フリーランスが賃貸オフィスを借りる場合、住居を借りるのと同じようにはいきません。オフィス利用ができるマンションを探す大変さだけでなく、確認すべき項目も多くあるのです。

そこでこの記事では、フリーランスが賃貸オフィスを借りるメリットだけでなく、フリーランスが賃貸オフィスを借りる際の注意点を紹介します。

オフィス利用ができるマンションは意外と少ない!

マンションの大半は居住用の物件です。そのためマンションとして利用できる物件は意外と少ないのが現状でしょう。その理由としてはオフィス利用を認めた場合、住居利用で入居した人とトラブルになる可能性があるからです。

せっかくセキュリティ面を強化していたとしても、見知らぬ人が出入りするオフィス利用の物件があると意味がなくなってしまいます。そのためオフィス利用を認めたがらない物件が多いわけです。

さらにオフィス利用が認められていたとしても、不特定の人の出入りが多い場合はオフィスとして利用できない場合があります。IT系の仕事で打ち合わせをオンラインで行えば、人の出入りはほとんどありません。

また定期的に来客する人数が限られている場合も問題ありません。ただし同じIT系でも、不特定多数の人とオフィスで打ち合わせが必要だとなると、オフィス利用が出来ない場合があるわけです。

それではオフィスとしてではなく、住居用として契約してしまえばいいと考えるかもしれませんが、それはトラブルの原因です。利用目的を偽って物件を借りるのはやめましょう。またオフィス用で借りられる物件が見つかったとしても、フリーランスが借りるのは難しい場合もあります。

オーナー側としては、フリーランスの収入に対する不安があるからです。そのため収入面での書類をしっかりと用意し、安定した収入があることを示す必要があるでしょう。

フリーランスが賃貸オフィスを借りるメリット

オフィスの数が少なく、フリーランスがオフィスを借りるのはハードルが高いことはすでに述べました。それでもオフィスを借りて利用するメリットは、どのような点にあるのでしょうか。ここでは4つのメリットを紹介します。

仕事のスペースが確保でき、自由に使える

フリーランスが賃貸オフィスを借りることで、仕事のスペースが確保出来ます。一人暮らしであれば良いですが、家族と同居している場合、仕事のスペースを確保するのが難しい場合もあるでしょう。

リモートワークでできる仕事が増えてくる中で、会社員でも在宅で仕事ができるようになりました。通勤時間を短縮でき、家事もしやすくなっています。しかし一方で、家族みんなが在宅で仕事をしているため、仕事のスペースが無かったり、気を使って疲れたりするという話を聞くことが増えました。

そのため在宅で仕事ができるにもかかわらず、カフェやコワーキングスペースに出かける人もいます。実際に私の周りでは、カフェやコワーキングスペースだけでなく、週に何日か、ホテルなどにわざわざ宿泊して仕事している人もいます。

他にも自宅だとベッドやソファ、TVなど仕事をさぼれる環境が備わっています。少し休憩しようとソファに座っていて、いつの間にか時間が経ってしまっているということもあります。賃貸オフィスであれば、こうした悩みは無くなるでしょう。

住所を公開できる

賃貸オフィスであれば住所を公開出来ます。ホームページで問い合わせ先がメールだけの場合、どうしても信用度は下がります。しっかりと住所を記載している人がいれば、その方に仕事を依頼したいと考えるのが一般的です。

またオンラインでの打ち合わせが増えたとは言え、実際に対面で打ち合わせしたいという希望を持つクライアントもいます。その際に住所が書いてあれば、クライアントの側が、打ち合わせが近くでできると判断して、問い合わせしてくれる可能性が高まります。

実際に知人のプログラマーが、顧客候補からの問い合わせの理由として「近くで打ち合わせができるから」というのが意外と多いと教えてくれました。結局webページだけでは違いが分からないので、近場で話を聞いてみようとなることが多いとのことでした。

クライアントの規模が大きくなればなるほど、信頼性は重要になってきます。取引先の規模を大きくしたい場合は、信頼性を考えて賃貸オフィスを借りることも検討すべきでしょう。

