今、これまでの自分の経験や知識を活かして「フリーランスコンサルタントとして起業しよう!」という方が増えています。しかし、コンサルタントは成功できれば多くのメリットがある一方で、仕事が獲得できなければ、日々の生活もままならないという厳しい世界でもあります。だからこそ、独立時には「成功へとつながるだけのスキルが備わっているか」を客観的に見極めることも重要になってきます。
そこで今回は、フリーランスコンサルタントとしてクライアント(依頼者)に選ばれ、活躍するために必要不可欠なスキルとその獲得レベルについて考えていきます。
独立前に、自分の知識・経験の「棚卸し」を!
フリーランスコンサルタントとして活動するのに「これは絶対に必要!」という資格はありません。また、仕入れや人件費などの大きな運転資金が必要なわけでもないため、コンサルタントとしての独立・起業のハードルは比較的低めだといえます。
とはいえ、コンサルタントとして成功するためには厳しい競争を勝ち抜き、満足度の高い成果をクライアント(依頼主)に提供しなければなりません。そのためにも、起業前に自分を知り、より成功へと近づくための「4つの準備」をすることから始めましょう。
まずは経験・知識の棚卸しを
コンサルタントとして成果を上げていくためには「自分の過去の経験や知識から、どんな価値をクライアントに提供できるか」をしっかりと認識しておく必要があります。まずは、今までに手掛けてきた仕事や経験の中から、何を提供できるのか、得意とする分野「=自分の強み」を整理してみましょう。その時、経験や知識に足りない部分、弱みがあると感じたら、それを補うよう、知識を磨くことも重要です。
人脈の棚卸し&顧客確保に向けた行動を
独立・企業後、いきなり飛び込み営業で依頼を受注できるほどコンサルタントの世界は甘いものではありません。やはりそこで重要になってくるのは、これまでに築いてきた人脈であり、長年培ってきた信頼関係です。独立前に人脈を整理し、退職・開業の際にはご挨拶を送付するなどの心遣いで関係維持を図りましょう。そしてもし人脈が足りない、不安を感じるなら、セミナーや交流会などに積極的に参加して出会いを広げるなど、顧客確保につながる出会いを広げておきましょう。
得意分野・専門を確立しよう
競争の激しいコンサルト業界で生き残っていくためには、「誰にも負けない!」とアピールできる得意分野を持ち、結果を出していくことが重要となります。まずはクライアントから寄せられる幅広い依頼に応えながら経験を積み、徐々に専門分野を絞っていこう…と考える人もいるかもしれません。
しかし、通常クライアントはITや人事、経営など、自分たちが知りたい・頼りたい分野の知識が豊富で、実績もある人に依頼をしたい…と考えるもの。
実際、フリーランスコンサルタントとして活動している筆者の友人も、独立直後はなかなか案件を確保できず苦労していましたが、「ホームページやSNSで企業の財務、経理、会計に関わってきた実績を詳細に記載するようにしてから、問合せ数が急増した」といいます。得意な分野、これまでの経験・知識を一通り見直したら、独立・起業までに必ず自身の専門分野を今一度、確立する努力をしておくようにしましょう。
「生活防衛資金」を確保しておこう!
コンサルタントとして独立・起業して、すぐに収入が安定するということはほとんどないのが現実です。実際、筆者の友人も「思ったように案件が獲得できず、独立から半年くらいは貯金を切り崩しながら生活していた」と言います。場合によっては収入が全くないという期間が発生する恐れもありますから、収入がなかったとしても、しばらくは生活できるだけのお金は準備しておきましょう。
このような「生活防衛資金」の目安は、無収入であっても2年程度は生活できるだけのお金をためておくこと。新規事業の立ち上げ費用に対しては、国や自治体による支援制度もあります。その額や支援の内容は自治体によっても異なりますので、こうした情報もしっかりと収集して資金計画を立てていきましょう。
コンサルタントとして欠かせない3つのスキルとは?
