医療経営コンサルタントに関連する民間資格は、医業経営コンサルタントや医療経営士があります。医師や看護師、薬剤師、医療事務などの資格と比べると馴染みがなく、どのような資格なのか分からない人も居るでしょう。

今回は医療経営コンサルタントに関連する3つの資格を紹介し、取得するメリットや資格以外に必要なスキルについて解説しています。医療経営コンサルタントの資格について知りたい方は参考にしてください。

医療経営コンサルタントとは

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医療経営コンサルタントとは、病院や医療法人などの開業や経営をコンサルティングする職業を指します。

病院の経営者や勤めている医師は、医療の専門家ですが、経営には疎いこともあります。

医療機関も赤字状態では、経営が立ち行かなくなるでしょう。しかし、採算が悪い診療科目でも、抱えている患者や地域医療の観点から安易に切り捨てられません。

こうした医療機関ならではの問題を解決できるよう、医療経営に特化したプロに相談するケースがあるのです。

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医療経営コンサルタントに関連する3つの資格

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医療経営コンサルタントには、必須資格がありません。しかし、医療経営の分野に関わる認定資格として、次の3種類が存在しています。

名称医業経営コンサルタント情報化認定コンサルタント医療経営士
実施機関日本医業経営コンサルタント協会日本医業経営コンサルタント協会日本医療経営実践協会
取得方法指定講座を受講後、1次試験・2次試験に合格し、協会加入した上で登録を受ける医業経営コンサルタントに登録された上で1次試験・2次試験に合格して登録を受ける3級~1級まであり、それぞれ所定の試験に合格後、協会加入して登録を受ける

いずれも所定の試験に合格し、協会に加入した上で登録される資格であり、取得していない人はその名称を名乗れません。

医療に関する知識や課題解決能力が問われる内容となっており、取得していると医療機関からの信頼が高まるでしょう。資格の更新の際に所定の研修を受けたり課題を提出したりといった条件もあり、学習機会にもなります。

受験費用や協会加入の会費負担がありますが、これらのメリットを考え、取得するのもよいでしょう。

医業経営コンサルタント

医業経営コンサルタントは、医療機関の経営状況を調査し、経営管理や経営戦略を支援するコンサルタントのための資格試験です。国家資格ではありませんが、実施している日本医業経営コンサルタント協会は、内閣府から公益社団法人として認定されています。

この資格を名乗るには、試験は指定講座を受講し、1次試験・2次試験に合格し、認定登録される必要があります。また、認定後も定期的な研修が義務づけられている資格です。

資格を認定された状態を保つには、毎年の年会費負担や、更新時に必要な履修時間を満たすための受講料負担があります。

 内容など費用
指定講座テキストとDVDの講義を視聴して自習受講料50,000円
1次試験(毎年9月) 小論文・マークシート試験受験料10,000円
2次試験(毎年1月・7月)論文審査受験料15,000円
資格認定(毎年4月・10月)1次試験・2次試験に合格し、協会加入した上で申請初回登録料80,000円年会費120,000円
継続研修所定の登録期間中に定められた時間数の研修を履修
更新1回目・2回目は3年間、3回目以降は4年間が登録期間
履修時間は3回目までが100時間、4回目80時間、5回目以降60時間
受講料0円~3,000円
認定登録更新指定の継続研修を履修した上で更新申請更新料5,000円

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情報化認定コンサルタント

情報化認定コンサルタントは、医業経営コンサルタントと同じく、日本医業経営コンサルタント協会による資格です。医療機関の情報化を経営戦略に役立てるための資格として誕生しました。

受験するには、医業経営コンサルタントの資格を持っていることが条件となり、1次試験・2次試験の合格後、認定登録されます。

試験では、医療機関に導入するシステムや開発ベンダーの選定、どのようにして情報化を進め現場に導入するかなど、計画を立てて実行する知識や能力が問われます。

医療機関の経営者や医師、看護師をはじめとする医療従事者と、システム開発者の窓口となり、効果的な情報化を推進するのが目的です。医療機関の経営だけでなく、ITコンサルタントやDXコンサルタントのような役割も担う存在となれるでしょう。

試験実施時期や受験料などの情報は、一般公開されていません。これは、現在認定登録を受けている医業経営コンサルタントが約2,750人(2021年3月時点)であり、受験対象者が限られているためでしょう。

医療経営に携わるコンサルタントとして、この資格に興味があるなら、まずは受験条件となる医業経営コンサルタントに合格し、認定登録を目指しましょう。

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医療経営士

医療経営士は、医療機関のマネジメントに必要となる経営と医療の知識、課題解決能力を持った人を判定する認定登録資格です。一般社団法人日本医療経営実践協会が実施しており、3級~1級に分かれています。

3級試験に合格すると合格証明書が交付され、合格者として名簿に登録されますが、認定審査を受けて登録されていないと「医療経営士」を名乗れません。

認定審査は3級試験に合格すると共に、協会加入する必要があります。協会への加入には登録料10,000円、年会費10,000円を支払い、所定の申請書、誓約書、履歴書を送付します。審査に通過すると認定証が交付され、医療経営士を名乗ったり、名刺に資格を記載したりが可能です。

2級を受験するには3級の試験に、1級を受験するには2級の試験に合格し、いずれも協会加入が登録条件となります。級を飛ばして2級から・1級からの受験はできません。上位の級に合格後、等級変更登録すると新しい認定証が交付されます。

