2022年9月5日、日本経済新聞により、「政府はフリーランスを下請法の保護対象にする調整に入った」ということが知らされた。2023年の通常国会にて改正される予定だが、この法改正はインボイス制度にも影響があるのだろうか。
下請法も独占禁止法も下請事業者を不正な取引から保護するもの
下請法の正式名称は下請代金支払遅延等防止法」である。
<目的>
・親事業者の下請事業者に対する取引を公正にするため
・下請事業者の利益を保護するため
発注する側の親事業者の立場が強くなりがちだが、発注した後に下請代金の減額や支払遅延が起こる行為を禁止し、下請け事業者の利益を保護するものである。
また、独占禁止法でも不正な取引方法として「優先的地位の濫用」を禁止している。しかし、個別認定となるので時間と手間がかかり、すぐに処理が行えないことが欠点となる。
独占禁止法の欠点を補い、トラブルを早期解決することで下請事業者を守っているのである。
下請法に定められる5つの項目
- 下請法の対象取引
下請法の対象取引は次の4つだが、単なる商品の売買は対象外である。
・製造委託
事業者が、規格・品質・形状・デザイン・ブランドを決め、他の事業者に製造を委託する。
・修理委託
事業者が物品の修理すべて、または一部を他の事業者に修理を委託する。
・情報成果物作成委託
事業者がソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなどの情報成果物の作成作業を他の事業者に委託する。
・役務提供委託
事業者が各種サービス提供を他の事業者に委託する。
- 親事業者の規制
親事業者の資本金が1,000万円超で、資本金1,000万円以下の事業者や個人事業主と取引をする場合が下請法の対象になる。
製造委託・役務提供委託では、資本金の基準が変わる。
- 親事業者の義務4項目
親事業者は4つの義務を守る必要がある。
・書面の交付(発注書など)
・書類の作成・保存(取引内容を記載)
・下請代金の支払期日を定める(商品受領・役務提供から60日以内)
・遅延利息の支払い
- 親事業者の禁止11項目
親事業者が下記の行為を行うことは禁止されている。
- 違反した場合の罰則
・公正取引委員会による勧告
・書類の交付義務や書類の作成保存義務に対応していなかった場合は50万円以下の罰金
・親事業者の名称や違反内容の公表
2023年10月、インボイス制度開始とともに下請法違反となる場合がある
下請法改正後、小規模事業者も規制されると、不当な取引は取り締まり対象となるため、フリーランスの受ける理不尽な取引状態が改善されるようになる。
下請法改正後のポイントは「資本金の要件の引き下げ」と「フリーランス」の定義
- 資本金の要件が引き下げられ、フリーランスが下請けとなる取引については、1,000万円以下の親事業者も規制の対象とされる。
- 下請事業者となる「フリーランス」の定義も明確にする必要がある。現時点では「実店舗なし」「1人で事業運営」などが改正案で検討されているようだ。
インボイス制度への影響は?フリーランスは正しい知識をもって自身を守る姿勢はこれからも必要
下請法改正によって規制されるのは「親事業者の優越的地位の濫用」なので、すべてが保護されるわけではない。
親事業者がインボイス制度の開始とともに課税事業者になるようにお願いしたり、価格の交渉をしたりする可能性が出てくる。 フリーランスは、下請法改正後に法の保護を受けるにしても、自分自身の身を守るために勉強し、理解を深めておく必要があるだろう。