政府が推進している「フリーランス」という働き方が注目を浴びる昨今だが、2020年5月に「フリーランス実態調査結果」という報告書が発表された。これは「内閣官房日本経済再生総合事務局」(以下、内閣官房)が調査したもの。

今回は、エコノミストの浜矩子氏が、著書『人が働くのはお金のためか』(青春出版社)にて、この調査結果を解説しているので紹介したい。

まず2020年2月~3月に調査が実施された時点で、日本のフリーランス型就労者の数は、462万人だった。ただしフリーランスの定義にいろいろな考え方があり、それによって数値に幅があることがわかっている。それでもだいたい300万人強から500万人弱がフリーランスとして働いているといわれている。

この数字からすると、就労人口全体(2020年は6,670万人強)に占める割合が「約7%」で、浜氏はこれをなかなか高い数値だと指摘している。

ここで気にあるのは、フリーランスとして働いている人たちの年齢構成だ。内閣官房の調査では下記のように発表している。

29歳以下:11%
30歳以上40歳未満:17%
40歳以上50歳未満:22%
50歳以上60歳未満:20%
60歳以上:30%

60歳以上のフリーランサーが30%に達しており、各世代のトップとなったことをどうみるか。

一般的にいわゆるミレニアル世代(概ね1980年代~1990年代前半生まれ)や、Z世代(概ね1990年代後半~2010年代前半生まれ)は、一つの会社にとどまることなく次から次へと新しい環境に身を置いて働くこと(バウンダリーレス)や、特定の枠組みに合わせるのではなく、働きたい場所で働きたいように働くこと(プロテウス的)を好んでいるといわれている。

よって、フリーランスとして働く人の割合は20代が多いのかと思いきや、29歳以下に関しては11%とという低い数字にとどまった。

ここで考えたいのは、60代のフリーランスが、いつからフリーランスとして働いているのかということだ。若い時からさまざまな職場を経験してきたベテランフリーランサーかもしれないが、浜氏はその可能性は低いのでは…としている。

理由としては、現在の60代は「終身雇用」「年功序列」を大前提としていた就労環境に身を置いてきた人たちだ。そう考えると若い時からフリーランスとして働いていたというのは考えづらいのでは…と指摘。つまり60代フリーランサーたちは、定年退職したあとに、かねてから憧れていたフリーランスという働き方に転身した可能性が高いといえる。

そしてフリーランスとして働く人に、なぜフリーランスの道を選んだのか質問をすると

1位 自分の仕事のスタイルで働きたいため 57.8%
2位 働く時間や場所を自由にするため 39.7%
3位 収入を増やすため 31.7%

上記のような結果となった。残念なのは、この結果が世代別に発表されていないところなのだが、半数以上が「自分の仕事のスタイルで働きたいため」と回答している。この結果からみても「長年会社員として勤めてきたのだから、退職後は憧れのフリーランスとして自分のスタイルで働きたい!」と考える60代が多いのかもしれない。

こうしたことから、若い世代がフリーランスとして働いている率が低いのは「自分のスタイル」で働くことがまだ確立していないからでは…と浜氏は指摘している。

浜 矩子( エコノミスト・同志社大学大学院ビジネス研究科教授)