ここまでの工程で自分の「これまで」を整理し、今後の事業展開を確立したら、その計画を順調に進めることができるだけのスキルが自分に備わっているかどうか、客観的に見つめなおしてみましょう。
とはいえ、中には「実際にどんな能力・スキルがあるといいのかよくわからない」という人もいるでしょう。そこでフリーランスコンサルタントとして絶対に身に付けておくべき3つのスキルをご紹介! ぜひ自分の経験などと照らし合わせて参考にしてみてください。
必要なスキル1:論理的思考能力(ロジカルシンキング)
論理的思考力(ロジカルシンキング)とは、感情に左右されずに論理的に物事を突き詰めていく能力のこと。多くの先輩コンサルタントが「クライアントを説得し、効率的に課題を解決するために欠かせない能力だと思う」と声を揃えるほど、フリーランスコンサルタントとして活動していくうえで必要不可欠なスキルです。
この能力を身に付けることが出来なければ、クライアントの課題について筋道を立てて明確化し、その原因をクライアントにわかりやすく説明したうえで、納得できる解決案を提案するといったコンサルタントとしての「基礎」が根底から揺らぐこととなります。
論理的思考力を高めるには、日々、仮説を立てて検証する「仮説思考」、既成概念にとらわれずに物事を考える「ゼロベース思考」、常に“さらによい策”を探る「ポジティブ思考」、考え方の型を活用する「フレームワーク思考」などのスタンスを持つことが重要です。論理的思考力は、実務の場はもちろん、勉強次第で伸ばすことができると言われており、セミナーや対策本なども多く用意されていますので、活用してみるのもいいかもしれません。
必要なスキル2:コミュニケーション能力
コンサルティングをする上で、さまざまな情報を収集し、クライアントの信頼を得るためには円滑なコミュニケーション能力も欠かせないスキルになります。とはいえ、コンサルタントに求められるコミュニケーション能力とは、一般的に“コミュニケーション能力がある人”としてイメージされる「初対面の人とも緊張せずに話せる」「話題が豊富で会話が弾む」「自分の意見をしっかり伝えられる」といった内容とは少し異なります。
コンサルタントとして特に必要なのは、会話の中から相手の意見や意図、要望を正確に読み取る・相手に自分の意見を正確に伝えるという2つのコミュニケーション能力です。特に近年は「戦略の立案だけでなく、企業に入り込んで実行支援まで行う案件が非常に増えている」という先輩コンサルタントの声も多く、多くの人の意見をまとめ、統率し、動かすためのより高いコミュニケーション能力が求められているといえるでしょう。
必要なスキル3:プレゼンテーション能力
せっかくまとまった意見や提案、そして力を入れて作った資料も、クライアントをはじめ、必要な人にしっかりと伝えることが出来なければ意味がありません。そのため、関係する人たちを納得させる高いプレゼンテーション能力は、コンサルタントとしては欠かせない能力の一つといえるでしょう。
そこにはもちろん、自分の提案をわかりやすく順番に伝えるための構成力や、表現力なども必要になりますし、聞き手の心を掴む説得力も必要になるでしょう。また、それらを細かく説明するためのパワーポイントやエクセル、ワードなどを活用した資料作成スキルも必要となってくるはずです。この資料作成スキルに関しては、勉強次第で充分伸ばすことができますから、不得意な部分、不足していると感じる部分があるなら、独立前にしっかりと習得しておくようにしましょう。
ここまで、フリーランスコンサルタントとして「絶対に身に付けておきたい」スキルについてご紹介しました。この3つのスキルはコンサルタントとしての「基礎」となるもの。自分の今の能力を客観的に確認し、足りないスキルは補う努力を惜しまず、クライアントから信頼されるコンサルタントをめざしましょう。
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身に付けておくと有利な資格・能力は?
起業にあたって、大きな設備投資や人件費などの出費もなく、特別な資格の取得もいらないコンサルタントは「比較的、独立しやすい職業」として認識されています。とはいえ、実際にはクライアントの開拓や案件の確保のために獲得しておくと有利な資格があるのも事実です。ではコンサルタントとして活躍するために役立つ資格にはどのようなものがあるのでしょうか。
ここでは、フリーランスコンサルタントの中でも、ビジネスコンサルタント、IT、DX、人事、WEBマーケティングに絞って必要な資格や能力についてそのいくつかをご紹介していきます。
中小企業診断士
中小企業診断士とは、中小企業の経営課題に対応するための判断や助言を行うスペシャリストであり、経営コンサルタントとして唯一ともいえる国家資格になります。この資格を取得するためには、企業経営のヒト・モノ・カネに関する幅広い知識を学ぶ必要があるため、コンサルタントの現場で活かせるスキルも多く身に付くはずです。
また、中小企業は日本の企業の大部分を占めており、経済的な不安を抱える中で少ない資源でどのように経営を維持し、勝ち残っていくのかを経営面からサポートしてくれる中小企業診断士へのニーズは年々高まりを見せています。中小企業を対象としたコンサルティング活動を検討しているのであれば、非常に有利に働く資格だといえるでしょう。
社会保険労務士
社会保険労務士とは、従業員の採用から退職までに必要となる労働関連の法令や社会保険に関する法令に精通する、人事・労務管理のスペシャリストのこと。この国家資格を取得するためには、数多くの法律を学び、適切な労務管理や人事評価の知識を得る必要があり、企業で働く人材を助け、企業を支える不可欠な力となります。
