一般社団法人クリエイターエコノミー協会は、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社と共同で国内のクリエイターエコノミーに関する調査を実施し、結果を公表した。

発展を続けるクリエイターエコノミー

近年、クリエイターの活躍が大きく広がり、経済にも影響を与えている。子どものなりたい職業としても人気のYoutuberや、自身が創作した文章や写真、イラストなどを発信するのがクリエイターである。また、クリエイターが円滑に活動を行うためのマネジメントやオペレーションをサポートするサービスも次々と登場している。これらの経済圏は「クリエイターエコノミー」と呼ばれ、2021年に一般社団法人クリエイターエコノミー協会が設立された。

政府が閣議決定した骨太方針に「クリエイターの創作活動の支援」が盛り込まれるなど、クリエイターエコノミーのさらなる成長が予想される。

発展を続けるクリエイターエコノミーだが、その実態は明らかになっていなかったため、「国内クリエイターエコノミーに関する調査」が2022年4月から9月にかけて行われた。

市場規模1.3兆円超の背景は

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

国内クリエイターエコノミーの市場規模が1兆3,574億円であることが、今回の調査で明らかになった。これは、世界の推計市場規模の約1割に相当するといわれている。

プラットフォームや収益化の方法が多様化し、クリエイターが個人のスキルや生活スタイルに合わせた活動を行いやすくなったことが市場拡大の要因のひとつになったようだ。また、政府の働き方改革の一環として、多様な働き方を推進する動きがあり、副業でクリエイター活動を行う人が増加したと考えられる。コロナ禍での在宅勤務などにより、個人が自由に使える時間が増加。クリエイターとしては活動を開始する契機となり、視聴者・消費者にとっては視聴や消費の量が増加することに繋がったことも、市場拡大を後押ししたと考えられる。

クリエイターの活動に変化

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

クリエイターが注目され始めた初期は、コンテンツを視聴する際に表示される広告によって収益をあげるケースが多かった。しかし、近年では収益モデルが多様化してきているのだ。

コンテンツや製作物、スキルなどをクリエイターが販売できるプラットフォームの登場に加え、クリエイターが個人でも簡単にサブスクリプションを提供できるサービス、ファンと交流できるコミュニティサービスも登場。これらの登場によって、クリエイターとファンとの関係性にも変化が出てきている。

クリエイターが複数の形態のコンテンツを発信することで視聴者や消費者との距離を縮め、ファンを獲得していく。ファンを獲得することによって、必ずしも幅広い消費者の関心を集める必要はない。これまでのオンライン活動をきっかけにして書籍の出版やブランドの立ち上げなどを行い自身のファンを増やしていくケースも見られるようになった。

コンテンツなどへの「対価」だけではなくクリエイター個人への「サポート」としても収入を得られるような仕組みが構築されてきている。

クリエイターの収入

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

クリエイターのうち、クリエイター活動を通して収益を得ている人は約6割だ。ここでは、クリエイター活動のプラットフォームにモノやコンテンツを提供したことがある人をクリエイターとしている。収入を得ていないクリエイターを含めて算出した月の平均収入は12.8万円だった。約2%とはいえ月に100万円以上の収入を得るクリエイターもいる。

出典:三菱UFJリサーチ&コンサルティング

上の表は、専業/兼業別のクリエイターの収入有無を表している。クリエイター活動を専業とする人の半数近くは月に20万円以上の収入を得ており、生計を立てるのに十分な収入を得ているクリエイターが相当数いることがわかる。また、副業や趣味でも月に数万円程度の収入を得ている人が一定数存在している。

25%が誹謗中傷を経験|トータルサポートのニーズが高まる

調査によると、4人に1人の割合で誹謗中傷を受けた経験がある。しかし、そのうちの約7割は何も対処をしていない。今後も誹謗中傷の問題に悩むクリエイターは増えていく可能性があり、行政との連携もふまえた業界やプラットフォームでの対処が必要になってくる。

クリエイターが抱える課題としては、収益化や資金獲得に関するものも多いが、企業相手の交渉やトラブル対応、法律や税金に関わることなども課題となっている。コンテンツの製作以外の課題へもアプローチできるクリエイターへのトータルサポートや対応方法のレクチャーのニーズが高まるだろうとしている。

会社概要

  • 会社名:一般社団法人クリエイターエコノミー協会(Creator Economy Association)
  • 会社解説:「クリエイターが活動しやすい社会環境をつくり、その自由かつ安全な活動を促進する」をミッションに、クリエイターエコノミーの普及・促進とその活性化に向けた様々なアクションを実施
  • 設立年月:2021年8月
  • URL: https://creator-economy.jp/