顧問弁護士と聞くと、企業にしか関係のないイメージがあります。しかし実際にはフリーランスでも顧問弁護士を雇っている人がいます。最近では月額数千円で雇える顧問弁護士も登場しており、費用を安く抑えて依頼しやすくなっているのです。

では顧問弁護士はどのような場合に必要でしょうか。フリーランスに顧問弁護士が必要な理由とその選び方について解説します。

顧問弁護士はフリーランスに必要?

フリーランスに顧問弁護士がいることで役立つのは、主に契約書に関するチェックとトラブル対応です。フリーランスの場合、企業の依頼を受けるのが一般的です。その際に契約書が正しく書かれているのかのチェックを、自分でしなければなりません。

ただ金額面のところはチェックしますが、それ以外のところまで確認しないことも多いです。それで問題になることは少ないのですが、後でチェックすると契約期間が1か月になっていたり、支払いの仕方が間違っていることもあります。

私の場合、たまたま契約書を弁護士に見てもらう機会があり、「あなたが言っている業務内容と契約書が違いますよ」と指摘してもらいました。それを依頼企業に伝えたところ、企業側のミスだと分かり、契約書を修正してもらったことがあります。

企業側としても意図せず間違いをしてしまうことがあります。間違いがあるという前提で契約書を見る必要があるわけです。また契約書だけでなく、支払いのトラブルもあります。私の場合だと、支払いをせずに連絡のとれなくなる依頼者がいました。

法人だったので信用していたのですが、1人でやっている法人だったようで、「すみません、支払いができません」と連絡が来た後、音信不通になってしまったのです。それほど大きな金額ではなかったのですが、連絡がつかないので泣き寝入りです。

こうした支払いトラブルは頻繁にあるわけではありませんが、フリーランスを続けていくと、少なからず出会う可能性はあります。弁護士に相談すると、支払いトラブルが起こった際の手順について教えてくれます。

そのため問題解決のために必要な手順や費用について理解できます。また代理人として交渉を依頼することもできます。支払いトラブルに対処するために、顧問弁護士を雇っておくことも選択肢のひとつでしょう。

フリーランスに顧問弁護士がいると役立つ事例

先ほど私のトラブルについて述べましたが、改めてフリーランスに顧問弁護士がいると役立つ事例を3つ紹介します。

契約書のチェック

契約書は契約において双方が締結する契約事項が明記されています。そのため、契約書の内容をチェックせずに契約し、後から契約書と業務内容が違うと訴えても認めてもらえる見込みは少ないです。顧問弁護士がいれば、契約をする前にリーガルチェックをしてもらえます。

リーガルチェックに慣れている弁護士であれば、契約書のどの部分で不備が多いのか、どのような条項が入っていると不利になるのかなどの知識があります。そのため契約書の不備をすぐに指摘してくれるわけです。

また業務を行う際に入れて欲しい要望もあるでしょう。そうした要望を契約書に盛り込みたい場合も、弁護士がいれば容易です。どのような契約条項にすればいいか、考えてもらえます。

またあらかじめ契約書からトラブルを想定し、そのトラブルを防ぐための条項を盛り込むことも可能です。このように顧問弁護士がいることで、トラブルを防ぎ、業務を円滑に勧めやすくなるわけです。

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契約内容が守られないとき

契約書をしっかりと結んでいるにも関わらず、契約内容を守らないという企業もあります。そうした場合も法的にどのような対処ができるのか、相談に乗ってもらえます。例えば契約した内容以外の業務を依頼された場合。

それは契約内容と違うわけですが、口頭で同意してしまうこともあります。契約に関することを口頭で済ませてしまうと、思わぬトラブルを招きかねません。本来は新たに契約書を結び直す必要があるわけです。

こうした点も顧問弁護士であれば相談出来ます。気軽に相談できるのが顧問弁護士の良さなのです。

支払いが遅れたり払われなかったとき

企業が相手の契約であっても支払いの遅れることがあります。また支払い金額が間違っていることも起こるのです。私も支払い金額が間違っていて、先方に話をしたことがあります。その企業の場合は単純なミスだったのですが、意図的に行う会社も中にはあります。

