フリーランスは会社員と違い、自分で保険を選び加入する必要があります。

「フリーランスが加入できる健康保険は?」「リスクに備える保険ってどんなものがあるの?」と不安に思う方も多いのではないでしょうか?安心してフリーランス活動を続けるためには、保険のことを知っておくことが重要です。

本記事では、フリーランスが加入できる健康保険やリスクに備える保険など、保険の基礎知識について解説します。

フリーランスが健康保険に入らないとどうなる?

フリーランスが健康保険に加入しない場合、医療費や入院費などの医療費が全額自己負担となります。健康保険に加入しないことは、突然の病気や怪我、重篤な疾患の治療によって、膨大な医療費がかかることがあるため、リスクが高いと言えます。

また、自己負担分の医療費が高額になるだけでなく、医療機関での診療を受けることができない場合も。例えば、予約制の医療機関であっても、健康保険証がない場合は受診できない場合もあります。

健康保険の加入は法律で決められた義務でもあります。加入しないと罰則が課せられるなど、費用面以外でも様々なリスクがありますので、たとえフリーランスであっても健康保険への加入は必須となります。

なお、どの種類の保険に加入したとしても全額所得控除となり、節税できるメリットがあります。フリーランスでも、国民健康保険や労働者健康保険、個人事業主向けの健康保険など、様々な種類の健康保険に加入することができますので、自分自身や家族の健康に投資することは、将来の安心にもつながります。

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フリーランスが加入できる健康保険

フリーランスが加入できる健康保険についてご紹介します。

国民健康保険

国民健康保険は、自営業者やフリーランス、パートタイム労働者など、社会保険に加入していない人が加入できる公的な健康保険制度です。

国民健康保険に加入したい場合は所轄の市区町村に申し込みますが、会社を退職して国民健康保険に切り替えるには、退職日の翌日から14日以内に届け出る必要があります。

加入条件や保険料などは、所得や年齢などによって異なり、また市区町村ごとに算出方法・金額が定められているため住んでいる地域によっても金額が変わります。フリーランスの場合は所得に応じた納付金額が計算され、事業年度の収入に基づいて翌年度に納付することになります。

会社員時代の健康保険を任意継続

任意継続健康保険は、会社員を辞めた人が直近の勤務先での健康保険を自主的に継続することができる健康保険制度です。退職後も会社員時代と同じ提携先の健康診断を受けられたり、会社の健康保険組合が提供する福利厚生が継続して利用できたりします。一方で、加入資格には一定の条件があり、主な特徴は以下の通りです。

・被保険者期間2か月以上:社会保険に過去2か月以上加入していた実績が必要です。

・最長2年:退職後、前の勤務先の健康保険に加入していられるのは2年間です。

・保険料は全額負担:会社員時代は保険料が会社と折半となっていましたが、退職後の保険料は全額が自己負担となります。

・滞納に厳しい:保険料を納付期限までに納めなかった場合、期限の翌日付で任意継続被保険者の資格を喪失します

家族の健康保険組合に扶養として入る

家族が健康保険組合に加入している場合、収入の上限など一定の基準をクリアすれば扶養家族として健康保険組合に加入することができます。ただし出産手当金や傷病手当金などはないため注意が必要です。

家族の健康保険組合に扶養として入るためには、以下の手続きが必要です。

・本人と扶養される家族の関係を証明する書類を用意する。

・扶養家族の住民票や戸籍謄本を提出する。

・扶養家族用の保険証を取得する。

これらの手続きは、所属する健康保険組合によって異なる場合がありますので、詳細は所属する健康保険組合の窓口で確認して下さい。また扶養家族の条件や制限についても確認する必要があります。

フリーランスは業界特化の保険組合に加入できることも!

