンテンツの増加、さらにソーシャルメディアまで絡んでくると2024年には8,000億ドルまで市場が伸びると言われています。
2030年の予測値は約6,000億〜13兆ドル
2030年のメタバースの市場規模は約6,000億〜13兆ドルにまで伸びると言われています。13兆ドルは、世界第3位である日本のGDPの2倍以上(日本の市場規模は約5兆ドル)です。
ここまで市場規模が伸びると、メタバースのユーザーの数は50億人にも増えると言われています。影響を受ける業界とその市場額の例は下記のとおりです。
- Eコマース:2兆ドルから2兆6,000億ドル
- 教育:1,800億ドルから2,700億ドル
- 広告:1,440億ドルから2,060億ドル
- ゲーム:1,080億ドルから1,250億ドル
前述ではゲーム市場について触れましたが、Eコマース、教育などゲーム市場よりも大きな影響を受けるとされている業界があります。
買い物や学習はゲームなどのエンタメと違って、多くの人の生活に共通する要素のため、一般層にもメタバースが浸透する未来はそう遠くはないのかもしれません。
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予測値に幅があるのは対象範囲に差があるため
これまで推定値や予測値について解説してきましたが、かなり幅があるなと感じた人も多いでしょう。これだけ推定値や予測値に幅が出るのは、レポートごとの対象範囲に差があるからです。
例えばBloomberg Intelligenceのデータでは、Newzoo、IDC、PWCなどのデータに基づいて分析しています。Newzoo、IDC、PWCのデータは、ゲームソフトウェア、ハードウェア、ソーシャルメディアの広告、ライブエンターテインメント分野のデータです。
その他には、Emergenのレポートでは、2030年の予測に対して、ブロックチェーン技術やノーコードアプリ開発の台頭を挙げています。
というように調査会社ごとに調査で扱うデータは異なっているため、結論や値も異なります。
これからのメタバースの市場規模の予測を深く追及したい、さまざまな視野でメタバースを調べたいと思った場合は、1つのレポートだけでなく複数のレポートを読むのがおすすめです。
[図解/表] 世界の市場規模レポートのまとめ
現在、メタバースの市場規模を分析しているレポートとレポートに書いてある市場規模の金額の一覧は次のとおりです。複数のレポートを見てメタバース市場の状況、予測を調べたい人には、参考になる内容が読めます。
レポート名 | 2020年前後:メタバース市場規模 |
Bloomberg Intelligence | 2020年:4,787億ドル |
Emergen | 2021年:630億8,000万ドル |
MarketsandMarkets | 2022年:618億ドル |
Grayscale | 2020年:1,800億ドル(仮想ゲーム市場において) |
Grand View Research | 2020年:388億5,000万ドル2021年:474億8,000万ドル |
レポート名 | 2024年以降~:メタバース市場規模予測 |
Bloomberg Intelligence | 2024年:7,833億ドル |
Emergen | 2030年:1兆6,071億2,000万ドル |
MarketsandMarkets | 2027年:4,269億ドル |
Grayscale | 時期不明:1兆ドル |
Grand View Research | 2030年:6,788億ドル |
McKinsey | 2030年:5兆ドル |
Citi | 2030年:8~13兆ドル |
Morgan Stanley | 時期不明:8兆3,000億ドル(アメリカの潜在市場として) |
Precedence Research | 2030年:1兆3,008億9,000万ドル |
メタバースの市場規模:日本国内は?