他にも支払い期限になってもなかなかお金の支払われないことがあるわけです。そうした場合に顧問弁護士がいると、どうすればいいのかの相談が出来ます。知人のプログラマーは顧問弁護士に相談し、このまましばらく支払いがなければどうするか相談していました。

具体的にはまず内容証明を送ること。しかしこれは法的な効力はないということで、次に裁判所からの支払督促になるということでした。こうしたやり取りをした場合、相手企業との取引は終わりになるので、慎重に相談しながら一緒にやっていくことになったようです。

最終的には支払いがなされたようですが、その間に法的な対策を考えられたため、心強かったようです。

パワハラやセクハラ

2019年に実施された「フリーランス・芸能関係者へのハラスメント実態アンケート」によれば、「約62%がパワハラ被害、約37%がセクハラ被害を受けた経験がある」と回答しています。このようにパワハラやセクハラは会社員だけの問題ではなく、フリーランスに対しても行われているわけです。

こうした事態に対して、フリーランスが個人で対処するのは大変です。しかも取引先とトラブルはなるべく起こしたくありません。そうした際に顧問弁護士がいると法的に対処しやすくなります。

顧問弁護士の選び方

最近ではフリーランス向けの顧問弁護士サービスが増えてきているため、選び方が重要になっています。ではどのような点に注意して顧問弁護士を選べばよいでしょうか。ここでは顧問弁護士の選び方について解説します。

連絡がすぐに取れるか・予約無しで打ち合わせ可能か

法的なトラブルは突然起こることが多いです。その際に連絡がすぐに取れ、予約をしなくても打ち合わせができるかどうか非常に重要です。一般的に弁護士に相談する場合は、弁護士を探して予約。その上で弁護士事務所を訪問して相談しなければなりません。

電話で簡単に相談に応じてくれる人もいますが、まだ少数です。一方、顧問弁護士であればいつでもすぐに連絡出来ます。とりあえず弁護士に相談することも出来ますし、今後のトラブル対策を立てることも可能なのです。

こうした法的な相談は、常に発生するわけではないので、その都度相談すればいいだろうと思いがちです。しかし顧問弁護士を雇っている知人は、何か起きた時にすぐに相談できるので安心だと言っていました。

取引先と問題が起こると、精神的にもかなり追い詰められます。そうした時に真っ先に相談できる弁護士がいるのは、大変心強いようです。

あなたの事業を理解しているか

個人を相手にしているのか、企業を相手にしているのかも弁護士によって違います。例えば個人の離婚問題などを主に扱っている弁護士に、企業相手のトラブルの解決を依頼してもうまくいかないでしょう。

フリーランスの場合、企業相手とのトラブルが、発生する可能性が高いです。その為企業を相手にしたトラブルを、多く解決してきた顧問弁護士を選ぶのが得策です。

また弁護士であっても得意な分野と不得意な分野があります。例えば知的財産や特許に関する分野は、専門的に扱っていないと分からないことが多いです。フリーランスで知財や特許を扱うことが多い分野であれば、専門の弁護士を選ぶ必要があります。

そのため自分と同業のフリーランス、もしくは企業の顧問弁護士として活躍している人が最適です。どのような業種のフリーランスや企業と顧問契約をしているのか聞いてみましょう。

費用は適切かどうか

顧問弁護士の費用は様々でタイトルでも書いているように、月数千円のサービスも登場しています。一般的に顧問弁護士の相場は日本弁護士連合会のホームページによると、3万~5万円です。

例えば月に1、2回の相談であれば3万円、週に1、2回程度なら5万円という区別をしているところもあります。知人のプログラマーは月に3万円でお願いしていると言っていました。契約書の件や費用未払いの件で相談することがありますが、月に多い時もあれば全く相談しないときもあるようです。

相場よりも安い顧問弁護士も利用出来ますが、費用が安いとそれだけサービスの質も落ちます。相談の回数も柔軟に対応してくれる平均的な費用の顧問弁護士を雇うべきです。

説明は分かりやすいかどうか・相性が合うか

弁護士は法的知識はありますが、専門用語を多く使って、相談者がなかなか理解できない場合もあります。それでは顧問弁護士として選べません。

顧問弁護士として長く付き合うわけですから、説明が分かりやすい弁護士に依頼すべきです。説明が分かりやすいかどうかは、話してみなければわかりません。無料の法律相談を利用するなどして、実際に弁護士と話してみましょう。