業界特有の国民健康保険組合に加入することもできます。業種に特化しているため、その業種特有の健康リスクや疾患についての知見が豊富である点など、専門性が高く適切な医療サービスや保険内容の提供を受けられます。

業種に特化することで、リスク内容を限定できるため、保険料が比較的低く設定されているのも特徴です。

以下に代表例を3つご紹介します。

文芸美術国民健康保険組合

文芸美術国民健康保険組合は、主にイラストレーターや漫画家・執筆業などの個人事業主が加入の対象となる国民健康保険組合です。文芸や美術にまつわるジャンルの加盟団体に所属していることが条件となります。

保険料は組合員の収入に関わらず一律で、組合員が月額24,800円/人、家族が月額14,800円/人 です。(令和5年度の保険料予定額、正式発表は3月末)

東京都弁護士国民健康保険組合

東京都弁護士国民健康保険組合とは、弁護士国保とも呼ばれ、首都圏の指定された弁護士会に所属する弁護士や、その法律事務所に勤務する人が加入できる国民健康保険組合です。

弁護士会の所属地域は首都圏に限定されていますが、組合員の住所に関しては他の地域でも対象となる場合もあります。詳しくは組合ホームページなどでご確認下さい。

また、組合員向けに健康に関する情報提供、健康診断や健康保険制度に関する相談窓口、保養所やレジャー施設などの福利厚生サービスも受けられます。

保険料は、月額27,800円/人(介護保険賦課被保険者(40-64歳)は月額33,300円/人)、組合員の家族は月額12,000円/人(介護保険賦課被保険者(40-64歳)は月額17,500円/人)です。

東京美容国民健康保険組合

東京美容国民健康保険組合は、事業所が東京都内かつ住所が東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、山梨県にある美容師と従業員、その同一世帯家族が加入できる健康保険組合です。従業員には、美容師の免許を有しない、インターンやアシスタント、事務職の人なども含みます。

保険料は、月額19,000円/人(介護保険賦課被保険者(40-64歳)は月額22,000円/人)、従業員は月額13,500円/人(介護保険賦課被保険者(40-64歳)は月額16,500円/人)、組合員の家族は月額8,500円/人(未就学児は5,000円/人)で、事業主がまとめて納付します。

フリーランスのリスクに備える保険とは?

フリーランスは病気やけが以外にも、入院中の収入が途絶えてしまうリスクもあります。会社員であれば、病気などで入院や自宅療養をする際に有給休暇を使えば収入の不安はありません。しかし、フリーランスの場合は仕事を断って収入がなくなる上、信用を失い次の仕事ができなくなるリスクもあります。

会社員であれば、病気やけがで長期の間仕事から離れる際に生活保障の一環として健康保険から支給される傷病手当がありますが、国民健康保険では原則ありません。

万が一の事態に困らないよう、フリーランスや自営業の方は自分でこれらのリスクに備える必要があります。

以下にフリーランスが加入できる保険の例を3つご紹介します。

ITフリーランスのための労災保険特別加入

労災保険は、労働者が仕事中の事故や疾病により被った損害を補償する制度です。雇用形態にかかわらず、全ての労働者は原則として労災保険に加入する必要があります。

一方で、フリーランスは通常の労災保険には加入できませんでした。ITフリーランスも以前までは労災保険の対象範囲外とされており、各自が自己責任で事故や災害に備える必要がありました。

しかし令和3年9月から「特別加入制度」の対象が拡大されたことにより、ITフリーランスの方も一定の要件を満たせば、任意加入で補償を受けられるようになりました。労災保険特別加入によって、仕事中のけがや病気によって発生した医療費などを補償してもらうことができます。

主な給付内容は以下の通りです。

・けがや病気の治療費や療養費

・休業期間中の給付

・後遺障害を負った場合の給付

・死亡した場合の遺族への給付 等

ITフリーランスの対象範囲は、プログラマーやエンジニア、Webデザイナーなど。加入方法は、既にITフリーランスの特別加入団体として承認をされた団体経由の申込みか、新規にITフリーランスの特別加入団体を設立しての申込みとなります。所轄の労働基準監督署に「特別加入申請書」または「特別加入に関する変更届」を提出し承認を受ける必要があります。