なお、医療経営士の資格は3年ごとの更新があり、更新料10,300円の納付と申請書類の提出が必要です。また、2級・1級の更新では、指定された論文発表や演題発表、活動レポートなどの課題提出もあります。

 実施時期試験方法受験料
医療経営士3級6月・10月・2月マークシートによる5択(80分・50問)9,100円
医療経営士2級6月・10月第1分野・第2分野に分かれたマークシートによる5択(各80分・50問)分野受験14,000円
両分野受験16,000円
医療経営士1級1次試験9月2次試験12月1次試験は短文記述・論文記述(各90分)
2次試験は口頭試問(プレゼン)と個人面接(両試験合わせて20分)
50,000円

医療経営コンサルタントが関連資格を取得するメリット・デメリット

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資格取得には試験対策のための学習時間や費用負担があるので、やみくもに受ければ良いわけではありません。資格取得のメリット・デメリットを知って、自分に必要であるかを考えて挑戦しましょう。

メリット1:一定の知識や能力を証明できる

医療経営コンサルタント向けの資格はいずれも民間資格ですが、合格して認定登録されるには一定の能力が必要です。試験に合格して認定登録されないと名乗れないため、自分のPR材料として活用できます。

合格に向けての学習でも、医療経営に必要な知識を確認でき、自身のスキルアップになるでしょう。

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メリット2:他者との差別化を図るポイントになる

登録者数が多くない資格は、他者との差別化ポイントにしやすい傾向があります。

その資格を手に入れるため、どのようなことを学び、どんな能力の証明になるのかを伝えられれば、宣伝材料として使えるでしょう。

メリット3:有資格者同士の繋がりを作れる

医業経営コンサルタントも医療経営士も、登録から所定の期間が過ぎると更新が必要です。その際、研修を受けたり課題を提出したりといった条件があるため、同じ資格を持った人と関わる機会にもなります。

研修受講によって知識をアップデートするだけでなく、医療分野の情報交換や同業者同士の人脈作りにも役立つでしょう。

デメリット1:受験費用や更新費用がかかる

受験費用や資格登録、更新には費用がかかります。

試験合格後に認定登録されるには、協会への加入が条件となっているため、資格の維持には年会費負担が毎年発生します。特に医業経営コンサルタントは、年会費が12万円と高額です。

協会加入によって得られる、研修や人脈拡大のメリットと合わせて、資格の要不要を考えましょう。

デメリット2:仕事の受注が保証されるわけではない

資格を持っているからといって、仕事の受注に直結するとは限りません。仕事で評価され、絶えず仕事の依頼が来る医療経営コンサルタントになるには、実績や実力が重要です。

とはいえ、資格取得のために学習する内容は、医療経営コンサルタントの仕事に役立つものです。スキルアップとPRツールとして、資格を活用しましょう。

医療経営コンサルタントに必要なスキル

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医療経営コンサルタントには、コミュニケーション能力や論理的思考能力はもちろん、医療関連の知識も欠かせません。医療分野の専門用語や診療報酬、医療制度などへの理解も深めておく必要があります。

医療分野の知識

医者や看護師ほどの知識は求められませんが、医療分野での会話に登場する専門用語は、医療経営コンサルタントも理解しておきたいところです。

医薬品や医療機器の名称、メーカー、それらが何の治療に使われるのかなどを知っておくと、分析や提案に役立つでしょう。経営者や医師との打ち合わせも進めやすくなり、スムーズな業務が可能になります。

診療報酬の知識

医療機関が受け取る診療報酬は、患者が窓口で負担する金額のほか、国の公的保険から支給される部分もあります。

また、診療報酬は医療行為ごとに国の定める点数があり、1点あたり10円として計算する方法は全国一律です。つまり、医療機関で保険適用となる医療行為は価格が決まっているため、採算を考えての変更はできません。

医療経営を考える際は診療報酬の仕組みを理解し、お金の流れの違いや、一般的なサービスを提供する企業と異なる点について留意する必要があります。

医療制度への理解

最適な提案には、医療制度への理解も不可欠です。

少子高齢社会となった日本では、医療費の増大に対して医療保険の収入が減少しており、制度の見直しも検討されています。こうした医療制度の現状や問題点を理解し、変化があった際は業務にも反映できるよう考えましょう。

医療経営コンサルタントの将来性

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病院や診療所などの医療機関は、人々の健やかな生活に欠かせない存在であり、今後も仕事がなくならない分野です。

これからの医療機関が抱える問題を解決し、安定した医療を提供するためにも、医療経営コンサルタントの存在はこれからも必要となるでしょう。

資格やスキルを生かせる医療経営コンサルタントになろう

資格やスキルを生かせる医療経営コンサルタントになろう(見出し下画像)

医療経営コンサルタントに関連する資格には、医業経営コンサルタント、情報化認定コンサルタント、医療経営士の3つが存在しています。

いずれも一定の知識や能力を証明し、差別化を図るポイントとして役立つでしょう。資格更新時の研修や課題を通じた人脈作りができるメリットもあります。

ただし、受験費用や更新費用、認定登録を受ける際に必須となる協会加入の年会費負担があり、資格を持っているからといって仕事が約束されるわけではありません。

資格で証明された知識やスキルを生かせるよう、医療関連の知識を深め、安定した医療提供を助ける医療経営コンサルタントになりましょう。

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