フリーランスであれば、年収を上げることが目的のひとつになっているはずです。会社員時代には給料からの天引きで気づかなかったことが、フリーランスになると翌年の税金と社会保険料が上がっていることにびっくりすることがあります。
例えば阪神でプレーし2022年現在、日本ハムの監督も務めている新庄剛志氏は、年俸460万円から2200万円に上がったため、2000万円のベンツを購入。1年間を200万円で生活すれば良いと考えていたようです。
ところが税金の支払いが発生し、結局借金をして税金を払ったとのこと。この新庄氏の例は極端ですが、年収が一気に上がった場合、思わぬ税金と社会保険料になることは誰にでもあることです。そこでこの記事では高年収の翌年に増える出費と、備える方法について紹介します。
高年収の翌年の税金や社会保険料は思った以上に上がる
高年収の翌年の税金や社会保険料は思った以上に上がります。これはフリーランスであれば経験したことがあるはずです。私も国民健康保険が、月々の1万5千円程度上がったことがあります。この上げ幅は結構な衝撃でした。
私の場合、税理士に依頼しているので、翌年の社会保険料が上がることは予想していましたが、それでも実際に請求額を見ると衝撃を受けるものです。さらに年収が上がったら、社会保険料が1万5千円の上昇では済まないでしょう。
私の場合、税理士に頼んで税金対策をしてこの金額の上昇ですから、対策をしていなかったらさらに増額される可能性が考えられたわけです。高年収になると考えられる年には、今から準備をしていかなければなりません。
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高年収の翌年に増える出費とは
ここでは具体的に高年収の翌年に増える出費について解説します。
所得税
所得税は高年収の翌年の3月15日までに納付しなければなりません。所得税は所得に応じて支払い金額が変わるため、所得が増えれば増えるほど納税額は増えます。所得税の上限は4000万円以上の所得で45%です。
税金対策をしていなければ、大変な金額を所得税で納めなければならなくなります。ただしフリーランスの場合、源泉徴収ですでに所得税が引かれている場合もあります。納税額が多ければ確定申告の際に還付されるでしょう。
国民健康保険
国民健康保険も収入によって大きく変わります。国民健康保険は個人事業主のフリーランスであれば、75歳以上でない限り、ほぼ加入しているはずです。自治体によっても金額に違いがあるため、予想よりも安かったり高かったりすることがあります。
つまり国民保険料は住んでいる自治体によって違うのです。翌年の国民健康保険の支払いに備えて、資金は準備しておく必要があるでしょう。
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住民税
住民税は住んでいる自治体に対して支払う税金です。住んでいる地域によって税率の変わるのが住民税ですが、実際には殆ど差がありません。住民税は年4回(6月・8月・11月・翌1月)に分割して納めます。
そのためこの月の出費は多くなります。住民税の支払いがある月は出費が増えるわけですから、資金の準備をしておかなければなりません。
消費税
消費税は売上に対してかかる税金なので、売上が増えれば支払いも増えます。個人事業主であっても1000万円を超えれば消費税の支払い義務が生じます。またインボイス制度が始まれば、1000万円以下でも消費税の支払いをしなければならない場合もあるわけです。
高収入になると、今まで支払っていなかった消費税も支払う必要が出てくるという認識を持っておきましょう。
個人事業税
個人事業税も一定の所得以上で個人事業主が支払う税金です。ただし業種によって税率が変わり、該当しない業種のフリーランスは課税されません。
殆どの業種で税率5%で、個人事業税は原則として8月、11月の年2回に分割して支払います。個人事業税も収入が上がれば、それに伴って納める税金も変わります。
年収が上がる年にすべき対策
年収が上がることで翌年の出費が増えることはすでに述べました。翌年になってから対策しようとしても出費を抑えるなどの節約以外の方法はありません。そのため年収が上がると考えられる年に、対策しておかなければなりません。
ここでは年収が上がる年にできる対策として、7つ紹介します。
事業に関わる経費を見直す
年収が上がる年には経費を見直すことで、翌年の出費を抑えられます。事業に関わるものは全て経費として計上できます。また自宅兼事務所にしている場合、家賃や水道光熱費を按分して経費にすることが可能です。
ただどこまで経費にして良いのか、迷う方も多いはずです。私は当初、ひとりで確定申告をしていましたが、経費に関しては少なく計上していました。多く計上して後で指摘されるよりも、少ない方が安全だと思っていたからです。
そのため、節税という意味では、損していたかもしれません。今は税理士に一任しているため、どれが必要経費になるのかの判断を任せられます。年収の上がることが見込まれる方は、必要経費の件も含めて税理士に相談してみることをお勧めします。
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ふるさと納税を使う
ふるさと納税は自分が住んでいる自治体以外の場所にも寄付できる制度です。寄附金額から2,000円を引いた額が控除分として戻ってくる制度です。自分で税金の使い道を選べますし、返礼品をもらえる分がお得になります
例えば自分の出身県に対して、ふるさと納税を行い、地域を応援することも可能になるわけです。フリーランスの場合、確定申告の際に所得税の還付と住民税が控除されます。確定申告には寄付した自治体から送られてくる寄附金受領証明書が必要となります。
ただふるさと納税を使ってもすぐに住民税の控除が受けられるわけではありません。寄付をした翌年の5月頃に控除額が分かります。所得税に関しては、確定申告をした後に還付されます。
ふるさと納税を実際に使っているフリーランスは、地域を応援する気持ちと返礼品を楽しみにしている人が多いです。確かに返礼品を見ると、普段よりはお得に手に入るものもあります。
