少子高齢化や小学校教育におけるプログラミング学習の導入など、絶えず大きな変化の中にある教育業界。さまざまな課題を解決するために、近年注目されているのが「教育コンサルタント」です。

本記事では、教育コンサルタントの業務内容、仕事のやりがい、求められるスキルや資格について説明します。教育コンサルタントを目指している方は、ぜひ参考にしてください。

教育コンサルタントとは

教育コンサルタントとは、教育に関する課題を抱えたクライアントに対し、専門知識を活かして指導やアドバイスをする仕事です。

クライアントによって抱えている課題はさまざま。教育業界における最大の問題は少子化で、私立学校や大学などでは生徒の確保が大きな課題となっています。しかしその一方で、1人当たりの教育費の増加により学習塾や幼児教育の市場規模は拡大傾向にあり、業務の拡充が求められています。

近年はコンサルタントを導入する企業も増えていることから、教育コンサルタントが活躍する場がますます広がっています。

いずれの分野の仕事においても、共通しているのは教育コンサルタントが教育の発展に貢献できる仕事だということ。教育事業の専門家として教育コンサルタントが果たす社会的役割はとても大きいと言えます。

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教育コンサルタントの業務内容

教育コンサルタントの仕事は、クライアント対象によって大きく以下の2つに分かれます。

  • 教育機関を対象としたコンサルティング業務
  • 個人学習者を対象としたコンサルティング業務

順番に説明します。

教育機関を対象としたコンサルティング業務

教育コンサルタントが対象とする教育機関は、保育施設、学校法人、大学、予備校、語学学校、民間スクールなど、広範囲に及びます。教育コンサルタントは、これらの機関が抱えるあらゆる経営上の課題について、解決策の立案から実践、アフターフォローまでを担当します。

業務内容は大きく以下の4つがあげられます。

経営支援

クライアントが抱えるさまざまな課題をヒアリングし、経営全般、経営管理(財務、人事・組織管理など)、経営企画(経営戦略など)に関わるコンサルティングを行います。少子化の影響で学校法人においては統廃合なども増えていることから、時にクライアントの将来性に大きく関わる重大な提案をする場合もあります。

経営に関わるためには、教育基本法や学校教育法などの関連法律だけではなく、大学設置基準や学校法人会計基準などの法令にも精通していなくてはなりません。

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集客支援

少子化の波を受け、生徒の集客を課題としている教育機関も多々あります。教育コンサルタントは、どのような生徒に入学してほしいか、その教育機関の特色をどのようにブランディングするか、どのように生徒や保護者にアピールするかといった問題をサポートします。例えば、広報宣伝、集客ホームページ作成、体験授業や学校説明会の実施などの支援を行います。

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教育力支援

魅力的で信頼される教育機関にするためには、教育力を高める必要があります。教育コンサルタントは、年間の授業プログラムの設定、効果的な学習方法に関する支援、受験指導、教員向けの授業研修の実施などをサポート。生徒・保護者とのコミュニケーション術などの研修支援も行い、良好な人間関係を構築する点にも注力します。

IT環境の支援

教育コンサルタントは主にIT環境の設備に関するサポートを行います。具体的には、ITシステム導入支援、情報セキュリティ体制の構築、基幹業務システムの構築など。

教育分野はデジタル化への対応の遅れが指摘されており、地域間での格差も見られます。そのため、国も教育分野でのICT化を強く推進しています。IT関連のスキルは今後ますます求められるでしょう。

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個人学習者を対象にしたコンサルティング業務

個人を対象に支援をおこなうため、コンサルティング内容はさまざまです。

例えば、大学受験生向けのコンサルティングでは、個人のレベルに合わせ学習計画を立て進捗管理を行います。地方と都市部の受験に関する情報格差是正のために、オンラインでコンサルティングを実施する企業も。

また、不登校の子供向けのコンサルティングでは、学習や進路の支援だけではなく、カウンセラーとしての役割も果たしています。具体的には、本人の心のケア、家族のサポート、学校環境の調整などです。

学習者を目標達成に導く計画力やコーチング力、こどもの気持ちに寄り添うカウンセリング力などが必要とされています。

教育コンサルタントのやりがい

教育コンサルタントの仕事は厳しくプレッシャーの多い仕事ではあるものの、プロフェッショナルとしてクライアントの課題解決を期待される存在です。

ここでは、教育コンサルタントのやりがいについて紹介します。

自分のスキルを活かしクライアントの課題を解決できる

クライアントによって置かれている状況が異なるため、教育コンサルタントが解決すべき課題は多岐にわたります。時に複雑で難易度の高い課題に対し、自分がこれまで培ってきたスキルや知識を活かして課題を解決し、クライアントに貢献できることがコンサルタントの醍醐味です。「あなたに頼んでよかった」という言葉には達成感を感じるでしょう。

チームで成し遂げる充足感がある

コンサルタントはプロジェクトチームを組んで仕事を進めることが多くあります。コンサルティング会社では中途採用も多いため、多種多様な職歴を持ったメンバーが集まります。さまざまなバックグラウンドを持つメンバーと協力し同じ目標を達成するという、コンサルタントならではの充足感があります。

教育業界への発展に貢献できる

英語学習やプログラミング学習、アクティブラーニングの導入など、生徒が習得すべき内容は年々増えています。教育コンサルタントはそのような環境の変化にいち早く対応することで、より良い教育環境の創造に貢献できます。コンサルティング対象が教育機関であるか個人学習者であるかにかかわらず、未来の社会を担う人材の育成に貢献できるやりがいを感じられる仕事です。

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教育コンサルタントになるには?