人手が足りない、人材の育成が難しい、賃金制度の確立、労使トラブルなど、経営者にとって人事や労務管理に関する悩みは尽きることがなく、成長に欠かせない「人」に関する知識が豊富を持つコンサルタントは企業にとって、非常にありがたい存在といえます。
キャリアコンサルタント
2016年に国家資格となったキャリアコンサルタントは、労働者の視点から、相談者をどのようにキャリアアップさせていくかをサポートする役割を担います。
終身雇用制度の崩壊や高齢社会の進展により、今、労働者自身が自分に本当に合った新たな職業を見つける時代となっています。また、中小企業で助成金がもらえる「セルフ・キャリアドック制度」の適用にはキャリアコンサルタントの登用が必要であり、この資格を有するコンサルタントへのニーズが非常に高まっているのが現状です。「人材を活用するエキスパート」として、新規案件獲得の場面でも大きなアドバンテージとなるはずです。
ITコーディネータ(ITC)
ITコーディネーターとはITと企業経営の両方に関する知識を活用し、経営のIT化を支援するプロフェッショナルのこと。ITに関する専門知識だけでなく、経営にまつわる知識も持ち合わせているため、経営を的確にIT化するサポートができる点も大きな強みと言えます。
また企業のさまざまなニーズも踏まえたうえで、戦略的なIT技術の活用のために、経営者の立場から助言、支援を行い、IT経営を実現する人材であることを認定する資格でもありますで、IT系の分野でコンサルタントとして活躍したい方にとっては、そのスキルを証明・アピールするのに役立つ資格といえるでしょう。
プロジェクトマネジャー
プロジェクトマネジャー資格は、その名の通り、IT開発などにおいて、チームを束ね、プロジェクト全体を取り仕切り、納期までに高品質なプログラムなど成果物を完成させることができるか、そのマネジャーとしての能力・スキルを証明するものです。
IT系国家資格の中でも非常に難易度が高く、プロジェクト計画の立案や、プロジェクトの予算や工程などを管理する能力など、高度な知識・技能が求められる資格として知られており、IT系コンサルタントでの活躍を希望する人にとっては、大きな武器となるはずです。
Webアナリスト検定
Webアナリスト検定とは、Webサイトのアクセス内容などを分析して、具体的な改善案をアドバイスするWebアナリストとして活躍するための知識・スキルを図る認定資格制度です。Webサイトからの離脱率を高めているページを指摘する、SEO対策が不十分なページの改善を促すなど、さまざまなデータを用いながら具体的な提案をする力を有している人材と判断されるため、ITやWebマーケティングの分野で活動する時には、役立つ場面も多いはずです。
ウェブ解析士
Webマーケティングを行う際には、アクセス解析の知識はもちろん、KPIの設定やプロジェクトのファシリテーションまでさまざまな能力が必要となります。「ウェブ解析士」の認定資格は、まさにこうした知識や技術を身に付けた人材であることを証明し、成果につながるウェブ解析ができる人材を育成することを目的とした認定資格です。
資格を取得することにより、Webマーケティングに必要な幅広い知識を得ることができ、KPIを意識した計画立案、効率的なWebマーケティングができるようになります。またウェブ解析のプロフェッショナルとして認知され、新規案件獲得、人脈の拡大などさまざまなメリットを得ることもできるはずです。
TOEICをはじめとした英語に関する資格
英語力がないからといってコンサルタントとしての活動がうまく進まない…ということはありませんが、コンサルティングファームや関わるプロジェクトによっては、英語力を求められるケースは充分考えられます。特に外資系企業に向けコンサルタント活動をする場合は、海外のクライアントと接する機会もグンと増えますので、それなりの英語力が身に付いていないと厳しいものがあります。
TOIECであればまずは700点以上、外資系企業と対峙するのであれば800点以上のスコアをめざしたいもの。新たなクライアントの獲得時にアピールできる材料となるはずです。
MBA(経営学修士)
MBAとは、日本語で経営学修士号といわれる学位のこと。資格ではありませんが、MBAを獲得したコンサルタントが世界中で活躍していることもあり、コンサルタントとして活動するうえで、非常に大きな武器になることは間違いありません。
MBAを取得するためには、通常2年間の専門課程で経営戦略やマーケティング、会計、財務など、経営に関する理論を幅広く学ぶことになります。そのため、その知識はビジネスコンサルやマーケティングなどさまざまな分野で活かすことができます。
また近年は起業論や、イノベーション、交渉論といった、より実践的な科目を導入しているところも多くなっています。国内の大学でも今、次々にMBAコースを立ち上げており、社会人入学で取得をめざす人も少なくありません。一流MBAの取得は、新規クライアント・案件獲得時に、あなたの大きな“武器”となるでしょう。
・・・いかがでしょうか。
コンサルタントは成功すれば高い報酬を得られる反面、案件そのものが少なく、競合するケースも多いのが特徴のひとつ。フリーランスコンサルタントとして成功し、長く活躍したいと考えるなら、「この人に頼みたい」と思わせるだけの信頼度の高いスキル、知識を磨いておく必要があります。
ここまでご紹介したスキル、資格など、自分の“武器”となるものを身に付け、多くの企業を成功へと導く力を持ったコンサルタントをめざしましょう。
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