政府が、企業に所属しないで働くフリーランスや自営業の人に対し、育児で収入が減少した場合に経済的な支援を行う新たな仕組みを創設する方針を明らかにした。

2020年の時点でフリーランスは男女あわせて約462万人とされており(内閣官房の調査より)、時間や場所にとらわれず働くことができるので、子育て世代からも注目されている。

しかし企業で働く会社員は、一定の条件を満たせば休職中も育児休業給付金が支給される一方で、フリーランスには支援の仕組みがない。収入が減るという経済的な不安から出産をためらう人も少なくないという。

実際にフリーランスとして働く31歳の女性・Aさんの例をあげてみよう。

東京都内でフリーランスのライターとして働くAさんは、5年前に長女を出産。当時は大学の正規職員として働いていたため、産休・育休を取得して、約1年後に復職した。しかし将来を見据え、正規職員として働き続けるよりも柔軟な働き方ができるのでは…という考えで2年前からフリーランスとして働き始めた。

フリーランスになったことで、子どもが保育園で何かあった時にすぐに駆け付けることができる安心感があったという。その一方で、将来もう一人子どもがほしいとという希望があるものの、出産や育児で収入が減ってしまうことへの不安があり、踏み切れずにいるという。

Aさんは「仕事ができない期間は収入がゼロになってしまうので、家計の状況などを考えると結論が先送りになってしまいます。フリーランスでも雇用保険に類似するような制度ができて、払ったお金をもとに支援が受けられるようになれば安心して出産や育児に臨めると思います」と語っている。

40年前に比べると、共働き世帯は2倍以上に増えている中、相変わらず仕事と子育ての両立に悩む女性は多い。出産や育児をきっかけに退職したり、正規雇用から違う働き方に変えたりするケースも多い。中には子どもを持つことをあきらめる女性も少なくないだろう。

働き方に関わらず、仕事と子育ての両立をどのように支援していくのか。岸田総理大臣が目指す「次元の異なる少子化対策」を実現するのであれば、国は真剣に検討していく必要がありそうだ。

今回政府が、フリーランスに対して育児で収入が減ったことによる経済的な支援を検討していることを受け、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会の平田麻莉代表理事は「これまでは保険料などを払いたいという気持ちはあってもそもそも払う仕組みさえなかったので、今回制度が整備されることで無理をして産後すぐに働いていた人や2人目を諦めていた人たちが救われるのではないか。子どもと仕事をどちらも諦めずに両立できるようになる、大きな道筋だと思います。フリーランスは就労時間の長さや年収もそれぞれ多様であるということを念頭に置いて、支給対象や支給額なども会社員から見たときにも不公平とならないようにすべての働く人が納得できるような制度を目指してほしい。フリーランスだからといって出産を諦めなくてもいい、安心して子育てができる社会になってほしいです」と語っている。

出典:NHKニュース