ポイント付与キャンペーンが実施され、2022年9月末時点でのマイナンバーカード交付率は50%近くになっています。2015年10月に番号通知が始まった頃より、マイナンバーの存在が身近になっているのではないでしょうか。

そして、フリーランスで働く人も仕事でマイナンバーを使う場面があります。

今回はフリーランスがマイナンバーを使う場面と、取り扱い時の注意点を解説。自分のマイナンバーも、必要があって取得した他者のマイナンバーも、正しく扱えるようなりしましょう。

参考:マイナンバーカードの市区町村別交付枚数等について(令和4年9月末時点)|総務省

そもそも「マイナンバー」とは?

マイナンバーは、日本に住民票のある人に与えられる12桁の番号です。2015年10月から各自に通知され、2016年1月より制度としてスタートしました。

マイナンバーが導入されたのは社会保障や税金、災害対策時の行政手続きなどを簡素化させ、利便性を高めるのが目的です。各種手続きを効率よく行えるようになれば行政サービスの質が上がり、日常生活でも便利になるとされています。

制度としてスタートした2016年度分からは、確定申告書へのマイナンバー記載が必要になりました。また、経営者は税金や社会保険手続きのため、従業員のマイナンバーを取得・保管する義務があります。

参考:マイナンバー(個人番号)制度|デジタル庁
参考:マイナンバー(個人番号)ハンドブック (平成31年3月)|個人情報保護委員会

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マイナンバーカード

マイナンバーは2015年10月より通知カードによって各自に知らされ、2016年1月からは身分証明書として使える、マイナンバーカードの交付が始まりました。マイナンバーカードは顔写真入りで住所氏名なども記載され、本人確認書類として使えます。

マイナンバーカードの交付を受けなくても、通知カードがあればマイナンバーの提示は可能です。ただし、通知カードは本人確認書類にならないため、免許証やパスポートなども提示する必要があります。一方、マイナンバーカードは本人確認書類にもなるので、別途証明書を用意しなくてもマイナンバーを提示できます。

マイナンバーカードがあれば、金融機関での口座開設やパスポートの申請もスムーズ。パソコンやスマートフォンから確定申告が完結するe-Taxでも使われている他、今後は保険証や運転免許証としても使えるようになる予定です。

参考:通知カード|総務省
参考:マイナンバーカードの健康保険証利用について|厚生労働省

法人設立時にも活用

法人設立時には様々な書類を作成・提出しなければならず、書類ごとに提出先が異なります。

  • 法人設立届出は税務署
  • 設立登記の申請は法務局
  • 事業所等新設・廃止申告は地方公共団体
  • 約款認証は公証役場
  • 健康保険・厚生年金の新規適用届は年金事務所
  • 雇用保険の事業所設置の届出は公共職業安定所

一例として挙げたものだけでも複数の提出先があり、法人設立時の手間となる部分です。

しかし、これら法人設立時に必要な届出も、マイナンバーカードを使ってワンストップで行えるようになりました。マイナンバーとマイナンバーカードは個人の生活だけでなく、会社運営の場面でも活用されています。

参考:法人設立ワンストップサービス|マイナポータル
参考:法人設立ワンストップサービスの対象が全ての手続に拡大されました|国税庁

フリーランスがマイナンバーを扱う場面

続いて、フリーランスがマイナンバーを扱う場面を解説します。どのような時にマイナンバーの提示・取得が必要になるかを正しく理解し、適切に扱えるようにしましょう。

税務署へ書類を提出する時

税務署に提出する申請書や届出書には、マイナンバーの記載が必要です。フリーランスが確定申告や開業届を提出する際は、自身のマイナンバーを記載することになります。

また、マイナンバーが記載された書類を税務署に提出する時は、本人確認が必要です。ここでもマイナンバーカードやマイナンバーが記載された住民票の写しなどの提示・添付を求められるので、マイナンバーを扱う場面となります。

参考:番号制度に係る税務署への申請書等の提出に当たってのお願い|国税庁
参考:税務署へ提出する申告書や届出書などにはマイナンバーの記載が必要です!|国税庁
参考:本人確認に関するFAQ|国税庁

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支払調書を作成する(報酬を支払う)時

何らかの仕事を外注し、報酬を支払う立場になることもあるでしょう。この時、支払った報酬の内容や金額によっては支払調書を税務署へ提出します。支払調書には支払先のマイナンバーを記載することになっており、相手のナンバーを取得する必要があります。

支払調書の正式名称は「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」といい、事業者がどこの誰にいくら支払ったかを報告する書類です。支払調書が必要な報酬にあたるかは、国税庁のホームページにも記載があるので、確認すると良いでしょう。

