政府がフリーランスとして働く人たちを保護する新法の制定に着手していることがわかった。新法では、組織に属さずに働くフリーランスの人々が安心して働けるように、報酬をはじめとした仕事の内容などの詳細をきちんと明らかにすることを発注業者に義務付けることになりそうだ。

フリーランスとは、会社などの組織に属さずに自身が持っている知識や技能を活かして仕事をし、収入を得る働き方だ。システムエンジニア(SE)、デザイナー、ライターなど幅広い業種で、このような働き方を選択している。2020年に行われた実態調査によると、推計約462万人(本業約214万人、副業約248万人)が、フリーランスという形式を選択して働いていることが分かっている。

フリーランスで働くことのメリットは、会社組織に縛られないため、それぞれに合ったペースで働くことが可能なところだ。子育てや親の介護などで働くことを諦めていた人が、場所や時間を問わずに働けるフリーランスは、魅力のある働き方といえるだろう。また得意分野に特化して仕事をすることができるため、やりがいやモチベーションアップにも繋がる。

しかしフリーランスとして働くことに満足している人が多い一方で、立場が圧倒的に弱いことも事実だ。仕事を発注する発注元とのトラブルが後を絶たない現実がある。フリーランスとして働く人は、発注元と業務委託契約を結んで仕事をすることが多いが、その際に取引先とトラブルを経験したことがあると回答した人は、4割にものぼることがわかっている。

中には、所定の成果物を納品しても報酬が支払われないといったことに直面する人もおり、その場合、泣き寝入りするしか方法がないというのも少なからずある現実だ。

こうしたことを防ぐために、このたびの新法では業務委託契約を結ぶ際に、仕事の内容や報酬額、報酬の支払い期日などを書面やメールで取り交わすことを義務付ける。そして一定の期間継続して業務委託契約を結ぶ場合は、フリーランス側に非がないにもかかわらず報酬を減額したり、また納品した成果物を返品したりすることの禁止を明示する。

今回の新法は、来年の通常国会での法案提出を目指しており、成立すれば、これまでフリーランスが直面してきた問題の一部が改善されることが期待できる。

しかしフリーランスを取り巻く問題はまだまだある。業務委託契約を結んで働くフリーランスは、いわゆる事業主に雇用されて働く「労働者」に該当しないため、労働基準法の適用がなく失業手当や雇用保険、最低賃金の適用は原則として受けられない。

これに対して、労働法が専門の水町勇一郎東大教授は「どのようにセーフティーネットを広げていくか、時代背景や社会の変化を見ながら、適切に対応することが必要だ」と指摘している。

・経済産業省
・URL:https://www.meti.go.jp/