ここでは、教育コンサルタントになる方法について解説します。

まずはコンサルティング会社へ就職する

コンサルティング会社へ就職する方法には、新卒採用と中途採用があります。会社によって得意としている事業が異なるので、教育事業に力を入れている会社を選びましょう。新卒採用と中途採用では試験日程やプロセスが異なるため、常に最新情報をチェックすることが肝心です。

コンサルタントにはフリーランスとして働く道もありますが、実績がなければ案件の獲得は難しいのが現状です。まずは、コンサルティング会社で経験を積むことが優先されます。

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未経験でもコンサルタントへの転職はできる

コンサルティング会社では、優秀な人材を確保するため未経験者の採用も積極的に行っています。

近年は教育コンサルタントがカバーする業務範囲は広く、分野によってはクライアントから高い専門性を要求される場合があります。そのため、中途採用ではコンサルタントとしての適性のほか、前職での経験や知見も重要視される傾向にあります。

コンサルティング会社によりますが、教育業界での就労経験や、法人提案営業、マーケティング、ITシステム導入などの経験があれば優遇されやすいでしょう。

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教育コンサルタントに求められるスキルは?

教育コンサルタントに求められるスキルにはどのようなものがあるでしょうか。職務内容によりさまざまですが、ここでは主に以下の3つについて解説します。

  • 論理的思考力
  • コミュニケーション能力
  • 好奇心・高い学習意欲

論理的思考力

情報収集や分析、解決策の立案、プレゼンテーションやディスカッションなど、論理的思考力はコンサルティング業務のさまざまな場面で必要とされる考え方です。

情報収集や分析業務を例にとってみましょう。教育業界では、経営者、職員、生徒、保護者などさまざまな立場の人の問題が絡み合っている場合があります。それぞれ点在している情報を整理し、関係性を論理的に組み立てることができれば、効率よくクライアントの課題を把握できます。

コンサルタントの仕事は決められた期間の中で成果を出すことが求められます。事実を客観的に分析し組み立てられる論理的思考力があれば、教育コンサルタントとしての大きな武器になるでしょう。

コミュニケーション能力

コミュニケーション能力は、コンサルティング業務の遂行に欠かせない能力です。いくら論理的に考える力があったとしても、クライアントが求めていることを正確に聞き取ったり、こちらの意図を的確に伝えたりできなければ意味がありません。そのため、コンサルティング業務においては、ヒアリング力やプレゼンテーション力などのコミュニケーション能力が求められています。

また、業務関係者と良好な人間関係を築くためにもコミュニケーション能力は必須です。教育分野でのコンサルティングでは、生徒や教員、組織のトップなど、意見やバックグラウンドが異なる人と協力していく必要があります。仕事を円滑に進めるためにも、信頼関係を構築する手段となるコミュニケーション能力が求められます。

好奇心・高い学習意欲

教育コンサルタントは、クライアントの将来の方向性を決める経営戦略に関わることがしばしばあります。そのため、課題の解決のためには、クライアントに対する深い企業理解や業務に関わる幅広い知識が求められます。企業の理念や事業に対する好奇心や高い学習意欲をもっていなければ、クライアントを満足させるような結果にはたどり着けないでしょう。

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教育コンサルタントに役立つ資格は?

教育コンサルタントとして働くうえで必須となる資格はありませんが、資格によってはコンサルティング業務に活かせる可能性があります。

ここでは、教育業界で環境整備が進んでいるICT化に関連する資格について説明します。教育現場におけるICT化推進は、ただシステムを導入するだけにはとどまりません。ICT活用ビジョンの共有、導入システムの策定、環境の整備、マニュアルの作成、研修の実施、授業支援など、幅広いサポートを行います。資格の学習を進める中で、ICT化の実現に必要とされる視点も学ぶことができるでしょう。

また、コンサルティング会社によっては経営や財務分野などでの資格や経験が求められる場合があります。コンサルタント業務全般に役立つ資格については以下の記事に詳しく記載しているため、ぜひ参考にしてください。

ITコーディネーター(ITC)試験

ITコーディネーター試験は、経営分野におけるIT技術活用に向けた人材育成のため、2001年から運用が始まりました。NPO法人組織のITコーディネータ協会が主催しており、学校教育においては、オンライン授業に必要な環境整備やデジタル教材の導入などを支援することが期待されています。

教育情報化コーディネータ(ITCE)検定

教育現場における情報化のコーディネート能力を証明する制度です。教育情報化コーディネータ認定委員会が主催しています。ITC化の推進を図るという目的は同じですが、ITコーディネーター(ITC)試験は企業経営全体に対応した試験内容、教育情報化コーディネータ(ITCE)検定は教育分野に特化した試験内容になっています。

ICT支援員

教育機関におけるICT化のサポートができる人材かどうかを認定する試験です。教育情報化コーディネータ認定委員会が主催しています。PCやその他周辺機器の使い方について教員や生徒に実務的な指導をし、情報化推進をサポートします。教育現場でのICT活用には地域間で差異が生じていることから、ICT支援員の活躍が期待されています。

未来を担う人材を育てるサポートをする仕事

今回は、教育コンサルタントの仕事内容、やりがい、求められるスキルや資格について説明しました。

教育業界は少子化という大きな波の中にありながらも、幼児教育やeラーニングの拡充、ICT化の推進など、解決すべき多くの課題を抱えています。

教育コンサルタントは、課題の解決を通じ、未来を担う人材を育てるサポートができる仕事です。この記事を参考に、教育コンサルタントという職業への理解を深め、今後のキャリアの参考にしてください。