参考:「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」の提出範囲と提出枚数等|国税庁

例えば顧問税理士と契約を交わし、年間5万円を超える報酬を支払っているなら、支払調書の提出範囲に該当します。

提出範囲に該当しない場合、外注先のマイナンバーは不要です。「今後必要になるかもしれないから、まえもって取得しておこう」と考えるかもしれませんが、マイナンバーは個人を特定する重要な情報であり、厳しい管理体制が求められます。必要のない時点では、安易に取得するべきではないでしょう。

報酬を受け取る時

支払調書には、支払った相手のマイナンバーを記載する必要があると前述しました。そのため、支払調書の提出範囲に該当する報酬を自分が受け取る場合、クライアントからマイナンバーを求められます。

なお、受け取る報酬が提出範囲に該当しなければ、マイナンバーを教える必要はありません。言われるまま安易に伝えるのではなく、使用目的を確認・理解した上でマイナンバーを提示しましょう。

また、業務の都合でクライアントと一時的な雇用契約を結んで報酬を受け取る場合も、マイナンバーの提出を求められます。短期間であっても給与支払時の源泉徴収や社会保険の手続きなどでマイナンバーが必要となるためです。

従業員を雇う時

  • 青色事業専従者として身内を雇う
  • 事業主として従業員を雇う

このような場合、従業員のマイナンバーを収集・管理する義務が発生します。事業者がマイナンバーを必要するのは、従業員の源泉徴収や社会保険の手続きで記載するためです。

従業員を雇って雇用契約を結んだなら、マイナンバーの利用目的を通達して、提供を求めましょう。もし、従業員が拒否する場合、事業主としてマイナンバーの収集義務があり、手続きに必要である旨を説明します。

それでも提出を拒否された場合は経緯を記録し、マイナンバーを使って手続きをする機関の指示に従います。拒否されたからとそのままにしていると、事業者としての収集義務を怠ったと見做される可能性があるので注意しましょう。

参考:民間事業者もマイナンバー(個人番号)を取り扱うのですか。(民間事業者における取扱いについて)|デジタル庁
参考:社会保障・税の手続書類へのマイナンバー(個人番号) の記載について、事業主・従業員の皆さんの ご協力をお願いします。|厚生労働省

マイナンバーを取り扱う際の注意点

マイナンバーの提示が必要な場面を理解し、取得した他者のナンバーは厳格に扱いましょう。取り扱い方法に問題があると処罰の対象となる可能性もあります。

マイナンバーの提示が必要な場面を理解する

12桁のマイナンバーは個人を特定し、税や社会保障制度などに紐付く重要な情報です。不正使用が認められない限りは同一の番号を使用し、変更できません。

マイナンバーの提示を求められたなら、利用目的を確認し、本当に必要な場面であるのかを判断できるようにしましょう。むやみに開示していると悪用され、トラブルに巻き込まれる恐れがあります。

取得したマイナンバーは適切に管理し、保管期限が過ぎれば削除する

マイナンバーは重要な情報である以上、保管する際は厳重に管理しましょう。行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律の第24条・第25条では、情報漏洩を防ぐ措置を講じ、秘密を漏らし、盗用してはならないとされています。

マイナンバーが記載された書類の取り扱いには注意を払い、誰もが閲覧可能な場所に保管してはいけません。デジタル保管する場合もセキュリティを万全にし、マイナンバーを扱うパソコンはネットワークに接続させない、専用の外部記憶媒体に保存するなどの対策が必要です。

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マイナンバーの取り扱いが不適切であると罰則を受ける

行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律では、マイナンバーを取り扱う上での罰則も定められています。

第50条では秘密を漏らしたり盗用したりすると、3年以下の懲役、もしくは150万円以下の罰金、または両方を科すとなっています。また、マイナンバーを漏洩させたとなれば、信用も失うでしょう。

参考:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律|e-eov法令検索

フリーランスもマイナンバーは適切に扱おう

フリーランスがマイナンバーを扱う場面や、取り扱い時の注意点について解説しました。

マイナンバーとマイナンバーカードは、国民生活や行政サービスを充実させるため、今後もさらなる活用が進む予定です。フリーランスとして働く中でも、マイナンバーが必要となるシーンは出てくるでしょう。

しかし、マイナンバーは個人の様々な情報と紐付く、重要な個人情報です。取り扱いを誤ればトラブルに巻き込まれたり、罰則を受けることになったりと、不利益を被ります。

必要な場面で正しく扱えるよう、マイナンバーの知識を深めておきましょう。