これまでメタバースの市場規模について海外のレポートを参考にして解説してきましたが、日本国内のメタバースの状況が気になっている人もいるでしょう。実は日本国内でも大手企業などが続々とメタバース市場に参戦しています。
市場規模は不明だが拡大が予想される
日本のメタバースのレポートはないため市場規模は明らかになっていません。ただ下記の日本の大手企業がメタバース市場に関わっています。
- KDDI
- キヤノン
- ソニー
- グリー株式会社
- 凸版印刷
- ANAホールディングス
- 株式会社三越伊勢丹ホールディングス
KDDIでは渋谷に似せた仮想空間「渋谷区公認バーチャル渋谷」を作成。そしてパートナー企業と共に「バーチャル渋谷 au 5G ハロウィーン2020」を開催しました。
キヤノンでは1つのカメラの映像を使いながら、複数の映像を切り出して表示する「AMLOS(Activate My Line of Sight)」の開発を進めています。
ソニーでは仮想空間上でスポーツやライブパフォーマンスを楽しめるサービスを開発。イギリスのサッカークラブのマンチェスター・シティ・フットボール・クラブと協業しています。
また日本で最大級のメタバースプラットフォームを運営している会社「Cluster」も要注目です。Clusterはポケモンの「ポケモンバーチャルフェスト」を制作、仮想空間のスタジアムで試合観戦を楽しめる「バーチャルハマスタ」を開催した会社です。
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一般人のメタバース認知度は43.4%
現在一般人にどのくらいメタバースが認知されているかについてですが、MMD研究所調べによると認知度は43.4%です。
43.4%となると、それなりに認知されている印象を持つかもしれません。ただ下記のグラフのようにメタバースの利用状況を見てみると、過去に利用した人と現在利用している人を含めると5%程度と低い数値が出ています。
つまりメタバースを知っている人はそれなりにいるけれど、使った経験がある人は少ないのが現状でしょう。しかしメタバースはゲームの世界だけでなく、これからスポーツやコンサートにも普及すると予想されるので、徐々に利用者は増えていくと予想できます。
ビジネス活用に関心がある日本企業は10%
PwCコンサルティング合同会社の調査によると「自社でのビジネスに活用することに関心がある」と答えた企業は10%です。
まだ数値としては低いですが、認知度は47%あるので、これからメタバースを使ったビジネスでの成果が増えれば、利用したいと考える企業は増えていくでしょう。
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Clusterでのイベント動員数は1,000万人を突破
さきほどメタバースのプラットフォームを運営している会社であるClusterを紹介しましたが、Clusterのイベント動員数は1,000万人を突破しました。企業から年間1,000以上の問い合わせが来るほどの会社に成長しています。
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【メタバース業界別】今後の市場規模予測ランキング
最後にメタバースの市場規模が大きくなりやすいとされる業界をランキング形式で紹介します。市場規模が大きくなると予想される要因についても解説しているので参考にしてみてください。各業界の予測値はイギリスにある調査会社、technavioのレポートを参考にしています。
出典:Search – metaverse|technavio
第1位:旅行・観光
旅行・観光産業におけるメタバースの市場規模は、2026年には1,882万ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなると予測される要因は、ARおよびVR技術に対する需要の増加です。
例えば京都の旅行体験がしたいといった場合は、京都を再現したバーチャル空間があれば、アバターを介して観光体験ができます。実際に現地に行けない状況で、どうしても観光を体験してみたいと考えている人には魅力的なサービスでしょう。
また現地に行ったときにはARグラスが観光に役立ってくれます。観光する際にはガイドブックやスマホで周囲の観光情報を取得するのが手間です。しかしARグラスなら、装着するだけで周囲の観光スポットの詳細を手軽に取得できるようになります。
このように現地に行けない場合はバーチャル空間で、現地に行ける場合はAR技術を活かせるので、旅行・観光産業とメタバースの親和性は高いと言えるでしょう。
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第2位:Eコマース
Eコマースにおけるメタバースの市場規模は、2026年には604億7,000万ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなると予測される要因はAR技術の人気の高まりです。
ARをEコマースに活用すると、消費者は自分にマッチした商品を選択しやすくなります。
ARを使うと消費者は、購入前に商品の品質やフィット感を事前に知れます。例えば、購入前に棚をARで表示して部屋の間取りに合わせれば、間取りに合った棚を購入可能です。
販売側も返品が減ると、企業の利益も上がりやすくなります。
また仮想空間を活用すると、ユーザーは自分のアバターを操作して、オンラインで買い物体験が可能です。既存のEコマースの場合は接客ができませんが、メタバースならアバターを介して顧客とコミュニケーションがとれるようになります。
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第3位:金融