プライベートと仕事の切り替えができる

賃貸オフィスを借りることでプライベートと仕事の切り替えができるようになります。フリーランスは自分の都合の良い時間で仕事ができる一方で、プライベートと仕事の区別が無くなりがちです。

私もそうですが、仕事をし始めるとずっとしてしまいます。その結果、何日も休みを取っていないということも出てきてしまいます。もちろん休みが無くても大丈夫かもしれません。しかし気づいたら体や精神面に不調をきたしていることも少なからずあります。

賃貸オフィスを借りてそこでしか仕事をしないとすることで、プライベートと仕事の区別がはっきりと付けられます。そうすることで意識しなくても、休みを取ることが可能になるわけです。

休みを取るのは自分のためだけではありません。家族がいる場合、家族で過ごす時間は非常に大切です。また友だちとの付き合いも大切でしょう。休みをしっかりと取ることで、周りの人たちにもプラスの効果があるわけです。

また仕事をし続けないことで、短時間で効率的に終わります。ずっと仕事をしていると言っても、時間ばかりが長く、効率が悪いことは意外とあります。決められた時間に決められた場所で行った方が、短時間で仕事が終わることも多いわけです。

私は家ではなく、カフェやコワーキングスペースで仕事をすることが多いです。その方が家でやっている時よりも短時間で終わります。その理由は意識の違いです。自宅でいつでも仕事ができるという状態だと、どうしても集中力が切れてしまうわけです。

プライベートと仕事をしっかりと分けたいフリーランスの方は、賃貸オフィスを借りるという選択肢を検討しましょう。

打ち合わせがしやすい

賃貸オフィスを借りることで、打ち合わせがしやすいというメリットがあります。カフェだとわざわざ席を確保して、さらにドリンクを頼む必要もありますし、周囲の会話などの雑音も気になります。実際に打ち合わせでカフェを使うことが多いのですが、入ったカフェが満席で打ち合わせに使えないこともありました。さらに打ち合わせ内容を周囲の人に聞かれるというリスクもあります。

賃貸オフィスがあれば、静かな環境で常に打ち合わせが出来ます。オンラインでの打ち合わせが増えたとはいえ、最初は対面での打ち合わせを希望するクライアントもいるでしょう。そうした際に対応できる場所があるのは都合が良いです。

対面での打ち合わせを希望するクライアントが多い職種の場合は、賃貸オフィスを借りることも検討すべきでしょう。

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フリーランスが賃貸オフィスを借りる際の注意点

フリーランスが賃貸オフィスを借りる際には、以下の6つの点に注意しましょう。

オフィスとしての利用可能か確認する

まずオフィスとして利用できるかどうかの確認が必要です。前述したようにオフィスとして利用できる物件は限られます。またオフィス利用可だとしても、人の出入りが多い仕事の場合は、断られることもあるのです。

契約した後に問題が発生して、またオフィスを探すとなると、お金も時間も掛かってしまいます。自分の利用目的をはっきりさせ、可能な場所であるか確認しましょう。

法人化した際に登記できるか確認しておく

オフィス利用が可能だとしても、法人登記はNGという物件もあります。オフィス利用ができるから法人登記もできると考えるべきではありません。せっかくオフィスとして借りたのに、法人登記ができず、別のオフィスを探すということも発生します。

法人化まで考えているフリーランスの方は、賃貸オフィスが登記出来るのかどうかも事前に確認しておきましょう。

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収入を証明できる書類を準備する

フリーランスが賃貸オフィスを借りる場合、収入を証明できる書類を準備する必要があります。この書類が非常に重要で、フリーランスとして信用してもらうためにも、「課税証明書」「納税証明書(地方税)」「納税証明書(所得税)」のいずれかを準備しなければなりません。

「課税証明書」は住民税の額を証明する書類で、市町村役場で発行してもらえます。「納税証明書(地方税)」は地方税の納税額を証明する書類で、こちらも市町村役場で発行出来ます。「納税証明書(所得税)」は納税額を証明するもので、税務署で発行できるものです。