私の知人のフリーランスは、お米を返礼品としてもらっており、かなり助かっているようです。しかもブランド米ですので味も良いとのこと。地域を応援する、返礼品を楽しむという気持ちでふるさと納税を使ってみましょう。
iDeCoや積み立てNISAを使う
iDeCoや積み立てNISAには節税効果があると言われています。しかしiDeCoと積み立てNISAでは節税効果に違いがあるのです。積み立てNISAは年間40万円まで最長20年間投資出来ます。一方、iDeCoは年14.4万円~81.6万円と加入者の職業によって投資できる金額が変わります。
積み立てNISAとiDeCoの大きな違いは引き出しができるかどうかです。積み立てNISAはいつでも資金を引き出せますが、iDeCoの場合は60歳まで原則引き出せません。そのため資金に余裕が無い場合は積み立てNISAを選ぶ人が多いです。
ただし節税という面で見ると、iDeCoの方が節税効果が高いです。積み立てNISAで非課税になるのは運用益のみですが、iDeCoの場合、運用益だけでなく積み立てる額の全額が所得から控除できます。
積み立てNISAとiDeCoは併用も可能です。フリーランスで節税効果を考えており、現在の資金に余裕があって老後資金を貯めたい人はiDeCoを重視したほうが良いでしょう。私の場合、現金はいつ必要になるか分からないため、積み立てNISAのみ運用しています。
貯金もある程度準備していますが、60歳まで引き出せないことに対しては不安を感じているからです。フリーランスの仲間に聞いても、積み立てNISAをしている人が多いです。ただ会社員で安定している人に聞くと、iDeCoを選択している人もいました。
現在の資金の状況に合わせて2つを組み合わせても良いでしょう。
小規模企業共済に加入する
小規模企業共済とは個人事業主の退職金のようなもので、毎月決まった掛金を払っていれば、引退後や廃業後に掛金に応じた金額が払い戻されます。小規模企業共済は掛金全額が所得控除の対象となります。
つまりiDeCoと同じ効果があるわけです。また掛け金は1000円~7万円の範囲で、500円単位で設定でき、加入した後でも変更可能です。さらに資金繰りが大変な時には「掛け止め」も活用し、掛金をストップすることも出来ます。
また借り入れ制度も利用できるため、資金が一時的に少なくなった時に、資金調達することが可能です。このように節税効果だけでなく、メリットがある小規模企業共済ですが、デメリットもあります。
さきほど述べた節税効果ですが、受取り時には課税されます。そのため節税というよりも課税を繰り延べしているとも考えられるわけです。また加入期間が20年未満だと元本割れを起こすため、長期的に掛金を払い続ける必要があります。
さらに12か月未満の場合は掛け捨てのリスクもあるため、節税効果だけを目的に加入するのは問題です。先ほど述べた積み立てNISAやiDeCoと比べて、小規模企業共済に加入したほうがメリットがあるのかどうかは、税理士に相談したほうが無難でしょう。
私も税理士に相談したのですが、積み立てNISAを勧められました。やはりフリーランスの場合、いつどこで資金が必要になるか分からないため、解約できる方が良いとのことでした。
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)に加入する
経営セーフティ共済とは連鎖倒産を避けるための制度で、取引先が倒産した場合に掛金の10倍まで資金を借りられる制度です。そのため取引先が倒産した際に、当座をしのぐ資金が確保できるというわけです。
こちらもiDeCoや小規模企業共済と同じように掛金が控除の対象になります。そのため大きな節税効果があります。掛金は月額5,000円~20万円で5000円単位で選択できます。掛金総額に制限があり、800万円まで積み立てられます。ただ一方で小規模企業共済と同じように、解約した場合の手当は課税の対象です。
つまり経営セーフティ共済も課税の繰り延べをしていることになります。また開業1年目は加入できず、加入後、12か月以内に解約してしまうと解約手当金として掛金は返ってきません。また40か月未満だと解約手数料がかかって元本割れを起こすことになります。
このように節税効果はあるもののデメリットもあるので、こちらも税理士に相談したほうが良いでしょう。
少額減価償却の特例を使う
節税のために少額減価償却の特例を利用するのもひとつの方法です。備品が10万円を超える場合は資産として扱われます。そのため「減価償却費勘定」として数年に分けて経費として計上するわけです。
減価償却で経費処理する年数は購入した備品によって決まっています。例えばパソコンであれば、4年に分けて経費として計上しなければなりません。しかし30万円未満の資産については特例を利用して、一括で経費処理が可能です。これが少額減価償却の特例です。
青色申告書を提出しており、事業を行うために必要な備品であれば、この特例が使えます。フリーランスであれば、パソコンなど30万円未満の備品を購入する機会があるはずです。しかもこの特例は備品1つにつき30万円未満です。
合計で300万円までが上限になりますので、有効に活用できます。高収入が見込まれる年には、必要な30万円未満の備品を複数購入して、少額減価償却の特例を利用してみましょう。
法人化する
高年収が見込まれて所得が1000万円を超えていくようであれば、法人化してしまった方が、節税効果があります。ただし法人化の場合、法人の設立費用がかかりますし、社会保険への加入が義務付けられ、税理士への支払いも増えていきます。資本金も必要です。
今後も高収入が見込まれる場合は法人化してしまった方が、翌年以降も節税効果が見込まれます。ただ今年のみ高収入の場合は法人化には税金が増えるリスクがあります。法人化については税理士に相談してみた方が良いでしょう。
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翌年の出費に備えて預金の準備を!
ここまで高年収になった翌年に増える出費とそのためにできる対策について解説してきました。しかしどれだけ節税しても、その効果には限界があります。翌年の出費が増えるのは間違いありません。
そうした際にその出費を賄えるだけの預金は必要です。借り入れして出費分を補うようなことが無いように準備しておきましょう。