金融におけるメタバースの市場規模は、2021年から2026年にかけて503億7,000万ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなると予測される要因はVRとARのプラットフォームの統合です。
VRによってホログラムを表示して、そのホログラムで金融市場の取引をリアルタイムで見れます。
実際にアメリカの証券取引会社のTDアメリトレードでは、ホログラフィーと3Dチャートを使ったライブ市場でのリアルタイムの投資を見られるVR体験を提供しました。
ホログラムでは、スマホやパソコンの画面よりも広く投資状況の情報を追えるようになります。そのためVRやARの導入が広がれば、投資家はこれまでよりも投資機会を逃さず、スピーディに投資できるでしょう。
第4位:エンターテインメント
エンターテインメントにおけるメタバースの市場規模は、2026年にかけて289億2,000万ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなると予測される要因は、仮想コンサートやイベントなどの消費者支出の増加です。
これまで現地に行けなくて見れなかったコンサートやイベントも、メタバースが普及すれば、家の中でも見られるようになるでしょう。従来はカメラで撮った映像を見るだけだったのが、メタバースならライブの空間に入って自由な角度からステージを見られます。
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第5位:ファッション
ファッションにおけるメタバースの市場規模は、2026年にかけて66億ドル1,000万ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなると予測される要因は、メタバースプラットフォームに参入するファッションブランドの増加です。
ファッションブランドはラベルやブランディングが売り上げに大きく左右されますが、ブランドの認知度向上にメタバースは活用されるでしょう。実際にNIKEではデジタルスニーカーを製造している会社のRTFKT Inc.を買収しました。
メタバースを活用すれば、デジタルな体験がきっかけになり、リアルでの商品の購入へも繋げられる可能性もあります。自分のアバターを使って好みの服を試して、その服を購入できるようにするサービスを開発する取り組みも進んでいるようです。
第6位:不動産
不動産におけるメタバースの市場規模は、2026年にかけて53億7,000万ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなると予測される要因は、複合現実と暗号資産の需要の増加です。
海外ではメタバース上の不動産市場でブームが起きました。2021年11月30日には、メタバースで不動産を開発している会社「リパブリック・レルム」がメタバース内の不動産を430万ドルで購入。
不動産投資会社はメタバースの不動産を使って、観光スポットに近い家を販売したり、小売りスペースを貸し出して賃貸を受けることを狙っているようです。
メタバース内の不動産はNFT、ビットコイン、ライトコインなどの暗号資産で購入可能です。そのため暗号資産の需要が増加して暗号資産を持つ人が増えれば、暗号資産で購入できるメタバース内の不動産の購入機会も増えます。
したがって暗号資産の需要増加もメタバースの不動産需要を後押しすると予測できます。
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第7位:ヘルスケア
ヘルスケアにおけるメタバースの市場規模は、2026年にかけて38億ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなると予測される要因は、メタバースを活用すれば、正確性の高い手術が行える、ヒューマンエラーや疲労が原因で発生する問題を排除できるからです。
実際にアメリカの大学ジョン・ホプキンス大学の外科医師は手術の際に、ARスマートグラスをつけて、患者のデータを参照しながら執刀にあたりました。このようなメタバースの手術事例が増えれば、メタバースの市場規模は広がるでしょう。
また医者のトレーニングにもメタバースは活用できます。人間を相手にした練習は倫理的にできるものではないでしょう。しかしメタバースなら仮想空間上で練習できるので、医師の技術の発達にも繋がります。
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第8位:日用消費財
日用消費財におけるメタバースの市場規模は、2026年にかけて38億ドルに増えると言われています。市場規模が大きくなるとされる要因は、メタバースプラットフォーム上に参入した日用品ブランドの数の増加です。
日用品ブランドの中では、コカ・コーラ、ペプシコーラ、サントリービールといったブランドがメタバース市場に関心を示しています。
例えばコカ・コーラはメタバース内で誕生した「Coca-Cola Zero Sugar Byte」を販売。サントリービールでは「ザ・プレミアム・モルツ」の製造をメタバース上で体験できるサービスを提供しています。
認知度を上げたいと日々競争している日用品ブランドにとって、新しい客層に発信できるメタバースは魅力的な市場と言えるでしょう。
まとめ
本記事では以下の内容をまとめました。
・メタバース市場の予測
・日本国内のメタバースの状況
・業界別のメタバースの市場規模の予測
ゲームの印象が強いメタバースですが、これからは旅行・観光業界やEコマースなどの一般層の分野にも大きく市場規模を拡大させていく可能性があります。
国内でもKDDIやキヤノンなどの大手企業も、メタバースに取り組んでいるので、国内の動きにも注目してみましょう。本記事の市場規模の予測、業界別の予測を参考にして、ぜひ新しいビジネス戦略を考えてみてください。
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