知人のプログラマーは税理士から紹介された弁護士に、顧問弁護士をお願いしています。トラブルに対して親身になって相談してくれますし、契約書もしっかりとチェックしてくれるそうです。

弁護士も人間ですので、合う合わないがあります。説明が分かりやすく、自分と相性が合う顧問弁護士を選びましょう。

フリーランスのトラブル案件に携わった経験があるか

顧問弁護士と言えば、企業に雇われるのが一般的です。しかし企業とフリーランスでは案件の規模も扱う内容も違います。企業と違って、フリーランスはトラブルになれば、個人で責任をとらなければなりません。

そうしたフリーランスの立場を理解して、親身になって対応してくれるかは、フリーランスのトラブル案件に関わっていないとなかなか難しいでしょう。フリーランスのトラブルに関わったことがあるかどうか、確認してから依頼するようにしましょう。

顧問弁護士を雇うタイミングは?

フリーランスが顧問弁護士を雇うタイミングとしては、以下の4つが考えられます。

事業を始める時・法人化する時

これから事業を始める時や法人化して新たに会社としてスタートする際が、顧問弁護士を雇うタイミングです。契約書についてリーガルチェックをしてもらうことで、トラブルが避けられます。

また知財や特許に関する事業など法的にトラブルが予想される場合は、顧問弁護士がいると安心です。顧問弁護士とあらかじめ起こりうるトラブルを予見でき、対策を講じられるからです。

フリーランスがスタート時点で躓いてしまうと、後まで尾を引いてしまいます。安心して事業をスタートするためにも、顧問弁護士を雇うことについて検討しても良いでしょう。

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トラブルが発生した時

先ほどから述べている通り、フリーランスは契約や支払いについてトラブルが発生することがあります。そうしたトラブルをひとりで解決するのは大変です。特に支払いが遅れてしまっていたり、払われなかったりした時に、弁護士の力は必要になります。

トラブル案件を解決するために一度だけ弁護士に依頼することも出来ますが、そうしたトラブルは1度切りとは限りません。その為トラブル発生を機に、顧問弁護士として依頼するのも選択肢のひとつです。

顧問弁護士であれば、トラブルが起きた後の対応だけでなく、どうすれば同じトラブルが防げるかの対策も一緒に考えられます。

大手企業と取引をする時

フリーランスで大手企業と取引をする場合、対等に意見を交換して契約するのが難しいことがあります。その為対等に契約をするために、顧問弁護士の力は有効です。契約書についてのリーガルチェックなど、大手企業に対してフリーランスの利益を守ってくれます。

法的にしっかりとした契約書を結んでおかないと、権利を大手企業にとられてしまったり、一方的に契約を打ち切られたりすることがあります。またそうしたトラブルが起こっても、個人であれば泣き寝入りするしかないでしょう。

大手企業との仕事が決まったタイミングで、長く業務を継続するために顧問弁護士に依頼するのも良いでしょう。

普段から弁護士との繋がりは持っておこう!

ここまで顧問弁護士を雇う意味と選び方、選ぶタイミングについて解説してきました。顧問弁護士を雇うにはコストも掛かりますし、常に必要なわけでありません。しかし法的なトラブルに個人で対処することを考えれば、顧問弁護士がいることで安心して仕事に打ち込めます。

顧問弁護士はネットでも探せますし、知人から紹介してもらえます。また交流会などでも弁護士と知り合う機会はあるでしょう。法的なトラブルを抱えていないと、弁護士と知り合っても繋がりを持ち続けようとは思わないかもしれません。

しかし先ほどから述べている通り、いつ自分がトラブルの当事者になるか分かりません。その際に弁護士との繋がりがあると、相談も出来ますし、その後、顧問弁護士を依頼することも可能です。

弁護士同士の繋がりもあるため、自分が得意でない業種の場合は、詳しい弁護士を紹介してくれます。フリーランスで仕事をしていくためにも、弁護士との繋がりは持ち続けるようにしましょう。

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