賃貸オフィスを借りる前に、いずれかの書類をしっかりと準備しておきましょう。

連帯保証人が必要になる場合が多い

賃貸物件を借りる場合、連帯保証人が必要だと言われたことがあると思います。賃貸オフィスを借りる際にも同様です。連帯保証人がいないとオフィスは借りられません。もし連帯保証人がいない場合は家賃保証会社に保証料を払うことで物件が借りられます。

信用力が低く、創業したばかりのフリーランスであれば、家賃保証会社との契約を求められることが多いでしょう。場合によっては連帯保証人がいたとしても家賃保証会社が必要になる場合もあります。

家賃保証会社の保証料は契約時に家賃の100%を支払い、毎年決まった額の保証料を支払わなければなりません。また敷金と違い、後で戻ってくることはありません。さらにフリーランスの場合、家賃保証会社の審査に落ちることもあります。

こうしたデメリットがある家賃保証会社を利用したくない・利用できない場合、敷金を積み増すことで回避できる場合があります。

オフィスの場合、家賃の4~6か月が敷金の相場ですが、さらに積み増すわけです。敷金ですから退室後に戻ってくる可能性もありますし、毎年のコストもかかりません。こうした方法もあるので、保証会社を利用したくない・利用できない場合は、不動産会社と相談してみましょう。

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契約書類はしっかりと確認する

契約を結ぶ際には条件面がこれまでのやり取りと同じであるのかどうか、必ず書面で確認しましょう。一つ目は契約解除の条件です。家賃を何か月滞納したら契約解除になるか確認しておきます。

フリーランスの場合、急に仕事が入らなくなることもあります。そのため1か月家賃を滞納しただけで契約解除になるのか、それ以上待ってもらえるのかは重要です。必ず確認しておきましょう。

二つ目は解約解除についてです。何か月前に申告が必要か、また敷金はどれくらいで戻ってくるのか確認しておきます。敷金の返済期間が具体的に書かれていない場合は、必ず確認して契約書類に書いてもらいましょう。

また退去時の原状回復費用がどのようになっているのかも確認が必要です。賃貸オフィスであるため、内装を変える場合もあるはずです。退去時にはどこまで原状回復すべきなのか、確認しておきましょう。疑問に思ったことは契約をする前に確認するようにしましょう。

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住居用とオフィス用の賃料や敷金の違いを理解する

住居用とオフィス用では賃料や敷金に違いがあります。オフィス利用の場合は賃料に消費税がかかります。敷金については住居用よりもオフィス用の方が多く必要です。住居用だと1か月か2か月の敷金の場合が多かったでしょう。

しかしオフィスの場合、4か月~12か月の敷金が必要です。なぜこのような違いがあるかというと、オフィスの場合、原状回復費用が多くかかるためです。例えば住居用では原状回復費用として請求されないクロスの張り替え費用も、オフィスの場合は請求されます。

内装を変えてしまった場合、その原状回復費用もかかります。敷金の変換や原状回復費用の請求についてはトラブルになることが多いので、契約時に必ず確認しておきましょう。また原状回復費用を抑えるために、居抜きで退去する方法もあります。

もちろんこれはオーナーが許可しなければできないですが、そのままオフィスとして利用できるのは、新しく入居する人にとってもメリットです。居抜きでの退去も可能かどうか、事前に確認しておきましょう。

レンタルオフィスやシェアオフィスも選択肢のひとつ

ここまでフリーランスが賃貸オフィスを借りる際の注意点について述べてきました。フリーランスが賃貸オフィスを借りることにはメリットもありますが、そもそも借りられないこともあります。とくに創業したばかりのフリーランスは難しいでしょう。

その場合はレンタルオフィスやシェアオフィスも選択肢のひとつです。レンタルオフィスやシェアオフィスであれば初期費用も削減でき、入居の審査も賃貸オフィスほど大変ではありません。

また法人登記もできるため、住所を公開することも可能です。ただし共用スペースの利用にルールがあったり、そもそも施設の利用時間に制限があるなど、賃貸オフィスと比べると自由度は下がってしまいます。

こうしたデメリットはありますが、賃貸オフィスを借りたくても借りられなかった場合は、検討する選択肢のひとつになるでしょう。

シェアオフィスやレンタルオフィスについてさらに詳しく知りたい方は、以下の記事で詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。

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