詳しくは下記をご確認下さい。

厚生労働省「令和3年9月1日から労災保険の「特別加入」の対象が広がります」

フリーナンスあんしん補償プラス

治療費などの給付目的以外に、休業中の生活保障に特化した保険もあります。

フリーランス専用の金融サービスを提供するFREENANCE(フリーナンス)では、会員向け所得補償「フリーナンスあんしん補償プラス」を提供しています。あいおいニッセイ同和損保保険株式会社が引受保険会社となっており、万が一収入が途絶えた場合に一定の収入補償を行うことで、生活の安定を保障することを目的としています。

具体的には、病気やけがなどにより長期間働けなくなった場合に、あらかじめ申し込んだ金額の保険金を最長1年間受け取ることができます。

この保険に加入すると、仕事中や通勤中に限らず日常生活や旅行中のけがや病気に対しても、国内/海外を問わず24時間365日補償を受けられます。また、天災によるけがも補償の対象となり、地震や噴火・津波などの自然災害によるけがで働けなくなった場合に保険金が受け取れる点も特徴です。

フリーナンス振込専用口座を開設すると、無料で「フリーナンスあんしん補償プラス」のサポートが受けられます。詳しくは下記をご確認下さい。

あんしん補償プラス | FREENANCE(フリーナンス) | FREENANCE(フリーナンス)
https://freenance.net/shotoku

フリーランス協会の「ベネフィットプラン」

上記でご紹介した他にも、賠償責任保険や弁護士費用保険・福利厚生サービスなどの充実した総合パッケージサービスも魅力的です。

フリーランス協会の「ベネフィットプラン」では年会費1万円で様々な補償が付帯しており、まずは何に備えたらいいのか判断に迷う初心者の方におすすめです。

主な内容は以下の通りです。

賠償責任保険(自動付帯)弁護士費用保険(自動付帯)所得補償(オプション)福利厚生サービス 
損害保険ジャパン、東京海上、三井住友海上 あいおいニッセイ同和損保 など 損害保険ジャパン損害保険ジャパン株式会社イーウェル
業務中の事故や、情報漏えい、納期遅延など、フリーランス特有の損害賠償リスクに備える保険です。 報酬トラブルや契約トラブルなどの際に専門の弁護士に相談できるサービスがついており、法的対応となった際の弁護士費用に備える保険です。任意加入の所得補償プランで、万が一の休業中に備える保険です。保険料は個人で加入するよりオプション追加の方が割安に。人間ドックや、子育て支援、レジャーや旅行などで優待や割引が受けられます。大手企業も導入する福利厚生サービス「WELBOX」の利用が可能。

「ベネフィットプラン」には保険サービス以外にも、オンライン学習プラットフォーム「IBM SkillsBuild」や「Udemy」も自動付帯で用意されています。会計サービスや家事代行、法務税務相談などのサポートも豊富ですので、今後どのようなサービスが自分に必要かを判断する際の参考にもなります。詳しくは下記をご確認下さい。

フリーランスの保険/独立・開業・副業の方の事業や生活をサポート (freelance-jp.org)
https://lp.freelance-jp.org/benefitguide/

フリーランスの健康保険加入は必須!賢くリスクに備えよう

フリーランスの方に限らず、日本ではどなたも健康保険に加入することが義務づけられおり、健康保険に加入することで病気やけがによる医療費の一部を負担してもらうことができます。

しかし、フリーランスは会社員の社会保険のような労災補償や健保組合からのサポートがありませんので、国民健康保険だけでは心もとないのも事実です。

プラスαの安心のために、ご自身で万が一の事態に備えた保険に加入することをご検討下さい。

フリーランスは、保険料の自己負担が大きくなることもありますので、保険選びには注意が必要です。保険の基礎知識をしっかり身につけ、自分自身のライフスタイルや想定リスクにあった保険商品を選びましょう。

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